見上げたサボテン。

こんかいはお気に入り植物の話を。
「暮雲閣」、という名前のサボテンです。
雰囲気のある、いい名前でしょ? 学名は、Oroya borchersii 。


それがこれ。


orborc3S.jpg


南米、ペルーアンデスのアルティプラノ(Altiplano)と呼ばれる、標高4000メートル前後の高原地帯に
生えています。高山植物のサボテン。
簡単に4000メートルなんて書いたけど、富士山より高いんだからね。
このサボテンが日本に住んでるすべての人を見下ろしていることは、間違いない。

属名のOroyaは、この仲間が生えている場所のひとつ、ペルー高地にある町、ラ・オロヤ(La Oroya)に由来。
環境的には、低緯度とはいえ高山域なので年平均気温も日本の関東などより低く、一年を通じて冷涼。
冬季は氷点下になります。
自生地の写真、ネットで検索すると、寒々荒涼とした草っぱらに黄色い刺のサボテンが点々と埋もれてる
写真が出てくるかと。緑の草がけっこうあるので、湿り気はそこそこあるのかも。

その昔、サボテン界の巨匠、平尾博さんが主宰していた「シャボテン誌」という愛好家向けの季刊小冊子があって、
そのなかに南米旅行記が掲載されているのを読みました。
中学生の時だったかな。当時すでに廃刊で、バックナンバーを取り寄せて。
いまみたいに、ネットですぐに自生地の環境を見ることができる時代じゃなくて、サボテンの故郷の様子
なんていうのは、想像の彼方、というか、いま考えるとほとんど妄想の領域。そのくらい、最果ての場所・・・。

で、その旅行記の中身。

ガタゴト、アンデスの峠越えのバスの車中で、筆者は高山病に苦しみながら、窓の外にサボテンを探している。
インディオのおばさんからもらった、コカの葉を噛みながら。
窓の外は漠々と荒原が続くばかりで、なかなかサボテンの姿はない。
やがて、標高4000メートルあまりの峠をのぼりつめたところで、バスはいったん休憩。重い頭を抱えてバスから
降りた筆者は、そこここの草むらに、金色に輝くサボテンが息をひそめているのを見つけて、歓喜する。
おもわず、ひとかかえもあるようなそれらを何本も堀り採って、バスに戻ってくる・・・そんな話だったと思う。
印刷が悪く、薄ぼんやりとしか見えない、白黒写真がついてました。

いーいなぁぁぁ!行ってみてぇなぁぁぁ。見てぇなぁぁ、標高4000メートルのサボテン!
と、ため息をつきながら、中学生の私は幾度もその記事を読み返したのでした。
その場所をたずねる野望は、いまも果たされていないけど。
こんなに便利な時代になったのに、だらしないね。



orborc2S.jpg


上の植物は、産地をたずねたヨーロッパの人たちが持ち帰った種を、私が蒔いたもの。昔とちがって、今は産地で
植物を掘って持ち帰るわけにはいかないですからね。これで、実生5年生だったかな。

写真をみるとわかるように、少し暮れかかった空のような、翳りをはらんだ麦色のとげが、
やわらかな鳥の巣みたいに球体を覆っています。触っても、あまり痛くない。
おそらく、標高4000メートルの荒野で出会っていれば、頬ずりしてしまうだろう。

オロヤ属は、同じ南米産のワインガルチア属(Weingartia)などに近いグループで、この暮雲閣のほかに極美丸
(Oroya laxiareolata・・・すごい和名だね)や麗髯玉(O.peruviana)などがあり、いずれも標高の高い場所に生え
ています。オロヤ属の花は、ロウソクの炎のようなかわいらしい形をしていて、だいたい皆、赤ピンク色ですが、
暮雲閣だけは、黄緑色の花咲かせる。うちの実生は、まだ、咲いてない。大きく育つサボテンだから、このサイズ
ではまだムリなのかも。
下は、仲間のオロヤ・バウマニー(Oroya baumannii no locality date from KK)の花。
その下は、オロヤ・極美丸(Oroya laxiareolata "pluricentralis" KK374)。じつに綺麗な花です。


otoyaflS.jpg

oroyafl2S.jpg


オロヤ属の栽培は、とんでもない高山植物にしては、難しくない。

アルカリ性の土は好きでないので、ピートモスなどを適宜混ぜた土に植えてやって、生育期には水もたっぷり与えて
育てています。弱酸性の土を好むのは、この暮雲閣に限らず、南米のサボテンの大部分にあてはまることで、石灰を
ガラガラ入れたような土では、よほどの名人じゃないとうまく育たないかと。
寒さには、確かにめっぽう強い。でも、よく動くのは春先~晩春、秋~初冬。夏と真冬は休ませています。ほかのサ
ボテンよりも、気持ち涼しい時期に動くかな。水をいっぱいやれば、よく育ちます。でも、40度なんていう高温は、
おそらく故郷じゃ経験しないはずだから、やたら蒸し暑いハウスは苦手かも。

オロヤ属のなかでも、暮雲閣は、特徴である鳥の巣のような刺を密生させるために、間延びしないよう注意して、育
ててる。20年くらいまえ、実生で育てられた苗を通信販売で買ったことがあって、箱をあけたら、地肌がほとんど見
えるような、刺の貧弱なサボテンが出てきて、ガッカリしたことが。刺色の感じからも間違いなく暮雲閣なんだけど、
アンデス旅行記を読んで、夢見ていたものからはほど遠い気がしましたね。


orborc1S.jpg


逆光でみると、とっても綺麗な植物なので、週末のハウス作業が終盤に差しかかり、お陽さまが傾いてくると、私は
この暮雲閣の若苗を西日にかざしてみるんですな。
高台にのぼり、はるかアンデスの暮れなずむ雲を見霽かす気分で。



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暮雲閣

はじめまして。

とても綺麗なサボテンですね。4000mの高山で生きていながら栽培がそれ程難しくないなんて憧れてしまいますが、これがなかなか入手難で、探してみたんですが、まずネット検索にはひっかからないし、やっと見つけても売り切れだったりしますが、いつかは手に入れたいサボテンです。
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