植物を室内で育てる

     
最近、インスタグラムを始めたこともあって、目下大流行中の多肉植物やサボテンが、
どんな風に楽しまれているのか、目にする機会が増えました。
なかでも、かつては多肉のなかでも極くマイナーなジャンルにすぎなかったコーデックス(塊茎植物)が
ステージの真ん中で光を浴びるようになったのは、驚くべきことです。




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刊行されたばかりのコーデックス本!むかしはサボテン本の巻末で数ページしか扱われないジャンルだったのに・・・
魅力的な写真がいっぱいで、取り上げられている種も多数。楽しめる本です





ニ十世紀の後半、私が多肉の会などに顔を出していた頃には、若い世代は自分ふくめ片手に満たないくらい。
早い話が年配者の趣味といった状況でした。よって、育て方楽しみ方も、今とはぜんぜん違いました。
集まりのメインイベントといえばセリ会。いまでいうオークションですが、値段が高いことが正義、
みたいな世界なので、そういう会で自生地の話や学名など持ち出したりすると、学者さんじゃあるまいし
横文字は勘弁してくれよ、などと言われてしまう。アカデミックに深めてこそ楽しい植物趣味なのに。
そしてまた、今みたいに容れもの、鉢にこだわる人はあまりおらず、3本足の黒塗り楽焼き鉢かプラ鉢の二択。
基本、和の世界観なので、部屋(洋室)に置いて楽しむにはマッチしません。値段の高い植物をテカテカの
塗り鉢に植え込んで、品評会で番付をきめるみたいな「旦那衆の道楽」の感覚は、自分のライフスタイルには
どうにもあわないと感じていました。気に入ったサボテンやコーデックスのためには、シンプルな和鉢(これが
案外なかった)や、輸入鉢を苦労して探しましたね。

最近は、鉢の世界が大発展して、現在の生活空間にあう器が圧倒的に入手しやすくなりました。
それにともなって、今と当時で最も違いを感じるのは、植物を温室やハウスに閉じ込めて育てるのではなく、
より生活空間に近づけて楽しむようになったということでしょうか。
そもそも、植物を集めはじめた頃は、出窓や棚の上に手に入れたばかりの宝物を並べて、
朝晩眺めて楽しんだはず。それが数が増えて、温室やハウスを持つようになると、植住分離じゃないけれど、
生活空間からは植物が消えていく。多くはそんな経過をたどった筈です。




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昨今人気のアデニア・グロボーサ(Adenia globosa
冬はこんなふうに屋内で過ごしますが、刺枝が場所をとるんですよね





そういう意味で、昨今のトレンド、人が過ごす空間に植物たちを配置して、一緒に暮らす、という行き方は
とても素敵なことだと思います。ただ、一方でなんだか心配な気持ちも頭をもたげてきました。
スタイリッシュな鉢に植え込まれ、室内栽培に供されるのは、多くがコーデックスとよばれる、
塊茎・塊根植物です。多肉植物のなかで、同じく大変人気のあるエケベリアなどはあまり見かけません。
コーデックスの質感や存在感などが、室内調度と馴染みが良いということも大きな理由ですが、
もうひとつ、これらが植物のなかでもとりわけ静的で、成長変化が遅鈍だということがあるでしょう。
つまり、一般の草本などと比べても徒長しにくいため、飾った状態で「長持ち」するということです。
しかし、「長持ち」というのは、別の言い方をすれば緩慢な死を迎えているに過ぎないのです。




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こうした雨林植物のなかには、周年屋内の人工的環境の方がうまく育つものもあります
最近人気があるアグラオネマや、ジュエルオーキッドなどはその代表





たとえば、今最も人気があるパキポディウムはじめ、多くのコーデックス(塊茎多肉)の自生環境は、
通常の室内とは真逆と言っていいくらい異なります。照りつける直射日光、吹きつける強風、
昼夜の激しい温度差。そうした過酷な環境があの独特のフォルムを生み出し、育ててきた訳です。
極端に言えば、人間にとって快適な環境は彼らにとって不健全で、彼らが健全に育つ環境は
人間にとっては耐え難い、という側面があるわけです。パキポディウムなどは無遮光の温室でも
徒長するくらいの植物なので、半日程度、窓越しの光線があたるだけの環境で長く育てることは
困難と言わざるを得ません。LEDやメタハラなど照明機材の進歩によって、室内栽培の環境が
飛躍的に進歩していることも事実ですが、光だけでなく、日中の高温や、風の通りなども不可欠です。
それらすべてを人工的に満たすのは、屋外に栽培場所を確保する以上に大変なことでしょう。

いま、市中では多くの野生由来の多肉植物が、輸入販売されています。長い間、原産地の環境で
育まれたそれらの株は、多少不本意な環境に置かれても、すぐさま音をあげることはないタフさを
持ち合わせています。部屋に飾れば最高のオブジェになることも確かです。しかし、十分な設備の
ない室内に据え置かれた場合、2年、3年と経てば、やがて破局が歩み寄ってくるでしょう。
皆さんの室内環境がコーデックスなど乾燥地の多肉植物にどの程度適しているか、ひとつの目安は、
それらの小さな実生苗が順調に育つ環境かどうかです。あたりまえですが、実生苗が育たない環境では、
大株も次第に衰弱していきます。他にも、より環境変化に敏感な葉もの多肉植物、たとえばエケベリアや
メセン類などが姿を乱さずに育つかどうか、というのも目安になるかも知れません。




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こちらも窓辺で春待ちのパキポ・ビスピノースム(Pachypodium bispinosum)と
木の葉サボテンのペイレスキア・ブレオ(Pereskia bleo)。赤い帽子はメロ・マタンザヌス(Melocactus matanzanus





では、室内でコーデックスやサボテンを育てるのはやめたほうがいいのか?と問われれば、そんなことは
ありません。先にも述べたように、身近に植物がある暮らしは素敵です。それに、コーデックスやサボテンは
タフですから、過剰な無理をさせなければ、一定期間ヒトとの同居にもたえてくれます。
ただ、動物のように動くことはもちろん、声を出すこともできませんから、人の側が彼らのコンディションを
推し量ってやることがとても大切です。室内環境は、今の時期なら冬場の寒さをしのぐという意味もありますが、
成長シーズンに室内で過ごすことは、いわば我慢の時間になります。そこで、植物を室内に飾る期間と、
より望ましい環境(庭やベランダ、温室など)でのびのび育てる期間とを、交互に、できれば3交代くらいすれば
理想的です。実際、私のところでも、冬は室内、夏は屋外で十年以上元気に育っている植物が多々あります。




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私のところでは、大半のパキポディウムは、5~9月のあいだ、露天雨ざらしで栽培
屋内やハウスでは、枝がひょろ長く伸びて姿が乱れますが、直射日光と風で、幹も丸々太ります





ここ数年、数多く入ってきている山採り輸入株も、無尽蔵ではありません。多くの種は、限定的に分布する
稀少種ですから、いずれは絶滅してしまうか、その前にワシントン条約等で輸入が規制されればまだ幸いでしょう。
コーデックスの黄金時代ともいえる今の時代。でも、五年後、十年後には、そこらじゅうに干からびた亡骸が
累々と転がり、もう二度と手に入れることは叶わない・・・みたいな事態になったら、悲しすぎると思いませんか。
原産地からはるばるやってきた稀少な植物を、切り花のように消費しないで、末長く一緒に過ごして、
そしてできれば種をとって次世代に繋げて・・・大ブームのその先に、そんな未来が拓けることを願っています。













テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

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No title

こんばんは。
久しぶりにじっくり読んで考えさせられました。実は、ボクも今同じようなことを考えていたからです。
安定的に、質の良い物が生産供給されれば、山取りは本当に減るでしょうか。ここが今一つ確信に至らないでいます。でも園芸屋としては、ここが活躍できる所なのではとも思います。
また、彼の本にありますような、植物のインテリア化には強い違和感を感じています。その一方で、この記事にありました「植物を温室やハウスに閉じ込めて育てる」という表現にハッとさせられました。共に生きることが出来ずに何が園芸だ、ということを忘れていました。
いよいよマダガスカルに足を運んで、実際に見て、考えたくなりました。

No title

おはようございます。
わたくしは多肉を長く見てきてないので、その流れを良く知らないのですが、
昔はコーデックス以外の受け入れ易い形が日本人に人気があって、趣味の多様性が進んだ今、コーデックスも市民権を得たのでしょうか?
見当違いならばすみません。m(_ _)m

記事と別の話になりますが、以前相談させて頂いたことを再度お尋ねさせてください。
直径12cmほどの現地球コピアポア弧竜丸についてです。
これは昨年、根無しの里芋のような状態で、鉢に入ってではなく、
そのままむき出しで売られていたものを買い求めたものです。
購入後にサボテン用の用土に肩まで埋め、晴れた日も雨の日も外で培養して参りました。
なお、雨には一切あたらせず、水やりは秋口に一回のみ鉢底から滴るほど潅水したのみで、後にも先にもその一回のみ。
日照時間は年平均5〜7時間ほど、時々鉢を回しながら満遍なく日光に当てました。
たった一年ぐらいでこのコピアポア属が対して成長したりしないとは思っていましたが、つい先日、土の中はどうなってるのか知りたくて掘り起こしてみました。
あわよくば、根が少しでも出ているといいなと思い。
結論から言うと、約一年前となんら変化はございませんでした。
中心深く根を探しましたが、つるつるのまま。
しかし、一年前と同じ強度の硬さで、腐ったりスカスカだったりもせず、普通にコピアポアの質感です。萎んでもいません。
今後、どうなるかがわたくしの疑問なのですが、これは目の前の弧竜丸にしかわからないことだと思います。
冬場の管理も含めて、想像出来る範囲でアドバイスなど頂けると幸いです。
宜しくお願い致します。m(_ _)m

No title

ついに、、、この日がキターーーー(^∇^)
管理人様が昨今のブームに対する長文の批判記事を
書いてくださるのを今か今かと待っていました!!
とても嬉しいです 嬉しすぎるw


塊根を譲らないハウスには刺青を見せて脅しとる
奴もいます 管理人様もお気をつけください

ちなみに私の環境と腕だとメセン最強との呼び声も高い
フォーカリアすら黒腐れさせてしまいます
パキポディウムも徒長しまくりです
でも好きだから自分の環境にあった種では
ダメなんです 好きなのものを栽培したいのです

No title

>鍵コメさん
ペディオの開花、素晴らしいですね。開花するのは、うまく育っているサインのひとつなので、栽培家とっては嬉しい瞬間です。コーデックスのなかでも、南ア産のものなどは比較的寒さに強いですよ。

>さぼちゃんだいすき さん
そうですね、今のブームが、いい形に発展すると良いですね。山採りは今に始まったことじゃなくて、バブル時代の兜や牡丹の輸入も凄まじかったです。欲しいものを目の前にして、人という生きものにガマンを求めるのはなかなか難しいですから、ニーズの高いものがプロの手で増殖されるのが一番ですね。この塊根の本からは、著者の植物に対する愛情が伝わってきて、とても共感しました。

>肉盆魚さん
山木のコピアポアには発根しずらいものありますね。私のところで、根なしで5年くらい持ったものがありましたが、結局根が出ませんでした。なぜかはわかりませんが、動かないと心を決めたら動かないみたいな感じでした。強制的な手段としては、硬い皮膚を削り、瑞々しい部分をすこし露出させ発根剤など塗り、挿し木の要領で発根促す方法もあります。

>ガルボさん
今のブームに全面賛成ではないにしても、必ずしも批判しているわけではないのです・・・。私が若い頃(つまり昔)も「原っぱにお札が落ちてたら一枚残らず拾うだろ!」と言い放って輸入球を扱う業者さんがいました。私もその人から買ったことがあるし^^;。ブームになれば、色々な人がその世界に入ってくるのは古今同じです。でも、今回紹介した本には、栽培法や望ましい環境なども書きこまれていて、昨今多く出ているムック本よりずっと中身が濃いし、育てている人には読んでもらいたいと思いました。





No title

shabomaniac!さま、本文とは関係のない質問に対し、
真摯にお答え頂き、ありがとうございます。
我が家唯一のコピアポア弧竜丸山木球は、来春その活動が始まる頃に
挿し木を試してみたいと思います。
なお、以下にわたくしなりの挿し木方法を記したいと思いますので、
間違いやご助言があればご教授くださいませ。
まず、活動が始まる時期、だいたい5月頃に鉢から出して、鋭利な刃物で弧竜丸の尻の部分を削る。
湿った部分が露出するくらいのカット。
3日~2週間ほど、傷口剥き出しのまま土の上に横たわらせておく。
(日向が良いでしょうか?それとも日陰?)
傷口にルートンを塗布。
発根が確認出来たら、培養土に埋めてたっぷりと水をやる。

…どうでしょうか?
これで発根しなかった場合、剥き出しのままに放置すべきか、それとも発根が期待出来なくても土に埋めてみるのが良いのか教えて頂けると幸いです。
コピアポア属の挿し木は初めてであるし、大変大切にしている山木弧竜丸なので、是非とも発根成功させてみたいと思っております。
宜しくお願い致します。m(_ _)m

No title

こんばんは。
私は現地球とか株とか出回っているものを見ても何故かときめかないのです。
それを見て思うのはどこかに種子が売っていないだろうか?そのことばかりです(笑)
一度火星人の小さな株を購入したことがあります。その後実生もして同じ環境で育てていました。
二年ほどして購入した株がへたれてダメになってしまったのですが、実生株はまだ小さいですが残っています。
やはり自分のところで種から育てたものは可愛くて目もよくかけていたかなとも思います。

No title

>肉盆魚さん
発根剤は、切り口が乾く前、というか切った直後に塗布しています。あとはお書きになってるとおりで良いかと。根の出にくい株というのがあるようで、なかなか厄介ですね。

>saeさん
山木には独特のワイルドさはありますが、自分で種から育てた株の方が愛着はわきますよね。どういう風に成長する植物なのか、観察し、会話しながらつきあっていく楽しみとか。たくさん輸入株が入っているので、これから種が出回ることにも期待したいですね。火星人は実生からでも立派な芋が育ちますね^^。

No title

ジグザグサボテンとウラジロは見た目が似ているが
これは両者ともに葉ではなく茎が葉のように変化した葉状茎
だから収斂したのだろうか?奇しくも同じような環境で暮らしているし
きっと光合成と体を支えるのに効率のいい形なんだろうなぁ


↑こういう視点から多肉を見るのが好きなのですが
賛同者が少ないのが悲しいです
例会や新年会でもこういうスピーチは鬱陶しがられて
「で?その植物作りがいある?」こんな調子です
サボマニアック様は貴重な理解者だと勝手に思わせてもらってますw

No title

> 磯巾ととさん
いぜん、アメリカや欧州の趣味家たちと、自生地キャンプ旅に行ったことがあります。星空の下、ランプの灯り、乏しい英語力で話しこんだのは、ずっとそんな話でした。メンバーは天文学者と植物学者、弁護士に車の修理屋。それに核分裂反応の研究者と、いろいろ。でも、砂埃まみれの好で乾いた川床に寝袋転がして眠ることをいとわない、気持ちのいい人たちでしたね。

はじめまして!

こんばんは。ハムオと申します。
多肉植物初心者でパキポディウムを育てています。こちらのブログを拝見するまではパキポは室内で管理していました。しかし、室内オンリーだと何度か枯れそうになったりして徐々弱っていきました。
「パキポディウムを野育ちさせる。」の記事内の実生グラキリスを見て、屋外管理に変えることを決意しました。5~10月は屋外、冬は日の当たる室内とスタイルを変えたところ、パキポは急成長し、とても調子が良くなりました。元気のいい植物を見るとこちらもパワーをもらっているような気分になります。
こちらのブログを参照して本当に良かったです。ありがとうございました。
当方ブログをやっていまして、誠に勝手ながらリンクさせていただきました。今後ともよろしくお願い致します。

No title

>ハムオ さん
コメント&リンクありがとうございます。栽培の参考になれば幸いです。塊根類は動きが遅いので、室内でも平気そうに思えますが、観葉の多くのような林にはえる植物ではなく、陽射しが好きなものが多いです。種から育てていらっしゃるのを拝見して嬉しかったです。野生株みたいなカッコいい木をぜひ育ててください。
プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物、栽培、探究。

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