続・太平丸の顔。

先週に引きつづき、太平丸(Echinocactus horizonthalonius)の話です。
いろいろな産地の太平丸を、本格的に実生しはじめたのはここ数年のことです。
産地の確かな太平丸の種子はなかなか得難く、それまでは古い輸入株から得たタネや、
自生地で採取したタネを蒔くのが中心でした。


IMG_3845S.jpg
     E.horizonthalonius "KAOMARU"

上の写真は、20数年まえに「花王丸」の名前で同時に輸入された株同士の交配で得たタネを蒔いたもの。
親株(先週のエントリーに掲載)はすでに枯死しましたが、子孫を残してくれたというわけ。
肌色は緑色で、濃い色合いの比較的短い刺は球体に沿うように伸びます。親株のもつ特徴が、
既に出ている感じ。でも、この株が「花王丸」であることは確かだとしても、オリジナルの自生地が
メキシコのどのあたりなのか、残念なことにデータは何もありません。当時、似たような顔をした、
複数の産地からの太平丸に、「花王丸」の名前がつけられて流通していたと思われます。


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     E.horizonthalonius "nicholii" Waterman Mt.AZ

こちらは、ニコリーの産地、米・アリゾナ州のウォーターマン・マウンテン(Waterman Mt.)由来の
タネからの実生。より正確に言うと、産地種子の実生苗を接ぎ木し、その株同士を交配採種、実生
したものなので、2世ということになります。
上の「花王丸」の実生苗とくらべると、より稜が立ち上がり、刺も大柄な感じに伸びています。
国内で園芸的に「ニコリー」と呼ばれているものとも、顔立ちが似ている気がしますね。


こうして見ると、もっともっと色々な産地の太平丸を蒔いて、人為的選抜交配の結果ではない、
オリジナルの顔違い、野生のルックスを集めてみたい、という欲求が募ってきます。
そうしたなか、最近になって九州の大名人ONIさんのお導きもあって、これまで得難かったメキシコの
サカテカス州産(Zacatecas)やグアナファト州産(Guanajuato)など、あまり知られていない
各産地のタネを手に入れることが出来ました。いろいろ蒔いてみると、まだ2年ばかりしか経っていない
幼苗ですが、産地ごとの顔の違いが顕著に表れています。


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     E.horizonthalonius VZ703 El Diamante,Dur.
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     E.horizonthalonius VZ1067 El Vergel.Gua

まず写真上はドゥランゴ州・産の太平丸でVZD703(E.horizonthalonius VZ703 El Diamante,Dur.)。
「ドゥランゴ太平」も、産地としてはわりとブランド化しているというか、良い顔が出る産地という
評価のようですが、元気のよい刺の出具合は、先行きの期待感が高まる感じです。
そして下は珍しいグァナファト州産の太平丸でVZD1067 (E.horizonthalonius VZ1067 El Vergel.Gua)
グァナファト州はメキシコ中央部に位置する州で、太平丸の分布域ではかなり南のほうになると思われ、
これまであまり種子も株も見たことがありません。顔立ちもごらんのとおりかなり変わっていて、
鮮やかなブルーグリーンの肌色で、刺はこのサイズではまだ出てきておらず。おそらく刺の短いタイプ
なんじゃないだろうか・・・などと早く顔がみたくて接ぎ木したい欲求をなんとかガマンしています。
ちなみにVZDというフィールドナンバーはチェコスロバキアのZdenek Vasko氏らのコレクションです。

そして、


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     E.horizonthalonius VZ703 El Casco,Dur.

こちらはドゥランゴ州のエルキャスコ産の太平丸(E.horizonthalonius VZ703 El Casco,Dur.)。
ちょっと、先の花王丸の実生苗と似ていませんか?この実生苗の自生地の写真を以前ネットで見る機会が
あったのですが、懐かしの花王丸そっくりでした。かつて、日本にたくさん輸入された「花王丸」は、
このあたりの太平丸だったかも知れません。といっても、そんな顔の太平丸は他にもいくつか産地があり、
定かではありませんが…。

つづいては珍品。同じエキノカクタスの巌(広刺丸 E.platyacanthus)との自然交雑種といわれるこちら。


IMG_3784S.jpg
     E.horizonthalonius "diabolicus" VZD788 Est.Jazminal,Coah.
IMG_3768S.jpg
     E.horizonthalonius "diabolicus" VZD4978 Sabana Grande,Zac.

上は太平丸・ディアボリクス(E.horizonthalonius "diabolicus" VZD788 Est.Jazminal,Coah)。
これはコアゥイラ州産ですが、色々な産地に、このディアボリクス型がみられるようで、写真下は
サカテカス州産(E.horizonthalonius "diabolicus" VZD4978 Sabana Grande,Zac)。
どちらもよく似た顔をしていて、他の太平丸の実生よりも大柄で、稜が立っている感じ。また成長も
いくぶん早いようです。もし、私の蒔いた種が交雑種同士の交配で種子が実ったもの(F2)だとすれば、
先祖帰りとか色々出て来そうですが、いまのところ顔はみな同じよう。存外世代交代を繰り返して
固定しているのかも知れません。


IMG_3827S.jpg
     広刺丸(E.platyacanthus)

ちなみに、こちらは片親?と推察される広刺丸(E.platyacanthus)の実生苗です。
なんとなく雰囲気が似ていますが、ディアボリクスはこれほど稜が立っていないので、やはり両者の
中間的な特徴を備えているというところでしょうか。このディアボリクス、ネットで見る野生株の写真は
とても魅力的なので、将来がとても楽しみな株です。それに刺だけでなく花いろも巌の黄花なのか、
太平丸のピンク花なのか、それとも・・・ととっても気になるところです。
ちなみに、太平丸ロドリゲッティ(rodrigetty)と呼ばれているものも同様の自然交雑種と思われます。

最後に、


99June-garfield2S.jpg
     E.horizonthalonius "Garfield" DonaAna co. NM

メキシコの隅々まで歩き回ることの出来ない我が身を恨んでの負け惜しみ?の一葉。
私が自生地で見た太平ではいちばん素敵な個体が多かった、ニューメキシコ州ドナアナ郡の、
ある岩山の太平丸です。同じドナアナ郡でも別の山に行くと顔が変わり、この黒刺タイプはこの山だけです。
私はアメリカ合衆国の太平丸はあらかた見て回りましたが、わりと芸のない顔のコロニーが多いというのが
正直なところ。ですが、この山だけは群を抜いていて平均点が高く、強い黒刺の株が目立ちました。
石灰岩がゴロゴロする山で、直射が照りつける場所の株ほど、刺は強壮だったので、遺伝的素養だけでなく
環境的要因も大なのだと感じました。この産地で採種した実生苗が私をふくめ数人の趣味家のところに
あるはずですが、国内でもこんな顔に育ってくれると嬉しいですね。

太平丸、また会おう。


追伸・・・ところで、9月上~中旬くらいに、久しぶりに自家繁殖苗を中心にヤフーオークションに出品しようと
思っています。せっかくなんで太平も少し出そうかなと。(結局多忙に呑まれて挫折するかも知れませんが・・・^^;)
詳しく決まったら、ホームページのほうでお知らせします。

http://www.asahi-net.or.jp/~dt4k-ynd/index.htm


コメント

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Shabomaniac!さん、はじめまして。
…とは言っても、昨年ヤフオクでツルビニ・フラビフロルス他を譲って頂きお世話になっているのですが^^
太平丸、こんなサイズでも産地ごとにちゃんと顔の違いがあって面白いですね。
太平丸に限らず、これが実生の楽しみの一つといったところでしょうか。
これからも更新楽しみにしていますので、今後ともよろしくお願いします。

最後の太平丸凄いですね~!
ものすごい力を感じます。
誰も近づけねぇぞぉ~~~~!ってオーラを感じて素敵すぎです(^m^)

やっぱり地植え野生サボには勝てませんねぇ。
硬そうですよね(笑
かぼちゃに刺はえたかのような見栄え(笑
カッコイイe-350

太平丸、花王丸その他・・・いろいろなタイプが本当ありますね。僕も少し持ってますが、家のはコアゥイラということ他は産地無しで買いました。shabomaniacさんのブログ見てると実生からチャレンジしたいなあって思います。産地別で育てると違いがわかって楽しいですね。

>きくぞうさん
コメントありがとうございます。太平に限らず、実生は楽しみ∞ですね。
どれもゴマ粒みたいなものなのに、そこから育つ苗は千差万別・・・。タネならお財布にもやさしいですし^^;。
マイペースの週一更新ですが、今後ともよろしくお願いします。

>l-marsh さん
この太平丸の山、硬くて、痛そうな、寄せつけない迫力ばっかりでした。
私の栽培の目標は常に野生サボ。多少の日焼けやキズが勲章に見えるような感じが理想的です。ほんとは温室に並べるんじゃなくて、こっちが沙漠に小屋建てて暮らすのが一番いいんですが・・・ありえないって^^;。

>guritogure さん
太平の実生、時間かかりますが、そのぶん育て甲斐があります。最近はネットでタネ輸入もし易くなったので、是非やってみてください。コアウィラ産太平、いちばん豪壮なタイプ揃いですから、楽しみですね!こんどぜひ見せて下さい。


いろんな太平丸があるんですね。色々集めてみたいですがキリがなさそうです^^;聞いたことのない太平丸も実生されてて興味深いです。巌との自然交雑種もあるんですね~奥が深いですね。

>yoyonさん
太平、実にいろいろあります。日本だとニコリーとか雷帝とか、数少ない幾つかのタイプに価値が収斂されちゃいますが、それ意外にも魅力があるタイプは沢山あると。でも、タネの値段がわりと高い(ほかの一般サボの3-5倍くらい)のがつらいとこですね。
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沙漠植物、栽培、探究。

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