地図のない深い森。

今回はまったく華のない地味~なネタ。

ギムノカリキウム属(Gymnocalycium)といえば、サボテンのなかではポピュラーな種類です。
刺の立派な光琳玉、天平丸、色鮮やかな緋牡丹錦・・・と人気種も多数。でも結論からいうとこのあたりは出てこなくって、
も少しマイナーで(というかかなりマイナーで)、刺の弱い小型のギムノがこれからはカッコいいのです(根拠なし)。
というわけで、見れば見るほど味わい深い連中を紹介しましょう。


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               Gymnocalycium berchtii GN158-430,Las Chanares SanLuis,Argentina

まず筆頭はこれ。黒い石みたいでしょ。
ギムノ・ベルクティ(Gymnocalycium berchtii GN158-430,Las Chanares SanLuis,Argentina)。
アルゼンチンのサンルイス州が産地で、1997年に記載された新しい種類です。なので、和名もついていないし、
国内ではあまり知られていません。私は、コイツの自生地での写真を見て、なんとも言えない肌の色と質感に
魅入られてしまいました。幸いマニアックなヨーロッパの愛好家がアルゼンチンのこの辺りをよく回っているらしく、
種はけっこう出回っています。
この実生苗も、焼きを入れた鉄みたいな鈍い光沢を放ち、肉質もとても硬くて黒碁石みたいな雰囲気です。
刺の生え方は実生苗も成球もとても無愛想。飾りのない実に無意匠なところが、全体のストイックさにあってる。
ご覧のように栽培下でも、平べったく地面に潜るように育ちます。花も綺麗なんだけどまだしばらくかかりそう。
え?どれも小さ過ぎてなんだかよくわからん?でもこれで実生3-4年は経っているのだよ。
ちなみにリンクさせて戴いてるsileriさんサイトに素晴らしい個体の写真があります。


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               Gymnocalycium nataliae 'morroense' LB 326,Sa.del Moro SanLuis,Arg

続いてナタリアエ・モロエンセ(G.nataliae 'morroense' LB 326,Sa.del Moro SanLuis,Arg.)。
ナタリアエは上のベルクティと産地も近く、同種とする見方もあります。これはそのナタリアエの亜種に
なっている新しい種。ことほど左様に、この系統のギムノは名付けが混乱していてややこしいです。
たしかに肌の雰囲気や扁平な姿はベルクティ似ですが、刺の生え方に多少芸があり、その分、"媚び"を
感じないでもないけど、ゴムっぽい感じの質感と稜のうねり具合はなかなかいい感じです。
日本人は、かつて大量の野生ギムノから「海王丸(Gymnocalycium denudatum cv.'Kaioumaru')」を
見出したくらいで、刺や球体の微妙な曲線やうねりに妙味を感じるセンスがあるはず。
そういう意味ではこういうオトナ向けの「弱刺ギムノ」にもっと人気が出ても良いんではないでしょうか。

この仲間は光琳玉や天平丸ほど山あいではなく、もう少し南よりの高原地帯で、礫の多い草っ原みたいな場所に
生えています。日本のビニールハウスみたいな環境にはよく馴染んで、育てやすい。


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               Gymnocalysium parvulum HV664 Panaholma,Córdoba,Arg.

これは、パルブルム(G.parvulum HV664)の名前でPiltzから入れた種の実生。産地はPanaholma とありました。
なんて書き方をするのは、これもやっぱり名付けが多少こんがらがっていて、同じ植物に色々な名前がついてます。
parvulumは、G.calochlorum ssp.proliferum(唐子丸)と同一種ともされているので、そちらの名前で
これを育てている人もいるかも知れない。
なんてややこしい事情はともかく、こいつはなかなかの美種です。優雅にカールした象牙色の刺が、濃緑色の肌を
包んで、球体はごく扁平。小型ですが、花筒がすーっと高く伸びて大きく咲きます。
小さいですが、海王丸の風格と羅星丸( Gymnoccalycium bruchii )のかわいらしさを合算したみたいな雰囲気。


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               Gymnocalycium paraguayense 'fleischerianum' P453 Chololo-i,Paraguay

話が海王丸に振れてきた流れで、こんどはこちら。
海王丸の原種はdenudatumともparaguayenseとも言われますが、これは後者の一タイプで、
paraguayense 'fleischerianum'(P453 Chololo-i,Paraguay)です。
肌はツヤツヤで美しいですが、刺は素っ気ない。それがシンプルで良いといえば良いんだけど。
も少し大きくなれば、多少いい感じになるのではないかな。
パラグアイエンセのもう一タイプ、paraguayense ssp.paraguayense の方はより海王丸チックな刺ですが、
こちらは産地では絶種したとされ、オリジンの確かな種はなかなか入手出来そうもありません。


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               Gymnocalycium denudatum Gf18 Minas do Camaqua,Rio Grande do Sul.Brazil

海王丸の源流と目されるもう一種、denudatum(GF18 Minas do Camaqua,Rio Grande do Sul.Brazil)。
見て下さい。この球体のうねうねヌメヌメした三次元曲線。この質感とテクスチャ。なんとも言えぬ。
デヌダーツム=蛇竜丸は、昔から種を見つけたら取り寄せて蒔いてきたので、けっこう色々あるのですが、
いまのところこれが私的には絶品。海王っぽく刺が長い方より、刺が粗な感じのクローンの方が、球体の曲線美が
際だって素敵な感じ。
これで、素のままの原種です。こんなふっくら土饅頭みたいなのが、歩いてて足下にポックリ転がってたら、
あなた、どうしますか?? え?どうもしない?・・・まあ、このへんは完全にお好きな方にはたまらないって感じの
多少やばい世界なのかも知れませんねぇー。


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とまあ、延々と行きつく先のない感じにマイナ~な植物ばかり並べました。最後まで読んでくださった方には感謝。
数年前から、G.Charles氏のギムノ本の影響もあって、こんなマイナーギムノを色々実生しています。
しかし花も咲かない実生苗ばかりじゃ良さがあんまり伝わらないですね(涙)。であればギムノの大家、島田さんの
サイト
でもっと素晴らしい自生地の写真などがたっぷりご覧戴けます。リンクからご覧ください。

ギムノにはまだまだ色々あって、しかも分類が錯綜しているから、その世界は地図のない深い深い森のようで恐ろしい。
入っちゃいけないアブナイ場所と知りながら、なぜか惹きこまれ気づけば家路ははるか。またも途方にくれるのでした。



テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

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ちっちゃくて可愛いのばかりですね^^
特にparuvulumがくにゃくにゃ刺がたくさんで
見てはいけないものを見てしまったような
深い森の誘惑が~><www

最後のG.denudatum Gf18、グラマラスですねぇ。申し訳程度の細い刺がなんともエロチック...。スポーツカーの曲線美にうっとりするカーマニアと同じ感覚ですかね。

ギムノはマイナー系も含め、今年もいくつか播く予定ですが、今回ご紹介の種類はひとつも入っておらず、ほっと一安心。まだ私は「深い森」には迷い込んでないようです。
G氏のギムノ本、自生地写真が豊富そうで買おうかどうしようかずっと迷っていたのですが、手元に置けば「森」で迷わずに済むでしょうか...それとも森に入るのをあきらめられるかな。

ギムノの中でもパンパスと呼ばれる平原産のものは緑色の肌で、アンデスよりの高地産のものは暗いチョコ肌をしているように思います。
私はテフロと産地がかぶっているチョコ肌に惹かれます。
両者の栽培方法の違いなど教えてください。

ギムノの世界は地図はなくとも暗い森ではなく、茫漠たる大平原のような気もしますが。

こんばんは。
パルブルムが綺麗でいいなぁ~と思ってみていました。
何かに似ている。そんな気もしていましたが、読んでいくうちに分かりました。
ほんとに家の小さな赤刺羅星丸に似ています^^

リンクをいただきありがとうございました。
こちらからも入れさせていただきましたので、どうぞよろしくお願いします。

ご紹介のギムノに限らず、私にとってサボテンはまさに深い森です。
Webで先達の方々のノウハウを盗みながら試行錯誤しております。

乾燥に耐えて縮こまっていたサボテンが、わずかな水に感応して膨らみ刺を出し花を咲かせるなんて何とも不思議で愛おしい限りですが、Shabomaniac!さんの写真で見ると縮こまっている姿も魅力的ですね。

berchtii渋くていいですね~今度実生してみたくなりました^^
以前からギムノは気になっていたんですが、なかなか踏み込めないでいます。今は難物をやりたいので・・・難物がある程度実生出来たら、地図のない深い森を探検してみるのもいいかもしれません。

初めて書き込みします。
この記事を見て早速滋賀のK園でberchtiiを2株注文して購入しました。はやっ。
nataliae’morroense’も素晴らしい種ですね。気に入りました。
また関連して、谷山さんのギムノカリキウム総覧も見まして、neuhuberiのピンク花やcarminanthumの美花なども気に入りました。
改めてShabomaniacさんには脱帽です。いつも有り難うございます。これからも宜しくお願い致します。

今週バタバタ忙しくなり、コメントレスが遅くなり恐縮ですm(_ _)m。

>zilzianaさん
parvulum、くにゃくにゃでホワイトの刺が良いでしょ?
ギムノは実生から育てるのにちょうどいい植物が多いですね。あまり大きくならないものが多いし、花つきも良いし。ぜひ彷徨ってみてください^^。

>noriaさん
denudatumの曲線美、共感してもらえて嬉しいです。たしかに、70年代のフェラーリとか、こんな感じの人間が手で練り上げた感じの3次元カーブが綺麗でした(あの、スーパーカーブーム世代です@@)。
GC氏の本、値段は高いけれど中身は濃かったです。魔の森へいざなうキケンな本ですが^^;。

>queiitiさん
肌色と自生環境の関係は私もうまく整理出来ないのですが、チョコ肌の代表は守殿玉系でこれはMonteなどと呼ばれる乾いた陽射しの丘陵地産です。一方のチョコ肌代表、瑞雲丸などはChacoと呼ばれる疎林地帯で、艶緑の海王系も似た環境です。ともに低標高に生えるので寒さに弱いとされますが、うちのマイナス4度まで下がるハウスでも育ってます。まだまだ勉強せんとわからないことばかりですが^^;。

>saeさん
羅星丸はじつに栽培向きのサボテンですよね。こじんまり育てて小さな花を愛でるもよし、ブンブンふかして大群生にしてみるのもよし・・・(私は前者ですが)。パルブルムも、このサイズでじゅうぶん鑑賞できる雰囲気が出ているのが良いところです。あと、白い刺のサボテンって好きなんですよね~。


>アイハルさん
こちらこそよろしくお願いします。
サボテン類は、冬や真夏に水をきると、思いっきり縮むものが多いです。というか、冬に断水しても縮まない、潜らない、というサボテンは、なにか代謝がうまくいっていないか、根がダメになっている(健康な株は、根が縮こまることで球体を埋める)ことが多いです。なので、休眠中の健康の指標だったりもしますね。

>yoyonさん
berchtii、めちゃ渋いですよ。なんか肌が濃い茶色というより、金属のような黒なのです。私の場合、難しいものばかり蒔いているせいか、落ち込む(結果になる)ことが多いので、半分くらいは保険で非ナンブツも蒔くようにしてます。スクスク育つギムノあたりと比べると、やっぱりスクレロは難しいなぁーと思い知らされますが、。

>えんさん、さん
ようこそ^^。
滋賀のK園さん、じつはまだ取引したことはないのですが、実生いっぱいやっている風ですね。ロカリティデータのある苗の品揃えでは日本で随一かもしれませんね。berchtiiもあるんですか、こんど見てみます。先にも書きましたが、Pedio&Scleroは、15年やっても納得いく結果が出ない(開花に至らない種あり)。そのぶん、おおらかな南米サボテンに癒してもらってます。


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