アロエ・ハエマンティフォリア

いちばん好きなアロエに、この春、蕾があがって来ました。
正確に思い出せないのですが、種を蒔いたのは十年少し前だったと思うので、結構な歳月が経っている。
何年か前にも花茎があがりましたが、そのときは途中から植物本体の調子が悪くなって咲かずじまいでした。
日に日に膨らんでゆく蕾。“アロエ最高稀品”という思いを映して見るからかも知れませんが、
複雑な色合いが重なり合う、なんとも妙なる趣です。今度こそ、咲いてくれ。



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                        Aloe haemanthifolia with buds



アロエ・ハエマンティフォリア(Aloe haemanthifolia)。
アガベほど痛くないし、ヨーグルトにも入ってたりするし、女性にもたいへん人気がある多肉植物(多分)。
この種はなかでもとりわけ優美で、刺のまったくない柔らかく瑞々しい葉を、扇状に重ねながら展開します。
薄く透きとおった葉先は切なげに赤く色づき、上品ななかにも艶やかさを加えている。
そのむかし、某Y園のカタログには、ウン万円もする輸入株がときおり掲載されていましたが、嘆息するのみでした。
いわば図鑑のなかでだけ会えるアイドルみたいな存在だったんです。で、のちに種を入手したときは嬉しくて嬉しくて。
握手会に行ったらお食事に誘われちゃったくらいの勢いで育て始めたのです(意味不明)。



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                    Aloe haemanthifolia 2-3years from seed                    



この種が、それほどまで珍重されたのには、美しさ以外にも理由があります。アロエ属の植物の大半は
栽培がやさしく成長も早いものが多いのですが、この種は栽培が難しく育つ速度もゆっくり。というか一進一退。
実際に何株も種から育ててきましたが、じつに気難しい姫です。子吹きは相当大きくならないと期待できないし、
茎がないので胴切りも不可能。従って実生頼みなんですが、自生地でも大変稀少なため種の供給も滅多にない。
運良く種が買えて蒔いたとしても、発芽率は低く歩留まりも悪い。さらに、大きく育てるのはかなり難しいので、
たまに市場に出るのは実生からまもないひ弱な幼苗くらいです。インターネットでいろいろ検索しても、
栽培下の立派な標本株や開花株の写真はほとんど見つかりません。
なぜか?



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                    Aloe haemanthifolia 10 years from seed



この植物の故郷は、南アフリカのケープタウンから少し山の方に入ったところで、標高は1500mくらい。
年間降水量は1000mm以上で、雨の季節は冬。沙漠的な乾燥地ではなく、比較的湿潤な気候と言えます。
いわゆるフィンボス(Fymbos)と呼ばれる植生で、エリカとか、プロテアなんかが生えています。
なかでハエマンティフォリアが好むのは、急斜面の岩場で、雨水が流れ落ちていく水みちのような、
常に水気のある場所なのだそうです(学名で検索すると幾枚か自生地の写真が出てきます)。
同じエリアのもっと山の麓の方には、姿の似たアロエ・プリカティリス(Aloe plicatilis )が
生えています。こちらは樹木状に育つアロエで、栽培はそれほど難しくない。
ハエマンティフォリアの自生地はとても冷涼で、氷点下になることも屡々のようですが、日本の厳冬期の
感じとは少し違うようです。涼しい気候が続いても甚だしい寒気に長期間晒されることは少ないと思われます。
一方でこの種は高温多湿をとても嫌います。日本の蒸し暑い夏がたいへん苦手。しかし、この難物を、
条件的に厳しい関東の平野部で、立派に開花株まで育てている方もおられます。私もなんとか花が見たいと
長年悪戦苦闘を続け、少しずつですが、気難しい姫とのつきあい方がわかってきました。



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                    plant with pale striped variegated leaf



ところで、かつてアロエ属の植物には「○○錦」という和名があてられることが多く、この種は「眉刷毛錦」と
呼ばれていました。双方向に展開する葉姿が、ヒガンバナ科の球根植物ハエマンサス(Haemanthus)に
似ているがゆえに、学名もハエマンティフォリアとなったのだと聞きますが、そのハエマンサスの和名が
「眉刷毛万年青(マユハケオモト)」なので、アロエの方は「眉刷毛+錦」となったのだと推察されます。
ですが、私はどこかで何かを読んだのか、ある誤解をしていて、この種には刷毛ではいたような薄い斑が
入るためにその名がつけられた、と思い込んでいたのです。アロエには葉に地模様がある種類がたくさん
ありますからね。ところが、この種を育ててみると、ハッキリした地模様の斑は見られません。
なーんだ勘違いか、と思っていたら、何本もの実生苗のなかで1本だけこんな個体が出現しました(上と、下の写真)。



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葉の全体に、うっすらと刷毛ではいたような斑模様がうかびあがっているのわかるでしょうか。
季節により濃淡が変わるのですが、いちばん元気な時は、逆光に透かすとまさに刷毛斑で、もちまえの透明感が
引き立って実に美しい。本当に綺麗で感動しました。ネットでたくさんのこの株の写真を見ると、同じような
葉模様の個体もあるようです。一定の割合でこうした特徴の個体が出るものと思われますが、数十本蒔いたなかで、
こんなハッキリした斑入りはこの1株だけ。この株に花が咲けばよいのになぁ、と切に願ったのですが、
今回蕾を上げてきたのはこの株ではありません。



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                      seedling of Aloe haemanthifolia



では、どうやって、ハエマンティフォリアを育てるか?そのノウハウを、お話しします。
まず、日本での成長期は3-5月と、10-12月。この時期は常に水をやり、根を乾かさないように育てると、
瑞々しく美しい姿を見せてくれます。しかし、梅雨後半から残暑の頃まで急激に元気がなくなる。
いわゆる真夏日、熱帯夜の季節には気息奄々といった感じです。このとき、鉢から抜き上げてみると、
根がほとんど腐ってダメになっている。自生地でこの植物の根方を流れていく水は、渓流のようにいつも
ひんやりとしているのでしょう。水をやったあと鉢内が高温になると間違いなく根がダメになってしまいます。
一方で断水しても根が枯れます。仕方ないので、なるべく涼しそうな夕暮れにそおっと水をやる(気分ね)。
でも、結局どうやっても夏場には根の大半が枯れてなくなります。鉢を倒して生きている根(黄色いの)が
数本でもあれば良い方。根がやられるわけだから、当然植物は弱る。この季節のダメージ次第で、最悪は枯死。
そうでなくても、外葉が何枚も枯れ込んで、残った葉も痩せて汚れてみすぼらしい姿になってしまう。
そして秋、夜が肌寒いくらいの季節になると、ようやく新しい根を出しはじめ、徐々に復活します。
しかし、1-2月の冷え込みが厳しい季節には、またもや生育ストップ。サボテン温室内で管理すると、
冬でも昼の高温でダメージを受けるので、私は屋外で越冬させています。ただし、東京の冬は暖かいから
良いのですが、寒冷地では葉先が痛むと思います。
そんなこんなで、成長はつねに一進一退、なかなか大きくならないし、鑑賞上ベストな状態である期間も
極く短い。ハッキリいえば日本の気候条件、大半のサボテン多肉愛好家の栽培環境にはあわないのです。
このあたり、同じアロエの難物、ポリフィラ(Aloe polyphylla)にも通じるところがありますが、
ポリフィラがかなり傷んでも体力で持ち直すのに対して、ハエマンティフォリアは、そのままお亡くなりに
なることが多く、たくさん実生苗をつくっても、年々減っていくのです。3歩進んで2歩戻る・・・の繰り返し。
結論、たくさん蒔いて、1本でも生き残らせて、開花を夢見る。ノウハウは辛抱、辛抱、ひたすら辛抱。
その甲斐あってようやく・・・



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                   in bloom, after 10years and more from seed



蕾の複雑な色合いからすれば、スッキリしすぎるくらいの、コーラルピンクの花です。
この株は、上の方に掲載した大きめの株とおなじものです。撮影後数年が経っているのですが、
比べていただければわかるように、葉数は増えていない。ここ数年の猛暑の夏を生き延びてくるなかで、
むしろ小さくなってしまいました。おまけに開花に体力を使ったので、葉先はボロボロ。

次に咲かせるときは、是非とも葉先まで整った本来の美しさを発揮できる姿で・・・と念じています。
また、今回はひと株だけの開花だったのですが、このつぎ二株開花してくれれば、種が採れます。
最近は種も売り出されないし、このままでは我が家でも絶種の心配があるので、自家採取種子からの
実生で、是非ともの世代に繋げたいと思っています。欲張り過ぎかな?



テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

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お見事!!

Shabomaniac!さん、
アロエの最高貴品、Aloe haemanthifolia 咲きましたね~。おめでとうございます。
綺麗な珊瑚色の花で、すっかり魅了されてしまいました。
それに眉刷毛錦の刷毛斑とは…神様も洒落たことをしてくれますね。

以前いただいた苗、一進一退を繰り返しながらも着実に育っています。
その後、小さな実生苗も複数入手し、いろいろ試してますが、まさにおっしゃる通り、
サボテン・多肉とはかけ離れた、山野草に準ずる栽培法がコツと考えるようになりました。

A.polyphyllaはたまに栽培している方を見かけるのですが、
A.haeman...は私の周りで栽培する方は皆無。
なので今回、たくさんの画像を見せていただいて目の保養、栽培の目安になりました。
ありがとうございました。

すごーい!私もお花が見れて嬉しいです!!!
私は最近オークションで入手しました。が、届いたときすでに根が1本もありませんでした。(ショック)
難物なのでかなりの不安はありますが、なんとか頑張ってみます。栽培方法、とても参考になりました。ありがとうございます。
「食事に誘われちゃったくらいの勢い」プププッて笑っちゃいましたが私も分かります。テンションあがっちゃいますよね~

>noriaさん
栽培不向きのアロエにわざわざ挑むの記、にレスポンス戴き恐縮です^^;。花は、なかなか良い色合いで綺麗でした。でも、草アロエ類を除けば難しさはナンバーワンだと思います。以前は水苔で育てていました。最近は鹿沼の単用です。軽石なんかも良いかも知れません。確かにある種のランや山野草みたいなつきあい方です。サボテン温室ではまずうまく育ってくれません。ちなみにこの株、花で消耗したこともあり、この夏はかなりしんどそうです。葉っぱがどんどん痩せて薄くなってきています。こんどはポリフィラを・・・なんて思いますが、こっちの方が丈夫ですが、開花寸法がデカイのが到達目標を遠くしていますね。

>よっしーさん
お久しぶりです!ポリフィラ、ベランダ栽培的な環境の方がよく育つと思います。そちらなら、通年屋外でも栽培可能なんじゃないかと思います。根っこは、なくなっても体力が残っていれば出てきますから、なんとか涼しい日陰で夏越しさせてあげてください。秋になって涼しい風が吹くようになれば、きっと復活してくれると思いますよ。あるていど大きくなれば、体力もついて夏越しも比較的ラクになってきますよ。



遅れてしまいましたがアロエ好きの端くれとしてコメントさせていただきます。
まずは開花おめでとうございます。
ハエマンはもっともっと栽培スキルを上げないと無理だと思って手を出さずにいましたが、
とーっても参考になる記事で、私もやる気が出て来てしまいました。
ご指摘に従ってやる時はハウスではなく、自宅のベランダ栽培でやってみるつもりです。
それにしても斑入りのハエマンは芸術的な美しさですね…。

>roka79さん
>開花おめでとうございます。
ありがとうございます^^。やっぱり実生して開花まで行き着くと、なんとか育てられた、という気持ちになりますね。決して快適ではなない我が家でよく頑張ってくれたと思います。この植物、夏越しさえうまくいけば、あとはアロエなのでそれほど難しくありません。でも、最近の日本の夏は亜熱帯なみなので、なかなか大変ですが。ベランダ栽培はベストだと思います。
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沙漠植物、栽培、探究。

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