FC2ブログ

土から生まれるもの(新しい鉢の話)。

   
 植物だけじゃなくて、容れものにも、こだわる。
魅力的な鉢との出会いは、植物の魅力を二倍にも三倍にも引き立てます。今回は最近出会った鉢についての話です。




resize5021.jpg




 土の手触りがそのまま伝わるような、このふたつの焼き物は、西山光太さんという作家がはじめて手がけた植木鉢です。彼は、私の圃場がある地域に工房を構えていて、作品づくりのアプローチの一つとして地元の土での作陶に取り組んでいます。地域のあちこちで粘土を試掘して作品にするなかで、私の栽培場の周辺の土でもやってみようということになりました。沙漠の植物を育てる上では、ぬかるんで始末に悪い粘土質土壌ですが、彼によれば地域のなかで他にはない良質な土の可能性があるとのこと。
 その試作の際に、せっかくだからとお願いして焼いて貰ったのがこの植木鉢なのです。うちの土地の土を100%使って作られています。丸みを帯びた方は、古代の土器のように藁で焼いたもので、「覆い焼き」と呼ばれるもの。焼くとき地面に接していた部分の黒い焦げ模様が味わい深いです。とても軽く柔らかい仕上がりなので水が外側に染み出てきます。もうひとつの赤みを帯びた縦長の形の鉢は、より高温の灯油の窯で焼かれていて、こちらがいわゆる「あわ焼」の技法で作られたもの。水が浸潤しない硬さに仕上がっていますが、土の質感はそのまま残っています。この二つのような、底に穴が開いた植物のための鉢は初めて作ったとのことでした。




resize5033.jpg

resize5032.jpg
         西山光太さんのいろいろな作品
resize5036_20181215220619532.jpg
         この一番下の写真が地元の土で作陶した「あわ焼」




 ここ数年、さまざまな素材、自由な意匠をまとった多様な鉢たちが手に入るようになって、植物趣味の世界は大きくひろがりました。とはいえ千本単位の植物を圃場で育てていると、どうしてもプラ鉢が中心になってしまいます。でも、種から育てた植物が納得できる標本に仕上がったら、素敵な鉢を選びたいとは常々思っていて、それが、植物が育ったのと同じ場所の土から作られた鉢なら、すごく素敵なことだなと思ったのです。
 西山さんの多様な作品群のなかで、地元の土をつかったものは「あわ焼」と名付けられて、とりわけ素朴な味わいをもっています。今回戴いたものも、そのカテゴリーに入りますね。この地域の土は高温焼成に弱いのが難点だそうで、私のところの土は、そのなかでは高温に耐え、硬く焼ける性質があるようだとのことでした。そして、「あわ焼」以外の作品にも、鉢に仕立てて植物を植えたら映えそうなものがたくさんあります。写真の黒釉の器などは、主張の強いサボテンや塊根類にも合いそうな質感、風合いだと思いませんか。
 




resize5039b.jpg
       土の試掘・・・こんな粘土質の場所で、サボテンの地植えもやっています。
resize5044.jpg
       弥生時代の土器のように、藁で覆って焼成する「覆い焼」。窯の原型。
resize5043.jpg

       


 鉢をいただいたのが秋だったので、この二つの鉢には秋冬型の多肉植物を植えてみました。軽く柔らかい古代鉢には、塊茎を形成するメセン、モニラリア・スクタータ(Monilaria scutata)を、湯呑み型の赤い鉢には、くるくるの葉をつけるオーニソガラム・コンコルディアナム(Ornithogalum concordianum)の球根を植えてみました。実にいい感じです。不思議なことに、ほんとうはアフリカの乾燥地の植物たちなのに、杉板の縁台に置くと日本の里山に元から生えていた植物のように見えてくる。東京に持ち帰ってリビングに置いたらまた違って見えてくるのでしょう。この鉢、植えつけてから既にひと月ほど経ちますが、しっかり活着して元気に育っています。
 秋から春にかけて動く冬型多肉植物は、サボテン類などと異なり根が高温になることを好まないので、明るい色目の、こうした軽く柔らかな鉢に元々向いているのです。化粧砂も黒いものは夏場に焼けやすいので向きません。実際、私は大事にしているコノフィツムなどは、プラ鉢を避けて素焼き鉢で育てています。根が蒸れないのが、軽い焼鉢の利点です。反面、乾きやすいので灌水は頻回になります。今回の鉢はどちらも通気性に優れたものですが、古代鉢のほうは特に乾きやすいので、ほぼ一日おきに水をやっています。いずれにせよ、こうした硬すぎないタイプの鉢は、メセンなどの冬型多肉とはとても相性が良さそうです。




resize5029.jpg

resize5023.jpg

resize5031.jpg




 一方で、こうなると色々期待が膨らんでしまうのもまた事実。もう少し大柄な夏型の植物、たとえばサボテンやコーデックスなどを植えるのに適した、焼きが硬く、色合いの深い鉢も欲しくなります。高さと径のバランスはどうするか、少し縁があった方が良いか・・・デザインも個性の強い夏型植物に負けない感じで・・・などなど。いま流通する大半の鉢は汎用品で、サボテン用鉢、塊根用鉢、メセン用鉢などというものは特にありません。でも、長く植物とつきあってきたなかで、どの植物にはどんな鉢が適してうまく育つのか、その植物が映えるのか、という感覚が、私にはおおむねつかめています。それをもとに、オリジナルで鉢を作ってもらえたら面白いなぁと。そんな話を先日、西山さんと始めたところです。話が進んだら、また報告したいと思います。



















テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。
著書「珍奇植物 ビザールプランツと生きる(日本文芸社)」

最新記事
全記事表示を読む

全ての記事を表示する

カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
リンク
カレンダー
11 | 2018/12 | 01
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
Excite自動翻訳
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる