ドニャーナ!

♪ドニャーナ。
なんだか、らしくない耳ざわりの柔らかい響きですが、そんな風に呼ばれるサボテンがあります。
彼女たちはそう、たとえばこんな場所…荒涼とした土漠の平原で、その妖しい個性を誇示することもなく
静かに生きています。きょうは、マイナー中のマイナー種でありながら、ある筋ではとても珍重される、そんなサボテンのお話。


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               SW Mariscal mountain, Bigbend National Park, TX, USA

ドニャーナカクタス(Doñana)こと、コリファンタ・マクロメリス(Coryphantha macromeris)。
大分丸という和名もあり古くから知られるサボテンですが、栽培している人はあまり多くないでしょう。
アメリカ南西部からメキシコにかけての広い範囲に分布していて、象牙丸(C.elephantidens)や
大祥冠(C.poselgeriana)などと同じコリファンタ属ですが、極端に柔らかい肉質や巨大な塊根など、
ちょっと変わった特徴も持っており、Lepidocoryphantha という別属に扱われることもあります。
亜種としてよく似たルンヨニー(勇天丸 C.macromeris ssp.runyonii)が記載されています。


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               Coryphantha macromeris (SW Mariscal mountain,TX)

なんでドニャーナと呼ばれるのか、調べたのか判然としませんでしたが、この種の分布域の中心には、
ニューメキシコ州の(スペインの国立公園じゃなくて)ドニャーナ郡(DonaAna County)があるので、
そこからついた名前かも知れません。
でも、このなんとなくサボテンぽくないニックネームは、我々とは違う関心でカクタスを見ている人たちにとって、
とても魅惑的に響くようです。Donana、サボテン、などで検索をかけると、植物の化学的成分でトリップしたい人の
記述がたくさん出てきます。このサボテンに含まれるマクロメリン(Macromerine)という成分が、
Peyoteの名で知られる烏羽玉(Lophophora williamsii)類が持つメズカリン(Mescaline)と似たような
幻覚作用をもたらすというのです。効用は烏羽玉類の1/5にも満たないそうですが、かつてはネイティヴの人たちの
祭祀に用いられたという記録もあります。


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               at Rincon,Dona Ana co. NM, USA
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               at Franklin Mountain,TX, USA

実際にこのサボテンに接すると、確かに得も言われぬ妖しさ、が伝わってようではあります。
肉質はゴムのように、柔らかく瑞々しいのに、刺はそれほど強くない。それなのに、野生動物に食害されないあたりは
ロホホラ属に通じるものがあります。朽木から生じるキノコのような群生ぶりと、地下に植物の本体とも言うべき
巨大な塊根を持つところも、ロホホラと似ていますね。
自生地では、あまり目立たないサボテンで、テキサスやニューメキシコを旅していると色々な処で見かけますが、
花や果実でもない限り、写真も撮らずにスルーしてしまうことが多い。
なんというか、自らの存在を消しているような、不思議な静かさがあるのです。


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               cultivated plant SB139 from DonaAna Mountain, NM

栽培室でも、いたって穏やかで目立つことの少ない植物です。種からの育成では早くもなく遅くもなく、
淡々とこじれることもなく育ちます。難を言えば、刺座からの蜜の分泌が多く、やや汚れやすいところ。
塊根が大きく育つので、植え込みには深鉢が必要です。
鑑賞上は、刺の長短や色合い、疣の形状など、タイプ差が実にいろいろあるのですが、とくだん際だつ姿のものが
ある訳ではないので、銘品の選抜などは想像がつかない。一年を通じて、彼女たちが唯一光彩を放つのが花どきです。
大輪といっていい桃色の花は、キラキラ輝くような明るさで、花弁の先端部は繊細なフリンジに縁取られています。
エスコバリアの北極丸(Escobaria vivipara)を思い起こさせる花です。果実は、これもビビパラに似た
ジューシーなもの。花の季節が終われば、またいつもの静かさのなかに還っていきます。


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               SW Mariscal mountain, Bigbend National Park, TX, USA

この写真は、テキサスの平原で写した一枚。
畳一枚くらいの面積にキノコのように頭を並べたドニャーナカクタスですが、おそらくこれは一個体の植物です。
超大群生、といったところですが、鉢栽培は不可能でしょう。
地下にはこれらの地上部をつなぐ巨大な塊根が隠されている筈です。ちょうどモグラが地中を移動したような
表土の攪乱が見てとれますが、この植物の動物的な匂いが伝わってくる気がしました。


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               SW Mariscal mountain, Bigbend National Park, TX, USA

サボテン栽培家には、案外知られていないドニャーナカクタス。もしオークションに出品でもしたら、
特殊な関心をもつ人たちに引き取られ、バラバラに刻まれて口に放り込まれてしまいそうです。
栽培家にとっては、熟成した鑑賞眼を要するというか、渋好みの極みではあります。
ですが、いちど気にかかると、気にせずにはいられないところがある。
レピドコリファンタなどと呼ばれ一属一種的な珍しさはありましたが、この植物が私の心に引っかかる
ようになってきたのも、最近のことです。何も語らないことが饒舌に優ることがあると知る歳になってから・・・
といったらカッコつけ過ぎかな。
ともかく、地味でとらえどころの乏しい植物ですが、どうしてか、その内なる声に耳を澄ましてしまう、
不思議な引力があるサボテンなのです。ね、ドニャーナ♪



コメント

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テキサスの平原の写真のドナーニャ、
掘って塊根がどんな風につながってるのかを
見てみたいです。(掘ったらだめだけど・・・)

フリンジの縁取りがすごく可愛くて
作って見たいですが刺座の蜜の分泌が
多いのが気になりますね^^;。

地下に塊根と聞いては、欲しいものリストに載せなくてはなりませんね。
ググってみても、芋の画像にはなかなか出くわしませんでした。次回の植え替え時には、是非写真をお願いします。

ドニャーナ大群生、キノコのフェアリーリングを思い出しました。いったいどれだけの年月がかかっているのでしょうね。
海外サイトで時折コリファンタとエスコバリアをひと括りにしているのを見ますが、この花を見てみればなるほど近い仲間なのかと、少しだけ納得してしまいました。

shabomaniac!さん、こんにちは。
ドニャーナはその固体の小さい所が好きです。
でも自然の中にいる姿はすごく雄姿を感じます。
花はこのサボテンを美しくは見せますが嬉しいおまけ!のような感じですね。

>zilzianaさん
根っこ、地下茎みたいな感じというより、つながっちゃって、たぶん板みたいになってると思いますよ。地面の盛り上がり方がそんな感じでした。掘るにはきっと重機が必要ですね^^;。

>queiitiさん
悔根の写真ですか。たしかに見たことがない・・・。出して植える、という感じでもないですしね^^。サボのイモのなかでも立派な方だと思います。こんど植え替えのとき(といってもうちは3~4年に一度ですが゙^^;)にあられもない姿を撮影しましょう。

>きくぞうさん| URL | fygLNEbI
きのこのフェアリーリング、そうそう、その感じがしたんです。彼らにとっても、本体は地下の塊根で、地上部はそんなに大事じゃないのかも知れません。頭を喰われても、きっと根から子が再生する仕組みかも。コピの小型種などもそうで、わざと首が細くてちぎれやすく出来ていますよね。

>saeさん
たしかに、巨大な群生株は、多少おどろな感じがしますね。鉢の中でちんまり咲いてくれると、山野草っぽいかわいらしさがあるのに。どのサボテンでもだいたい、野生株に出会うと、ぜんぜん違う感じがします。それが楽しくて沙漠歩きがやめられません^^。


重機ですか!?(^^;)
ちょっと盛り上がってる部分が
板のように繋がってるんなんて。
面白いです^^。ますます見たくなりました。

>zilzianaさん
掘ってないからわかんないですがたぶん板みたいになってるのでは・・・と。
そのほうが面白いし。栽培では、ふつうの塊根ですが^^;。
なんかイモありサボに惹かれるものがあるんですよねぇ。
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