湖畔の栽培場と「シャボテン新図鑑」

おかげさまで重版となりました
去年出版した「シャボテン新図鑑」、おかげさまで1月に重版となりました。ことしはまた別の本を作ろうと苦闘しています。昨今の植物ブーム拡大のなかで、私がこれまで楽しませてもらった経験と知識を少しでも還元できればと思っています。


琵琶湖の畔、無人駅で自転車を借りて・・・
で、話は飛んで先月のこと。関西に用事があったあとの週末、琵琶湖のほとりに長いこと行ってみたかったサボテン屋さんを訪ねました。新幹線から1時間に1本の在来線を乗り継いで、ひなびた無人駅でレンタサイクルを借り、ちょっとだけ湖を眺めてからキコキコ漕いでハウスの立ち並ぶ園へ。



「廣仙園」さんの圃場。大量の実生苗が圧巻で、1000種近くあるという
廣仙園さんといえば、サボテンの数多くの種を実生していることで有名です。いわゆる園芸的な人気種に留まらず、フィールドナンバーのついた原種も多数育成しています。園主の中川さんによれば、1000種近くあるのではないかとのこと。最近は専門業者といっても、海外から輸入した山木や、愛好家から仕入れた標本を右から左へ捌く店が増えましたが、生産園ならばハウスも広大でラインアップも幅広いし、仕入れの目も確かなので外から入ってきた苗もいいものが多い。さらに、最近はネットオークションだけでなく、実店舗の業者さんでも、植物の種名のラベルが不正確なことが多く、SNSなどでは間違った名前が拡散され、そっちが通り名になっているケースさえあります。これは、商品を扱う業者さんにプロとしての鑑定眼がなかったり、正しいかどうか調べてみようというマインドさえないことに起因します。人気のコピアポアやエリオシケなど、輸入種子のラベルミスは珍しいことではありませんが、それがそのまま市場に流れ、間違った名札の植物があちこちで売られています。そうした意味でも、経験豊富で知識の深い業者さんから、“間違いのない植物”を購入するのが賢明だと思います。あとになって名札違いがわかると本当にガッカリですからね。

ギムノカリキウムやエリオシケなど南米ものも充実

エキノケレウスの実生群像。本属の魅力をもっと知ってほしい

塊茎多肉植物の地植え温室

観峯玉(Fouquieria columnaris)も地植えで極太に
かつては盛んにウェブ通販も行っていた廣仙園さんですが、いまはリストの更新ペースはゆっくりになっているようです。一方で昨今の爆発的な沙漠植物ブームで若い世代の愛好家もたくさん訪れ、いわゆる人気種はすぐになくなってしまうとのこと。コピアポアの標本はカキ仔までもっていかれるそうです。でもここの園を訪れる楽しみは、誰でも知ってるSNSの人気者をさらっていくことじゃなくて、人気のほども値段もわからない初めて見る植物のなかから、自分の感性で「これいいじゃん!」を見つけることです。エキノケレウスの実生苗がこんなにズラリと並んでいる場所は日本中探してもそんなにない。写真を撮り忘れましたが、エリオシケはじめ南米ものも幅広く揃っていました。

バハ原産、金刺最美の「黄金冠(Ferocactus viridescens 'littoralis')」実生。これを買いました


第2版では、ちょっとだけ分類を更新
ところで、増刷した「シャボテン新図鑑」ですが、第2版でちょっとだけ変えた点があります。本を出した後も日進月歩で変化する分類トレンドを反映して、レブチア属として紹介した一部をアイロステラ属に移しました。ほかにも解説文などちょびっとだけ加筆しました。この本はいわゆる人気種も紹介していますが、レブチアのような南米野草サボテンなど、マイナーな原種も幅広く紹介しています。出版後「この本に載っているようなサボテンはどこで手に入りますか?」「いわゆる人気種じゃないものも扱っている業者さんはありますか?」といったお訊ねを何人もの方から頂きましたが、答えのひとつがこの廣仙園さんかなと思います。中川さんが、自分の好きなサボテンを“世間”に縛られず思いのまま蒔き育てている圃場は、ずっとそこにいたくなるような素敵な場所でした。
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