宝の山!フランクリン・マウンテン(後編)


アメリカ・テキサス州エルパソ郊外にある、サボテン宝の山、フランクリンマウンテン。
実は、このテーマを書こうと思ったきっかけは、拙ブログにもよくコメントを戴くroka79さんが
アメリカ南西部を旅するにあたり、自生地をいくつかご案内したのですが、その折りに過去の資料を
掘りだしてあれこれ眺めていて、懐かしくなったから。
私が最後に訪ねたのは数年前なので、roka79さんの最新レポート("かくたす&さきゅれんつ")で、
直近の山の様子と見比べて戴くと、一層興味深く感じてもらえるかも知れません。



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                    view from halfway up the Franklin mountain
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                    Fouquieria splendens in bloom



ハイウエイ375号線の広い駐車場は峠のてっぺんにありますが、そこからかなり下って裾野側でも
魅力的な植物がたくさん見られます。パーキングロットが狭いので長い時間は停めにくいですが。
なだらかなスロープでよく目立つのがオコティーヨ(Ocotillo=Fouquieria splendens)です。
昔は「尾紅寵」なんて和名で、輸入株をカタログでも見かけましたが、今も栽培している人いるのかな?
真っ赤な花はハチドリ(humming bird)仕様なんでしょうね。色鮮やかなれどやや小振りの花。



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                       Dasylirion wheeleri
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                       Agave lechuguilla



ダシリリオン・ウィーレリ(Dasylirion wheeleri)もそこかしこに生えています。
このあたりのサボテン山では定番ですが、サボ好きには案外スルーされがち。しかしダシリリオンは、
幹の立つユッカなどとともに、近ごろ立派な輸入株が入ってきていて、良い値段で取引きされているようです。
ちなみにアガベもあります。こちらはあまり人気がない?レチュギラ(Agave lechuguilla)。
実は白磁炉という立派な和名もあるし、コンパクトに作れば案外カッコいいかも知れない。
ただ、この山でサボテン探しする時には、間違って踏みつけたときの絶叫発生装置ですが。

そして緩斜面の主役はやっぱり、



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                       Echinocactus horizonthalonius



太平丸(Echinocactus horizonthalonius)です。    
ひところ、太平丸の刺の良い優型として「フランクリン太平」というクローンが結構出回りました。
なので最初この山を訪ねた時は、ものスンゴイ刺の太平がゴロゴロしているのかと期待しましたが・・・。
では、リアルなフランクリン太平はどんなものか、未選抜?画像を並べてみます。



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                       There is no accounting for tastes!



ガッカリしました?でも園芸的な優型・名品とは別の、野の草の魅力が自生地の株にはあります。
刺色に長さ、カーブの具合、肌の色や扁平具合・・・様々な顔の太平たちを見比べながら斜面を登ったり下りたり、
これは楽しいです。灼けつく岩の隙間ではガッシリ強いトゲ、反対に草陰ではモサモサしたトゲがよく似合う。
好みはあっても、これらに優劣つける気はしないし、印象深い個体が必ずしも"優型っぽいもの"でもない。
ハウスに並べたサボテンを見るときは、ついつい松、竹、梅と競りにかかる時の値段でソートしちゃたりして、
我が心根の退屈さにガッカリすることもありますが・・・。山では脳内に染みついた市場原理も停止するようです。
で、「フランクリン太平」ですが、実際のところ名品として出回ったのは、ここの特に刺の強い野生個体を
もとに栄養繁殖されたものなのではないかと(このあたり、事情にしい方がおられたら是非ご御教示を・・・)。
オリジナルがこの山かも知れないと思うのは、青みの強い肌と、赤褐色~黒の刺が球体から離れて
大きくカーブするところ。アリゾナ産のニコリーと並んでアメリカ産太平丸のひとつの典型ですね。
最後の写真は、日本のマニアより太平好きな誰かに囓られちゃった株。硬いし痛いし、他にもう少し
ましなモノがある気がするんだけど・・・。美味しいのかな?



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                       Glandulicactus uncinatus ssp.wrightii
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                       Mammillaria heyderi ssp.meiacantha?



あと、見つけられたらラッキーなのがラシャ錦(Glandulicactus uncinatus ssp.wrightii)。
濃茶色の花が面白いサボテンで、長いカギ刺はときに十数センチにも及びます。この刺が枯れ草に
うまく擬態しているのでなかなか見つけられない。実はけっこうな数が生えているんだと思います。
最近はスクレロカクタス(Sclerocactus)に編入されていますが、白虹山だの彩虹山だののような
難物サボテンではありません。
そして金平糖マミの典型ともいうべき後幸丸(Mammillaria heyderi ssp.meiacantha?)。
この御幸丸の仲間、地味ながら色々なタイプがあって産地を歩きながら顔違いを見比べると
なかなか面白いです。うちには三十数年前、父親がテキサス出張の土産に空港で買ってきた山木が
いまも健在です。ただし直径は変わっていません(成長分は下部に折り畳まれる)。花よりも、
赤い実が可愛らしいサボテンです。



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       Ferocactus wislizenii, They are too big to hide themselves from big chill, and frozen to death



私が最後にこの山に入ったのは、氷点下20度ともされる厳しい寒波のあとだったのですが、
衝撃だったのは山で最大のサボテン、フェロ・金赤龍(金赤龍=Ferocactus wislizenii)が、
ことごとく凍死していたことです。私の見た範囲で、生きている株がひとつもない。
太平丸はじめほかの中小型の種類は、見たところ被害皆無だったので、巨体ゆえの悲劇だったかと。
おそらくは生きのびたであろう小苗が、いまはいくらか成長して復活を遂げていることを願います。



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                       Opuntia phaeacantha in flower
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                  Three Hedgehog Brothers of Franklin mountain
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ところで、フランクリン・マウンテンだけでは物足りない、もっと沢山のサボテンが見たくなった方には、
ほど近くにアメリカで最も濃密にサボテンが繁茂するビッグベンド国立公園(Big Bend NP)があります。
エルパソから南西へ、メキシコ国境に沿ってハイウエイをたった5-6時間すっ飛ばせば、
さらなるサボテン王国に到着します。エルパソ発で3日もあればぐるっと回ってこられますよ。





テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

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Ocotillo

Shabomaniac!さん、こんばんは。
綺麗な写真がずらりと並び・・・・よいですね。ほんとうに。
行った事のない地域の自然の姿、わくわくしてしまいます。
私は地図を見るのが好きでよく見ているのですが、
そこが、どんな景色なのか考えるのが楽しいですよ。
Franklin Mountains State Park, 自然の姿が思い描けなかった
ですね。すごいところです。 Texas 西部はほんとうに熱いですね!

ところで、Ocotillo、 私の父が20年くらい前にTexas のDel Rio
の街外れから持ち帰って今でも栽培しています。挿し木すると
いくらでも増えると言っています。
水をやると葉が出ていっきに伸びる、おもしろい植物ですね。

こんばんは。
ちょうど私もフランクリンマウンテン州立公園がメインの記事を書き終えたところです。
ここは本当に素晴らしかったですね。勧めてくれてありがとうございました。
まあ、EchinomastusやCoryphanthaを見れなかったのは残念でしたが、また行けばいい訳ですし(笑)。今度は375号線の方に行ってみます。
ここからビッグ・ベンドは遠いですよ…。メキシコ国境沿い(リオ・グランデ川沿い)には道路がないみたいですし。

耐寒性

初めまして。
楽しく記事を読んでいます。
最近信州に引越ししまして、耐寒性のある植物を探しています。関東の人にとっては難物でも、信州では難しくない場合もあるはず・・・と思うのですが、資料がなかなか見つかりません。
このフランクリン・マウンテンの記事も、零下20度とされる寒波について書いていたのが印象的でした。

Shabomaniac!さん、こんばんは。

自生地巡りのレポート、自分とは違う目線で眺められるのが面白いです。
撮影者の追体験をするわけですが、思わぬところで感心したり、驚いたりすることも。
roka79さんの最新情報とあわせて、仮想世界の旅を楽しませていただいてます。

私もどこかへ出かけたくなってきました…危険だなぁ。

こんばんは。

自生地の空、草木、石から枯れ草までじっくり拝見させていただきました。

>「山では脳内に染みついた市場原理も停止するようです。」
狭い置き場所ではどうしても好みの物を集めてしまいますが、
これからも瑞々しい姿より自生地の姿に近づけることを心がけたいと思います。
TK-Oneさんを真似て、草と共に育てて自生地の風情も楽しみたいです。

shabomaniac!さん こんばんは

自生地の写真を興味深く拝見させて戴きました。
やはり、どの個体も、生き生きと輝いてますね。

自生地では、土に潜ったり、周囲の小石にカモ
フラージュしたり。ラシャ錦の枯れ草の擬態に
はびっくり。見事!強い意思を感じるほどに。

ヤギに齧られても、群生球になって復活する逞し
さ、生命力。自生地の彼らには感動を覚えます。

アメリカの氷点下二十度は過酷ですね。
メキシコ・バハでは虹裳竜の自生地が焼畑で親株
はほぼ全滅という酷い事になっていました。

温室の鉢植えサボテンを眺めながら、ふと、彼ら
の故郷に思いをはせるときがあります。

素敵な写真と原稿を有難うございました。



>Yuccaさん
そうそう旅には出かけられないので、こうして古い写真を何かのきっかけに並べ直したりして、旅気分を楽しんでいます。テキサスに入るとサボテンの数がぐっと増えて、これがメキシコに入っていくともっと増えるのでしょう。いつかは越境したいですが。

>roka79さん
フランクリン、訪ねて貰えて嬉しかったです。道も良くて、車で行って探しやすい場所が案外少ないものです。同じ場所でも季節によって見つかったり見つからなかったり、花が咲いていたり種が採れたり、懐かしい再会が会ったり・・・で二度目に訪ねるのも楽しいので、またぜひ機会があったら訪ねて下さい。国境沿いはダートしかないので、サボテンは面白いのですが、治安に問題ありなので、なかなか難しいですね。

>いなっちさん
アメリカやメキシコのサボテン・アガベなどの自生地は案外冷え込むので、サボテンの大半は氷点下10度くらいまでは平気です。ただ、土が湿っていて凍ったりとけたりする雨よけなしの屋外だと生存率が下がりますね。ハウス内のように、昼間温度が上がる環境なら、長野でも無加温で大丈夫なものが多いと思います。

>noriaさん
あまり目線の定まらない?レポート、楽しんでいただければ幸いです。サボテンに限らず、いつかは自生を見てみたい植物は、それこそ無限にあります。なかなか機会に恵まれないですが、だんだん身体がきつくなってくるので、ムリをしてでも時間は作るもの、と考えてなきゃと思うこの頃です。

>masutusさん
masutusさんの屋上沙漠のサボテンたちは、どれもみな野生株と見紛うような風格だと思います。いつも手本にしたいと思ってます。でも、野生の環境を思い描いて育てると、多少のキズとか、トゲの長短とか、些末なことに思えてきますね。昔は巨大に群生させた株など、迫力を感じたものですが、今は数cm単頭のペディオなど、そのままで良いと思うようになりました。

>Doremifaさん
サボテンそれぞれの、一見奇異とも思える姿も、山に生えている姿をみると、なるほど、と腑に落ちることが多いです。それぞれ、環境への適応の結果なんだなぁと感心させられるというか。私の好きなサボテンは、温室ではどうしても間延びして、本来の個性を失いがちですが、少しでも野生の姿に近づけたいと思っています。
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沙漠植物、栽培、探究。

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