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一点モノ⑨パキポディウム・バロニー・バロニー

  
 我が家の一点モノ、今回はパキポディウム属で唯一の赤花種、バロニーです。この一週間、ちょうど満開を迎えて梅雨空に花をそえてくれました。バロニー種には、2つの亜種が記載されていて、ひとつは真ん丸な塊茎で人気があるウィンゾリー(Pachypodium baronii ssp.windsorii)、そしてもうひとつがこちらのバロニー(Pachypodium baronii ssp.baronii)で、ウィンゾリーとの対比で「バロニー・バロニー」とも呼ばれる植物です。現在、日本で流通しているものは「ウィンゾリー」とラベリングされたものがほとんどで、このバロニー・バロニーと呼ばれるタイプは稀少なようです。うちにも、ウィンゾリーは何本かありますが、バロニー・バロニーの成株はこれだけ。ぱっと見てわかる両者の違いは、ウィンゾリーの塊茎がボールのように丸く肥大するのに対し、バロニーはバット状というか、棍棒状というか、そういった感じに育つことです。




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   Pachypodium baronii ssp.baronii  in bloom 




 どちらのタイプも、マダガスカル北部の限られたエリアにのみ分布していますが、とくにウィンゾリーの自生地は長らく、その名の由来でもあるアンツィラナナ州(Antsiranana)の「ウインザー砦(Windsor Castle)」の岩山、ただ一か所しか知られていませんでした。現在、この個体群は採取によって絶滅したか、それに近い状態と報告されています。「ウィンゾリー」の自生地は、その後今世紀に入って2か所、新たに見つかりましたが、こちらも個体数は多くないとのこと。一方バロニー・バロニーの方は、もう少し自生範囲が広いようです。




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   Pachypodium baronii ssp.baronii grown over 25 years
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   Upper part grown outdoors, interval between the spines is narrow



 さて、この株ですが、実は四半世紀ほど育てている輸入球で、おそらくは山木です。うちに来たときは、太めのマジックペンくらいのサイズで、根際がねじ曲がり土がこびりついた、お世辞にも美しい姿の植物ではありませんでした。いま、根元から先端までの高さは1m弱。基部の太さは15cmくらいあります。2枚目の写真で、茎節の刺の間隔が上部の方が詰まっているのは、そこから露地栽培にしたからです。温室内では無遮光でも間延びすることが顕著にわかります。そのまま温室で育てていたらだらしない姿になって、枝が自立できなくなったかも知れません。
 ウインゾリーとの違いですが、ぱっと見ての違いは、このフォルムと、葉のサイズが1.5倍くらいあり、色も濃く皮革のようなツヤと質感があること。かつて、ウィンゾリーの山木も育てていましたが、比べるとまるで違う植物のようでした。塊茎のフォルムや葉の特徴以外で、両者の識別点として示されるのが花の違いです。バロニー・バロニーは花茎が長く、花弁のフリルが強く、花の中心部の「目」の部分が車輪型。ウィンゾリーは、花茎が短く(~8cm程度)、花弁のフリルが目立たず、「目」の部分は五星型。というものなのですが・・・。




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   flower of baronii ssp.baronii, 'eyes' are round like a wheel   
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   flower of baronii ssp.windsorii, 'eyes' are star shaped



 実際に両者を比べてみましょう。我が家のバロニー・バロニーの花は、ごらんのとおりフリルは強く出ています。色合いはウィンゾリーとかわりません。花の中心部の「目」は、車輪型でバロニー・バロニーの典型株と一致します。一方で花茎は極端に短く、わずか数センチしかありません。これは、典型的な株とは一致しない。ただ、数年前に咲いたときは倍くらいの長さだった記憶もあるので、花茎の長さは条件によって変わるものでもあるようです。比較したウィンゾリーは、かつて育てていた山木から殖やした株で、兄弟間で多少個体差はありますが、ウィンゾリーの特徴と呼ばれるものをほぼ兼ね備えています。花茎はアベレージでこちらの方が長いです。これをいったいどう考えるか。




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 バロニーの仲間はマダガスカル北部の一定の範囲に、様々な特徴を備えた個体群が散らばっているものと思われます。そのなかで、とりわけ顕著な、人の目につきやすい特徴(丸いコーデックス)を持つ「ウインザー砦」の個体群にのみ、ウィンゾリーという名前が与えられたのではないでしょうか。ウィンゾリーと、それ以外のバロニー、といった具合に。でも、それ以外の個体群にも、タイプ産地のものとは異なる特徴を持つものが、実は色々あるのだと思われます。花茎のやたら短いこのバロニー・バロニーは、記載のもととなった基準産地のバロニー・バロニーとは異なるコロニーから来たものかも知れません。
 最近、「ウィンゾリーの山採り株」とされるものを、しばしば見かけます。ネットなどで画像を見る限り、根際こそ膨らんでいますが、かつて入ったウィンゾリーとは違った顔立ちの個体が多い。バロニー・バロニーとの中間型という雰囲気のものも。これらが「ウィンザー砦」の“最後の生き残り”を掘りとったものなのか、後から見つかった2か所の「ウィンゾリー」産地で採取されたものなのか、あるいはウィンゾリー寄りの「バロニー・バロニー」なのか、わかりません。いずれにせよ、バロニーのタイプは、典型的なウィンゾリ以外にも、中間的なタイプも含めて色々あるんだと推察されます。




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 この種の栽培ですが、バロニー・バロニーとウィンゾリー、どちらもマダガスカル産パキポディウムのなかで特に寒さに弱いものです。冬期、摂氏10度程度の最低温度を維持していてもダメージがあるようで、春に目覚めてこない株が出ます。日本では自然の木々も秋には葉を篩うので、自然なサイクルに感じてしまいますが、マダガスカルでは寒さで落葉することはなく、乾燥で落葉する植物です。葉が落ちるほどの冷え込みは堪えるに違いありません。むかし、ドイツの某園に訊ねてみたら、最低温度20度を維持し、断水もしない方が良い、という答えでした。我が家ではなかなかそんな環境は用意できません・・・。
 そんなわけで、この冬もすっかり葉を落として越冬した、我が家のバロニー・バロニーですが、今年はやたら沢山の蕾をつけて、赤い花を次々と咲かせ続けています。久々の開花だったので、セルフで種がつくか、授粉も試みてみました。結実すれば、また次の楽しみがひろがります。








テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。
著書「珍奇植物 ビザールプランツと生きる(日本文芸社)」

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