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ブーファン・ハエマンソイデス(Boophone haemanthoides)と、その亜種。

  
 今週ご紹介するのは、ケープバルブ。なんで今の時期に秋冬球根なんだ?と思うかも知れませんが、ちょうど花が咲いて、疑問に思って、調べたら、新たな発見があったからです。で、それがこちら、ブーファン・ハエマンソイデス(Boophone haemanthoides)。例の本、「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」にも載せて貰った、わりと大きな標本株。端正なボトル型の球根から、秋から春にかけて出るパウダーブルーの葉は、ウェーブがかかったようでとても美しい。この写真は冬に撮影したもので、いまの季節は葉を落として休眠中ですが、花が咲くのは夏で、ちょうど今なのです。




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   Boophone haemanthoides in bloom




 それがこの花。すこしくすんだ白い花です。お茶の香りに、ふんわり甘さを加えたような、素敵なフレグランス。私の妻はジャスミンを超えてると絶賛してました。花姿はコンパクトにまとまって、ハエマンサスのような佇まいです。ブーファンといえば、もう一種ディスティカ(Boophane disticha-ブーファン・ディスティチャとも)がとても有名ですが、こちらは赤~ピンク花で、アフリカ南部の広い範囲に分布していて夏型と冬型の双方があります。葉も波打たないものが多い。太閤秀吉という愛称もありますが、歴史上の人物の頭部が思い出され、少し可笑しくなります。
 さて、このハエマンソイデス(Boophone haemanthoides)の方は、南西アフリカ~ナミビアに分布が限られ、すべて冬成長型です。花色はベージュ~白で、パウダーブルーの葉は概ね波打つ。ディスティカより珍重され園芸的には高級品として扱われます。ところがディスティカにも、葉が波打ったり青みがかる型があったりするので花を見ないと実は区別が難しい。で、この個体はやや地味な白い花が咲いたことで、ハエマンソイデスであることが明確に証明されたわけです。




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   It may be 'ssp.ernesti-ruschii'
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   flower having small bracts and shorter tepals, distinctive features for ssp.ernesti-ruschii




 ところが、ここでひとつ疑問が生じました。
 ハエマンソイデスには、実は2つのタイプがあります。ひとつは通常のハエマンソイデス(Boophone haemanthoides ssp.haemanthoides)で、もうひとつが、エルネスティ・ルスキーと呼ばれる亜種(Boophone haemanthoides ssp.ernesti-ruschii)です。このエルネスティは、当初はディスティカの変種として記載され、後にハエマンソイデスの下に移されました。このエルネスティは、そもそもはナミビアのWittputz近郊で標本が採集され、長らくその一か所にしか生えていない稀少植物とされてきました。栽培下ではウルトラ珍品で、たまにその名前で輸入される植物は、高価なハエマンソイデスよりもさらに数倍のお値段で、容易に手が出せるモノではありません。で、このWittputz産のエルネスティが基本種のハエマンソイデスとどう違うかと言うと、花の苞がとても短い。そしてブルーの葉はやや短くほとんど波打たない。さらに、栽培も難しいとされています。
 ここでもういちど、我が家の株です。この個体はそもそも、ハエマンソイデスの名前で輸入された株で、おそらくは山木です。ところが、今回咲いた花を見ると、苞はごく短く小さく、花は露出していて、これはエルネスティの特徴に合致します。念のため基本種のハエマンソイデスの画像をネットで検索してみると、苞は花を包むように大きなものが殆どで、花被片も長く、うちで咲いている花とは異なる。一方で、我が家の個体は葉が甚だしく波打つので、タイプ産地のエルネスティとも明らかに違います。いったい、おまえはどっちなんだ??と新たな疑問が頭をもたげてきました。
 



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   bluish leaves are strongly wavy




 そこで、おなじみSANBI(南アフリカ国立生物多様性研究所)のHPをひらいて、両種についての記述を確認してみます。曰く、エルネスティは、苞が小さく、花被片が短い。また、葉のウェーブにはコロニーによる違いがある(エルネスティには波打たない型もある)と記載されています。また、ハエマンソイデスは海岸よりに分布し、エルネスティはより内陸に分布するという説明もあり、添えられた写真の“自生地のエルネスティ”は、葉が著しく波打っています。おそらくタイプ産地のものとは異なるでしょう。
 あわせて、最近刊行されたこの類についての大著「The Amaryllidaceae of Southern Africa (Graham Duncan/Barbara Jeppe/Leigh Voigt)」も参照してみました(余談ですが、この本は実に素晴らしい内容で、そのうち書評も書きたいと思ってます)。やはり、上記SANBIとほぼ同じ見解が示されていて、ハエマンソイデスとエルネスティの相違を花、とくに苞の大きさに見出しています。そして、エルネスティの自生地はナミビアの一か所ではなく、ナミビア~南アフリカ北西部に複数示されています。




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   smaller one grown from seed, 20 years.




 ここまで調べて、どうもうちにあるこの個体は、エルネスティ・ルスキー(Boophone haemanthoides var.ernesti-ruschii)と見るべき植物ではないか、という認識に立ちつつあります。ただし、基準産地Wittputzの、短直葉の特異なタイプではなく、SANBIのサイトにアップされているような異なる産地のものです。そもそも、エルネスティを亜種として認ず、ハエマンソイデスにまとめてしまう考え方もあるので、それほどこだわるところではないかも知れません。様々あるハエマンソイデスのタイプ差の範囲、とも言うのが妥当なところなんでしょう。だけど、なんだか、ちょっとだけ・・・嬉しいような気がして、この株への愛着が深まってしまうのは、稀少種をありがたがる園芸人の習い性なんでしょうか。そして、短直葉のタイプ産地のものも、いつか育ててみたいと思えてきたり・・・。




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 そうそう、エルネスティは難物、と言われますが、このタイプに限っては難しいとは感じません。9月半ば頃、涼しさを感じる頃に灌水をはじめると、すぐに青々とした葉が姿を現します。以降は、霜の当たらない陽あたりの良い場所で管理し、春まで、2週に一度くらい水をやり続けます。晩春、葉が黄色くなってきたら、水を切り、涼しい半日陰で夏越し休眠させます。うちには、他に実生のハエマンソイデスや、夏型、冬型、双方のディスティカなど数本のブーファンがありますが、どの株も枯れたり調子を崩したことはありません。たいへん丈夫な長命の植物で、ずっとそばにいてくれる相棒です。








テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

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No title

いつも楽しく拝見しています。
ケープバルブが好きなので、取り上げていただいて嬉しいです。
ブーファンの形、丸々として大変素晴らしいですね。
実生の方が20年ということで、こんなに太らせるにはどのくらい時間がかかることやら…
私はまだまだ初心者なのですが、相棒と呼べるくらいの関係を築いていきたいです。
今後も更新を楽しみにしております。

No title

>植物中毒さん、

お返事が遅くなってすみません。。
ケープバルブのなかでも、ブーファンは大きくて、特異な存在ですよね。最近入ってくるような大株は何十年、下手すれば百年近く生きてるものもあるのかなと思います。実生苗も丈夫ですが、まだ花を見ません。冬にある程度温度があるところで真冬も水をやって育てれば、もっと早く大きくなるのかなと思います。
プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。
著書「珍奇植物 ビザールプランツと生きる(日本文芸社)」

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