奇想天外、開花の顛末。

        
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               Welwitschia mirabilis with female cones (over 10years from seed)



既報のとおりこの夏、奇想天外(Welwitschia mirabilis)の花が咲きました。
小さな「松かさ」のような姿で、まあ、華やかだとか美しいとか、そういうものではないのだけれど、
世界随一の珍植物を発芽から開花まで、眼前で観察出来たのは園芸家冥利というもの。
ソテツをはじめ、この手の植物では珍重される雌株だったので嬉しさもひとしおでした。
熱川バナナワニ園の清水さんから、同じタイミングで開花した雄花序を頂き、授粉も試みたのですが・・・。




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                         a month later



上の写真は、“満開”からおよそ一ヶ月後の様子。鱗片が開き始め、少し「松かさ」ぽくなってきました。
そもそも、奇想天外の“花”は多くの被子植物の花とは異なって、いつをもって開花とするのか、
満開を迎えたのか、などなど実はよくわからない。授粉可能なタイミングがいつなのかも、つかみ所がない。
清水さんから教えて戴いたのは、雌花が蜜を分泌しているタイミングで花粉をつけてやれば、蜜と一緒に
「松かさ」の内側に引き込まれて受精するということ。早速試したのですが、難点は私の雌花序も頂いた
雄花序も、蜜の分泌であっという間に黒く黴びてしまうということ。また、今回処女花であったためか、
3つの「松かさ」のうち、蜜を分泌してくれたのはひとつだけ、それもしずくがふたつみっつでしたが・・・。
祈る思いでさらに待つ。




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                         all 'empty grain'



ほどなく、鱗片がポロポロ落ち、なるほどこの一片一片がそのまま「奇想天外の種」になるわけかと。
しかし翼(種皮)は見慣れた姿ですけれど、肝心の胚がまるで充実していない。残念ながらシイナのようです。
ひとつのコーンに100くらいの鱗片があるので、ひとつくらいちゃんと結実していないかと検分したのですが、
すべてシイナ。やはりちゃんと授粉できていなかったようです。貴重な雄花序を提供いただいた清水さんには
申し訳ない限りです・・・。
さらに、3つのコーンのうち2つは、この段階までも至らずに鱗片が閉じ合わさったまま、ぽろっと花茎から
もげてしまいました。敗因分析するに、ひとつは我が方の雌花序の不充実。そしてに授粉タイミングの見誤り。
そしてカビ対策。開花株は湿度の高い温室内から除湿冷房のある室内に取り込み、雄花序も花粉の
冷蔵庫保存を行うべきでした。蜜の出ているタイミングだからドンピシャだろう、と思ったのが甘かった。
以上は次回、あるいはこれからトライする誰かのための参考に。




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さて、縁は異なもので、今年さる仙友から、偶然に奇想天外の種を頂きました。
十年くらい前までに幾度か播種しましたが、今年は花を眺めつつ、久々に奇想天外の実生です。
いくつかのポイントを押さえれば、育成は難しくありません。種は、南アフリカの種子業者、
「Silver hill seeds」が、毎年新鮮な種子を販売しており、ネットでも購入可能です。
奇想天外の種は、種皮(翼)の部分を取り去り、剥き身の状態にして蒔くと発芽が良い、と言われます。
なので、今回、半分は種皮を取り除き、半分はそのまま播種しました。蒔き床は、市販の種蒔き用土。
腰水し、30度を超える環境に置けば、1週間経たずに初がが始まります。種皮あり、種皮なし、で
比べてみると、種皮なしは数日で発芽が始まりましたが、1週間ほど遅れて送れて発芽した種皮ありも
発芽率はあまり変わりませんでした。




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奇想天外の栽培で肝心な点は、根を決して乾かさないこと、そして出来る限り傷つけないこと。
寄せ植えは根が絡むので避けた方がよく、発芽後すぐに、1鉢に1本ずつ、植え替えてやります。
根の伸長は著しく早く、しかも実生苗の根の尖端を傷つけると、再生不能で枯れてしまいます。
このため、発芽数日のうちに植え付けを済ませます。根が伸びると傷つけずに植えるのが困難に
なるからです。最初の植え付け用土は、上部にバーミキュライトなどを用いると、柔らかく保湿も
優れているので良いかと思います。鉢はやや深めのものの方が保湿が良く適しますがが、
昔よく言われたように、土管に植えるような必要はなさそうです。




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ほどなく「双葉」が展開し、ついで交差するように「本葉」が伸び始めます。この二方向に伸びる葉が、
この先、数十年、いや数百年数千年と伸び続けることになります。つまり「本葉」が出てきた時点で、
奇想天外の成育形態は最終段階に達している訳です。
我が家で開花した株は実生から12年ほど経過していますが、もっと若い10年未満でも、開花の兆候を
示している個体もあります。来年は、雄雌双方の開花が実現すれば良いのですが。




テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

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残念でしたね

マニアックさん、残念でしたね。基本的には株の力不足だと思います。雄株も花芽が出かかっているようですから、来年以降に期待しましょう。当方からも雄花なら来年も提供できると思います。確かにカビは厄介ですね。咲き始めの花が新鮮なうちに受粉を完了させるのが肝要かと思います。京都植物園では採種しているのですから、できないわけはありません。

shabomaniac!さん 今晩は

奇想天外の花と幼苗は、初めて拝見しました。
ナミブ沙漠の特異な環境にある植物が実生で育つ
のに驚くと同時に、これも難物サボテンと同様、
醍醐味のあるトライに思えました。

ベルト様の葉が数千年も伸びる生命力には脱帽。
弁慶柱でも約250年程度で世代交代ですから、
地を這う植物は長寿ですね。

来年は交配が楽しみですね。好いものを見せて
いただきました。

Shabomaniac!さん、こんにちは。
奇想天外、結実ならずで残念でしたね。来年は雌雄揃っての開花を期待してます。

それにしても奇想天外、10年ちょっとで風格ある姿になるものですね。
開花株の葉の下に見え隠れする、ゴツゴツのひび割れコルクがたまりません。

わが家の箱入り奇想天外(実際にハウス内のミニミニハウス内に鎮座してます)も、
芽生えたときはあんなにツルスベだった肌がいつの間にかザラザラ肌へ。
来年はゴツゴツになるのを期待してます。

ゴツゴツ繋がりで、なんだか無性に亀甲竜を播いてみたくなりました。
場所もないというのに、タネマキマキ病は治りそうにありません…(^_^;)

>清水さん
コメント戴き光栄です。開花株の今の状態を見ると、ご指摘のように株の力不足、という感を強く持ちます。消耗したのか、この時期になってこの株だけが葉色も悪くややしなっとした状態になっています。雄花序が良い状態の時に花粉だけ採取して、カプセルなどで保存のうえ幾度かに分けて授粉するのが良さそうですね。来年以降もチャレンジして、是非結実まで行きたいと思っています。

>Doremifaさん
サボテンとも、多くの多肉植物とも違う、不思議なオーラを放つ植物です。陸コンブと呼ぶ人もいますが、厚みや質感は干した昆布のようで、良いダシがとれそう^^;。葉っぱがとても青いので、温室内ではよく目立ちますね。弁慶柱を温室で立派に育てるのはかなり難しいですが、この植物は地を這ってくれるので、我々の温室でもそこそこの風格を備えてくれるのが良いところです。

>noriaさん
葉っぱの影に隠れていますが、奇想天外の塊茎はなかなか見事です。たしかに亀甲竜に通じる風格がありますね。開花した株で、塊茎の径が10cmくらい。コマ型というか、ゲンコツのような形をしています。亀甲竜の実生もやったことがありますが、コイモは埋めておくと3-4年で亀甲が現れるくらいのサイズに育ってくれます。原産地ではこれを食べるみたいですが、さすがに勿体なくて試したことがありません。



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