キリンウチワ接ぎ入門

サボテン栽培は、実生からじっくり正木で育てるのが真骨頂。至言だし、私も深く共感するところです。
その植物が元来持っているさまざまな性質・・・寒暖乾湿への適応能力や、成長サイクルなど、
野生での姿をイメージするためには、発芽して開花するまでを正木で育て上げることが何よりです。
また、鑑賞上本来の特徴を存分に引き出すためにも実根栽培がベストとは言えるでしょう。
そもそも「難物サボ」なんていうカテゴリーも、正木栽培ならではの話ですから。


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一方で、もっと早く大きくしたい。綺麗な花を見たいし、どんなゴツいトゲが出るのか確かめたい・・・
種を蒔いてから5年10年なんて待てないよ、なんて思うことも多々あります。
また、数少ない稀少な種が発芽した時などは、なんとか保存したい、親木にして次の世代で増やしたいと切望します。
そんな時にはやっぱり接ぎ木でしょう。私もかつて伊藤芳夫さんの本で接ぎ木の効用を繰り返し言い聞かせられた
世代でもありますし、接ぎ木の素晴らしさを否定するつもりはまったくありません。
にもかかわらず、私の栽培場がほとんど正木株ばかりなのは何故か?ズバリ接ぎ木が下手だから。
生来の不器用さゆえ、手先が震えて台木や接ぎ穂を水平に切れないし、ようやく台木に穂木を乗っけても
糸かけはこんがらかるかほどけるかで、すぐさまポロリと落ちてトホホ。・・・そんな繰り返しでした。
唯一実行可能だったのが所謂実生接ぎ。発芽まもないマッチの頭くらいの苗を台木の上に乗せるだけ、というやつです。
今回はその実生接ぎのなかで、台木にキリンウチワ(Pereskiopsis velutina )を使った方法を紹介します。


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                Pereskiopsis velutina for grafting stock        


実は長い栽培経験のなかで、このキリンウチワ接ぎを試したことはありませんでした。
台木としては入手しやすい三角柱を使っていたのです。
ところが昨年、サボテン愛好家でもある熱川バナナワニ園の清水さんから、ノウハウのご教授に加えて
キリンウチワそのものも戴いて、はじめてトライすることになりました。さらにやはりキリンウチワ接ぎの達人で、
拙ブログにしばしばコメントしてくださるnoriaさんからも色々アドバイスを戴き、なるほど、これなら私のような
超のつく不器用モノにもなんとか出来るかも・・・と思ったという次第です。
さて、その首尾やいかに・・・。


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テクニックの基本は、台木の新成長部のまだ柔らかいあたりを切断し、そこに球体下部を水平に切断した接ぎ穂の
実生苗(発芽直後~1年程度)を載せるというもの。上の写真はちょうど台木キリンウチワの上部をカットしたところ。
最大の難点は刺の扱いで、鋭く強い刺だけでなくその生え際には芒刺(glochid)と呼ばれる細かいチクチクの刺も
潜んでいます。実は私、サボテンの刺にはいつしか耐性(というか、たぶん慣れただけ)が出来ているらしく、
芒刺が密生するオプンチアも平気で素手でつかんでしまいます。なので、このトゲ問題はあまり気にならない。
休日明けにふと我が手に目を落とすと、指先一面に黒いポツポツ。皮下にトゲが沢山刺さったままになってます。
うん、それ平気、という特異なヒトはあまりいないと思うので、ここでは作業前に刺を落としてみました(芒刺は多少残る)。
葉っぱはなるだけ残した方が後の成育が良いそうなので、上の方だけです。


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で、あとはこのように、切断面に可愛らしい穂木を載せるだけ。
ちなみにこれはコピの黒王丸(Copiapoa cinerea)で、これで実生から1年くらい経っています。
ポイントは、台木穂木とも切断面を水平に切り落とし、隙間なく密着するように載せること。
不器用な私には、双方の断面が小さいこのキリンウチワ接ぎはやりやすい印象ですが、心がけているのはなるべく
切れ味の良い刃物を使うこと。因みに今回はOLFAカッターの「極薄中型刃0.25mm」というのを使ってみました。
でもまあ、この写真からしてあまり上手でないことは一目瞭然で、この黒王丸がうまく活着したかどうかも
いまのところ不明・・・^^;。

接いだ後は、私は半分に切った茶封筒(定型の長細いやつ)をキャップのように被せて遮光布代わりとし、
半棚下のような穏当な場所でしばらく養生します。その間も台木に水はたっぷり与えます。
接ぎ木に成功すれば、1週間くらいで膨らんできて、2週間もすれば動き出すので通常の管理に移行。

テクニックはこのように実にシンプル。糸かけ作業の必要がないことがどんなにラクか^^。
で、うまく活着した場合は、こんな具合になります。


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               Coryphantha kracikii KMR394 Ejido El Portento,Durango 'gold apine'

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                 Pygmaeocereus bieblii

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               Echinocactus horizonthalonius VZD392 LaMejorada Zacatecaz                   


上の写真は、去年秋に初めてキリンウチワ接ぎを試みたおり、相性調べにあれこれ載せてみたものの現在の様子です。

1枚目はコリファンタ・クラシキー(C.kracikii KMR394 El Portento,Durango 'gold apine')。
最近記載のコリファンタですが、売り物の刺がそれらしく伸びてきて、ウシシ。
2枚目は、これもまだ珍しいピグマエオケレウス・ビーブリー(Pygmaeocereus bieblii)。
南米産の新種で、めちゃめちゃ魅力的な小型サボテンです。ググると、ペディオ飛鳥みたいな超カッコいい野生株の写真が
出てきますが、私が蒔いた種がまがいモノ(同属の品種違いとか)じゃなかったことが確認できて、こちらもウシシ。
最後は珍しいサカテカス州産の太平丸(E.horizonthalonius VZD392 La Mejorada Zacatecaz)。
肌色が深く北部メキシコやアメリカ産とは異なる魅力的な姿が表れてきてますね。

これらの株は、接いで半年余り経っているのにさほど大きくなってないと思うかも知れませんが、
そもそも秋に接いだので冬の間はあまり成長していません。春夏に接げば同じ期間でも格段に大きくなる筈です。
ちなみに、キリンウチワは寒さに弱いと言われますが、私のところの無加温栽培室(氷点下5度程度まで下がる)でも、
葉っぱがかなり落ちるもののへっちゃらです。同じところで三角柱が溶けたりしていますから寒さには強い部類。
ただ、葉が落ちるとその後の成育が鈍ると言われますから、氷点下にはならない方が理想的ではあります。

もうひとつ、この台木の優れたところは、成長が草花なみに早く、台木の確保に困らないということ。
高温多湿な環境が大好きで、春~秋まではどんどん成長しますし、カット苗も植え付けてジャブジャブ水やりを
していれば1週間で発根します。あまり成長旺盛なため、接いだ台木からも脇芽がどんどん出てきますが、
これはマメにカットしてやります。植えておけばすぐに使える台木になりますし。


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とまあ、まだ人さまにキリンウチワ接ぎを指南できるノウハウなく結果もでておりませんが、稀代の接ぎ木下手の私でも、
1年足らずでこの程度の成果が出た、ということが嬉しく、ご報告してみた次第。
このあと、接いだままでさらに大きくできるのか?下ろしはどうすればうまくいくのか?などなど興味は尽きないですが、
それはまた後日に譲ることとします。


ひとまずはキリンウチワ接ぎ万歳~ということで^^。





テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

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初心者は真似て覚える。(キリンウチワ接ぎの巻)

今回は「初心者は真似て覚える」の(キリンウチワ接ぎの巻)です。・・「初心者は真似て覚える」はシリーズにしようとかと思っています(笑) 実はリンクして頂いているShabomaniac!さんがブログShabomaniac!の...

コメント

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成長が早いのは良いのですが…

キリン団扇継ぎ、場所をとらなくて良さそうですね。接木で早く成長させて…と思うのは良いのですが、最近は鉢の置き場所が悩みの種…。ってことで家ではもっぱらプシス継ぎをしています。6センチポットに1本づつ植えればあまり場所をとらないし、なんといってもプシス継ぎって簡単なんです。前処理に2週間ほどかかりますが、それさえちゃんとやっていれば、まず失敗はありません。糸掛けは私も苦手ですが、最近は荷造り用の紐を使っています。紐を広げてテープ状にして上からかぶせてバランスをとってからテープで鉢に固定するだけです。棘のある穂木の場合棘がテープを突き破りますが、かまわずにそのまま固定します。透明なので穂木の状態もちゃんと確認できますし、一度やったら糸掛けなんてめんどくさくてやってられなくなります。一度お試しを。

なんだかすごい!すごいです!木にサボテンが成ってる~ww10年位前園芸店でキリンウチワ接ぎの丸サボテンが成っている木を見て感動したことを思い出しました!その頃は園芸店で桜キリンというピンクの花の咲く木の葉サボテンというのを見かけたのですが、最近キリンウチワ、サクラキリンとも見かけ無い様に思います・・・。木キリンとはまた違うんでしょうか?サボテン串刺ししてあると思っていましたが・・・そんな訳ないですよね~wwとても楽しく勉強になりました!

実は私もこの記事を見る直前に、ガンマンさんから頂いたゲオメトリクスをキリン団扇に接いだところでした。
生まれて始めての接木、適当にやりました。
果たして、活着するかどうか、1週間後が待たれます。

実をいうとキリンウチワへの実生接ぎ、私も始めてまだ3年目です。驚いたのは台木の繁殖力の旺盛さと、接ぎ穂の驚異的な成長スピードでした。その気で増やせば一年で台木を数百倍にできます。Shabomaniac!さんも書かれていますが、寒さにもかなり強いように感じます。3年間あれこれ試し接ぎしました結果、ほとんどのサボテン(南北、柱、玉、ウチワなどなど)と相性がよい点など、厄介な刺と旺盛な脇芽以外は今のところ欠点がない台木のように見えます。
ただし栄養繁殖されている関係上、バイラスが入っている可能性は否定できません。私のところで顕著な症状は出ていませんが、どなたか花を咲かせて種子採種されたという方が見えましたら、お知らせいただければ…。
蛇足ですが、この台木用の「キリンウチワ」の学名、Pereskiopsis velutina かどうかは疑問に思っています。どうもブリットン&ローズ博士の記載文といわゆる「キリンウチワ」の特徴に必ずしも一致しないようですし…このブログにはウチワ、コノハの専門家もいらっしゃるので、できればご意見を伺いたいところです。

どんなことでも一応やってみたくなる性格ですので、これもとても興味があります。
幸いある方に頂いた台木用のキリンウチワの挿し穂も着いて増えてきていますので、
この次は何を接いだらいいかと考えています。
楽しみです。上手くいくといいなぁ~(笑)

>TK-Oneさん
場所をとらない・・・たしかにこれもキリンウチワのメリットですね。プシス接ぎはあまり経験ありませんが、フェロ接ぎ(主に鯱頭台木)、エビ接ぎ(麗晃丸台木)はスクレロなどでやることがあります。これは見かけ上は正木みたいに作れるので。糸かけはやっぱり出来ませんが、安定良い台木なのでバンドエイドやガムテで直に鉢に抑えてつけてます^^;。

>takoyashikiさん
そうそう、昔の本には木の葉サボテンの杢キリン接ぎ、というのが紹介されていました。台木をエンピツみたいに尖らせて、穂木にぶすっとつきさし、それを横合いから杢キリンの長い刺で貫いて固定するという。大きな杢キリンの木に何種類もの玉サボを接ぎ木して、リンゴの木みたいな写真が載ってましたね。

>queiitiさん
ウチワ系は、もともと近縁なので相性が良いみたいですよ。私はフロッコサスを接ぎましたが、半年強でシャウエッセンくらいのサイズになってます。ゲオは成長遅いので、接ぎ木するのはありですよね。うまくすれば来年の初夏には花がみられるんじゃないでしょうか。

>noriaさん
キリンウチワ接ぎの初心者がいっぱしのことを書いてお恥ずかしい限り・・・^^;。でも、書きたくなるくらい、簡単で楽しい接ぎだなぁと。バイラスは私も案じたのですが、接いだどの株からも怪しいバイラス肌(斑模様など)は表れていません。三角接ぎでは、実生育成台木でも出ることがあります。もしかするとこのクローンは感染していないのかも。
学名P.velutinaについては確かに疑問ありますね。ニューレキシコン上ではP.diguetiiのシノニムになってますが、写真等みる限りではP.porteriあたりに似ている感じも。このあたり、導入時にどのくらい真剣に和名学名対照が行われたかも怪しいですが・・・まずは花を見てみたいですが、接いじゃうとダメですね^^;。

>saeさん
なんでも名人のsaeさんであれば、なにもキリンウチワでなくても上手くこなされれそうですが、三角よりも綺麗に育つ、という印象があります。あと、三角以上に極小の苗でも接ぎ穂に出来る感じなのが良いですね。三角はすぐに台木が堅くなりますが、キリンウチワは先端部を切れば常に瑞々しい組織が出てきますから。ブログでの結果レポート、楽しみにしてます。

キリンウチワは難物からシャコバまで何でも接げて便利ですよね。
シャコバを載せて桜キリンの刺で固定するだけで活着しますし。

木の葉サボやディディエレアでもデータとろうとは思ってるんですが、いつになっても、ものぐさで実行できてません。
亜竜木に短毛丸でも載せようかな。

>さくさん
シャコバを接ぐ、なんて手もあるんですね。ディディエレア+サボテンの
接ぎ木は昔からOKと言われていますが、未体験です。マダガスカリエンシんか生育旺盛になりそうですが、もったいないか^^;。

なんとタイムリーな記事^^件のボン様は、万一根際が腐ったら接ごうと思っていたところ、ある日全体が透明になり天に召されました…。あの後もうひとつ発芽しましたが、あんなことがあっても尚、接いでしまおうかどうか迷うところです。

キリンウチワ学名の件、私も気になります。キリンウチワ(P.velutina)と大型キリンウチワ(P.diguetii)は恐らく国内ではろくに区別されていないでしょう。「大型」は若い葉が赤くなると原色事典にはありますが、あれも割とアバウトな本なので^^;昨年の一時期「大型キリンウチワ」がヤフオクに出ていましたが、無理してでも買えばよかったなと。ちなみに我が家には「キリンウチワ」と「ルリバキリン」、P.porteri、P.spathulataがありますが、「キリンウチワ」は明らかに他より葉が大きいです。

>きくぞうさん
ボニアエはきっとキリンウチワと相性良いと思います。接げば、うまくいけば来年には咲きますね。
キリンウチワ学名話、そもそも国内でキリンウチワとして存在するものが何クローンくらいあるのか?たとえば、うちの「キリンウチワ」は葉長3cmくらいですが、これはきくぞうさん栽培のキリンウチワとは別ものなのかも・・・などとも思うのです。


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