トロピカルなサボテンたち (書評「サボテン全書」)
いや、暑い。外にいると流れる汗が止まらない。
台風が通り過ぎて、猛暑が戻ってきます。温室作業を午前の2時間ほどで切り上げて、
午後からは、図書館へ涼みに行きました。そこで見つけたのがこの本です。
「サボテン全書 All about CACTUS」
パワポン・スパナンタナーノン著、飯島 健太郎(監修)、 大塚 美里(訳)。
400ページ写真1000枚以上のずっしり重い大著で、前から気になってたけど、
タイ国の本の翻訳版、なおかつ高価なので、手が伸びなかったもの。
でも、借りて読めるならありがたい、シメシメ、と思って借りてきたのですが・・・
結論から先に言うと、実に素晴らしい本でした。
掲載されている植物と写真のクオリティがとても高い。
全部黒バックで、濃厚な色彩で写しとられたサボテンたちは、いかにも熱帯風。
自生地ルックとか、野の草の味わいとか、いつも私が求めていることとは反対ですが、
どのサボテンも美しく、解説も訳文もしっかりしているし、情報も詰まっています。
国内で以前刊行された「原色サボテン事典」(これも役立つ本だけど)と比べても、
標本のクオリティ、写真の技術が素晴らしい。
中を少し覗いてみましょう。以下はアマゾンの中身拝見のページへのリンクです。
●緋牡丹錦の群像
●兜についての考察
図鑑という名前ですが、サボテン概論みたいな導入になっていて、自生地の写真や
繁殖や病虫害、さらに土づくりなど、栽培法についてもわりとしっかり書いてある。
ただし、常夏の国、タイでの栽培を前提としたもの。
タイの本ということで予想するとおり、兜をはじめてとするアストロフィツム属、
および関連の園芸種についてはたっぷり紙幅を費やして紹介されています。
スーパー兜の登場でおったまげた世代としては、その末裔たちがここまでの多様性を
獲得したのか、と改めて感服。一本も育ててないけど、ちょっと興味が湧いた。
同様に、タイといえばお馴染みのギムノの斑入り、緋牡丹錦の色々、いろいろな、
バリエーションが色彩豊かにページを飾っています。このあたりは予想どおり。
●アリオカルプス、日本人好みの標本株
一方で、アルファベットのAからはじまって、ひととおりサボテン科各属全体を
展望しようという意図もあり、人気がない仲間、などと断りながら、柱サボテンの
各属なども紹介されていたり、リプサリスなど着生サボテンも無視していない。
人気のコピアポアも、黒王丸一点買いじゃなくて、マイナーなものも網羅している。
特に最珍品のデコルティカンス(C.decorticans)が載っていたのはビックリ。
アズテキウムのページに、立派な株の写真を載せつつも、「盗掘株の子孫」と
記されているあたりも、愛好家の心の軋みを感じさせて味わい深いです。
やっぱり、と思ったのはフェロカクタス(Ferocactus)で、すごくあっさりと
4ページくらいしか記載がありません。本来タイの人が好みそうな派手な姿の
神仙など赤刺系が登場しないのは、熱帯では美しく作るのが難しいからでしょうね。
●渋めの南米サボたちも・・・
私として気になるのは、いわゆる北米高山種といわれる難物サボテンの扱いですが、
こちらもやはりというか、記載は薄め。エキノマスタス(Eechinomastus)は2ページ
割かれていますが、桜丸(E.intertextus)として出ている写真がちょい怪しい。
ペディオ(Pediocactus)は1ページのみで、スクレロ(Sclerocactus)は
扱いがありません。これもタイでの栽培には向かないからでしょう。
でも、月の童子(Toumeya papyracantha)と、雨林サボテンの大珍品、
ストロフォカクタス・ウィッティー(Selenicereus=Strophocactus wittii)が
隣りあったページに載っているのはちょっと感動しました。
結局、アマゾンでポチリとやってしまうことになりそうです。
テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用
コメント
おススメです
Shabomaniac!さん、こんにちは。
この本、最近の園芸書(?)のなかではずば抜けて高価です。しかしそれ以上に中身が濃く、買って損はないなと思いました。解説もシッカリしていて、眺めるだけでなく読んでタメになる本でした。
昭和のサボテンブームの頃、龍胆寺さんや伊藤さんの豪華本が数千円(今に価格にすると諭吉さん数人分!!)でバンバン出版されていましたから、その感覚で云えば抜群のコスパです。今の日本でこれだけのサボテン写真を集めるのはたいへんでしょう。
Shabomaniac!さんが指摘しているとおり、タイと日本との栽培環境の違いで取り上げる種類の割合に片寄りもありますが、サボテン全般を知るにはおススメの一冊です。クーラーの効いた部屋で読書するのも良いですね。
この本、最近の園芸書(?)のなかではずば抜けて高価です。しかしそれ以上に中身が濃く、買って損はないなと思いました。解説もシッカリしていて、眺めるだけでなく読んでタメになる本でした。
昭和のサボテンブームの頃、龍胆寺さんや伊藤さんの豪華本が数千円(今に価格にすると諭吉さん数人分!!)でバンバン出版されていましたから、その感覚で云えば抜群のコスパです。今の日本でこれだけのサボテン写真を集めるのはたいへんでしょう。
Shabomaniac!さんが指摘しているとおり、タイと日本との栽培環境の違いで取り上げる種類の割合に片寄りもありますが、サボテン全般を知るにはおススメの一冊です。クーラーの効いた部屋で読書するのも良いですね。
No title
>noriaさん
仰るとおり、オールカラーでこれだけの写真数だということを考えるとリーズナブルな本と言えそうです。ほんとは中身ももう少し紹介したいところですが、著者に了解を得る時間がなくこんな記事になりましたが。。
インターネット時代になったといっても、やはり整理され、まとまった情報という意味では、本の価値はなお大きいと思います。分類なども、ネットに間違った記述があると、それがコピペで拡散されて、サボテン多肉の小さい世界では、修正作用も働かないで、間違ったままひろまっている情報も結構あります。なかなか難しいところですね。
仰るとおり、オールカラーでこれだけの写真数だということを考えるとリーズナブルな本と言えそうです。ほんとは中身ももう少し紹介したいところですが、著者に了解を得る時間がなくこんな記事になりましたが。。
インターネット時代になったといっても、やはり整理され、まとまった情報という意味では、本の価値はなお大きいと思います。分類なども、ネットに間違った記述があると、それがコピペで拡散されて、サボテン多肉の小さい世界では、修正作用も働かないで、間違ったままひろまっている情報も結構あります。なかなか難しいところですね。