南タイ 植物の旅 (後篇)

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                Krabi



マレー半島を下って、クラビ(Krabi)で綺麗な海も堪能しました。
ここは観光地ですが、対岸のプーケット(Phuket)とは違って、鄙びたところ。
日本人もあまりいません。



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                      Cycas circinalis



離島シュノーケリングツアーのボートから、ゴツゴツの岩場に目を凝らすと、
ナンヨウソテツ(Cycas circinalis)と思しきソテツが取りすがっている様子が見えました。
東南アジアを中心に大変ひろい範囲に分布するソテツで、やや幅広の、艶のある葉っぱが熱帯感を醸し出します。
タイのソテツといえば、基部がボトル状になるシャムソテツ(Cycas siamensis)が有名ですが、
そちらはもっと北部の、やや乾燥した地域に生えるとされています。
※このソテツについては、熱川バナナワニ園」の清水さんからご教示あり、現在はCycas clivicolaと
分類されているとのことです。




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                     Melastoma sp.



海を楽しんだあと、クラビの海岸のほど近くで、素敵な湿原に案内してもらいました。
この場所は通年乾くことがないそうです。
ピンクのよく目立つ花はノボタンの仲間(Melastoma sp.)でしょうか。
あいにくの雨でしたが、ここは面白い植物の宝庫で、探すと色々なものが見つかります。
※こちらのノボタンも、上記清水さんによれば、Melastoma normale とのことです。



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                    unknown “tentacle grass”
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                     Eriocaulon sp.
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                     Droseraceae
                    


いちばん上は、スパイラルのロゼットが目についたこの植物、艶のある若草色の葉がくるくると
渦を巻いていてなんとも面白いものです。水草の世界では“tentacle grass”と呼ばれる
カヤツリクサ科の植物ということでしたが、後で調べても同定できませんでした。
どなたか、この植物のことをご存じの方はいませんか?
その下、同じロゼットでも少し小ぶりなのはホシクサ科の植物(Eriocaulaceae)でしょう。
イヌノヒゲや、シラタマホシクサに近いものと(Eriocaulon sp.)と教えてもらいました。
この仲間は、日本の湿原や田圃などでも見られますが、稀少な植物でなかなか出会えません。
もっと大柄で、日本のシラタマホシクサのような感じの花をつけている個体もありましたが、
雨でうまく写真が撮れませんでした。一番下は、湿原ではお約束のモウセンゴケ。こちらも沢山ありました。
※こちらの渦巻き草のテンタクルズプラント、masutusさんが調べてくれたところ、どうやら
Cyperus sp. Chaiyaphum として流通しているものか、それに近い種類のようです。
やっぱりカヤツリグサ科ですね。これはなかなか園芸種としても魅力的な植物だと思いました。



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                    caudiciform impatiens in culture



タイ南部の植物探索行、最後に訪ねたのがマレーシア国境にかなり近いエリア、サトゥーン(Satun)。
ここでの目当ては、コーデクス(塊茎)をつくるインパチェンスの探索です。
おいそれと生えている植物ではなく、特定の山の特定の地形のところにしか見られないので、
地元で採集許可証の公布を受けているプロの採集人の方に案内してもらうことになりました。
上の写真は、最初にその人の家の庭先で見かけた、山採りと思われる塊茎インパチェンス。
花いろは様々なタイプがあるそうですが、この時はオレンジ色タイプが開花中でした。
最近では花ものとしてニューギニア・インパチェンス(Impatiens hawkeri)が普及していますが、
この塊茎インパは、日本にも自生するツリフネソウ(Impatiens textori)とよく似た形の花を
咲かせていました。もう一枚は塊茎が葉で隠れて見えませんが、こちらは白ピンク花タイプのようです。
少し花どきを過ぎてしまっていましたが、葉の下にグリーンの大きな塊茎が隠れています。




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これらがどういう場所に生えているかというと、カルスト地形の石灰岩の岩場。
しかし、そうした岩が露頭しているのは、だいたい山頂部(上の方に載せた写真にある海に突き出した
岩場のような地形)で、険しいうえに、そこにいくまではジャングルをかき分けていかなければなりません。
この日は雨の続いた後ということで、ジャングルの中は恐ろしく蒸し暑く、藪を漕いでいくと、
汗だか泥水だかわからないもので服はぐしょぐしょ。虫はたくさんいるし、どういう訳かカラダが痒くなるし・・・
で、目的がなければなかなか行けないような場所です。暑いだけで、見通しもよく歩きやすい沙漠での
サボテン探しとはハードさがまるで違います。




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                    Euphorbia antiquorum?
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                     Kaempferia sp.



写真は途中でみかけた魅力的な植物。上はユーフォルビア(Euphorbia antiquorum?E.lactea?)。
これは、先のナンヨウソテツが生えている岩場にもたくさんありました。移入種とも言われていますが、
マレー半島一帯の海岸沿いに分布しており、野生であるとの見方もあります。
もう一枚、とても葉模様の美しいのはショウガの仲間、ケンフェリア(Kaempferia sp.)でしょうか。
葉模様が色々あり、ちょっとジュエルオーキッド(Ludisia discolor)を思わせる実に美しい植物でしたが、
岩場の深くにガッチリ根を食い込ませて生えていました。



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                    caudiciform impatiens in habitat of Southern Thailand



お目当ての塊茎インパに出会えたのは、歩き始めて30分くらい。
プロが案内してくれたのでなければ、グッタリ体力を消耗しただけで終わったでしょう。
鬱蒼としたジャングルのなかに、ちょっとした岩場が出現して、木漏れ日程度の陽が差し込むギャップの
ような場所です。写真の株はここで見た最大のもので、高さ1mくらい、ひとかかえもある緑の幹は
大変存在感がありました。




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              deep-rooted into the holes and crevices of lime rock



雨のあととあって、地面も岩場もじっとり湿っています。石灰岩は激しく浸食されていて、
穴が沢山あいているのですが、その穴や岩の割れ目のようなところにはまり込むように生えています。
雨の多い密林ですが、岩場なので水はけは極めて良い。着生植物的なところもあります。
この場所、とにかく写真が撮りにくい。薄暗いうえに、植物本体が岩穴に隠れるような状態で、
基部がよく見えないんです。また、大半が垂直に切り立ったギザギザの岩場に生えているために、
塊茎は岩の形に削られ、茎は立ち上がるようになっています。整形のコーデクスは大変貴重でしょう。
残念ながら花の咲いているものはありません。
本当はもっと大きな群落もあるそうなのですが、雨の後で、そこには案内出来なかった、とのことでした。




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東南アジア原産の塊茎インパチェンスは何種類もあり、有名なのがミラビリス(Impatiens mirabilis)で、
他にも Impatiens kerriae や Impatiens opinata などが、塊茎を形成します。ボトル状に下部が太って、
いかにもコーデクスらしい姿になりますが、乾燥地のそれと異なり肉質がとても柔らかく、傷つきやすいですが、
成長も比較的早いようです。東南アジアには、ほかに扁平な塊茎を作るインパチェンスもあり、
花いろも白~濃ピンク~オレンジ~レモンイエローと様々あるそうで、こちらも別の魅力がありそうです。




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瑞々しいグリーンの塊茎と艶のある大きな葉姿は、それだけで魅力的ですが、そのうえ花はツリフネソウの
美花ですから、鑑賞価値は満点。日本やヨーロッパに少しずつ導入されるようになりましたが、まだまだ
知られていない、レアな植物です。実は私も数種類を栽培していますが、これまでのアジア産コーデクスにない、
塊茎、葉、花と3拍子揃ったピカ一の観賞植物だと思います。これらについては、また栽培法も含めて、
書いてみたいと思っています。





テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

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いろいろな植物に詳しくて感心しましたが、私はサボテン以外何も分からないので(サボテンもですが)、少し時間をかけて楽しく読ませていただきました。
螺旋状の羽根車のような葉をした“tentacle grass”、面白いので調べてみると、「Cyperus sp. Chaiyaphum, Thailand」で出てくるのは水中葉、また「ラセンソウ カンボジア」でも螺旋状のものが出てきますが・・・全然違っているかもしれません。

自生地の植物というと、2年前の暮れに買ったシクラメンを屋外で栽培し、ひと月ほど前から咲き始めていますが、地中海の自生地でもこの時期に木洩れ陽の中で咲いているのかと想像して楽しんでいます。

全編後編と、貴重なレポートありがとうございました。
Impatiens、最近出回っていますね。室内でも栽培できそうな感じですがいかがでしょうか。興味はあるのですが、如何せん置き場が確保できず・・・。自生地に辿り着くのは大変そうですね。数年前、台湾の山奥に行ったことがありますが、似たような感じでしょうかね。とてもハードでした。

今回の記事も楽しく読ませていただきました。
ノボタンは私も見つけて撮影しましたがワイルドな雰囲気で惹かれました。湿原探索も楽しいですよね。
Satunまで行かれたのですか。あの辺は宗教対立があって危ないと聞いていましたが…Impatiensの自生地の画像は素晴らしいですね。
乾季ですら探索は蒸し暑くてしんどかったですが雨季ならなおさらだったでしょうね。

>masutusさん
渦巻き草の同定、たぶんmasutusさんのご指摘が正しいように思えます。すくなくともそれに近い植物ですね。さっそく、ブログ本編訂正しておきました。私もいろいろ調べたのですが、それらしい植物に行き当たらず・・・さすがの検索力で脱帽です。これ、なかなか栽培難しい植物のようです。
>Portさん
塊茎インパ、活着までは多少難しいなと思いますが、いったん活着すると、成長も旺盛で、花つきもよく、育てやすい植物です。不整形や小さい苗も、成長が早いので、じきにカッコよくなりますしね。私の目標は種をとって実生から育成することです。
>roka79さん
湿原とか、渓流沿い植物なんかも面白いです。水草系のひとたちが熱中するサトイモ科の美葉種に、私もタイ旅行以来傾倒しています。これらの野生種の美しさを楽しむスタイルは、サボタニ園芸にも通じるところ多々ありですね。にしても、雨期の探訪はけっこうしんどかったです。それでも植物が見られるなら・・・の一年で乗り越えられましたが。


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