凡家来、

という和名のサボテンがあります。誰が名づけたのか、知りません。
凡、家来、ですよ。凡人、凡夫、凡庸、凡退・・・とりたてて目立つところのなく平凡な、しかも主ではなく家来。
なんでこんな名前になってしまったかと言えば、おそらくはその学名、
Echinocereus fasciculatus ssp.bonkerae から来ていると思われる。
ボンケラエ→凡家来、ってことなんでしょうねぇ、たぶん。学名あて字の和名は珍しくないですが、
これほど安直かつ愛情に乏しい名づけは珍しい。その名の由来、Bonkerさんも、びっくりでしょう。
子ども時代、何かのサボ本に紹介されているのを見て何とも変な名前の植物だなぁと思い、以来気になっていました。

そして、これがそのお姿。



IMG_0215RS.jpg



え?どれかわからないって?
画面左下に写り込んでる、小さくてこんもりしたサボテンです。この場合は、オプンチアの家来に見えますね。
どうせ家来になるなら、金鯱とか、立派な弁慶柱あたりに仕えたかったでしょうが、仕方ない。



IMG_0227S.jpg



こっちは、もさもさのユッカに付き随う凡家来。それでも、主に比べるとじつに控えめですな。
過去のアルバムを探しても、意外にアップで撮っている写真が少なくって、何かほかの植物の脇に
ちんまり映っているのばっかりなんです。いやー凡家来には実に申し訳ないかぎり。
でも、よく探したら、ちゃんと大きく映ってる写真もありました。さっそく見てみましょう。



96globe3S.jpg
                 Echinocereus 'bonkerae' in habitat (near Globe,AZ)


どうです、たしかに平々凡々たる家来でしょう。蝦サボ以上でも以下でもないボディに、中刺の目立たない控えめな姿。
でも、沙漠旅幾星霜のメサガーデンの園主は「エキノセレウスの中でもとくに素晴らしい植物だ!」と一押しでした。
どこに魅力があるのか。なんというか、藤沢周平の小説に出てくるような、地味でうだつがあがらないけれど、
密かに剣の達人だったりする侍みたいなペーソスがあります。気配を消してじっと沙漠に蹲るその姿を見つめていると、
黙る力、みたいなものを感じる。・・・かなり強引な売り込みだけど、育ててみたらきっとわかりますよ。

典型的な蝦サボゆえ、丈夫で成長も早く小苗のうちから子吹きし群生します。種から開花株の育成も容易で、
栽培しやすさも花の派手さも麗晃丸といい勝負。麗晃丸はけっこう人気がありそうだけど、凡家来を育てている人が
日本に何人いるんだろう?・・・え?私だけ?



IMG_0249S.jpg
                 The scenery in southern Arizona


その自生地はこんなアリゾナの峡谷地帯。疎らに木々が茂る標高1000mくらい。冬寒く夏暑い感じの場所。
谷の崖面には鯱頭イーストウッディ(Ferocactus cylindraceus ssp.eastwoodiae)が取り縋っており、
凡家来は緩やかな斜面に生えています。周辺地域には同じ様な顔の蝦サボがいろいろ生えていてややこしい。
最近の分類ではファスキクラツス(E.fasciculatus)の亜種という扱いが定番となっているようですが、
衛美玉(E.fendleri)や武勇丸(E.engelmannii)の亜種とされていることもあり、New Cactus Lexiconでは、
ボンケラエ(E.bonkerae)として、暫定独立種扱いとなっています。同じ属の御旗(E.dasyacanthus)と似て、
中刺がない個体が多いため、それが特徴のように言われますが、同じコロニーにこんな株もあります。



96globe4S.jpg
          Echinocereus 'bonkerae' with central spine, same location as above one (near Globe,AZ)


ほとんどfasciculatusに近い顔ですが、隣り合って生えている。そういう意味では両者は個体差の範囲、という気が
しないでもない。刺がつん、と突きだしていて、それなりに勇ましい。そういう意味では、凡家来、らしくない。
やっぱり中刺の出ない、静かで物言わぬ顔つきのほうがしっくりきます。

この、地味で取り柄のない、どんなに良作の株を品評会に出しても誰の記憶にも残りそうにないサボテンが、
一瞬の輝きを放つのが、開花の時です。



IMG_9912S_20120508184451.jpg
                 Echinocereus 'bonkerae' with flower in habitat (near Globe,AZ)cacsuc080324017S.jpg

cacsuc080324023S.jpg
                 Echinocereus 'bonkerae' SB521 Gila Co,AZ (cultivated)                


すべての蝦サボテン、いや全サボテンのなかでも最もゴージャスと言っていい、素晴らしい花。
花径10cmほどもある大輪で、濃い紫ピンクの花弁には、なんとも言えない金属光沢があり、視覚を撃ちます。
上の一葉は、冒頭紹介した自生地でようやくに花に出会えたときの写真。下2葉はメサ由来の栽培株。
両者の花いろは微妙に違うので、メサのSB521は、私の訪ねた自生地とは違う場所のものと思われます。
悔しいがメサの株のほうが綺麗だ。園主はこっちのコロニーを指して「とくに素晴らしい」と述べたに違いない。
花の中心に向けてケミカルなグリーンに移り変わっていくグラデ感、柱頭とのコントラストも鮮やか過ぎる・・・。

ともかく、写真では伝えきれないくらい派手さで、これが人の手による改良を経ていない野生植物の花か、と。
そうか、刺姿がジミジミだったのは、この美しい花を際立たせるためだったのか、と得心します。
ほら、こうして並みいる美花蝦サボ軍団と比べてみても、ひときわ目もあやな美しい花です。



CACTI2010-04-_0327S.jpg



凡家来。初夏の陽射しを浴びて、きょうばかりはと主に面目を施す、の図ですね。





テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コメント

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こんばんは,

凡家来,なかなかのものではないですか!
あまり商業的には流通していなのでしょうか,見たことはありませんでした.

蝦サボくんたちは,風貌も花もいろいろで,コレクションしがいのある仲間ですね.大きくなり過ぎないのも,また良いところかと.少しずつ手元の種類を増やしつつあります.

凡は凡ながら、必ずしも凡ならずということでしょうか?
「高原の陸地に蓮華を生ぜず、卑湿の淤泥にすなわち此の華を生ずるが如し」と『維摩経』に説かれていることを思い起こしました。
蓮華とは蓮の花(インドでは睡蓮も含む)のことです。

エキノケレウスの種を何種か去年蒔きましたが、成長もかんばしくなくけっこう難儀しています。
私のところの環境には合ってくれてないようです(涙)。

こんにちは
凡家来、初めて知りました。
面白い名付けですね。昔、持っていた
カニクイザルも笑えます。

自生地の凡家来の群生は素晴らしいで
すね。私もアリゾナの大龍冠の自生地
で、エビの開花を沢山見ました。

エビ軍団、これだけ揃うと迫力ですね。
凡家来、ほんとに花が一際映えていま
す。エビを増やしたくなりました。

凡家来、すごいゴージャスですね!
これを見ると凄い蒔きたくなってきました。

蝦サボ軍団がすごい増えそうです。
まだ今年蒔いた分も出てきてないですけど。

アリゾナ南部で、中刺のあるタイプを見たような気がします。素人なので「あ、エンゲルマニーだ」と思ってしまったというか、区別が付かないのですが・・・。ただ、この花は確かに
とてもゴージャスですね。Echinocereus reichenbachii(摺墨かな)が、花の特に綺麗な蝦サボだと思っていましたがこれも魅力的です。

凡家来に限らず、植物の名前には奇妙なものや、名前だけで惹かれるものが沢山ありますね。カタログの中に植物自体はどんなものかはわからなくても、名前につられて注文してしまったものもあります。

初めての凡家来、魅せられました。
Shabomaniac!さんでしたら、私、家来で十分ですが・・・^^。

コピのdura銅羅丸などは、名前も姿も気に入っています。

メサ一押しのSB521、どういうわけかチェコを経由してわが家にあります。
ほぼ地球を一周して手もとに届いた種袋から、今年ようやく初開花!!
こんなにゴージャスな花とは知りませんでした。

凡家来の記憶は子供のころ手にした、田中亮三郎氏の「サボテン栽培~初心者のための栽培法」の写真。
モノクロの未開花写真で、とくに魅力も感じなかったのですが、名前だけがずっと引っ掛かっており、
カタログで見つけてつい播いてしまったのです(苦笑)。
本棚の隅から久々に引っぱり出して確かめると、輸入株らしき群生株が二株。名前だけで解説さえありません。
これで半世紀近く子供の記憶に残るのですから、名づけた人は非凡な才能の持ち主かもしれませんね。

ところで今年は寒さが功を奏したのか、エビの当たり年のようです。
当分咲かないと思っていたエンゲルマンニー(SB 844)やグランディスが次々咲いてきています。
さすがにハンコッキーはまだですが…。

団扇ーーーーー!!!(喜!!
凄いですね、一枚目の団扇の群れ様!!
こういう絵、いいなーーーーー。
この団扇はなんでしょうね?

そしてそのうしろを行く家来くんがまた
可愛すぎるww
ちんまりと収まってるところが好きww
なのにお花はちんまりしてないんですねー!
花弁の質感がプラスチックっぽいのが
(写真だからかな?)造花を思わせますね。

美しい花もいいですが、緑色の雌蕊に惹かれてしまいます。
雌蕊や雄蕊だけでもも観賞価値が有ると思う私は変わり者かも。

>さぼちゃんだいすきさん
なかなかのもの、なんてお言葉頂戴して、凡家来も恐縮しているかと思います^^;。日本のサボ屋さんで売ってるところはあまりないかも知れませんね。そもそも、蝦サボじたい、花もの扱いで専門業者の扱いは少ないです。エビやロビこそ、細部にこだわり違いを見抜く、マニア向けサボと思うのですが・・・。

>アイハルさん
維摩経、ググって読み込んでしまいました^^;。泥濘ならずとも荒れ果てた土漠から美花を生ずるサボテンも通ずるところあるかも知れません。エビサボは基本的に丈夫なので、アイハルさんの様々な栽培苗を美しい作を拝見する限り、きっとうまく育つはずと思います。子どものうちは水もたくさん欲しがります。

>Doremifa さん
エビサボはどこの自生地でも脇役のことが多いですが(花どきをのぞけば^^)、沙漠の景観を構成するうえでは大事な役どころですね。大竜冠と一緒に生えていたのは、武勇丸(E.engelamanii)でしょうか。こいつの輝く刺はひときわ豪壮ですが、栽培下で咲かせるのはなかなか難しい植物です。

>さく
エビサボは海外ではけっこう人気があって、専門に育てている人も結構いるようです。植物本体も花もじつに様々で、いろいろな環境に適応しています。凡家来はとにかく花がデカイのですが、そのせいか、元気に育ってくれていないと咲かない、気難しいところもあります(調子悪いと花が小さくなったり)。

>roka79さん
凡家来、いまでもメサのリストではengelmaniiのバラエティになっていますが、このあたりの分類は大家の間でも意見が割れているので同定はとっても難しいですね。Echinocereus reichenbachiiも、日本ではよく太陽の類と混同されているんですが(白刺太陽などと呼ばれたり)、花の美しさではエビ属中の双璧だと思います。

>queiitiさん
妙な名前にはたしかに惹きつけられるものがあります。私も種の「名前買い」をすること、しばしばです。あとは地名にパタゴニア、なんてあると欲しくなったり、チェコ業者の長たらしい釣り書きも、読んだら負けで欲しくなってしまうことが多々ありますね。

>masutusさん
とんでもない・・・いまや難物サボでは先をゆかれていると思っております^^;。エビだのロビだの数ばかり増えてますが、難物はいっこうにうまくなりません。コピの銅羅丸は、同じあて字系でも、響きもよくて、呼ばれるサボテン自身も気に入ってそうです。名前でいえば、北米難物は、わりと響きの良い和名が多い気がしますがどうでしょう?

>noriaさん
いやー、SB521が少なくとも国内2カ所に分布していることを知り、なんだか嬉しいです。花は如何でしたか?私は、昔その名を知ったタネ本をなくしてしまったのですが、もしかたら田中さんの本かも?知れません。写真も思い出せないですが、名前だけは心に刻まれていました。エンゲルマニーはうちでは今年も咲きません。ニコリーの方は毎年咲くのですが・・・。ハンコッキーの開花も凄いですね。これは難開花の極みだと思っています。

>l-marshさん
家来じゃなくて、主のほうのウチワに注目くださってありがとうございます。たぶんOp.engelmaniiじゃないか、と思うのですが、花も咲いておらず定かではないです。魅力的ですが、栽培困難(痛すぎるデカ過ぎる)ですね(涙)。凡家来の花弁のケミカルな感じは、実物もそうです。色といい質感といい、人工物のような派手さです。

>cooパパさん
「緑色の雌蕊に惹かれる」・・・同感です!エビサボの最大の魅力だと思います。大小さまざまのエビサボ、ほぼすべて雌しべは鮮やかなグリーン。これがカラフルな花弁の色と素敵なコントラストになるんですよね。

今Op.engelmaniiの詳細写真見て来ました。
確かにこれは痛いですねw
でかすぎるのは大歓迎なのですが。。。
魅力的な自然物はそう易々と人間には渡さないのかな。
お花もいいですねぇ。
オプンチア、お花素敵なのにうちでは
咲いてくれない・・・。

>l-marsh さん
でかい、痛いで、この種類は栽培難しいですが(でもなぜか種蒔いた小苗はあったりして^^;)、フラギリスはじめ、小型でよく咲く育てやすいウチワも結構あります。流通は少ないですが、めっけたら是非・・・^^。花は、金烏帽子(O.microdasys)などは咲きにくいです。あとは、2月からじゃんじゃん水をやり、なるだけ昼間の温度を上げてやれば蕾がたくさんつきます。

え!イイこと聞きました!!
水ガンガンですね、やるべし!ww

でも確かに、購入してきたオプンチア、
どれだけ水もらってたんだ?!って思います。
我が家で育てると痩せてくるんですよ(^^;
お外にいるオプンチアは例外で丸々と元気にしてくれてるのですが・・・。

北米難物・・・月想曲、月の童子、白紅山、飛鳥、斑鳩、白虹、黒虹山、月華玉、藤栄丸、桜丸、紅簾玉、英冠・・・響きもよく、何となくイメージできる名前ですね。

>-marshさん
おしゃもじ型のオプンチアはだいたい、早くからジャブジャブ水やりした方が花つき良いようです。南米産のゲンコツ型は蕾を待っての灌水が良いようですが。
>masutusさん
そうなんです。むかしつけられた和名は、長年親しんできたこともあるでしょうが、わりとしっくり来るのが多いですよね。最近、和名つかないのは、日本人の語感が鈍ってきたせいでしょうか^^;。
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沙漠植物、栽培、探究。

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