円錐丸

「円錐丸」というサボテンをご存じでしょうか。
柱モノでもウチワでもない、古くから知られているレッキとした北米産の球形サボテンです。
分類のうえではネオロイデア属に含まれ、学名はNeolloydia conoidea といいます。
種名同様、この属名もあまり馴染みがないものかも知れませんね。
でも、その姿には実に品格があり、花もなかなか美しい逸品なのです。


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原産地はアメリカ南西部(テキサス州)からメキシコの中部まで広範囲に及び、「テキサス・コーンカクタス」という
愛称もあります。たしかにトウモコロコシっぽくもみえる。短円筒形のコンパクトな球体にらせん状に配置された疣を持ち、
黒白の直刺が突出します。肌色は深みのある緑色で、疣腋をゆたかな白毛が埋めています。頂部を覆った綿毛の中から、
濃ピンク色の比較的大きな花を咲かせます。

外形的にはコリファンタ属の各種などと似ていますが、これらからネオロイデア属を分離する決定的な特徴というのが
あるような、ないような・・・疣上面にあるミゾなどがあげられていますが、コリファンタにもあるし、決定的ではない。
このあたりのつかみ所のなさが、「判りやすさ」を求める園芸家には敬遠されてしまうのかも知れません。


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               Neolloydia conoidea SB379 Terrell Co, TX, USA


そもそもネオロイデア属はマミラリア属(Mammillaria)から派生したものですが、その定義の曖昧さゆえか、
範囲が拡張され、アメリカの研究者Bensonなどは、英冠、桜丸などのエキノマスタス(Echinomastus)も
この属に包摂しました。また、最近ではAndersonが、この属とツルビニカルプス属(Turbinicarpus )を
統合させる案を示しましたが、多くに受け入れられるには至っていません。
現状、ワシントン条約などが準拠し標準的な分類とされている New cactus lexicon では、このネオロイデア属を
独立した属として扱い、この円錐丸ともう一種、魔笛(N.matehualensis)だけからなる小さなグループとしています。


ちょっとややこしくなったか・・・。
じゃ、気持ちの良い沙漠の眺めでも。


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               Neolloydia conoidea in Big Bend National Park TX, USA


写真は、アメリカ・テキサス州ビッグベンド国立公園の自生地の風景。
といっても、円錐丸を目当てに訪ねたのではなくて、同じ場所に生えている亀甲牡丹(Ariocarpus fissuratus )を
見に行ったのでした。石灰岩の白い岩山に巨大なユッカが林立する、いかにもな場所です。
円錐丸は石灰岩の割れ目のような場所に根を下ろし、単頭~小群生まで、数多く見られました。
ちょうど花が咲いている株があったので、数葉、写真に収めた次第。
同じ場所には亀甲牡丹のほか、エスコバリア・ツベルクローサ(松毬丸=Escobaria tuberculosa)、
羅紗錦ライティー(Ancistrocactus uncinatus ssp.wrightii=Sclarocactus )などがあり、
サボテン以外では刺が痛くて嫌われ者、こいつがはびこっていると実に歩きにくい
アガヴェ・レチュギラ(Agave lechuguilla )が地面を覆い尽くしていました。
円錐丸は、オーソドックスはチワワ沙漠の風景を構成する脇役サボテンといったところです。


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                  Neolloydia matehualensis

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                  Neolloydia 'grandiflora'


先述のとおり New cactus lexicon はこの属のもう一種として魔笛(N.matehualensis=写真上)をあげます。
メキシコ、サンルイスポトシ州のマテワラ周辺にのみ局限分布する植物ですが、多くの識者が別種とするに足るだけの
違いがない、と主張しており、そのうち亜種レベルに格下げ、もしくはシノニム扱いになるかも知れません。
実物は、上の写真では判りにくいのですが、オルテゴカクタスのマクドゥガリィ(Ortegocactus macdougallii)に似た、
ミントグリーンの肌色が特異で、園芸的には興味深い特色を持っています。数年前まではかなり入手の難しいサボテンで、
それゆえか、基本種の円錐丸よりもこちらの方が有名かも知れません。
また、今では円錐丸に統合されましたが、大輪丸(N.conoidea 'grandiflora'=写真下)と呼ばれるタイプもあり、
こちらは球体に沿うような白刺が美しいタイプで、かつてたくさん輸入されました。
写真は、かつて我が家にあった古い輸入株(正確には、そこからの株分け苗)。
より女性的というか、たおやかな魅力のあるサボテンでした。


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とまあ、兄弟種含めてもさほど知名度は高くないネオロイデア属のサボテンたちですが、
コリファンタとも、ツルビニとも、はたまたテロやエスコバリアとも、似ているようでちょいと違う珍品であることは間違いない。
その地味渋な味わいをぜひお手にとって確かめて戴ければ幸い。



テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

非公開コメント

>Neolloydia conoidea in Big Bend National Park TX, USA

で写ってる右手前のほっそいコも何気に開花してて可愛いですね~(^^)

自然のサボは素敵ですね。

円錐丸、名前は聞いたことがありますが見るのは初めてかも。
魔笛ともども、分類学的にはビミョーな位置にあるのですね。
ツルビニ(最近はギムノカクタスがこれに入って大家族ですね)はともかく、
コリ、エスコ、テロ、と言われれば、それはそれで納得しそうな風貌です。

ところで l-marshさんも気にしておられますが、謎の多肉、私も興味津々です。
変なところに注目してスミマセン...(^^)ゝ 

砂漠の風景~3枚目、円錐丸の右下!薄いピンク?の花、コン棒状の植物ww
私も~!かなり釘付け気になってます!

サボテン自生地ああ~行きたいですw

とても綺麗な花のサボテンですね。本体に雪が積もっているように見えて
さらに綺麗です。
6枚目の画像の右下にチレコドンのような白くて小さな花がついてる
植物が可愛くて気になります。多肉でしょうか。^^

The Lone Star State

Shabomaniac!さん、こんばんは。
あのどこまでも広い広い"Texas" しかし山らしい山の
あるのは、西部の一部ですよね。ここにかなりの種類のCactusが
あるのですね。Neolloydia conoidea 知りませんでした!
自生地の風景にマッチしているように見えますが。
Big Bend では、かなりの数があるのでしょうか?
砂漠の中で見るCactusの花、 ほっとしますよね!
  ところで今年の2月はじめ、あのあたりが大変な寒波で
摂氏-20℃という日が数日ありました。Cactusは大丈夫だと思い
ますが、めずらしいことですね。

綺麗なサボですね。なかなか機会もなさそうですが、手に入れて育ててみたくなりました。自生地は尋ねてみたいです。どれも良いですね。

円錐丸は知りませんでした。
サボテンはこちらで少しずつ覚えていってる状態です。
でもこんな少し縦に伸びるサボテンが実は好きです(笑)
よく見ると自生地のサボテンは荒々しい刺ですが、
その巻き姿がどれもとても綺麗ですね~!見ほれてしまいます。
魔笛の地肌の色もいいですが、このconoideaの全体の雰囲気が好きです。

ネオロイデア属というのがあるのですね、当然のこと知りませんでした(笑)。
メサにも種は一種しかないようですね。
花も刺姿もどちらも魅力的です。
これで球形サボだったら人気も出たのかも?
どうもこの世界では上に伸びるものに人気が集まらないような気がします。
もっとも、人気のあるなしなんて関係ないですけどね。

魔笛はさすがに別種やろー、と思って画像を見比べてみると、確かに肌以外はそっくりですね。分類上格下げになって、そのうちカタログ上でも…なんてことになると園芸家としては残念です。具体的な例としては青磁牡丹の現地由来の種子って見たことないような気がします…私が見落としてるだけという可能性も非常に高いですが^^;

Big Bend Nat'l Parkの風景がたまりません。
メキシコ国境に隣接しているんですね(帰りのボーダー・パトロールの検問が大変そうです^^;)。
自生の円錐丸はやっぱり栽培品より野性的な雰囲気に見えます。

queiitiさんのブログで見かけてから気になっていましたが、縁があって3株手に入りました。
綺麗な花も見る事が出来ました、肌の色や刺の姿も素晴らしくもっと人気が出てもいいのではと思っています。

>l-marshさん
風景写真のユッカじゃない、葉っぱの細い植物のことでしょうか。たぶん、ダシリリオン・ウィーレリ(Dasylirion wheeleri)の若い苗じゃないかと思います。大きくなるとこれも迫力あります。最近、ユッカやダシシリオンの輸入の大きい株が時々売られていますよね。欲しいけど大きすぎます。やっぱり自然の中、野に置くべき植物かも知れませんね^^。

>noriaさん
円錐丸、たしかに殆ど使われてないかも知れませんね。私も伊藤さんの本で昔読んだ記憶があるようなないような。和名学名対照には載ってたと思いますが・・・。
謎の多肉・・・もしかして1枚目じゃなくて3枚目の??ことですね。いま気づきました。
たぶんこれ、Euphorbia antisyphilitica ってのですね。アメリカ産ユーフォで、いつか見てやろうと思ってたんだけど、見てたのか^^;。灯台もと暗しです。

>takoyashikiさん
うーむ、これも同じご指摘。たしかに、もっと注目しても良い、魅力的な植物ですね。青サンゴとか、あの系統の感じですね。栽培されているのは見たことがないけど、こうしてみるとポットプラントとしても悪くなさそうですね。小さい星形の花がかわいいし。アメリカ沙漠は、比較的行きやすいので、是非。行かれるときはアドバイスしますよ。

>zilzianaさん
うむむ、これもまた同じところ注目されてますね。答えられてよかった^^;。ユーフォならば、多肉と言っても良いのでしょうね。北米の沙漠は、ダドレアなどを除けばサボテン以外の多肉は少ないので、かえって注意が行き届かずに見落としたんだと思います。ちゃんとコイツだけの写真撮っておきたかったなぁ><。

>Yuccaさん
テキサスは、アリゾナやユタの、いかにUSAって感じの風景とは違って、風景も植生もやっぱりメキシコの匂いがします。サボテンのバラエティもぐんと増えて、ひとつの山で片手で余るくらいの玉サボテンを見ることがふつう。なので、植物を見に行く旅としては、費用対効果がよいです。そうそう、今年の寒波では、ニューメキシコやテキサスのサボテンにもかなりダメージがあったそうです。

>guritogureさん
種もふつうに手にはいるし、育てるのもそんなには難しくないし(まったく簡単という訳でもないところがまた良いんですが)、いつか育ててみて下さい。実生株は大切に育てるとふわふわの綿毛がとっても良い感じになります。テキサスの自生地は、亀甲牡丹や月の帽子、テロの大統領とか、お馴染みのサボテンが沢山生えているので、旅をするには最高ですよ。アメリカでは例外的に飯もうまいし(メキシコ風の味付けで)。

>saeさん
サボテン科だけで、千を超える原種がありますからね。私とてとても覚えきれるもんではないです。でも、たくさんある中から、お気に入りの植物を発見して育てるのは実に楽しいので、実生をしてもしてもしてもしても、きりがないのです^^;。円錐丸、大輪丸、魔笛、同種だとしても、ぜんぜん違うように見えます。少なくとも園芸的には、違う部分に訴えてくる魅力があるので、それぞれ育てたくなってしまうのですね。

>アイハルさん
メサでも、ときどき、大輪丸、魔笛のほうも出る年があります。ここも園主が高齢になってきたので、欲しい種ははやめに入手しておかないと、と思います。上に伸びると不人気、というのは、かつて日本サボ界がフレーム栽培中心だったときからの伝統のようで、「△△柱」なんて名前がつくととたんに敬遠されたみたいです。私は結構好きなんですけどね。

>きくぞうさん
魔笛も大輪丸も、纏っている空気感が違います。円錐丸はいちばんソリッドで、とりつくしまがない感じ。そこがいいんですが。でも、カタログ上では一緒にならないと思いますよ。商売にする人はその逆で、チェコのカタログなんかみると新種の嵐です。わずかの違いでも新種記載してしまう。青磁牡丹、うちで蒔いたretusaの輸入種子から出ています。こんど産地ナンバーを確かめてみますね。

>roka79さん
BigBendは、たしかに風景がメキシコです。地形的にも大きくメキシコに張り出してますし。ただ、国立公園でキャンパーなどがとても多いところなので、公園内ではボーダーポリスにはそんなに会わないです。むかし川縁に車を停めて寝てたら、キャンプ場に行け、と怒られたことはありますが。たぶん、山が険しくて、メキシコ側に通じる道が少ないからでしょう。安心して旅出来る場所という印象です。

>cooパパさん

コメントが入れ違いになってしまい恐縮です^^;。
円錐丸、魅力をわかちあえる方がおられて嬉しい限りです。
じっくり向き合っていると、その良さがわかってくる、みたいなサボテンですよね。
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沙漠植物、栽培、探究。

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