駄物満開。

サボテン道楽の世界で昔からよく使われることばに「駄物(駄モノ、だもの)」というのがあります。
辞書で意味をひくと、「つまらない物。大した値うちのない品」。・・・そのまんまですな。
まあ、町の花屋さんに並んでる鉢植えのサボテンなんかが、よくそう呼ばれちゃう訳です。

で、マニアックなサボテン人たちは、美しく花を咲かせたひと鉢を「こりゃ駄モノだから」と一刀両断に
切り捨てたり、はんたいにうまく育てた自慢の品を謙遜したりするときにわざと「所詮駄モノですからねー」
なんて、この言葉を使います。


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たとえば、このギムノ・新天地(Gymnocalycium saglionis DJF303,La Vina)。もっとも古くから親しまれてきた
サボテンですが、丈夫ですぐ大きくなるので、斑でも入らない限り商品価値はゼロの近似値。いまでは花屋さんでも
あまり見かけないサボテンとなりました。でも、産地ごとにタネを蒔いてみたりすると色んな顔が出て案外面白い。
それからこの紫刺太陽( Echinocereus rigidissimus fa.rubrispinus L088 Sierra Obscura, Chihuahua,Mexico)。
刺、姿、花・・・非の打ち所のない素晴らしい種類ですが、こちらもあまりに普及しすぎて駄モノ扱いされつつあります。
ぶどう色の櫛刺に豪華な花、なんとも贅沢な駄モノだと思いますが。


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般若(Astrophytum ornatum SB1058 Vizarron,Qro)は、人気属アストロフィツムの中で、殆ど注目されることの
ない種で、いわば人気属の駄モノ種。ならばなおさら蒔いてみたくなるのが私の性格で、育ててみると花姿も素朴な味わいですが、悪くない。
緋冠竜(Thelocactus hexaedrophorus fa.fossulatus)も改良につぐ改良で実に立派な姿の株が流通していますが、写真のものは30年前の野生株。ヒトの改良の手が入る前のものです。当時としては極上タイプ?を頑張って
手に入れましたが、いまとなっては名品中の駄モノ。柱状に伸びたのを胴切り胴切りして維持していますが、
刺色も肌色も結構好きです。


私の経験では「駄モノ」のレッテルが貼られるのは、先の語義にある「大した値打ちのないもの」=価格の安い植物、
である場合がほとんど。とすると、選抜に選抜を重ねた兜に鸞鳳、太平丸、牡丹類・・・愛好会のセリで、天井知らずの
値がつくようなサボテンが非・駄ものサボということになりそうです。
逆にどういうサボテンが名品への道からはじき出され駄モノに零落するのかといえば、ひとことで言って特徴の
つかみづらいサボテンたち、ということじゃないでしょうか。一度会っただけじゃ、顔と名前が覚えてもらえない、
そういう捉えどころのない、その他大勢のヒトたちですね。


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そういう文脈で私の栽培場を見渡すと、そこはまさに駄モノの海。いずれも一袋数百円のタネからの栽培品で、
高い値段で買ったものといえば、輸入した塊茎多肉やソテツ類くらいで、サボテンではほぼ皆無。それに大方の
サボ人には馴染みのない種類ばかりが陣取っています。けれども、駄モノ=つまらない物、なのかと言えば、
作ってる当人はそうは思ってないところがミソで、駄モノ満載の宝船と思ってたりもするわけで・・・。

たとえばこのパロジア・ボレアリス(写真上・Parodia borealis KK1411 Chuma,Bolivia,2800m)なんか、
球体や刺の感じ、群生の具合・・・なんとも駄モノ感が漂ってます。それにだいたいのサボテン好きは、
これがなんちゅうサボかもわかんないんじゃないかと。特徴もつかみにくいし、やたら子を吹いてるとこ
なんかも実にしっかり駄モノだと、我ながら思いますが、山吹色の花咲く姿はいとおしい。
同じパロジアでもビルバオエンシス(写真下・Parodia bilbaoensis L384 Chuquisaca, Bolivia 2500-2600m)になると、焦げた感じの刺色やその曲がり具合など、多少雰囲気が出てきて「駄モノに準ずる」くらいの扱いかなと。
「エエなこれ」と思う人もいるかも知れない。
いずれにしても、こんなの大事に育ててる人、俺のほかにおるんかな?とは思いますが、大事に育てると、
それなりに光を放ってくれる気がしますよ。


そして、実はそこそこ珍品なんだけど、一般的には「駄モノ」、というサボテン。これが、私の栽培場に
もっとも多いタイプかも知れません。もちろん値段はつかないだろうし、他で探しても見あたらないっていう、
それだけですが。・・・以下は、そんなの。


ecersanpedroS.jpg


見ての通りエビサボです。名前はサンペドロエンシス(Echinocereus sanpedroensis)。赤花蝦なんかに近い種類
なのが花でわかりますね。ちょっと甘い色合いで花首が長いところが、多少艶っぽい。いい花です。でもこの
サボテンの花のないときを想像して下さい。実に、単にトゲトゲしただけの、取り柄のないことだけが取り柄だ、
みたいな訳のわからん存在です。これが国内稀少種である理由は単純で、面白くないからだろうね。
私も花のない時のこの子に愛情を注ぐために、人倫の限界に近づく努力をしてます。


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これは、駄モノというと怒る人がいるかも知れない。人気・名品属のエリオシケの中でも、
珍種に属するアスピラガエ(Eriosyce aspillagae FK197 SanFernando,Chile)。
爬虫類肌や強い刺がウリのこの属にあって、青々みずみずしい、地肌丸出しの姿はあたかも
パロジア(ノトカクラス)を思わせます。要するに最も駄モノ的外観をもったエリオシケ、というところが
逆説的に珍重されているサボテン。複雑な色合いの花は、エリオシケそのものだけどね。


milacaesS.jpg


最後は、ミラ・カエスピトーサ(Mila caespitosa fa.maritima KK768 Paramonga,Peru)。
このミラ属というサボテンを知っている人がどのくらいいるでしょうか。柱でもウチワでもない、
南米玉サボテンで、これほど完璧に無視されている属は、他にないかと。この属にはかつて十指にあまる種が
記載されていたんですが、いまでは、この一種に統合されています。つまり外形的な特徴差が散漫に拡がっていて、
種の区別が出来ないものだから、じゃあ全部同じ種類ってことにしよ、てな具合。
特徴がつかみにくい=園芸的に人気出ない、ということなので、長きにわたり完無視されてきた訳です。
でも、密生した刺や、よく咲いてくれる黄花の奥から、惹きつける何かが出てます。
やさぐれて生活の荒れてるロビビアみたいな。ちょっとムリがあるかな?


とまあ、駄ものサボテンに対する一方的な共感を思いの丈語ってしまいましたが、もうひとつ、私が彼らを粗略に
出来ないのは、駄モノという言葉に響く、ある郷愁ゆえでもあります。・・・遠い少年時代、サボテン集めを始めた頃、
売っているのをみつけるたびに勇んで買い集めた月影丸(Mammillaria zeilmanniana)や
雪晃(Notocactus haselbergii)、宇宙殿(Echinocereus knippelianus)・・・・・・
そんなサボテンを大事に並べた小さなフレームがあった風景。
大事にしていた筈の彼らが、他の多くのものごと同様、いつのまにか手元から消え失せてしまったのは、
どうしてなんだろうと。









コメント

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ここに紹介していただいた花々は駄ものと呼ぶには、あまりにきれいなものたちばかりですね。
ミラ属はあまり大きくならないようなので、今年の種子購入候補に最後まで残っていましたが、スペースの関係上やむなく、見合わせた種類です。
開花写真を見せていただいて、来年こそはと思っています。

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>queiitiさん
わが駄モノたちをお褒めいただいてありがとうございますm(^^)m。
ミラ属、大きくはなりませんが、のたうち這い回るように育つタイプもあるようで、お気をつけください^^。でも花はけっこういい感じですよ。
>匿名さま
サボテン育てでいちばん楽しいのは、やっぱり実生だなーと思います。
とくに、野生種のオリジナル種子は、その自生地の環境に思いをはせながら、
育て上げるのが醍醐味ですね。ほかの人がほめてくれずとも、羨ましがられ
ずとも、天と会話する気持です。ちょっと大げさですね^^。
どんな種類、蒔いておられるのか、こんどまた教えて下さい。



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沙漠植物、栽培、探究。

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