収穫期。

                    
空はどんより。空気はジメジメ。お天気ばかりはどうにもなりません。
花はあらかた終わって、新刺もそろそろ色あせる。久しぶりに覗いた実生バッドは苔だらけ。
そんな時期ですが、雨のいちにち、北米難物サボテンの種を収穫しました。
本来はもう少し早めに済ますべき作業でしたがそのままに放置しており、拙サイト掲示板の
masutusさん収穫報告に接して、あわてて動いた次第。
北米難物サボの総本山、メサガーデンも最近元気がない?ので、これらの種の保存は愛好家が
担うほかない、と責任感も感じるのですが、これがなかなか容易でない。
種を得るには同時にふた株(2クローン)の開花が必要なわけで、ただせさえ育てにくい、咲きにくい連中を
同時に開花させ、その時間帯に在宅し、授粉してやらねばならないのです。




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                    Pediocactus bradyi ssp. bradyi SB470 Coconino Co,AZ
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                    P.paradinei KY9825 Kaibab Plateau,Coconino Co,AZ
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                       P.bradyi ssp.despainii SB989
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                  P.peeblesianus ssp.fickeisenii KY9123 Houserock Valley,Coconino Co,AZ
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                     Echinomastus acunensis Pima Co,AZ




花のタイミングをあわせる工夫、その時期を休日にずらす工夫、としては、蕾の生育状況をみながら、
鉢を暗所にとりこみ生育を遅らせたり、おなじく晴天待ち開花スタンバイの状態を引っ張ったりします。
こうした作業で、数日~1週間程度、花の咲く時期(受粉適期)をコントロールすることができます。
今年は、ペディオの最稀少種ブラディ(Pediocactus bradyi ssp. bradyi SB470 Coconino Co,AZ)が、
ふた株同時に開花してくれました。また、我が家で2本だけ、オリジナルの種子から育ってくれている
パラディネイ(P.paradinei KY9825 Kaibab Plateau,Coconino Co,AZ)や、同じくオリジナル種子実生の
斑鳩(P.peeblesianus ssp.fickeisenii KY9123 Houserock Valley,Coconino Co,AZ)、
さらにエキノマスタスのアキューネンシス(Echinomastus acunensis Pima Co,AZ)も複数開花しました。
一方、デスパイニー(P.bradyi ssp.despainii SB989)は寄せ植えゆえ時期調整が出来ず、
開花日が一日ずれた。右側は開花二日目、左側は開花初日というわけで、いちおう受粉は出来たのですが。




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                          after two weeks




ペディオ、スクレロ、マスタスといった仲間は種が熟するまでおおむね一か月くらいかかります。
授粉が成功して、子房が膨らんでくる様子はなんとも嬉しいものです。ブラディ、デスパイニー、
そしてアキューネンシスの写真は花後2週くらい。ここまでくれば結実がハッキリ確認できます。
私の授粉方法は、筆などで花粉をつける穏やかなやり方ではなく、ピンセットでそれぞれの雄蕊を千切り、
ダイレクトに相方の雌蕊になすりつけてやります。柱頭に花粉で色が着くくらい、確実を期します。
実際、自生地の昆虫による受粉はたいへん効率が良いようで、山で開花しているスクレロなど、
柱頭は粉まみれという様子をしばしば見ます。今回はおおむね狙い通り結実しましたが、たとえば
開花日が一日ずれたデスパイニーなど、たっぷり粉をつけたのに1果しか得られませんでした。




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                         one more week later                       




さらに1週間あまり。果実はさらに膨らんで、植物体本体は新刺も伸びず、成長がほぼ止まっています。
植物本体が小さいだけに、相当負担がかかるはずで、毎年たくさん種をとるのは如何なものかという気もします。
さて、果実は熟すると、側面が裂けたり蓋がとれたりして、種を散布します。
なので採種も基本はこのタイミングを待ちます。下写真のエキノマスタス・アキューネンシスは、もう採取可能です。
自生地ではこの状態になると、蟻さんがせっせと持ち去ってしまうので、採種適期は短い。だいたいは刺のあいだに
残った種子などを苦心して集めることになります。




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                         harvest time comes




今回は、今頃になっての収穫となったため、大半の果実はすれに裂開し、種をまき散らした状態でした。
果実内に残っているものを回収して、あとは鉢の株元からひと粒ひと粒ピンセットで拾いました。
ペディオカクタスなどは、大粒の種子なので果実サイズに比して数は少ない。発芽率、生存率もかんばしくないので、
世代交代、維持はなかなか大変です。今回一番期待したブラディなど、あわせて6果も立派な実がなったのに、
回収できたのは30粒ほど。タイミングよく写真がとれなかったのは、気づいたのが裂開して種がとんだ後だったから
ですが、拾いきれなかったものを勘定にいれても、ひとつの果実に10粒は入っていなかったでしょう。
写真の斑鳩もこぼれていた分もあわせて一果15粒ほどでした。このあたり、100とか1000のオーダーで
採種できる大半のサボテンとはかなり異なりますね。


採った種をいつ蒔くか、というのもひとつの課題です。多くのサボテンはとりまきでよく発芽します。
アリオカルプスなどは、秋に授粉、春に結実したものを即蒔くと、100%近い発芽を見ますが、数年保存すると
発芽率はかなり落ちる。コピアポア、エリオシケなども、鮮度が高いほうがよく生えます。
しかし北米難物に関しては、必ずしもそうでないところがあるようで、これは産地での環境変化や食害昆虫による
親株絶滅→埋土種子によるコロニー再生、といったサイクルとも関係がありそうです。
ペディオ・ノウルトニー(Pediocactus knowltonii)の、同じ時期に採取した種子を長期保存し、
数年間隔で蒔いてみたら、10年貯蔵したものが発芽率70%で最もよく生えた、という実験結果もあるそうです。
これについては発芽条件がより強く結果に影響を与えているのではないかとも思われますが、
いずれにせよ、10年たっても7割が発芽した、というのはこの仲間の種子寿命の長さを示していますね。

とかなんとか言いつつ、待ちきれないので来年蒔いてしまうことはほぼ確実ですが・・・




コメント

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Shabomaniac!さん 今晩は

お疲れさまです。

お忙しい中、開花合わせから、交配、採種まで
工夫を凝らして頑張っておられるのに感動しま
した。
流石、北米難物サボテンの沢山の収穫(採種)に
びっくりです。子孫をのこす地道な試みに頭が下
がります。

私は自生地の兜丸の子孫を遺そうと試みています。
兜丸は寿命が短く、昔の輸入球はほぼ消滅したの
ではと思われます。仙界では園芸種の白い兜が繁
殖される時代ですが、自生地で見る素朴な兜丸に
惹かれます。

花のタイミング合わせ。親木が少ないと苦労しま
す。花粉をアルミホイル&サランラップに包み、
冷蔵庫で保存。英冠の場合、一週間過ぎると受粉
しませんでした。

赤花菊水。今年、蒔かれるようでしたら種はお裾
分けできますよ。

こんにちは。

素晴らしい北米高山の実生正木による収穫を拝見させていただきました。
これほどの種類の採種をされているとは、さすがに北米高山種の実生のパイオニアです。

北米高山種、実生正木による種の引き継ぎができて、ひと段落ですね。
採集用は別として、北米高山種に限らず接ぎ木に陥りやすいですが、異常に成長し、また間延びした姿を見るより、数倍の日にちをかけてでも実生で栽培したいものですね。

Passion

Shabomaniac!さん、こんばんは。
実生から育て、ほぼ同時に2株以上の花を咲かせて、うまく
結実させて種を取る。この文言を実現させるのにどれだけの
愛情、情熱、努力、根気、時間、さまざまな労力が必要ですよね、
しかし彼らを好きだから、それらが楽しく出来るのだと思います。
そしてその背景にあのコロラド高原の雄大な大自然があるのかと
想うと、心 ときめくのですが。 Shabomaniac!さん、
masutusさんの考えておられるように、私も、出来るだけ同じコロニーの
(フィールドナンバー)で交配し、正木での栽培というのが
理想だと思っております。

>Doremifaさん
実生には、より魅力的な植物を作出する育種の楽しみもありますが、野生個体そのものを再現、維持するのも楽しいですね。私もむかしの素朴な顔の兜が育てたくて、野生型とされる種子を蒔いていますが、あまりに普及している植物だけに信頼性は??です。輸入株そのもののから自ら得た種や、産地どりの確かな種からの兜は貴重ですね。赤花菊水、種頂けたら嬉しいです。
>masutusさん
ペディオの各種や月の童子などは、開花しやすいので種を得やすいほうですね。エキノマスタスも花つきがよく、種もたくさん採れるので、結構増やせます。しかし、一番保全しておきたい白紅山などはなかなか咲かないし、天狼もまず咲かないし、咲いたら咲いたで産地が違っていたりで、なかなか自家採種に至りません。これらを世代交代させていくのが目標ですが、まだまだ遠いです。
>Yuccaさん
むかし、日本にはずいぶんたくさんの山採り輸入株が入ってきたはずなのですが、産地などおかまいなしに増やしてきたので、なかなかオリジナルのハッキリした個体というのは残っていないのは残念なことです。いろいろな名前のついた牡丹類や太平丸など、自生地データがなにも残っていないので、たんなる園芸種としてしか残せないのは残念ですね。
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沙漠植物、栽培、探究。

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