沙漠にマグアンプ。

サボテンは、特に肥料を与える必要のない植物です・・・みたいなことがよく言われます。
たしかにふかふか腐葉土の森じゃなくて、砂だらけのサバクに生えているんだし、成長速度もゆっくりだし、
水だってたまにしかやらないくらいなんだから、まして肥料なんて・・・。
じつは私も、長いことそう思っていたのです。私の難物サボ栽培の師匠でもあるメサガーデンSB氏も、
「用土?近くの原っぱから掘ってきた土を使うだけさ、サラサラで、水はけいいんだよ」なんて言ってたし。
でも、陽あたりその他、必ずしも悪くない環境においてあるにもかかわらず、


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こんな苗や、


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こんな苗が出てきます。いったい、なぜなのか。

私は長いこと、こういうことがサボテンに起こるのは、その種そもそもの性質の弱さ、適応性の乏しさによるものだ、
と思っていました。ところがある人からの指摘で、これらのうちある症状、上にあげた写真にみられる成長点のこじれが、
微量要素のホウ素欠乏障害によるものと判ったのです。これについては以前、拙ホームページにも詳しく書いているので、
詳細は繰り返しませんが、私の栽培場でこのトラブルがとりわけ目立つのには理由があったのです。

まず、難物サボなどを中心に育てているため、土作りでは軽石や赤玉など有機質の乏しい素材のみを使い、
pHは高め(アルカリ寄り)に調整していました。さらに栽培のうえでは、灌水が極端に少なく用土は常に乾きがち。
ホウ素についていえば、高pHの用土、乾燥した用土においては吸収が少なくなり、私の栽培場では欠乏障害が
発生しやすくなっていた、という訳です。
さらにその後いろいろ試行を繰り返すうちに、微量要素ばかりでなく、いわゆる主要3要素の欠乏さえもしばしば
起こっていることに気づきました。

たとえばこのサボテン・・・


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どうみても色つやがすぐれず、成長もはかばかしくありません。植えてある用土には、いちおう堆肥なども
多少混ぜてあり、それほど肥料分が足りないとは思いませんでしたが、成長もはかばかしくない。

ところが、こうした株に一定期間、液肥(市販の窒素・リン酸・カリ+微量要素)を規定量で与えてみると、
顕著な効果が現れてきます。そう言やメサガーデンの甫場の裏にも、液肥の空きビンが転がってたわな。


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↑こっちは同じ種類の、液肥をときどきもらってる株です。ロビビア・フェロックス(Lobivia felox)。
定期的な施肥を続けているうちに、肌色は濃く艶やかに、新刺を次々とあげるようになりました。
肌色の変化からして、おそらく窒素不足だったんでしょう。園芸の基礎の基礎みたいな話ですね。

思い起こすのは、かつて輸入球を栽培していて、発根活着して栽培環境に馴染んだサボテンが、みるみる肌色の
緑を濃くしていった・・・という体験です。もしかしたら、野生下では窒素欠乏が常態だったのかも知れません。
となると、液肥のもたらす肌色や艶はむしろ不自然かも知れず、ワイルド感をだいじに育てたいと常願っている
身としては、なかなか悩ましい。しかし、必須要素(または微量要素)欠乏気味なれど成長障害には至らず、
なんてバランスを保つのはおよそ実現不能です。とりあえず、健康サイドに振っておくしかない。


IMG_9392S.jpg

IMG_7988S.jpg


↑これはいちど生育が止まってしまい、施肥後ふたたび動き出しました。その使用前使用後。
いちど段がついて、今はちょうど雪だるまみたいな格好になっていますが、とても元気で花も次々咲きます。
同じくロビビアです(Lobivia saltensis)。

こんな風に、肥料分にビビッドに反応する、逆に言えば肥料切れや微量要素欠乏害が起きやすい傾向は、
南米サボテン、ことにロビビアやギムノカリキウム、エリオシケ属などで顕著な気がします。
北米サボテンでは、フェロカクタスやエレキノケレウスなど、生育旺盛な種類は「肥料喰い」と言え、
フェロは経験的にホウ素欠乏などを起こしやすい。成育旺盛という訳ではなくても、極端に水やりを少なく
栽培しているペディオ、スクレロ、エキノマスタスなどの難物サボも、問題が起きやすい部類です。

さらに、生育の早い柱モノやオプンチア類などは、肥料の有無が成長や開花に大きく影響してきます。
オプンチアなどは、地植えや大鉢多肥栽培でないと咲きにくいものが多いですし、金鯱などは、施肥の
有無で重量増に大きな違いがあることを実験で確かめている方もおられます。


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お見苦しい写真ばかり続いたので、最後に綺麗な花を一葉。かつて激しい成長障害に見舞われ、
芯止まりから分頭してしまったエリオシケ(Eriosyce strausianus R542 Quebrada del Toro,Arg.)。
年数回、液肥を与え続ける栽培で回復し、深い琥珀色の花を毎春沢山咲かせてくれるようになりました。

とはいえ、サボテンでもヤサイでも、行き過ぎた多肥栽培が柔弱でスカスカした植物を生み出すことも事実。
そもそも沙漠にマグアンプをバラ撒いてくれるヒトなんている筈もないのだし。元肥がそこそこ入った用土で、
頻回に植えかえるなら、液肥を与える必要などもないでしょう。じゃんじゃん肥料やって、むくむく太った
ブロイラーサボを育てるなどは、流儀ではありません。
けれども、私のように肥料気の乏しい土に植え、水も滅多にやらないような栽培法をとった場合には、液肥を
上手に使うことで、植物をより健やかに本来の姿に育てることができる、という、園芸の常識を最近になって
やっと実感した次第。

ストイックな栽培にとらわれるあまり、あたりまえのことに気づくまで時間がかかり過ぎましたね・・・^^;。




テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

非公開コメント

家には「太陽」という紫色の蝦?サボテンがいるのですが、花も咲かず8年くらいウンでもスンでもない状況が続いています><春になったらマグファンプ置いて水やりしたり、液肥(花ごころ?)とかあげてみようと思います!段々になっても少し動いて成長してくれないと・・・いるだけでは・・・悲しいですwそれとも殺虫剤の入れすぎ?ナメクジに根ムシャムシャ食べられてたりして~う゛~~~

手入れの行き届かないことは、堅く締めて作っていると言い訳にしていましたが、結果は枯れたり、成長不良だったりと散々です。
素直に反省して、もう少し手をかけてやろうと思いました。

大変ためになる事だと思いました。
要するに、自分の栽培方法こそ正しい、あなたの栽培方法は邪道だ、と言ってしまうことの硬直性に気づいて、柔軟なスタンスで
トライアル&エラーをするべきだということでしょうか。

サボテンは過酷な環境に耐えることが出来ますが、その環境が最適ではないのですね。

こんばんは,
なるほどーですね.
昔,植物栽培の師匠から,何か調子の悪い時はまずはハイポネックスなどの高い肥料やってみろと言われたのを思い出しました.
今は,ハイポネックスデラックスをときどき使ってます..

秋に蒔いたエキノケレウス、ツルビニなどの実生苗には秋が深まるにつれてに日差しも弱いので一ヶ月過ぎた頃から週一回程度液肥を薄めて霧吹きで葉肥をしていました。
私には今までサボテンは肥料に弱いというどこか固定観念がありまして、するのに躊躇しましたがしてみると大丈夫そうで、結果はもう少し後にならないと分かりませんが品種によってはかなりの肥料好きなものがあると思ったりしています。
マグアンプも肥料あたりしませんし春の植え替えではもっと使ってみます。

Shabomaniac!さん、こんばんは。

京都の刺物師匠から
サボテンは「水大好き」「肥料喰い」
だから液肥をジャンジャンあげて
どんどん成長させること!
と教えてもらいました。

今でもフェロには灌水毎に液肥をやっていますが、
他の気難しそうなものは控えていました。
がどうも上手く育ってくれません。(涙)

でもこの元気なフェロクスの画像などを見ると。。。

来年は「おっ~し!」と積極的にやってみようと思います。

それにしてもShabomaniac!さんちのサイトは
栽培意欲を刺激させてくれますし、また為になりますね!

いつも参考になります。成長遅いのやら色の悪い子にも試してみたいと思います。たまに気の抜いた時に液肥播いてますが、もう少しちゃんと定期的に与えて、注意して観察してみます。

微量要素、とても参考になりました

私も生長点のこじれを何度か経験し、栽培上手な方に尋ねてみま
した。

微量要素(ホウ酸)の欠乏。大変参考になりました。
生長に必要な何かが不足していたのでしょうね。

生長初期の水切れも要注意らしいです。
うっかり水を切らすと生長を止めてしまうとのこと。
液肥は、特に刺物は生長最盛期にやると、刺の伸びが全然違って
きます。

生長点がこじれても、よい条件で作り直すと、手間は掛かります
が回復してくれるのでほっとします。

う~ん、液肥がこれほど効果があるとは。
北海道では、冬には全サボテンを室内に取り込まなければなりません。有機肥料を使うと、部屋の中はハエだらけになってしまいます。そこで、サボテンの栽培書でタブー視されている化成肥料を使うようになったのは7~8年前からの事です。根が肥料焼けする事も無く、サボテンたちは、何の問題も無くすくすくと育っています。
来年は、今まで使うのを躊躇していた液肥も使って見ます。肥効期間の短い化成肥料の欠点を補えればと考えています。

>takoyashikiさん
太陽は以外に咲きにくいところがあります。冬の断水冷え込み、春先の急激な温度上昇、が出蕾のカギになるようです。春先は密閉ハウスのような環境が良いみたい。あと、段々は野生株でもついてますよ。
・・・それから、未完成稿がまちがえて自動投稿されてしまいました。戴いたコメント、再アップ時に改めて載せさせていただきますのでなにとぞお許しを・・・m(_ _)m。

>queiitiさん
手をかけない放任栽培=硬づくり、というのは私も同様です。たまたま難物サボテンなどでは、おかげで「過干渉」にはならないので功を奏していますが・・・。ロビビアなどは、可愛がれば可愛がるほど調子が良くなる部類ですね。じつはオプンチア系もそうだなぁ、と思います。

>roka79さん
過分なお誉めいただき恐縮です^^;。サボテンづくりにかぎらず、なんでも疑ってみる性質なもので、いつも現状に納得いかないのです。逆に言うと、いまの栽培法がベスト、と思えたことがないので、あれこれ試さずにいられません。短期的に見ると退行してる場合もあるでしょうが、ロングレンジでみれば多少は向上してるかなぁ、と思いたいところです。

>cooパパさん
サボテンは、ほかの植物が耐えられないくらい過酷なところでなんとか生きられるので、その分競争をせずに
成育場所を確保出来たりするのでしょう。でも、そこ自体がベストな環境とは限らないと。小型マミやツルビニの巨大群生株なんて、栽培下ならではの芸術品ですもんね。

>さぼちゃんだいすき さん
最近は、ハイポネックスでも花工場(こっちが多少安いので、主にこっち使ってます)でも、必須3要素プラス
微量要素も加えられているものが多く、重宝します。ホウ素欠乏にはホウ酸水で対応しますが、さじ加減間違うとこんどは過剰害が出るので、なかなか難しい。普段から液肥やっておくほうが安心です。

>saeさん
むかしの本などには、サボテンは肥料を嫌う、などと書いてあるものもありましたね。たしかに腐葉土やピートモスなどを多用すると、スクレロなどは根が傷みます(赤くなりやすい)。今でもあまり沢山の有機質を栽培土に混ぜることには抵抗があります。また、土に混ぜるのは、遅効性のマグアンプ等の方が、いわゆる化成肥料よりは安心な気がしますが。

>いわたさん
刺ものは肥料好きみたいですね。金鯱を堆肥に植えるという話も聞いたことがあります。フェロなんかは、丈夫
そうに見えていったん生長止めると、こじれてうまくいかなくなることもありますし。刺フェロがカッコよく育てられればサボ道も免許皆伝、と思うのですが、まだまだ道遠しです。

>guritogureさん
液肥、とくに実生小苗には効果がてきめんに思えます。もともと肥料気の少ない土に蒔いているせいもあるかも
知れません。ギムノ天平など、むかしは発芽後半年くらいで動きが止まることが多かったですが、液肥を与えて
いると、順調に大きくなってくれるように思えます。

>Doremifaさん
大事にしているサボテンにかぎって、成長点がこじれることが多くて、なんでだ!と悔やんだものです。今思えば慎重に慎重に、水やりも控えめに・・・と管理するために、欠乏障害が出やすかったんでしょうね。生長初期の水切れで動かなくなる、というご指摘も、なるほど・・・と思い当たるケースがありますね。

>antigonosさん
液肥に効果がある、というより、それまでの管理に問題があった、というのがより正確かも知れませんが、特定のケースで効果が著しく現れることは確かです。化成肥料は良くない、有機がいちばん、という意見はよく聞きますが、液肥をちょい薄目くらいに使っている限り、害が出ることはまずないというのが体験的な結論ですね。



もしや・・・!

Shabomaniac!さん、こんばんは。

以前掲示板の方で質問させて頂いたアウレイフロラがまさに2枚目の写真のようになってしまいました。
原因が判らず困っていましたが、何らかの欠乏障害だったんですね。

私もサボテンに肥料は最小限を鵜呑みにしていました。
考えてみたらあの狭い鉢の中ですからね。
エアポンプなしで金魚を飼っているようなものかもしれません。(今年金魚すくいの金魚でやらかしました・・・)

肥料少な目の用土まではいいかもしれませんが、その後の補充が大切なんですね。

>skysensorさん
レブチアもロビなどに近いので、ホウ素欠乏など起きやすいのかも知れません。土は弱酸性だとうまく育つ仲間です。ピートモスのpH無調整(かなり酸性)に実生してもちゃんと育つくらいです。成長点こじれは、治るのに時間かかりますが、辛抱すれば綺麗な株に再生できますよ。

回復できるのですね!

Shabomaniac!さん、アドバイスありがとうございます。もうこのまま直らないのかと思っていました。

光琳玉とか蒼冠玉とかのギムノは日焼けとは違うかさぶたのような物が肌にできてしまいますが、これも何かの欠乏症かもしれません。
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