ある植物園の話。

               
私の栽培場がある方面に、といっても、小一時間くらいは離れているのですが、
「南房パラダイス」という植物園があります。正確には、ありました、というべきなのか。
そもそもは1970年に県営の施設として開業したそうですが、長年にわたり赤字が続いたことから、
運営主体が幾度かかわり、ついには民間に売却され、去年「アロハガーデンたてやま」という名称で
リニューアルオープンしました。いまも、地元の人は昔の名前で呼んでいたりしますが。
私は“南パラ”時代も幾度か訪ねていたので、どうかわったのか、見てきました。
なぜかハワイアンソングが流れる場内。でも、展示内容はそれほど変わっていないようです。




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施設は廊下のように数百メートルも続くガラス温室、そして大型のヤシ類が植えられた巨大なドーム温室と、
植物園としての設備は充実しています。いまや導入不可能とさえ思われる枝打ちした巨大な鬼ソテツが何株もあり、
サボテン室には開花サイズの金鯱がずらりと植わっています。ドーム温室にも、大きな旅人の木やトックリヤシが
そびえています。おそらくこれらの大半は開園当時からの生き残りと思われ、他の多くのゾーンではブーゲンビリアや
ハイビスカス、ドラゴンフルーツなどがずらっと植えこまれていたり、あるいは季節の花鉢が雛壇上に空間を埋めて
いたりします。それらを季節で入れ替えていつも花いっぱいという演出でしょう。かつての、博物学的に熱帯植物が
配置された図鑑的空間から、よりガーデニング寄りランドスケープ寄りの展示に変わりつつあるのだと思います。
しかし、悪く言えば園芸センターの花鉢コーナーに近づいてしまった、という気もする。




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入場者を観察していると、大半の人たちは一度も立ち止まることなく温室を通過していきます。“廊下”なので、
先を急ぎたくなる心理も働くのかも知れませんが、足を止めてなにかをじっと見る、という人があまりいない。
ハイビスカスやブーゲンの花を、風景としては眺めていても、仔細に鑑賞する姿を見ないのです。
こんなに色々なハイビスカスを見られる場所はそんなにないと思うのだけれど、みんなそこには気づかない。
他にも、ブロメリアのコーナーもあるし、さまざまな果樹花木、チランや洋ランの展示などもある。細かく見れば
植物好きなら一日かかる。そして、これだけの施設の運営コストを考えれば千円そこそこの入場料も安いものです。
なのに、なぜ人が集まらないのだろう。




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私が子どもの時分、高度成長期の終わり頃までは「熱帯植物」という言葉には、なにか特別の響きがありました。
見たこともない熱帯のジャングルや沙漠の植物が生きている状態で植わっているなんて、それだけでスゴイみたいな。
けれど、「熱帯」が週末パックツアーの圏内になって久しい昨今、そのエキゾチズムだけで人を集めるのは難しい。
非マニアックな人々、つまり温室を立ち止まらずに歩き過ぎる人々にとっては、これらの植物は、それを見るために、
わざわざ房総半島の突端まで足を運ぶほどのものではないのかも知れません。
かつて、泊まりがけで伊豆のシャボテン公園に連れて行ってもらうのが夏休みの一大行事だった時代。
もちろん、植物園を見ることがメインイベントでした。ちなみに、そのシャボテン公園を大人になってからも訪ねたけれど、
同じような展示でもなにかが違う印象を受けた。私は子どもの頃から“マニア”だったわけですが、その当時感じた、
サボテン好きが思いのままに作った疑似沙漠のような光彩が、植栽から薄れたような気がしたのです。
植物から動物に、あるいは博物館的空間から公園的空間に展示の重心が移ったからかも知れません。
しかし、そのシャボテン公園も経営をめぐってゴタゴタが続いているという記事を、どこかで読みました。

では“南パラ”のサボテン室はどうでしょうか




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感想はさまざま、あるでしょう。でもいまや、サボテン専門温室があるだけでも、私などは嬉しい。
古くからあると思われる大きな金鯱や、マミの白珠丸の大群生に開花サイズの毛柱サボテン。
しかし、これらの丈夫な大型サボテン以外は長く維持できないようで、前来た時と違うサボテンも地植えされています。
兜に鶴巣丸に光山・・・これらを植物園の環境で地植えして長く元気に育てるのはそもそも難しいから仕方がない。
他には、ちょっと物悲しいロフォフォラなどの鉢植え・・・どなたか愛好家からの寄贈品でしょうか。さらに、やれた感じの
ノトカクタスがずらっと並んでいたり、植え替えられた痕跡のない接ぎ木のパキポ・ブレビカウレ群など、不思議です。
このサボテン室は、熟達したマニアからすれば、名品も珍品もない、ということになりそうですが、子どもたちや、
鉢植えサボテンしか知らないマニア予備軍の人たちにとっては、混沌ぶりがかえって、奥行きを感じさせてくれる
素敵な展示だと思います。私など、金鯱たちがデンと居座っているというだけで、この場所にずっといたくなりますが。




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さて、この“南パラ”、「アロハガーデン」に改装されたいまも、場内はすいていてゆっくり植物を見ることが出来ます。
熱帯植物温室だけでなく、動物とのふれあい空間も楽しい。原色のインコを肩や手に乗せたり、動物や水鳥に
直接給餌する体験もできます。少し残念なのは、かつてあった「蝶の温室」が閉鎖されていたこと。ぜひ再開してほしい。
もっとも、ジャポニカ学習帳から“気持ち悪い”という理由で昆虫の図柄が消されてしまう時代ですから、蝶がそこらじゅうで
羽化している温室なんか、入りたくない、という人が多いのかもしれない。うーむ難しい。さらに気がかりなのは、
“南パラ”の民間譲渡の際の条件が、今後10年間の運営存続だったということ。裏返せば、今のように“すいている”
状態が続けば、その先はどうなってしまうのか定かでないということ。植物園より儲かりそうな、別の用途に転用される
可能性があるかも知れません。現状、園の存続のために、より広く集客するために、マニアックな個別展示よりも、
インパクトのある花絨毯やデザインされた庭園風景に力点が移るのは当然なのかも。




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それでもなお、私がいまも感じる“南パラ”の魅力は、植物園の原風景のようなもの。
景観化、一般化されない固有名の世界がそこにあり、知的探究心の入り口がなおたくさん残されているところです。
観光客の大半が素通りする温室のそこここに、それはあるはず。
機会があれば、ぜひいちど訪ねてみてください。







テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

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沙漠植物、栽培、探究。

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