多肉本とサボテン本。

                                      
ブックレビュー、2冊紹介します。
いずれも比較的最近刊行されていて、通販などで入手可能ではないかと思われる本。

1冊目は、Fred Dortort 著 「Succulent Plants of the World」 。



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いま手に入る多肉植物本の決定版、ではないでしょうか。コストパフォーマンスも良い。
国内でも海外でも、サボテンと、それ以外の多肉植物全般、という括り方が有効のようですが、
この本は後者、サボテン以外の多肉植物を各科各属カラー写真で紹介しつつ、自生地の環境や
栽培についても詳しく解説したもの。写真豊富ですが、読み物としても情報量濃密です。
多肉本は国内でもしばしば刊行されていますが、だいたいは紹介されている種類が少なく、
栽培についてもざっくりで、むしろ植えつけレイアウトや飾り方に力点が置かれています。
なので、珍奇な姿の植物を追い求めたり、栽培の深みにはまりつつあるマニアには物足りない。
日本の本では、ISIJの「多肉植物写真集(1巻2巻)」が、網羅する範囲や写真の数など随一の
素晴らしい内容の本ですが、あくまで写真集なので、文章での解説はそれほど厚くない。
それに既に大変なプレミア価格になってしまいました。この本も早めに手に入れた方が良いかも。



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本の構成は、イントロで多肉の自生環境や栽培技術、楽しみ方などを概論としてまとめています。
続いてすぐに各科・各属の解説に入りますが、基本は属ごとに一章を設けて、代表種を中心に、
鑑賞のポイントや育て方などが属ごと(場合によっては種ごと)に書かれています。
例えばエケベリアの項では、かつてしばしば混同されていたカンテ(Echeveria cante )と
サブリギダ(E.subrigida)について、「カンテの方が美しい種類だが、栽培はより難しい。
サブリギダには青葉、白葉、葉の中央の溝の深さなど色々なタイプ違いがあり、極上のタイプは
カンテをも凌ぐ・・・」等々とあります。私はベンケイソウ疎いのですが、なるほどと思いました。
著者はカリフォリニア大の植物園で教鞭をとっていて、30年以上の多肉歴があるそうです。
紹介されている写真は、栽培品より自生地で撮影されたものが多いのですが、鉢植えにすると
こんな感じでカッコイイでしょ、みたいな写真もあったりします。
学者というより園芸家の目線で書かれた本ですね。



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先に述べたように、多肉ファンが栽培対象にする全ての仲間をカバーしようという意思が感じられ、
ベンケイソウ科、トウダイグサ科、メセン科などのメインどころから、ガガイモやブロメリア、
塊茎多肉まで細かく取り上げられています。



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アデニア・バリー(Adenia ballyi)、塊茎はまるで見えずほとんど藪!なるほどこれが本来の姿か。
てな感じの、こんなインパクトある自生地の写真、多数あり。
嬉しかったのはヒガンバナ科などの球根類とか、いわゆる多肉趣味の端っこ?にある仲間も
ちゃんと紹介してくれている点。栽培方法など、疑問が浮かんだおりに読み返すと参考になります。
とりあげられている種類はおよそ2000。多肉図鑑、かつ栽培ガイドとしてとても便利な本です。



そして、もう一冊はサボテン本。



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Ken Preston-Mafham著 「500 Cacti Species & Varieties in Cultivation」。

その名のとおり、数多あるサボテンの中から500種に絞って、写真つきで解説した本。
絞って、と書きましたが、一般的なサボテン入門書でも、500種類以上とりあげているものは
多くないので、幅広く色々なサボテンが登場します。。
著者はサボテン図鑑の定番として有名な「Cacti The Illustrated Dictionary」を書いた人物で、
写真には多少かぶりがありますが、この本では解説にも重点が置かれています。
前の図鑑もそうだったのですが、栽培向きの種類を取り上げる、というのが基本姿勢なので、
難物はあまり扱われていない。例えば月華玉(Pediocactus simpsonii)は載っていますが、
英冠(Echinomastus johnsonii)や白紅山(Sclerocactus polyancistrus)は登場しません。



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掲載はアルファベット順で、アカントカリキウム属(Acanthocalycium )からはじまるのは
「Illustrated Dictionary」と同じ。網羅する属、種の配分が日本のサボテン界の感覚とは
かなり異なるのが面白いところです。たとえば牡丹類の掲載は岩牡丹(Ariocarpus retusus)一種だけ。
アストロフィツムも瑞鳳玉(Astrophytum capricorne)とランポー玉(A.myriostigma)が代表として
登場しますが、兜(A.asterias)は載っていない。手厚いのはエキノケレウス(Echinocereus)、
マミラリア(Mammillaria)などで、後者は実に104種類!もとりあげられています。
かつて「シャボテン誌」が全種網羅的なマミラリア特集を掲載していて、当時は日本にも"種類を集める"
愛好家がそこそこいたと思うのですが、最近は趣味の世界でも横並び傾向が強まって、我が道をゆく人は
減ったようです。マミラリア・コレクターの方がおられたら、ぜひ実物を拝見したいと思うのですが・・・。
マミだけでなく、柱やウチワサボテンもしっかり網羅。日本の愛好家のハウスではなかなか見ることが
出来ない種類が沢山出てくるのがかえって新鮮です。その中で、面白いと思ったものをいくつか。



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上の写真は、"赤花金鯱"ではありません。茜丸の金刺タイプ(denmoza rhodacantha 'diamantina')。
最近はこの型の輸入種子が出回っているので国内でも見かけますが、この姿はちょっと魅力的では。
スルコ・スタインバッキー(Sulcorebutia steinbachii)は、花色違いが仲良く並んだ自生地の様子を紹介。
レブチアやスルコは、スペースをとらないし花も綺麗なのでもっと人気が出ても良さそうです。
そして、南米塊根ウチワ、プテロカクタス・アラウカヌス(Pterocactus araucanus)の自生地写真。
日本では黒竜くらいしか普及していないマイナーサボですが、比較的最近になって、茎節がボール状になる
面白い種が普及しはじめています。この本は最新種という観点からか、プテロカクタスを6種類も掲載。



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以上、2冊については本の魅力の紹介という観点からスナップ写真を何枚か紹介させて戴きました。


最後にひとつ、以前ここでも紹介した「The New Cactus Lexicon」。
サボテン全科全属を網羅した本ですが、長らく品切れ状態でとんでもないプレミア価格がついたりしましたが、
やっと増刷されたようです。しかも今回はペーパーバック版で写真集のみ(もともとは写真集+記述書の2分冊)の
販売もされていて、価格的にも十分リーズナブルになっています。
入手の機会がなかった方はぜひ今回お求めになることをお勧めします。




テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

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始めまして、shabomaniacさん、TouiYukiといいます。
代表だけで104…改めてマミラリアの大家族っぷりに驚愕!
ぜひ手にいれていろんなマミラリア育ててみたいです。桃色刺が密生するものあるかな~

Shabomaniac!さん、こんばんは。

「500 Cacti」、良い本ですね。
最初、表紙の印象から、安直な写真集かと思い、
購入をためらいましたが、杞憂でした。

とにかく、コンパクトなのに中身の濃さはハンパないです。
写真の大半がフィールドナンバーつきの野生個体だったり、
由来のはっきりした個体であるところなど、
いまどきこんな安価で良い本は、滅多にお目にかかれません。

私はこれで「南米産の柱サボ」を見直しました。
‘野良サボ愛好家’なら是非お手元に一冊…太鼓判を押せます。

ところで「New Cactus Lexicon」の新版、分類は多少見直されたのでしょうか?
前回は過激な属の統廃合で、サボマニアからの評判はイマイチのように聞き及びますが…。

Kewなどが推進している「The Plant List」では、
エキノプシス以外に、ロビビア、トリコケレウスを認めているし、
エリオシケ一本のはずが、依然としてネオポルなども「有効名」で残っている状況…。
海の向こうでも、それなりの逆風が吹いているということなのかな。
筆者のHunt氏の見解は変わったのか、そのままなのか、気になりますね。

もし、新版を手にされた方がいらっしゃれば、書評など伺えればありがたいです。

サボタニについてのShabomaniac!さんの幅広く深いご智見には敬服させられます。

先般、「The New Cactus Lexicon」のペーパーバック版を入手しまして、あちこち開いて楽しんでいます(w)。
食指をそそる未知のサボが満載ですが、手元にあるものの自生地での荒々しい姿を見ても驚かされます。

「500 Cacti Species & Varieties in Cultivation」も内容の濃い本のようですね。
取り寄せてみようかな。

今後ともご教示よろしくお願いいたします。

>TouiYukiさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
マミラリアは種類が多くて、似通ったものが多いので区別が難しいところがありますが、刺の痛くないもの、花の可愛らしいもの、美しいものなど色々あって、奥行きが深いです。桃色刺が密生するもの、と言われて思いついたのは桜月です。これは満月(Mammillaria candida)という種類の刺色変わりで、ちょっとピンクがかった刺色で、お饅頭のように形良く育つサボテンです。

>noriaさん
500cacti、マミとか、エビとか、ロビとか、こだわりどころがこの著者らしいです。野草っぽいのが好きみたいですね。
New Cactus Lexicon、分類はいわゆるHunt流の統合スタイルです。南米ラッパ咲きはみんなプシスですね。天狼も英冠もラシャ錦もみんなスクレロ、というのは私も合点いかないですが、本の内容としては、ほぼ全種を写真で網羅、しかもあらかた自生地写真、というのは得難いです。新版は写真が50枚くらい増え
ているとありましたね。何が増えてのでしょうか。
The Plant List、これ面白いと思ったのはペディオの項目にschmiedickeanusという記載がある。これは昇竜丸なのか?ツルビニの項にもschmiedickeanusがあるし、謎です。

>アイハルさん
息子が魚や虫の図鑑を読んでいる隣で、いつもサボテンの図鑑を眺めていたので、家内からしばしば子ども扱いされました。その息子も図鑑を卒業?しましたが、こっちは相変わらずです^^;。
新版のThe New Cactus Lexiconは、新しい種類が増えているのでしょうか。たとえばAztekium valdeziiとか。これだけの本はこの先、なかなか出てこないのでは、と思います。


新版のThe New Cactus Lexiconですが、残念ながらアズテキウムは、hintoniiとritteriだけですね。
旧版は持たないので他は分かりませんが……。

Shabomaniac!さん、こんばんは。

昇竜丸の学名、突っ込んでみたら、ペディオもツルビニもミズーリ植物園のデータベースTropicosによるもので、ペディオはHalda氏の1998年の論文、ツルビニはBuxbaum氏とBackeberg氏の1937年の論文が基になっている…ところまでは判りました。

さらにTropicos内で学名検索すると、ツルビニには昇竜丸の変種、亜種の類がずらずら出てきますが、ぺディオには「昇竜丸らしきもの」以外、類似種は出てきません。

あくまで私の空想ですが、Tropicosでは400万点のデータを扱っているらしいので、Halda氏の論文がチェックできずに、そのまま有効名として残ったのでは? 弘法も筆の誤りということもあるし・・・
記載文献と基になった標本を見に、わざわざ渡米するのは、ちょっとハードルが高いかなぁ。

>アイハルさん
そうですが、アズテキウムの新種はまだ間に合っていないのですね。
実はペーパーバック版、買おうかとも思ったのですが、送料がバカにならないので、みあわせました。でも、何年も前に買って、今でもしょっちゅう眺めているので、元は取ったと思いますが^^。
>noriaさん
昇竜?ツルビニ混入の経緯、なるほど・・・あり得る話ですね。でも、昇竜丸と飛鳥・斑鳩、サイズや刺の質感など、一見たしかによく似ています。私は飛鳥・斑鳩はペディオとは分けてナバホアに戻してほしいなぁと。一方で月の童子(Pediocactus?Toumeya?)はScleroのネオテニー的なもののようにも感じます。趣味家の見立てでしかありませんが^^;。


はじめまして

いつも楽しく拝見させていただいております。Shabomaniac!さんの以前の記事に興味をもちまして、この度種の輸入をしてみました!種はパキポディウム、アロエ、サイカスです。アロエは夏型です。そこで実生に関する記事も読ませていただいたのですが、基本的なことをお聞きしてもよろしいでしょうか?

パキポディウムたちもサボテン達と同じ管理でよろしいのでしょうか?つまり衣装ケース作戦でいけるんでしょうか?サイカスだけは違いそうなのでまだまだ調べ中です。富士砂がいいみたいですが。

あと種蒔き用土はあくまで種蒔き用で普通は秋頃に育成用に植え替えるのでしょうか?

いきなりで無礼は承知ですがお時間がある時にご返信いただければと思います。私もこれをきっかけにブログを始めようと思いますのでその時はよろしくお願いします。

>宮丸さん

ようこそ。時間があればわかることはお答えするので、気軽にお尋ね下さい。

多肉の実生ですが、大半のアロエはサボテンと同じ高温環境で発芽成育します。ただ、よく栽培される南アフリカのケープやナマクァランド産のアロエは、冬雨地帯に産するため(メセンなどと同じ)実は冬型です。日本では夏型成長に転じるものも多いですが、厳密な性質のもの(ピランシー、エリナケア等)は晩夏に涼しい環境で蒔く必要があります。パキポディウムも高温で発芽しますが、同じく冬雨地帯産の光堂やビスピノサムなどは発芽はしますが、長く腰水高温(プラケース)は不適です。マダガスカル産は幼苗時は高温多湿を好みます。蒔き土に関してはあまり厳密にならずとも大丈夫です。私は通常培養土に、上の方だけ、赤玉やピートモス、バーミキュライトなど敷いて蒔いています。ソテツ類はまた特殊で種類によって大きく異なりますが、発芽まで時間がかかる(数ヶ月~1年以上)ことも多い。昔はタッパーに入れて、テレビに上に置いて発芽させたりしました(高温多湿になる)。いまのテレビは薄いので難しいですね^^。

ご参考になれば。

新参者にも関わらず…

ご丁寧なお返事ありがとうございます。質問も曖昧でした、すみません。

アロエはimalotensis、marlothii、reitzii、aculeata
パキポはsofienseとここで拝見して実生デビューを心に決めたwindsoriiです。

現在は衣装ケースで薬液腰水です。埼玉県南部なのでまだ冷えますが加温は湯たんぽしかありません(笑)

どうやら発芽してしばらくしたら風の入る別のケースに移した方が良さそうですね。時期が早かったと思いますが練習だと思って全滅も覚悟しながら勉強中です。ちなみに水は四日前後で交換しようと思っています。

Shabomaniac!さん こんにちは。毎回、有益な情報、どうもありがとうございます。
 早速注文したF.Dortortの本が届きました。数多くの種と大きな写真が載っていて、これから楽しめそうです。
それと念願の”The New Cactus lexicon”のペーパーバック版も購入しました。生半可な知識で申し訳ありませんが、Boris O. schlumpbergerの論文(Am.J.Bot. 99,1335,2012、Webで検索印刷可)結果を一部取り込んで、ロビビア等がリスト化さてれました。 ただ、E.aurea、L.jajoiana[E], E.obrepanda[Lo]などとなっていて、初心者の私には今一リスト化基準がわかりませんでした([]内はSchlumpbergerのクレードです)。 写真は15頁ほど追加されたようです。写真豊富なのでこれを見ながら種の注文などして楽しんでます。

返信ありがとうございます!
桜月…サボテン初心者かつ未成年だけど近くのホームセンターで早速満月を購入!(桜月はありませんでした。無念)
刺がしっかりしてるのも意外でした。刺されました。(笑
実は私もshabomaniacさんの記事に触発されてサボテンの実生にチャレンジしてみたいのですが、植物初心者じゃ難しいですかね…?

>宮丸さん
名前のあがっているアロエなら、春夏蒔きでも大丈夫だと思います。
ウインゾリももちろん夏型ですね。種類によりますが、サボテン多肉は最高温度35度くらいでよく発芽します。
>さぼらんさん
これから種まきの時期、よい写真本があると、ついつい注文する種類の数が増えてしまいますね^^。
>TouiYukiさん
満月、売っていましたか。最近はあまり見かけないと思っていましたが、よかったです。サボテンの実生は難しくありませんよ。アサガオとそんなに変わらないです。ただ、育つのに時間がかかるだけ。ぜひトライしてみて下さい。

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Author:shabomaniac!
沙漠植物、栽培、探究。

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