アガヴェの転生。


朝に紅顔あつて世路に誇れども、



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暮に白骨となつて郊原に朽ちぬ・・・。



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すっかり秋です。早暁の露を踏めば、肌寒さに思わず我が身を抱きたくなるような日々です。
去りし日、天を突いて黄金の花穂を高々とかざしていた
アガベ・エボリスピナ(Agave utahensis ssp. eborispina)。
これはつい数日前の、その姿。花が咲いてしばらくの間はロゼットの中心部に青みを残していましたが、
灼けつく夏の日々を過ぎてみれば、まさに白骨。わずかの水気もない変わり果てた姿になりました。



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数え切れないほど沢山の花をつけていた立派な花穂には、懸命の指先授粉の甲斐あってか膨らんだ果実が多くありました。
しかしそれらも、いつしかポロポロと脱落してゆき、かろうじて残ったのは僅かこれだけ。
かつて自生地で見たユタエンシスの花筒には、熟した実(といっても、こんな乾いたやつですが)が
ビッシリくっついていました。やっぱり別クローンの花粉がつかないと、正常な果実は出来ないようです。
となると、なんとか形だけは稔ったこの果実にも、いったいどれだけの種が入っているのか。
しかもちゃんと熟した発芽可能な種がどれだけ入っているのか。



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慎重に果皮を剥がしてみると・・・。
中から出てくるのは、瓜の種みたいな、白くてペラペラした種子ばっかり。これは間違いなくシイナ(不稔種子)です。
なかに正常に発達した胚がないため、発芽しません。サボテンでも自家授粉ではこういう種が出来ることがよくあります。
でも、よく見ると、なかに黒い種がごく僅か、まじっているじゃありませんか。



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紙みたいにぺラペラのシイナの山から、ひと粒ひと粒、黒くて正常そうな種子を選り分けていきました。
結局、ぜんぶで20粒。シイナとの比率は1:25くらいでしょうか。おそろしく歩留まりの悪い結実状況です。
やっぱりこのアガベは限りなく自家不稔性と考えるべきなのでしょう。見かけはまともなこれらの種子も、
果たして本当に発芽能力があるのかどうか・・・。

このエボリスピナ、前にも書いたように、とっても素敵なタイプの株だったのです。
刺の長さこそ、超長刺という訳ではなかったですが、象牙色の縁刺が葉の全周をとりまいて、エボリらしいエボリでした。
のちに自ら原産地を訪ねたときにも、これほどの株は見られませんでした。なんとか、遺伝子を残せなかったものか・・・。
花など見たがらずに、花筒が伸びきらないうちにバッサリ刈っておけば、たぶん脇芽が得られただろうに・・・と、
後悔の念にかられつつ、刈れ株の根方に目をやると・・・



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!!

思わず声が出るほど驚きました。ウソみたいなホントの話。
完全に朽ち果てた親株の根方から、極く小さな緑色のシュートが顔を覗かせていました。花が咲いている当時は
まったく見あたらなかったものです。遺伝的には当然、本体と同じものなので、エボリスピナは死んだ訳ではなく、
種子を散らしつつ、リサイズしただけ、ということになります。もっとも、私の想念に棲んでいた「死んだエボリ」を
再現するには、軽く20年はかかろうかと思いますが、それはそれ。遠い未来を想像するのは楽しくないこともない。

そして、シイナに埋もれていた黒い種も、試験的に1粒だけ湿った瓶のなかに転がして置いたところ、発芽しました。
枯れてしまう、ついえてしまう、絶えてしまう・・・と、愛培してきた植物との別れを嘆きつづけた数ヶ月でしたが、
生きものの摂理は我が妄執とは関係なく、淡々と輪廻の歯車を回していたのでした。





テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

非公開コメント

・・・なんだか、涙が出そうなお話です。
 Shabomaniac!さんの注がれた愛情に、エボリスピナが精一杯報いたのでしょうね。

植物は、残酷なほど黙っているかと思えば、雄弁に語るときもある・・・
 長年付き合っていると時々そんな体験をします。‘声が聞こえる’という人もいますよね。

エボリスピナのその後、むっちゃ気になってました。
無事に種が出来て、なんだか私も嬉しくなってしまいます。
そして、脇芽も。
しかもよく見ると、奥にもう一個ありますね。

こんばんは!はじめましてm(_ _ )m
前々から拝見しておりましたが、今回初めてコメントさせていただきます

このアガベのお話に思わず感動してしまいました;
なんだかある意味現実離れした物語のような。。本当に奇跡ですね
リサイズされたエボリ、種からのエボリがまた立派な姿になるのを
楽しみに待っています(゚∀゚*)

スクロールしていて脇芽の画像が出てきたとき、私も思わず声が出てしまいました。
ほんとによかったですね~。Shabomanac! さんとブログ読者の皆さんの祈りが通じたということでしょうか^^
また二十年、ゆっくり付き合ってあげてください。

素晴らしい

アガべは,開花するとすべてが死ぬわけではなく,地下のサッカーが生き残ることがあるって聞いていましたが,本当なんですね.タケも一山すべてクローンで一斉開花のあとすべて枯れるらしいですが,周縁部の地下茎が生きていることがあるそうです.不思議な命の営みですね.

こんばんは!
こういう植物に・・・来世・・・生まれ変わってみた~いのです!イェイ

まさに転生です。
Shabomanac!さんの注がれる深い思いが、このアガベに届いたのでしょうね。
脇芽も種もきっと立派に育ってくれることでしょう。
それにしても枯れた親の姿にも何とも言えない風格がありますね。
人間ではなかなかこうはいきません。

植物は栽培者の心を読み取る能力があるといいますが、エボリスピナはきっと答えてくれたんだと思います。
種蒔きでも栽培でもその心が細やかな観察に繋がって、いい結果も自然に出てくるものだと思っています。

少しでも種が得られてよかったと思ったら、脇芽が出てたんですね~感動しました。20年後また素晴らしいエボリスピナの再現を期待してます!!

子株も発芽可能な種も出来てよかったです。記事を読んで、つくづく植物の生き残り戦略というのはすごいな、と感じます。これで、子株と発芽した苗たちの間でまた受粉すれば子孫繁栄が出来ますね。南米のプヤやハワイのギンケンソウなんかも同じような繁殖をするのかしら。

さみしい思いもされましたけど脇芽も出て種もできて…楽しみが2つ出来て良かったですね~(^-^)

植物の生き死になんて、ひとりよがりな感傷かもな~、と多少不安でしたが、
たくさんコメントを戴いて、ありがとうございます。

>noriaさん
自分のミスで枯らしてしまったときの後悔とは違って、自然の摂理のままに逝く植物を見送るときには別の感慨がありますね。なんというか、個体の死はそもそも、大きな生の循環に包含されているということをこの目で見る思いがしました。

>さくさん
たぶん、枯れて、種も出来ずに終わりだろう・・・と思っていました。なので、僅かでも発芽する種が稔り、そのうえ子吹きまでしてくれたのには驚きました。この脇目をちゃんと枯らさずに発根させてやらないといけませんね。責任重大。

>abettiさん
以前からご覧戴いているとのこと、励みになります。親株から吹いた子は、まったく同じ親株そのものの「リサイズ」ですが、種からのものは姿にもばらつきが出るでしょう。同時にふたつの方法で次世代を残すことが出来る植物は凄いですね。

>きくぞうさん
センチュリープラントと呼ばれる仲間ですが、エボリは小型種なので20年くらいで咲くそうです。なので、おそらくまたいつか、同じこの光景を見ることになるのでしょう。その場面を想像すると、なんとも不思議な、気分になります。

>さぼちゃんだいすきさん
芽吹きはおそらく、開花を終えたあとに始まったと思います。もしかすると、他の株の花粉を得られず、果実(種)が不作だったので、急遽子吹きによる子孫繁栄戦略に切り替えたのかも知れない・・・などと、勝手に想像しています^^。

>takoyashikiさん
エボリに生まれ変わると大変ですよ~。自生地はそそり立つ崖地で、夏は灼熱、冬は氷点下の過酷な環境です。
でも、青空は無限に澄み、夜は完全な闇に星だけが浮かび・・・と素晴らしい環境でもあります。近くで一晩だけ夜明かしをしたことを思い出しますね。

>アイハルさん
そうなんです。枯れた株には年輪というか、過ぎてきた歳月が風格として固着しているようで、正直なんだか
捨てがたい感じもします。ですが、こんなものを段ボールに入れて押入にしまったらカミサンのカミナリが落ちることは必定です><。

>saeさん
アガベが苦笑しながら、こちらの未練を汲み取ってくれたみたいですね^^;。この株は種から育てたものでなく、購入したものですが、おそらく輸入株なので、むざむざ枯らしたら自然界に申し訳ない、みたいな感覚もありました。今度は種から始めますることになります。

>yoyonさん
エボリは20cmを超える大株にならないと、トゲやロゼットの重なり具合など、本来の姿にはなってくれません。
なので時間はかかりますが、育て甲斐のあるアガベです。幼苗時、平凡だと思っていても、大きくなるにつれ、
風格を増してくれる植物ですね。

>roka79さん
確かにサボテンや多肉には、無性&有性繁殖を、場面場面で使い分ける種類が色々ありますね。ブロメリアも
開花で親株が枯れ、脇芽が出たり花仔がついたりするものは多いですし。将来、子株と実生苗が開花したら、前代未聞?エボリの園芸改良でもやってみますか^^。

>zilzianaさん
大事にしてきた植物が、跡形もなく消えてしまう、それに本来ならば子孫だって残せたはずなのに・・・そう思うと寂しく、かつ申し訳ない気持がしていたので、ホッとしています。いまは仰るとおり楽しみが二つ、物語が
いっぺんにハッピーエンドになりました(というか正確には「つづく」なんですが^^)。


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