秋の開花前線。

ちょうど今頃、日本中のあちこちの温室などで、牡丹類サボテンこと、アリオカルプス属(Ariocarpus)の各種が
花盛りを迎えていると思います。牡丹類の華やかな花がひととおり咲き終わる頃には秋もすっかり深まります。

私が、毎年感心させられるのは、この仲間の種類ごとにほぼ同じ日に一斉開花する几帳面さ。
我が家では、開花日そのものは年によって若干前後しますが、まず亀甲牡丹(A.fissuratus)、
わずかに遅れて姫牡丹(A.kotschoubeyanus ssp. macdowellii)、アガベ牡丹(A.agavoides)、そして
黒牡丹(Ariocarpus kotschoubeyanus ssp.kotschoubeyanus)三角牡丹(A. trigonus)とつづき、
最後に岩牡丹、(Ariocarpus retusus)などレツーサ系…という順番です。もちろん、同じ種類でも
産地コロニー(フィールドナンバー)ごとの差異はあります。


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            亀甲牡丹(A.fissuratus
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            姫牡丹(A.kotschoubeyanus ssp. macdowellii)

上は10日ほど前に写したものですが、私のハウスでは亀甲牡丹と姫牡丹がはかったように一斉に咲いていました。
しかし、この時点では黒牡丹や竜角牡丹(Ariocarpus scapharostrus)はまだ蕾の状態です。
そして、岩・玉牡丹は大半のグループ(フィールドナンバー)でまだ蕾もあがっていない状態でした。

アリオカルプスの体内時計はかなり正確なようで、同じ種(正確には同産地の同種)は、まずブレなく一緒に咲きます。
もちろん開花期間そのものに幅はありますが、そこには明確なピークがあり、同じ環境で並べて育てていれば、
ほぼ同日に咲きます。もし、一緒に育てていてもまるでバラバラに咲く岩牡丹や亀甲牡丹があるとしたら、
それらはそもそも産地的に隔離されたコロニーに起源を持つものか、あるいはそれらの交雑種ではないかと思われます。
ちなみに、きょうご紹介するアリオカルプスはすべて実生苗ですが、私のような促成ならぬ抑制栽培でも、
10年も経てばこんな風にたくさんの花を咲かせてくれます。・・・明日のために、蒔くべし、蒔くべし!


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            黒牡丹(Ariocarpus kotschoubeyanus ssp.kotschoubeyanus)           
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            竜角牡丹(Ariocarpus scapharostrus

ネット上で、いろんな方のブログなど拝見していると、牡丹類各種の開花時期は、わが栽培場と必ずしも
一致しているわけではなさそうです。地域や栽培環境の違いで数日程度のズレがある。
とはいえ、九州から北海道まで2か月近くかけて北上するサクラのような「開花前線」はなく、
全国ほぼ同時期に咲くと言えそうです。彼らが開花タイミングを揃えるのは、効率よく子孫を残すためと思われますが、
では何をもって季節を知るのか?

・・・じつは、こんなややこしいことに思いを巡らすには理由があります。
きっかけは先日、小学生の息子が投げかけてきた質問でした。
彼は、父親がたくさん育てているサボテンは、小さい時から周囲にあたりまえに存在していたので珍しくないらしく、
さほど関心を寄せません。ですが、日本の里山に生えているような草木にはわりと興味があるようです。

「いま、ヒガンバナがあっちこっちで咲いてるでしょ。テレビでもやってるでしょ。
 でも、桜とちがって日本のどこでもだいたいおんなじ頃に咲くのは、なぜ?」

「うーん・・・。そうだ、ヒガンバナは短日性なんだ。日が短くなると咲く性質だから、北と南でそんなに
 違わないんだよ」

「だってヒガンバナは球根じゃん。地面の中にいるのに、日の短さをどうやってわかるの?」

「え?ううむ…」

たしかに・・・ヒガンバナの球根は、けっこう深く埋まっているから、光を感じることが出来るものなのか・・・。


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            Lycoris radiata(長男撮影)            

即答できなかった私は、その場はお茶を濁して、あとでインターネットであれこれ検索してみました。
しかし、意外にも、答えらしい情報は見つかりません。すると、息子がまたやって来て、こう言いました。

「ねえ、これは僕の仮説なんだけど、ヒガンバナは3倍体で無性繁殖だから、日本じゅうぜんぶ同じクローン
 なんでしょ、だから性質も同じで、同じ時に咲くんじゃない?」

うーむ、なかなか小難しいことを言う。でもこの説明じゃ答えにならんだろうに。

「それを言うなら、桜前線のソメイヨシノだってみんな同じクローンだぜ」

「あ、そっかぁ」

・・・と、なんとか親の沽券をまもったものの、じぶんの方も明確な答えがわかっている訳ではありません。
小学生の息子の、世界に対する素朴な疑問に答えられない、知的に虚弱な文系人間の我が身が呪わしい。
満開のアリオカルプスたちを前にしても、そんな思いがもやもやとよぎるばかりです。
厳冬期を乗り越えて蕾を膨らませるサクラの場合、花芽の休眠打破に一定の低温体験の蓄積(積算温度)が、
さらに花芽の成長には同じく冬の終わりから春先にかけての気温上昇の蓄積が必要・・・つまり絶対的な温度変化が
重要なファクターであることが知られており、そのため北と南では、開花時期に大きなタイムラグが生じる。
厳しい冬を堪え、その場所での春の訪れを正確にとらえて開花することの必要性から備わった能力なのだ・・・
とかなんとか、ここまでは理科の授業というか日本の風物詩の範囲なので、文系の私でもなんとかついていけます。


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            赤花岩牡丹(Ariocarpus retusus 'confusus' SB1426)7S.jpg
            三角牡丹(A. trigonus

ヒガンバナやサボテンの牡丹類の場合は、どうか。どちらもものの本には短日植物であるなどと書いてあります。
しかし開花時期は年によって違いますから、日照時間だけが開花時期を決定する要因とも思えません。
ここから先は私の推測ですが、サボテンの牡丹類にしてもヒガンバナにしても、短日を感知し花芽分化が
はじまって以降、サクラが体験するような身も凍る厳寒に遭うわけではありません。
九州でも東北でもメキシコでも、夏の暑さ(積算温度)が花芽成長に及ぼす影響は、冬の低温と春先の気温上昇が
サクラの花芽生長に及ぼす影響ほど決定的なものではない。彼らは厳密な絶対温度ではなく、気温や地温の相対的な
変化や乾湿条件、日照時間などを複合的に感受しながら、季節をつかんでいるのではないでしょうか・・・。


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            アガベ牡丹(A.agavoides

うーん。なんだか自分で語っておきながら、いまいちスッキリしないし、頭が混乱してきますねえ。
花たちが、能書きはいいから、肩の力を抜いてゆっくり楽しんでくれよ、と笑いかけてくるような気もします。
まぁサボテンもヒガンバナも、私より頭がよくって、精密かつ几帳面な生き物であることは間違いないでしょうな。
でも、息子が指摘した、夏至以前に落葉し地中深く埋まった鱗茎だけになるヒガンバナが、
どうやって短日を捉えるのかは、わからないままです。また訊かれたらどう答えるかな・・・
どなたか詳しい方がおられたら、ぜひ教えて下さい^^;。


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コメント

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幸いにして、私の周りには牡丹類は品評会クラスの逸物がゴロゴロしていますが、天邪鬼な私には魅力的に見えませんでした。
こちらで素朴な?牡丹類を見るにつけ、その魅力を再発見しました。
ただし、時、既に遅くワシントン条約の規制もあり、簡単に種が入手できなくなり、少々残念です。

ヒガンバナの球根がどんな方法で季節を知るかという点ですが、同じく文科系の私が想像できるのは、可視光以外の電磁波センサーを持っているのではないかということくらいです。

体内時計

開花時期が栽培地域にかかわらずそろうという現象は、月下美人が有名です。
「月下美人」というHPでは、全国の愛好家に呼びかけて、2001年から2003年にかけて開花日の統計を取っています。
この現象は、日本のほとんどの月下美人が、輸入された一株からのクローンであることと関係がありそうです。その意味で息子さんの指摘は正鵠を射たものかもしれません。植物にも体内時計がありますが、ある種の植物では、開花時期に関しては、温度や日光条件に左右されないよう、固定されていると思われます。

こんにちは

牡丹をこんなに綺麗に咲かせるまで10年かかるなんて、とても根気がいりますね・・・
彼岸花のこと、知識の薄い私にはお答えすることができないですが
小学生の息子さん、男の子なのに彼岸花に興味をもたれて、お父さんと会話をされるのが微笑ましく羨ましくも感じました。

>queiitiさん | URL | CHOVQKFM
アリオカルプス、むかし玉牡丹や連山の素晴らしい輸入株がゴロゴロ入ってきていたころは、生徒学生の身分で指をくわえて見ているだけでした^^;。でも黒牡丹や姫牡丹はだいぶ安価だったので、いくつか買うことが出来、いまも大半元気にしています。ただ、産地その他不明で、はやりの“生物多様性の保全”という観点からは残念な標本ですが^^;。アリオカルプスは、タネから育てるには、あまりすぐに大きくならず、場所を塞がないので良いところです。

>bf109gk2さん
なるほど、温度にも日照にも左右されない、体内時計ですか。絶対音感みたいな感じのものなのでしょうか。発芽した瞬間から、時の刻みがはじまるのだとしたら、枝分け株はみな、同じ時を刻んでいることになりますね。
「月下美人」サイト、見にいきました。私にはながねん、うまく育てられないサボテンです。なんども入手するのですが、いつのまにか消えてしまいます。でも、また育ててみたくなりました^^。

>zilzianaさん
タネから10年・・・あっという間ですよ。なんていうと歳がバレますが^^;。いよいよ30歳目前、という頃に、焦ってたくさんたくさんタネ蒔きしました。この黒牡丹が咲く頃は完全にオッサンだぞ!とか、コピアポアは完成球まで50年っていうから、今から蒔いてもギリギリだ!なんてね。でも牡丹類、うまい人は5年で開花、10年で大株標本を育てあげていますから、私のは時間かかり過ぎですが・・・^^;。

アリオカルプス属の開花条件

いまさらながら…過去のブログを拝見させていただいております。
私はアリオカルプス属は短日植物ではないと考えております。なぜかと言うと…昨年6月に花牡丹と玉牡丹が咲いたことからそう思うのです。2鉢とも一昨年の10月に購入(購入履歴のNO4とNO5です。うちでは最古株になります)し、昨年4月上旬まで室内のフレームで栽培してそれ以降はベランダのフレームに移していました。室内の方のフレームは育成用LEDを7:00から15:00まで点灯し昼間の温度設定が32℃、夜間は15℃に設定していました。ベランダに出してからは4月~5月中旬までは良い天気が続いていましたが、花芽が出てきた頃は2週間ほど梅雨空になって気温も低い日が続いたのです。梅雨空とは言っても完全に暗くなるわけではなく、6月は一年で一番日が長いため「短日スイッチ」が入るような状況ではなかったと思います。それでも花が咲いたのです。この事から成長期を一定以上続ける事と気温低下で花芽形成が促進されプラス何かの条件で花が咲く、と考えます。残り一つの何かが一斉開花の要因ではないですかねぇ。ちなみに玉牡丹は一昨年11月に花が咲き、昨年秋には2鉢とも花を咲かせませんでした。

>TK-Oneさん
遡ってまで読んで戴き、ありがとうございます。

私も、アリオカルプスが短日植物であるかないか、確たる検証をしたわけではなく、大家の本にあったからそんなものか思った程度で、不確かです。そもそもアリオカルプスの花芽形成時期というのも正確には球体を割ってないと判らないですし。
たとえばペディオカクタスなどは、8~9月に小さな蕾が現れ、それが翌春に咲きます。なので、初期の花芽形成は短日スイッチに左右されているのでは、と思ったりもしますが、スクレロなども、実は表面に現れないだけで、球体になかには小さな蕾が秋のうちに形成されるものが多い。割ってみないとわからないので、そうそう確かめるわけにはいきませんが^^;。

TK-Oneさんのアリオの場合、たとえば10月購入時に既に小さな花芽が球体内に形成されており、けれど温度条件が良かった(暖かかった)ため花芽が大きくならず、翌春屋外に出されたことで(温度低下)開花へ向けた2段目のスイッチ(こちらは日照時間ではなく温度条件のスイッチ)が入って開花に至った、という解釈はどうでしょう。強引かな?でも、あれこれこういう想像を働かせるのは楽しいですね。

ともあれ、完全に近い人工環境下で栽培すると、ふつうの栽培では見えてこない植物たちの性質が立ち現れてくるようで、興味深いですね。

Re:

なるほど、確かに花芽形成時期と実際につぼみが出てくる時期が相当違う植物は結構ありますね。玉牡丹の方が11月に一度開花しているという点が私の考えの根拠の一つになったのですが花芽の形成時期と開花に時期的なずれがあると考えると微妙になります。学生の頃、生物学系の学部にいながら植物には全く興味がありませんでした。あの頃ならいろいろな知識を得る事もできたのになぁ、等と最近考えてしまったりします。まぁ四半世紀前の事を今持ち出してもしょうがないですし、今からでも遅くないですよね。
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