海の生きもの、のようなもの。

"怪奇玉"に"玉藻"。そんな名前の多肉植物をご存じでしょうか。属名は、ディプロソマ(Diplosoma)。
で、この属名をネット検索すると同名のホヤの仲間がたくさん出てきます。
ホヤ・・・海の生き物のあれです。うーん、でも、雰囲気は似ていないこともない。

この属(植物のほうね)の透明感の高い葉は、ごく軟質で水分含有量が高く、bladder cell などと呼ばれる
水泡状の組織が多くあり、キラキラと輝く姿は本当に海の生き物のように見えます。


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ディプロソマ属を構成するのは2種だけで、ひとつがルックホフィ(Diplosoma luckhoffii 怪奇玉)。
同じメセンのコノフィツム属(Conophytum)にも同名の種がありますが、これはまったく別ものです。
もうひとつがレトロベルサム(D.retroversum 玉藻)ですが、前者の方が有名かも知れません。
といっても、検索しても殆ど日本語の情報は出てこないので、マイナーな多肉には違いないですが・・・。

ルックホフィはかつてモーガニエラ属(Maughaniella)とされていたため、メサガーデンのリストでは、
旧いほうの属名で記載されています(去年まで。今年は掲載なし)。ちなみにこの種のメサの説明書きが
面白くて「休眠期には視界から消滅する」だって。


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               Diplosoma luckhoffii M.1778 Holrivier

これはルックホフィ(D.luckhoffii M.1778 Holrivier)の2月頃の姿です。
わざわざ2月、と書いたのは、この仲間は、秋口すずしくなってきた頃に発芽すると、数ヶ月で開花サイズまで
成長します。そして春先のメセンシーズンの終わり頃、たよりない桃色の花を咲かせると、そのまま溶けるように
消えてしまいます。といって、一年草ではありません。小さな黒褐色のサヤ状のものが地中に残され、
再び秋の訪れとともに新葉がサヤを破って姿をあらわします。宿根草のような感じ。
もっとも、夏のあいだにひっそりと死んでいって、秋に再び目を覚まさないこともしばしば。
そもそも短命で、4-5年で枯れてしまうため、種による更新がかかせません。


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ルックホフィの故郷は、南アフリカ・西ケープ地方のクナースフラクテ(Knersvlakte)一帯の石英平原と
されています。上写真の植物の産地Holrivier も検索してみるちょうどそのあたり。
このエリア、珍奇なメセン親指姫(Dactylopsis digitata)をはじめ、色々興味深い多肉植物があるところ。
付近は塩性土壌が多い場所ですが、この種の自生地がそうだという記述もあります(親指姫も同様)。
ますます海の生きものっぽいですが、私の栽培経験では、塩を与えても与えなくても育つことは育つ。

ところで、このルックホフィには実はちょっと違ったタイプ(姿)のものがあります。
それがこれ。


IMG_0274S.jpg

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                Diplosoma luckhoffii M.1777 "thick blistery leaves"

こちらは、メサガーデンから、カタログ番号M.1777 "thick blistery leaves"という説明のみで
流通している種から育てたもの。先のHolrivier産のコロコロした姿にくらべると、ちょっとタビ型コノフィツムを
思わせる姿で、より大柄です。その分、肉質の柔らかく脆い感じやキラキラ感も強調され、同種としてはかなり
印象が異なります。
栽培上は、先のコロコロタイプよりも大柄なぶん育てやすい。というか、生き延びやすい。
この植物(種子)には、自生地データが与えられていないのですが、かなり顕著な違いがあります。
どなたかこの植物の由来などご存じの方がおられればご教示下さい。


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花もこんなふうにやや大きく、花筒が長く伸びる。この属は植物本体の大きさにくらべ花と果実が大きいのですが、
このタイプはそれが顕著です。生きるエネルギーの大半が、子孫を残すことに費やされている印象。
大柄なのに、グニョグニョしているものだから、海中の岩肌にしがみついて揺れているホヤ類のように見えなくもない。
もっとも、ホヤと共通する属名Diplosomaの意味は「ふたつに分かれた身体」といった意味らしく、
両者の珍無類な姿をとくべつ表象するものではないのですが。

そしてディプロソマのもう一種、というか元々のディプロソマ属が、これ。


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               Diplosoma retroversum M.1484

レトロベサム(D.retroversum M.1484玉藻)です。こちらは前種よりも多少かたいゴムのような感触の葉を、
地面に這わせるように、横拡がりに展開します。葉には例のキラキラが散らばっている個体と、なくてスベスベの
個体があります。同じサヤの種から双方が発生します。
生育パターンはルックホフィと同じで、秋に目覚めて初葉、春に花が咲いた後は溶けて視界から消えます。
開花の時期は多少遅め。栽培は、ルックホフィより少し大きい分たけやさしい・・・気がします。
自生地は、よりケープタウン側のピケットバーグ(Piketberg)周辺で、さらに局限的に生育しているため、
絶滅が危惧される植物のひとつだということ。


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写真上は、実生7年まで(多分)育った超大株。次の年は目覚めませんでした。
この種は、自生地の写真などを見ると、真っ赤に色づいていて、それがまた痛い感じで素敵なのですが、
私の栽培環境では常に濃緑色です。光の強さなのか、土壌成分によるものなのかわかりませんが、赤くはならぬ。
踏み潰されたタラコみたいな姿もなかなか魅力的なので、なんとか再現したいものではあります。


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ディプロソマは、栽培が難しいとよく言われます。なにしろ、毎年ゼロに近いところから葉っぱを伸張させて
開花に至るわけですから、スタート時期がまず大事。秋口になるべく早く涼しくなる場所に置いてやり、
水をやり始める。種蒔きする場合も同様で、秋遅くからの育成では、夏越え出来るサイズまで育たないうちに
休眠時期が訪れてしまいます。また、葉が出ている生育期間中は水切れさせないことも大事。自生地では、
雨に加えて、結露が表土を毎日湿らせている筈です。寒さには強いですが、冬じゅう成長させたいので、
氷点下にならない環境のほうが望ましいでしょう。そして、春、葉っぱが溶けてサヤだけが残ったら、激しい
直射日光は避けて、風通しのよいところで夏越しさせる。水はやらない。私のところでは、一部のコノフィツムと
同じ棚下に置いています。生育期は、もちろん直射日光が必要。
あとは、寿命が短いので、種をとって更新する。幸い自家授粉することが多いので、数株あれば、いくつか
カプセルが出来るはずです。種は、殆ど粉末と言っていいくらいに小さい。でも、ちゃんと発芽します。


IMG_0270S.jpg


サボテンや多肉ばかり育てているので、植物は長い時間をかけて少しずつ育っていくもの、という印象を
持ってしまうのですが、草花には、春に生まれて秋に死ぬ(個体として)、という生活環のものも少なくありません。
涼しくなると、むにゅむにゅと柔らかな葉肉をのばし、早春の頃、柄に見合わぬ大きな花を咲かせたら、
消えてしまう。そんなDiplosomaの生き方には、儚さよりはむしろ、なにか動物的な命の生々しさを感じます。



テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

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緑のローソクと緑のたぬき?が・・・いる~ッ♪( ^∀^)

暖かい日中になってきました!1月さんさよなら~♪また来年~会いましょうね~ ご縁があり家に今年やってきました。勝手にくるわけないですが、そういうわけです( ^∀^) 。

コメント

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地震の被害はどうですか?
大丈夫でしょうか。
大変なことになりましたね

Shabomaniac!さん、そちら地震の被害は大丈夫でしょうか。何事もなければいいのですが。

ルックホフィめちゃくちゃ可愛いですね。サヤで休眠というのがまた興味深いです。

ところで、メサに書類無しで注文したところ、税関から「納品書に書いてない小袋があるが中身は何か」というお手紙を頂きました…。
たぶん牡丹とかの種だと思うんですが、どうすればいいのでしょう。どうかアドバイスください;;

海の生き物のほうは、殆んど食べる人がいない当地のスーパーでも時々売られていますが、売れ行きが悪く、交渉すれば格安で手に入ります。
独特の風味が好きで、自分でも裁いて料理します。仙台へおもむいた時には、そんなものを食べるのかと言う友人を尻目に、いの一番に注文した覚えがあります。
今回の災害でホヤの名産地が大打撃を受けてしまいましたが、いずれ時の経過とともに自然は回復してゆくでしょう。
願わくば、原発の事故で放射能汚染が広がらないことを。

変な書き出しになってしまいましたが、極物のほうにこんな奇妙な生態を持ち、なおかつどことなく美味しそうな風貌の物がいるとは知りませんでした。
是非、仮死状態のサヤの画像も見てみたいですね。

関東東北はしばらく不便な生活が続きそうですね。無理なさらないで..と言っても無理な話ですが。お体には十分お気を付けください。
ディプロソマは自生地では砂粒を体に付けて強い光線と乾燥から身を守っている...なんて話を聞いたか読んだ記憶があります。こうしてみると素顔の彼女らは儚げで魅力的ですね。メセンの中ではこういう玉型と草物の中間グループが一番危険な‘森’のような気がします。
ところで先回のエントリーで話題にされた G.Charles氏のギムノ本、手に入れました。英語はよくわからないけれど、写真が沢山なので自生地探索気分が楽しめます。‘深い森’に迷い込まないよう、用心しいしい眺めています。

このエントリーは先週の金曜日に自動更新されていたんですが、その頃この東日本全域で大変なことが起きていました。震災で被災された方々には、こころからお見舞い申し上げます。

関東の私のところでは、温室の鉢の殆どが倒れ、床に落ちて砕け、なかの植物がそこらじゅうに転がっている状態ですが、津波に呑まれた町町の惨状をまのあたりにすれば、口にするのも恥ずかしい話です。仕事柄、それ以降はほとんど家に帰ることが出来ず、植物も大部分そのままなのですが、なんとかガマンしてくれるでしょう。

>l-marshさん
おかげさまで、無事でした。植物の被害などは、なんとでもなります。多少キズついたりダメになったりしても、また種から育てれば良いので^^。ルックホフィは、メセンの中でも特異な生態で、育てると愛着が湧きますよ。花もとっても綺麗だし。場所もとらないし。

>きくぞうさん
阪神の震災のときは、そうはいっても遠い場所の話という感じもありましたが、今回、都内でもガソリンがない、携帯かからない、コンビニの棚も空っぽ、という状態がなお続いています。通関からの手紙はついてないですね><。中身がワ条約該当だと没収になってしまいます。といって、嘘をつくことをお勧めする訳にはいかないですが・・・。

>queiitiさん
むかし、東北でホヤジャーキー(ビーフジャーキーみたいなののホヤ版)ってのを食べたことがあります。ちょっとクセありですが、なかなか旨かったです。あれは北国の食べ物みたいで、関東でもあまり売っているのは目にしませんね。Diplosomaのサヤはモニラリアの枝の一節(より小さい)みたいな感じのものです。

>noria さん
とりあえず今は仕事に忙殺されているので、植物の復旧に着手するまでにはしばらくかかりそうです。成長期、花どきを迎えるのに、地面に転がされたままの彼らには可哀想ですが、そこは沙漠植物ならではのタフネスを発揮してもらえるものと思っています。GC氏のギムノ本、すごいのは、殆どの種の自生地を自ら歩いて来ていることですよね。それだけに説得力があります。

そんなこんなで、いましばらくはこのブログも更新できないかも知れませんが、いちにちも早く、かつての平穏が、東北の町町にも戻ってくることを願っています。

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沙漠植物、栽培、探究。

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