エスコバリア・ミニマ

        
小さいながら、気品と風格をともに備えている。
象牙色の端正な刺が球体を密に覆い、あざやかなマゼンダの花をよく咲かせる。
成長は遅いですが、とくべつ気難しいこともなく、実生から正木でちゃんと育つ。
とまあ、いいことずくめ。北米産の小型種のなかでも屈指の鑑賞価値を持つサボテンです。




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                       Escobaria minima=Coryphantha nellieae




エスコバリア・ミニマ(Escobaria minima=Coryphantha nellieae)。
この属の中では珍しい濃色の花を咲かせ、刺も太くて独特なので、ほかの種と混同されることは
なさそうですが、他の属、マミラリアの明日香姫(Mammillaria gracilis "Arizona Snowcap")と
ちょっと似ています。
比較的新しい種類と思われますが、30年以上前の本、原色サボテン写真集(平尾博著)にも
「コリファンタ・ネリー」の名前で写真が掲載されています。しかし、タイプ差がほとんどなく、
大群生にもなりにくく、斑入りが出ても刺で肌が見えない。そんな個性が“特別”を求めるマニアに
飽きられてしまったのか、次第に見かけなくなりました。
というかバブル時代、サボテン界では一部の投機的な品種に趣味家と業者の関心が集中し、
多くの小型種、稀少種が消滅しましたね。いま、国内にあるミニマは、今世紀以降、愛好家が
輸入種子から育てたものが大半かと思います。




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ミニマは1頭の球径は1cmそこそこしかありません。高さも数センチ。
大人の親指サイズもあれば立派な大球です。しかし、年を経ると自然に子吹きし、こじんまりと
群生するので、3~4寸鉢で楽しむことが出来ます。写真の株は実生から7年程度経っていますが、
うまく育てればもっと早く育つでしょう。接ぎ木すればさらに促成出来ますが、丈が伸び刺間も空くので
見栄えはいまひとつになります。花は初夏~秋にかけ断続的に何度も咲き、しかも株立ちで群開するので、
たいへん見ごたえがあります。




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                  Escobaria minima in habitat, South of Marathon,TX, USA




ところで、ミニマは花もよく咲き、育てやすいサボテンですが、実はワシントン条約の付属書1に
早くから登録されています。花籠や菊水、牡丹類などと同様の稀少種なのです。
自生地は、アメリカ・テキサス州南部の町、マラソン(Marathon)近郊に限られています。
一帯は特異な地質地形のエリアで、ミニマの自生地は、ノバキュライト(novaculite)と呼ばれる
白色チャート(岩石)が堆積した丘です。マラソンの町からハイウェイ385号線を南下すると、
白っぽい石に覆われた低い丘が出現しますが、このような場所にだけ生えているのです。
ほかの地質のところには見られません。




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私は過去に2度、自生地を訪ねましたが、有刺鉄線で囲われた私有地なので入りにくかった。
アメリカ人の友人に案内してもらい、ハイウエイからごく近いエリアだけ探索しました。
ミニマは地面を覆う白色チャートの隙間に、頂部だけ僅かに覗かせるように生えていて、
ほとんどは単頭です。小さくて目立ちませんが、数は少なくない。花どきに訪れたら見事でしょう。
朝夕には霧が立ちこめることが多い場所とのことで、イワヒバ類も目立ちます。
同じ場所には、エスコバリア・バリカラー(Escobaria tuberculosa ssp.varicolor)、
ヘステリ(Escobaria hesteri)、黄刺大統領(Thelocactus bicolor ssp.flavidispinus)などが
生えていますが、これらはミニマと異なり、このチャートの丘以外の場所にも広く分布します。




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                       Escobaria tuberculosa ssp.varicolor
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                       Thelocactus bicolor ssp.flavidispinus
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                       Echinocereus viridiflorus ssp.davisii




ミニマと同じく、この特異な地形の丘だけに生えているのが、蝦サボテン中の最稀少種、
ダビシィ(Echinocereus viridiflorus ssp.davisii)です。これもごくごく小さくて、
チャートの隙間、イワヒバの陰に隠れるように生えていて、ミニマ以上に見つけにくい。
余談ですが、ダビシィは青花エビの亜種扱いなので、ワシントン条約の付属書1には
登録されていません。しかし、希少性はミニマと同様かそれ以上です。ダビシィと基本種の
違いは明白で、生殖的にも隔離されており、別種として保護してあげて欲しいところ。
もっとも、いずれも広く栽培されているので、自生地が荒らされる心配もなさそうです。
また、このチャートの丘はハイウェイから離れた場所にも複数点在していて、大半が私有地で
人の出入りがありません。そうした場所に相当数のコロニーがある可能性はあります。




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小さいし、ほかの植物に紛れて栽培棚の迷子になりそうなサボテンですが、名品といえる
もののひとつだと思います。お持ちの方は、いまいちど手に取って、近くからじっくり
眺めてやってください。






テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

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Shabomaniacさん
いつも楽しく拝見させて頂いております。
園芸店の片隅に置いてあったミニマを持ち帰り、花の美しさと新刺の魅力に驚きました。
実生してみたい種の一つです。

Escobaria minima、うちにも実生後三年余のものがおりますが成長は遅々としたものです。播種二年後の昨年、一株のみ初開花し、今年は他の株もぼちぼちと咲いてくれましたが、大きさは1cmほどからほとんど変わりません(w)。
メサ・ガーデンからの種ですが、マラソンより少し南のBrewster郡の産と記されていました。
Shabomaniacさんの自生地情報からすると、珪酸塩白土などでもう少し用土をアルカリに振った方が良いのかなと思っております。

エスコバリア・ミニマ、大きくならず、籠状の刺も痛くなくて良いですね。
テキサスの限られた地域の白っぽい石の中に潜んでいるのに、よく見つけられました。
うちのも自生地の様子と重ねてじっくり眺めて来ました。
これから日差しを少し和らげて大事に育てたいと思います。

刺からコリファンタが良いかなと思いますが・・・。

Shabomaniac!さん こんにちは

minimaの自生地写真を初めて拝見しました。
解説も詳しく参考になりました。

白色チャートにミニマの白刺。カモフラージュ
している様ですね。
特異な地質の限られたコロニーで、ひっそり
棲息している感じ。

我が家には、実生の群生株を一本置いています。
刺色がやや赤味を帯びています。
彼らの故郷を知ると親しみが湧いてきました。

>cooパパさん
むかし、サボテン写真集に出ていたミニマを見たときは、実物はもっと大きい植物のように見えました。いまは園芸店でも売っているんですね。私も先日、ホームセンターでアエオの明鏡を見つけました。意外に手に入れにくい種類なので、ワンコインで即購入しましたよ。

>アイハルさん
成長遅いですが、3年もすればそろそろ開花ですね。マラソンはBrewster郡の北の方で、SB氏の種は、多分私が見たのと同じ丘の個体がオリジンだと思います。とにかく湿っぽい場所で、2度訪ねて、2度ともじっとり土が濡れていて、苔とイワヒバがびっしり生えていました。

>masutusさん
地味な植物も、自生地で触れ合うと愛着がひときわ深まります。というか、地味で見つけにくいほど、愛着がわくのかも知れません。ペディオのノウルトニーやウインクレリなどもそうですね。この山ではミニマも、隠れ上手ですが、ダビシィはさらに上手で、イワヒバの中に生えているので数本でも見つけられたのが奇跡でした。

>Doremifaさん
案内してくれた人は「ライムストンの丘」と言っていたのですが、より詳しく調べてみるとチャートのようです。ミニマは、この石の敷き詰められ場所以外には生えていない、と聞かされました。地質の化学的な要因によるのか、物理的な要因によるのか・・・興味深いところです。南アのメセンなどは多く、石英平原に生えていますね。石拾いも一緒に楽しめそうですが・・・^^。

あっ、マラソンもブリュースター郡の町なんですね。迂闊でした。
ということは、Shabomaniac!さんのおっしゃるとおり、このミニマはほんのピンポイント的に自生してるんですね。そんなサボテンが家のフレームにあることが何とも不思議な感じです。
自生地は湿気の多い土壌なのですね。私にしては水やりを辛くし過ぎていたのかも知れません。来年は少し方針を変えて様子を見ることにいたします。
いつもながら、ご示唆をいただきありがとうございます。

>アイハルさん
白いチャートの場所にだけミニマがあるのは、擬態の関係なのか、地質の物理的化学的影響なのかはわかりません。ただ、風景にはとてもマッチしていました。

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沙漠植物、栽培、探究。

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