野生の兜。

     
兜といえば、サボテンのなかのサボテン。知らない人はいないでしょう。
扁平な球体を飾る白点、幾何学的に連なる毛疣状のアレオレ。
ただメキシコの自生地に生えている原種の兜は、いま世界の愛好家が
栽培しているものとは、顔立ちがかなり違います。




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       Astorophytum asterias original wild form (seed grown), from Gonzales, Tamaulipas




上の写真の兜は、白点も疎らで、毛疣も小さい。実に地味な顔立ちです。
名人のハウスではまず見かけないタイプで、競りに出しても、値段がつかない。
ですが、人の手の加わっていない野生そのままの原種の兜はこんな感じです。
びっしり球体を覆った白点や、巨大な毛疣が隙間なく連なった最近の兜と
見比べると、同じ植物とはちょっと思えないくらいですが。




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          Astorophytum asterias classic elegant specimen (picture taken in 1970's)




こちらの写真はむかしの専門誌に載っていた、昭和の時代の最高タイプの兜。
白点の密度にアレオレの大きさ、当時の水準では、素晴らしい標本でした。
同じころ、メキシコからは沢山の兜の山木が輸入されはじめました。それこそ、
何千本単位で、最近のグラキリスみたいな感じです。愛好家は先を争って
特徴の顕著な株を求め、なかにはスーパー兜のような特異な個体もありました。
そしてその頃から、白点が密で、大きなアレオレが連なったタイプを追求する
本格的な育種改良も始まったのです。

その頃小学生だった私も、お年玉をかき集めて1本3万円もする山木の兜を
買ったことがあります。郵便小包で届いたのは、乾いた煎餅みたいな代物でしたが、
発根して膨らんだ時、そして最初の花をつけたと時の感動は忘れられません。
3年くらいたって枯らしてしまったときは、涙が出たなぁ。




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          Astorophytum asterias original wild form (seed grown), from Gonzales, Tamaulipas




この兜は、その当時と同じ、原種のままの兜、素朴な顔の兜が欲しくて、
種をとりよせて育てたものです。星を散りばめた夜空のような青肌で、
アレオレもひとつひとつ手で置いたように並んでいます。
白さとインパクトを追い求めて来た日本の兜とは別物のようです。
兄弟それぞれ、ちがった雰囲気をまとっていて、淡泊な顔立ちだけど、
なかなかハンサムだと思います。
かつて、たくさんの兜を日本にも送り出したメキシコ・タマウリパス州の
ゴンサレスの自生地を、ヨーロッパの愛好家が訪ねて採取したもので、
市場に出回らないという意味では、真っ白な兜より得難いかも知れません。




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          Astorophytum asterias from Heinz Swoboda's collection, near the shore of Tmaulipas



こちらの兜も、上のものとは異なりますが、山採りの親株同士で稔らせた種として
入手したもので、まあ野生兜といっていいかと思います。同じタマウリパス州の
もっと海に近い産地だということですが、親株を交配するときに多少園芸家の意思が
働いたのか、白点が多めです。このくらいの白点のつきぐあいは許せるけれど、
個人的な好みでいえば、最初に紹介したタイプの方が、なんか気持ちいい。
日本でも、当時たくさん入ったカイエス産の兜を純系保存している方がいると聞いた
ことがあります。いつまでも大切に残してもらえたらと思います。




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実はまだ、私は兜の自生地を見に行ったことがありません。テキサスで生えている
場所の近くまで行きましたが、住宅地に近い場所なので撃たれるぞ、と脅かされて
訪ねずじまいでした。アメリカで見る方が易しい、と昔の本には書いてあったんだけど。

地面にうまった煎餅みたいなサボテンに、会いに行ける日はいつのことか。
はじめて出会った時と同じ、素顔の兜に会いたい。








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ジャンル : 趣味・実用

今年も種を蒔きました。


先週、種まきをしました。
やり方は、ここ十年くらい変わりません。
透明プラのトレイ(衣装ケース)に、鉢を並べて、腰水をして蓋をかぶせておわり。
それでも、衣装ケースふたつぶんの作業で、半日はたっぷりかかります。




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まずは名札書きからです。これもむかしはプラの名札に油性マーカーで書いていた。
でも、インクは経年劣化で読めなくなるので、途中からは鉛筆書きにしました。
いまは、上の写真のように、ラベルライターで名札を印刷します。
屋外用のシールを使うと、10年近く劣化なく読み取れる状態を保ってくれます。
今年は、サボテンでは太平丸とコピアポアにほぼ特化して蒔きました。
チェコの業者からの輸入種子です。太平丸だけで、↓これだけ頼みました。
いくつか品切れあったと思うけど、ほぼ届きました。ちょっと面白いので列挙すると、


N0219 Echinocactus horizonthalonius Las Delicias, Durango 10 2,2 
N0238 Echinocactus horizonthalonius VM General Cepeda, Coah. 10 1,4 
N1621 Echinocactus horizonthalonius K? 43 Valle de Rosario, Chih. 10 2,4 
N0082 Echinocactus horizonthalonius JABO 32 Tula, Tamaulipas 10 1,2 
N0150 Echinocactus horizonthalonius JABO 33 Artega, Coah. 10 1,2 
N0191 Echinocactus horizonthalonius KMR 85 Sierra de la Paila, Coah. 10 1,4 
N1628 Echinocactus horizonthalonius VZD 690 Arroyo de Cruces, Durango 10 2
N00472 Echinocactus horizonthalonius VZD 390 Rancho San Geronimo, Coah. 10 1,6 
N00474 Echinocactus horizonthalonius VZD 0063 Saltilo- Toreon km 132, Coah. 10 1,4 
N1626 Echinocactus horizonthalonius VZD 257 NW of Cuba, Durango 10 2
N1705 Echinocactus horizonthalonius VZD 847 La Encantada, Coah. 10 1,4 
N1711 Echinocactus horizonthalonius VZD 932 La Mejorada, Zac. 10 1,5 
N0155 Echinocactus horizonthalonius RC 73 San Rafael, Coah. 10 1,2  
N1703 Echinocactus horizonthalonius RC 95 El Casco, Durango 10 1,2  
N1000 Echinocactus horizonthalonius VM 600 Pozos, Guan. 10 2
N1001 Echinocactus horizonthalonius VM Sandia Chica 10 1,6 
N0090 Echinocactus horizonthalonius v. subikii CH 485 E of Ejido Soledad, NL 10 1,4


ヨーロッパでは、産地データとリンクさせて植物をコレクションする人が多いため、
こうした形で種子が売られています。太平丸は、産地が異なると、まるで顔が違ってくる
サボテンですが、国内ではあれこれ雑交されています。そこで輸入種子を実生して、
オリジナル再現を目指すわけです。ほんとは自分で自生地まで種を採りにゆければ
最高だろうけど、なかなか実現できませんね。




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               ready for sowing seeds!



今年の実生は、太平丸、コピアポア、他いくつかのカクタスで、トレイひとつ。
もうひとつのトレイは、すこし大き目の蒔き鉢で、パキポディウムを中心に
多肉・塊根類の種を蒔きます。こちらは大半が自分の栽培場で採種したもの。
むかしは、蒔き土を熱湯消毒したりしましたが、いまは面倒なので、成株と同じ
培養土のうえに、薄く表土を敷いて、そのままバラ蒔きします。
表土は、ピートモスを中心にした市販の「種まき用土」を赤玉細粒(芝目土)で
半分くらいに割ったものを使っています。ピートがあると、根がからんで
小さい種も育ちやすい。




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               spraying fungicides(thiuram) after sowing seeds



種を蒔き終わったら、殺菌剤を噴霧します。あらかじめ土を消毒していないので、
これは不可欠。ホーマイを規定量に薄めて使っています。この薬はコケの生育を
阻害するらしく、鉢内にコケがはびこるのを防いでくれます。しかし、量が多いと、
発芽した苗の成長が止まるので、注意が必要です。

それから1週間。きょう、蓋をとって様子を見てみると・・・




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               Just hatch out ! a week passed since sowing seeds
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               Pachypodium eburneum
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               Idria columnaris



パキポディウムは一斉に発芽がはじまっていました。
蒔いたのは、グラキリウス、ブレビカウレ、白花ブレビカウレ、エブレネウム、
バロニー・ウィンゾリ、光堂など。どういうわけがウィンゾリが発芽ゼロ。
なにか種に問題があるのかも知れません。イドリア・コルムナリスや光堂は
秋冬型なので、出揃ったら、すこし涼しい場所に移してやります。
サボテンたちは、まだほとんど発芽していません。もともと太平丸なんかは
発芽しにくいので、2週間くらい経たないと動かないことが多い。気長に待つ。




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               Pachypodium brevicaule just one year old
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               Pachypodium makayense just one year old



こちらは去年蒔きのパキポディウムです。
ブレビカウレは、まだ1cmにもならないちびっこですが、マカイエンセなどは
既にそれらしい姿になりつつあります。




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               Pachypodium rosulatum ssp.gracilis 2years from seed
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               Pachypodium brevicaule ssp. leucoxanthum 4years from seed



2年、3年とたてばさらにそれらしくなってきます。うちは露天に放っぽりだして、
水やりも天まかせという育て方なので、成長ペースは遅い。グラキリウスは2年で
このサイズ。すでに鉢上げした白花ブレビカウレは丸4年経っているはずですが、
去年から咲いています。育てば育つほど場所をとるのが悩ましいですが、大きく
育っていくプロセスを間近で眺めるのは実に楽しいものです。

サボテン・多肉植物の種まき、実は1996年から1年も休みなく続けています。
私にとって、植物栽培の最大の楽しみは、種から育てて、野生株にまけない
標本を育成すること。既に栽培場の8割くらいが、自分で種から育てた植物で
埋まりつつあり、二十余年を経て、ようやくゴールが見えてきたものもあります。
そんなに執念深い性格でもないんですが、よく続いてますよね。














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ブラキステルマ・竜卵窟の開花。

  
温室に一歩足を踏み入れた瞬間、目をつぶっていてもわかりました。
すべての植物のなかでも、最も不可思議なその花が咲いていることが。




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             Brachystelma barberae in full blooming



ブラキステルマ・バーベラエ(バルベラエ・・・Brachystelma barberae)。
和名は、竜卵窟(龍卵窟・・・りゅうらんくつ)。
ガガイモ科、最近の分類ではパキポなどと同じキョウチクトウ科に分類される、
地中性の塊根多肉植物です。
自生地は南アフリカ、ボツワナ、ジンバブエなど、広い範囲にまたがり、
原産地では、イモは芋として、ときには食用にもなるようです。




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           emerging bud from the top of the caudex




異変に気づいたのは、ひと月ほど前。気温が春らしくなり、
休眠から醒めたバーベラエの出葉のときでした。
私は塊根を地中に埋めて育てているので、
冬期は何も植わっていない鉢のようなのですが、その頂部から、
新葉と一緒になにやら新芽の集合体みたいなものが覗いている。
これは、どうみても蕾です。

バーベラエは、二十年くらい前までは多数輸入さえていて、
価格も手ごろでした。私のところでも、幾度か珍奇そのものの花を
咲かせてくれましたが、腐りやすいもので、いつしか消滅。
ところが最近では、国内外ともに大珍品になっているようで、
たまに出回るときも、とても手の出る値段じゃありません。
このバーベラエは、5、6年まえに国内業者から購入したもので、
そんなに高くはありませんでしたが、おそらく内地実生株で、
これまで一度も咲かず、ほんとにバーベラエ?と心配になったりも。
でも、この蕾の形は、たぶん間違いない。あとはちゃんと育つかです。




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           “ready to burst”



それから2週間、蕾はしっかり充実し、この時点で既にタダモノではない。
イガイガと突出したそれぞれの蕾が、激しい自己主張を感じさせます。
地味な葉っぱが隠れるほどの大きさで、これだけの花を咲かせるには
株に体力が必要だろうし、塊根が小さいうちには咲かないのも道理です。
ちなみに。この株の地中塊根は8cmくらいで、芽点が二か所あり、
今回はそのうちのひとつから出蕾しました。




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         bizarre cage-like flowers, give off a terrible smell....
 


さらに1週間。
温室に入ると、つんと花をつく刺激臭を感じました。
私の栽培場には、他にもガガイモやユーフォルビアなどの、“異臭系多肉”が
いくつかあります。ですが、そのどれとも異なる香気が漂っています。

見事な開花でした。
寄り集まった数十の花が、籠を編んだように球状に立ち上がり、存在感を
示しています。中心部を見ると、ガガイモ科らしい色彩と模様なのですが、
長い花弁の先端部がくっついたままで花開くことで、この珍無類の姿を
構成しているのです。
気になる独特の香りですが、私には熟成の進んだウォッシュチーズのように
感じました。家人からは、いたんだ果物とか、ぬか床、という形容も
ありましたが、ヒトには気持ちのよいにおいでないことは確かです。
でもまあ、この花の形と一体になって、ある種の昆虫を誘因するためなので、
珍しさを楽しもうと深呼吸したところ、子どもたちには変人扱いされました。
このにおいは、暖かい日中は周囲一帯に漂いますが、夜間は顔を近づけて
わかる程度に弱まるようでした(安心情報)。




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最後に栽培について。
ブラキステルマ全般に、寒さには弱いので、冬期は10度程度を保ちます。
また落葉し休眠に入ったら、水を切ります。乾燥すると虫がつきやすいので、
水を切る前に殺虫剤を用いるのも一策です。
初夏から秋までの葉の出ている時期は水をほしがるので、葉っぱがしんなり
してきたら水をやります。。ただし、滞留すると腐りやすいので気をつけます。
真夏は通風をはかり、蒸れないとうに気をつけます。また、塊根を表に出して
育てる場合は、直射日光で焼けないようにして下さい。




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               Brachystelma barberae in full blooming




こんな管理で、うちでは5、6年かけて力を蓄えて、花を咲かせてくれました。

ありがとう。








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沙漠植物、栽培、探究。

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