パキポディウムを野育ちさせる。

やっぱり今年も猛暑でしたね。
というか、いまやこれがあたりまえの日本の夏になったのかも知れません。
人間のほうはうだる炎熱にはなかなか慣れませんでしたが、植物のほうは多少慣れてきたのか、おおむね元気。
そしてこの暑さのなか、とりわけ元気だったのがキョウチクトウ科の多肉植物、パキポディウム(Pachypodium)。
今夏は晴天日が多かったので、葉色も青々艶々と、熱帯の木らしい魅力を放っています。



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                  Pachypodium baronii ssp.windsorii grown from seed



ところでこのパキポディウム、最近は原産地のマダガスカルから立派な株が次々輸入されています。
自生地では稀少植物として長年保護の対象になっていたため、入荷がない状態が長年続いていたのですが、
現地の政情の変化などもあり、目を見張るような巨大なグラキリス(P.rosulatum ssp.gracilius 象牙宮)や
恵比寿笑い(P.brevicaule)が続々と入ってくるようになりました。
これらはたしかに魅力的で、私にところにも、数年前、輸入が再開された当初に勇んで買い入れた
ブレビカウレがあります。しかし最近のように、マザープラントと呼ぶべき巨大株から、幼苗・若苗まで含めて、
あまりにも数多く入荷してくるのを見ると、いったい自生地はどんなことになってしまっているんだろう・・・と
いくらか心が暗くなるような・・・。自分もそれに多少与してしまったのですから、なおさらですね。


パキポの輸入株が人気なのは、
・実生からでは簡単に育たない、時間がかかり過ぎる
・細長くなってしまい、立派な壺型、扁平な塊茎に仕上がらない
という印象があるからだと思います。実際、私も十年くらい前までは、そう思っていました。
ところが、本当のところはそうでもない。種からの国内栽培でも、じゅうぶん立派な標本株が作れるのです。
以下、まだその途上ではありますが、パキポディウムを野育ちさせる試行をご紹介します。



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                   fruit and seeds of Pachypodium densiflorum



パキポディウムの果実は、こんな感じ。サヤのなかには羽毛をまとった籾のような種が入っています。
上の写真はデンシフロラム(P.densiflorum)のものですが、ブレビカウレなどの種は、もっと小さい。
とても軽くてシイナのように見えますが、新しい種は発芽率の高いものです。業者で売られているものも、
よほど古いものでなければ、そこそこ発芽します。海外業者のリストには、だいたい毎年載っていますが、
我が家のパキポも大半が輸入種子から育てた株です。
実生の方法はサボテンと同じで、発芽にはある程度の高温が必要。幼苗は水を切らさぬように管理し、
秋に休眠入りする前に出来るだけ大きく育てます。パキポの実生では、最も気をつかうのは最初の冬越しで、
出来れば5-10度を保てる場所、屋内の窓辺などで管理して、シワシワになったら軽く水を与えてやれればベター。
氷点下になるような場所では、水やりは厳禁。しかし、乾かし過ぎると萎びて復活しないことがあります。
その後の栽培ではポイントはひとつだけ。成長期である夏場に屋外で栽培することです。



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                 P.rosulatum ssp.gracilius, 7-8years from seed



このグラキリスは、実生から7-8年育てたもの。トックリ状の塊茎や茎の詰まり具合など、昨今入っている
輸入球と比べても、あまり遜色ないと思いませんか?毎年、4月下旬~9月いっぱい、屋外で陽晒し雨晒しで
育てるだけで、このフォルムが得られます。しかし、同じ苗をガラス室やハウスで育てると、茎が長く伸び、
塊茎も丸々とはしてきません。驚くほど違いがあります。国内実生苗が、業者のリストなどにも掲載されますが、
大半はハウス栽培株で、のっそりと間のびして野生株とは異なる姿をしています。輸入球が渇望されてきた所以です。
陽光なのか、風なのか、理由はハッキリわかりませんが、露天とハウス(ガラス室)での違いは明白で、
この傾向は、象牙宮だけでなく、大半のマダガスカル産パキポディウムにあてはまります。



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                 P.brevicaule 2years seedling and mature plant



こちらも人気のあるブレビカウレ。上は実生から丸2年経った幼苗。つまり蒔いて3年目には開花します。
そして、このサイズまで育てばあとは難しいことはあまりない。夏場は屋外に放置して、鍛える。
下の写真、3株のブレビカウレのなかには我が塊根の・・・いや、悔恨の輸入株が混じっています。
大きさでわかるかも知れませんが、右上が輸入株で、すでに5年以上育てています。ほかの2本は、
実生7-8年の株。葉っぱが茂っているのでわかりにくいですが、植物体そのものは、大きさ以外殆んど
変わりなく、扁平な姿です。いずれも夏場は屋外で育てている株ですが、もしガラス室で育てると、茎が
立ち上がってきてショウガのような、芽点が尖った姿に育ちます。ぺったんこの輸入球も長年温室内栽培を
続けていれば、やがてだらしない姿になりがちです。屋外栽培には、むろんリスクもあります。
梅雨もそうですが、成長期終盤、秋の長雨が苦手です。この時期、まれに腐る株も出ます。とくにブレビカウレは
要注意で、ある程度のサイズの株は、秋早めに温室に取り込み、水を切って休眠させるのが安全。もっとも
温室内でも腐ることはありますから、屋外栽培のリスクが特に高いとは思いませんが。



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                  P.baronii ssp.windsorii, 7-8years from seed



そして、いちばん栽培の難しいとされるバロニー・ウインゾリ(P.baronii ssp.windsorii)も、露天栽培で
トックリ状の良い姿に育っています。この種は夏場の屋外栽培のリスクは少なく、むしろ冬場の断水休眠中に
ダメになることがあります。寒さには特に弱いので、最低温度で摂氏10度くらいを保てればベターです。
ちなみに、パキポディウムは人工授粉、結実が難しい植物ですが、屋外に放置栽培すると、結実する確率が
かなり上がります。授粉者の昆虫が自由に飛来するから?と思われますが、ひと株でも結実して発芽可能な
種子が稔ります。



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            P.rosulatum ssp.gracilius with fat and rounded caudex, 'field-grown' from seed



サボテン・多肉植物に限らず、園芸の世界では野生株の保護などを口にすると、嫌われるところがあります。
原産地から輸入された植物たちの輝くような魅力が、趣味にひろがりと深みをもたらしてきたことも確かですし、
種から育てる園芸植物であっても、そもそもはすべて野生由来なのですから、山採りを否定するつもりはありません。
一方で、植物を人一倍愛する人たちが、愛する植物たちの自生地を自ら損い、それに目を背けるのだとしたら、
とても残念なことでもあります。
マダガスカルの陽光降りそそぐ岩山に、銀色のパキポディウムの塊茎がいつまでも輝くように・・・せっかくの輸入株が
種をつけた時には、ぜひ実生からの次代育成を試みて欲しい、そう思ってこの稿を書きました。



テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

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なんと丸々としたパキポ!

始めましてYとKです。

輸入球が立派過ぎて実生から育てのを躊躇していましたが工夫次第でとても魅力的な苗になるのですね。とても勉強になります。
これは来年実生しなければ・・・上手く育てられれば3年目で花を観賞出来るのもイイですね!
それと良ければ種子の輸入先をお教え下さい。

日本で素晴らしい実生苗を育てる事が出来るようになればきっと輸入も落ち着くはず。
自分も極々微量でしょうが原産地を守れるよう努力してみたいと思います。

赤い花のパキポ~♪キレイ~♪

7~8年でムチムチ徳利になるなら山採りしなくともいいですねw
バロニー・ウインゾリ(P.baronii ssp.windsorii)さんはShabomaniac!さんがせっせと実生して陽光降り注ぐ岩山に逆植え込みにいかないといけませんね~♪そのときは私も呼んでくださ~い!マダカスカルに戻し隊!の隊員に立候補しま~す!ウルトラ楽しみです!イェイw

このところのパキポ現地球の大量流入は、政情の不安定と急速な農地化が影響しているようです。
現地ではパキポに限らず固有植物が伐採され、好むと好まざるを問わず、流入してくるものだろうと思います。
懐に余裕のある人は、現地での絶滅を少しでも食い止める意味からも、現地球を栽培するのも意味があるように思われます。
私はといえば、種しか手が出ませんが。

ウィンゾリーの実生株、立派に育っていますねぇ!以前海外の種子カタログで見つけたのですが、あっという間に売り切れました。やはり人気種は速効で注文しないとだめですね。
マダガスカルに限らず、アフリカでも中南米でも農地や鉱山開発といった環境の急変で犠牲になる植物は想像以上に多いです。むざむざ開発の犠牲にするくらいならよその国の温室で生き延びさせる方がまし・・・とはいうものの、それにお金が付いて回ると、法の目をかいくぐっての乱獲を助長することになりかねないのも頭の痛いところ。
さらに輸入株にも自生地情報が付随していれば将来の自生地復元にも役立つのでしょうが、なかなかそこまでされている例は見ないですね。

パキポ実生僕もチャレンジしたくなりました。
家のも野ざらし栽培しようか悩みます。だけど家は気温が低いので短い期間しか無理そうですが…

どれもとても元気そうで綺麗ですね。
キョウチクトウ科の多肉植物は少しですが栽培しています。
ほんとに暑いのが大好きで、日光は強ければ強いほどそれだけご機嫌のようです。
こんな風にがっちり締まった株に作れたらいいなぁ~と拝見して思いました。

>YとKさん

はじめまして。
パキポの輸入株はたしかに立派で、実生して育てるとしても、そのお手本ですね。でも、サボテンなどと比べても、その実現は難しくないと思います。とくに、いま人気があるグラキリスは寒さにも比較的強いし、長雨にも耐えるし、実生向きです。ただ、温室栽培だとぜんぜん違う姿になるので、これまであまり実生株が出回らかなかったのだと思います。ぜひ、蒔いてみてください。種はケーレス(Kakteen Koehres)やシルバーヒル(Silver hill)などによく出ていますよ。

>takoyashikiさん
属内唯一の赤大輪、バロニーは素晴らしい植物ですが、なかでは一番難しいです。写真の株も兄弟が最初は十数本あったのに、いまは2株だけです。その子たちはそれこそ百以上あったのに、いまは十本くらい。みんな冬の寒い季節にダメになりました。水を切ると萎びて枯れるし、やれば腐るしで扱いにくいです。自生地では、それこそ数十本単位しか残っていないらしいですから、まじめにコロニー復活が必要かも。

>queiitiさん
農地化は植物にとっては、もっとも壊滅的な影響が出ますね。南米の平原ギムノなどは、コロニーが今もどんどん消滅しているそうです。そういうのはぜひサルベージしてほしい。いっとき、サルベージのアメリカ太平丸などがたくさん輸入されましたね。パキポなどは、岩生種が大半なので、サルベージというよりは、根こそぎ採取の色合いが濃厚ですが・・・。やっぱり実生が心穏やかです。

>noriaさん
ウインゾリの種はあまりないですね。デカリーと並んで入手しにくいかも。うちでも数回しか結実したことがないです。デンシなどは毎年たくさん稔りますが・・・。うちの種は買ったものではなくて、エキゾチカから購入した実生小苗が大きくなって結実したものです(写真はエキゾチカ株の子ですね。すでに孫もいます)。それから、開発や採取などがなくても、コピアポアはソラリスなど、気候変動?による乾燥化で絶滅状態の種も多いそうです。人工的保全も考えたいところですね。

>guritogureさん
たしかに、パキポは光堂をのぞけば、完全夏型なので、夏の短いところでは育てにくいところはあります。もっとも梅雨も苦手ですから、雨の少なさはメリットにもなりますね。5~9月は屋外OKではないでしょうか。秋のしまい時は、葉が落ちるのでわかります。それと、刺ものがよく育つ環境と、パキポが丸々育つ環境は、なにか通じるところもある気がしますね。

>saeさん
屋外栽培してみて、育ちの差をみるにつけ、ハウス内というのは決定的に何かが足りないんだなーと痛感しました。温室栽培で長細く育ってしまうサボテン(スクレロとか)も、おそらくは屋外、または屋外的な環境で育てたらガッチリした姿になるんだと思います(雨ざらしだと腐っちゃうので工夫必要ですが)。ところで、夏に強い、暑さにも強い強い、と思って日ざらしにしていたパキポの葉っぱをすこしだけ焼いてしまいました。反省…。


はじめまして

はじめてコメします。
そして、過去の記事ですみません。

実は、パキポ(シバの女王)の種子を買って手元にあるのですが、播種前に色々調べていてるうちにたどり着きました。

ぶしつけですが、ひとつ教えてほしいことがあります。
種は覆土した方が良いのでしょうか?
なかなか、その辺りの情報が少なく思いきって聞いてみようと思って書き込みさせていただきました。

もし、気が向きましたらご教授のほど、よろしくお願いします(^-^)

>ロメオさん

パキポの種子、私は覆土しません。根が這うことがありますが、だいたいは暫くして潜っていきます。ただ、上2cmくらいの表層土にはバーミキュライトやピートモスなど、柔らかめのものを混用しています。ご参考になれば・・・。

お返事ありがとうございます!

覆土せずにやってみます。
表面はバーミキュライトにしようと考えていたので背中を押されたような気になりました(^-^)

僕は北海道に住んでいるので夏型植物の栽培には向いてないと考えていましたが、なんとかパキポを発芽させて短い夏ですが、戸外で元気な株にしたいと思っています。
本当にお返事ありがとうございます。

これからブログ読ませていただきますので、またご教授のほど、よろしくお願いします(^-^)

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No title

古い記事へのコメント失礼します。
実生のパキポディウムを太く育てたいと思い調べていたところ、こちらの記事に辿り着きました。
2つ質問があるのですが、
1つがパキポディウムを太く育てるために肥料はどのような物を使えばいいのでしょうか?よく肥料を上げると上に細長くなってしまうと聞くので、与えていいものか、与えるなら何をあげればいいのかがわかりません。
もう1つが植え替えは何年置きがベストでしょうか?
お時間のある時で構いませんので、ご回答いただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。

No title

>パキポキさん

肥料について言えば、私はマグアンプKを用土に適宜混ぜ込んでいます。規定量程度であれば、多肥で徒長するすることはありません。上にのびてしまうのは光線不足です。ビニルハウス、ガラス温室の無遮光でも紫外線が一定程度カットされるため茎は間延びします。屋外で直射日光に晒すことで上への伸びが抑制され、詰まった感じの株に仕上がります。ご参考になれば・・・。

No title

詳しくご回答いただきありがとうございます。
早速植え替えのタイミングで肥料を混ぜて見たいと思います。
実績のある方からアドバイスをいただけて不安もなくなりました。
今後もブログの更新楽しみにしています。
プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物、栽培、探究。

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