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難物サボテン「天平丸」

      
ひさしぶりに難物サボテンの話題です。
といっても、ペディオ・スクレロといった北米サボテンではなくて、今回は南米の難物。
ギムノカリキウムの天平丸(Gymnocalyium spegazzinii)です。
え?このサボテンが難物なの?という方もおられると思うのですが、そういう方にぜひ教えを乞いたい、
というのが本稿の趣旨です。南米高地原産のこのギムノ、私にとってはかなりハイレベルの難物で、
北米種でいえば、エキノマスタスあたりに比肩する印象。ただ、その難物としての性格は、
かなり異なっています。




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                    Gymnocalyium spegazzinii (old imprted plant from Karel Knize)



こちらは、十分大きくそだった天平丸。10年あまり昔、南米の業者から輸入の、おそらく山木です。
来た当時は扁平でしたが、いまはかなり丈高くなっています。ただ、故障らしい故障もなく、毎年開花もする。
うちにはもうひと株、古い輸入株がありますが、こちらもまずまず元気です。
天平丸の球体に沿うような曲刺には、ほかのどの種にもない美しさがあり、またそれぞれの株に個性があります。
昔はそれらをみかけ上、A型、B型、などと分けて楽しんでいましたが、近年は様々な産地で採取された種子が
入手できるので、個性あふれる様々なタイプをイメージしながら実生するのはとても楽しみです。

ところが・・・。




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               Gymnocalyium spegazzinii 2years old seedling, 50% of them are not healthy



輸入種子の発芽はおおむね良好です。しかし実生2年目くらいには、はやくも異変が現れます。
上の写真では、半分くらいの苗が変調をきたしています。①成長点がカサブタ状になり、生育が止まる、
②球体の色が褐変、または赤変して、成長が止まる。
①は、いわゆる南米病(ホウ素など微量要素欠乏によっておこる成長障害)とみられますが、それなりに
気を使って液肥など与えていても、不調を避けられません。この段階で、実生苗の三分の二くらいは駄目に
なってしまう。同じ時期に実生して、同じ用土に植えこみ、同じハウスに並べているほかのギムノには起きない
トラブルが、天平丸では顕著に発生するのです。3枚目の写真はその一例。右側のグラウカム(G.glaucum)は
元気なのに、左側天平の様子はおかしい。もともとはいちばん左の列にも天平が並んでいたのですが、
小さいうちに全滅して空き地になっています。




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                    G.spegazzinii  STO-924  Cafayate, Salta
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                    G.spegazzinii FK621 Punta de Balasto, Catamarca
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                     G.spegazzinii 'Slaba'  Quebrada del Toro, Salta         



残った株はやがて、そこそこのサイズに到達して美しい刺を見せはじめてくれます。産地ごとに刺の色や長さ、
カーヴの具合など個性があり、実に魅力的です。しかしこのサイズになっても安心することはできません。
過去に某名人が育成された古来型の天平丸など、いくつかの国内実生株を駄目にしてしまった苦い記憶があります。
もちろん、自ら実生した苗も例外ではなく、開花目前というところで、またもやバタバタと逝くのです。




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                         They get worse gradually...



突然成長がとまり、成長点がカサブタ状病変に覆われたり、球体全体がミイラ化したりして、やがて枯死。
写真上から順に、違う鉢ではありますが、病変の進行を時系列に並べてみました。
植え替えがきっかけになる場合もありますが、元気に育っていた寄せ植え鉢が徐々に駄目になることも。
ただ、いわゆる根腐れのようにグシャっと腐ることはなくて、拗れたあげく水気が抜けるように枯れていく。
また、天平丸の中でも、主産地のひとつで刺の美しい個体が多い、Quebrada del Toro周辺の個体群が
もっとも駄目になりやすい印象があります。このあたりの自生地はおおむね標高3000m付近の
たいへん乾いた場所ということで、同じエリアに生えるロビビアや、ヒルホカクタス(Pyirrhocactus)も、
似たような栽培上のトラブルに見舞われることが多い。ことに旧ヒルホの寒鬼玉(Eriosyce umadeave)は、
発芽も栽培も天平丸以上に困難な種と感じます。また、同じような育てにくさを感じるサボテンには、
旧エリオシケの極光丸(Eriosyce ceratistes=aurata)があげられます。これらは植え替えを極端に嫌い、
元気に育っていた株が植え替え後にパタリと動かなくなってやがて枯死する。
一方で、天平とは兄弟種(亜種)にあたる光琳玉(ssp.cardenasianum)にも似た症状が出ることがありますが、
基本種の天平丸よりはずっと素直で育てやすい。

横道にそれてしまいましたが、では次々と駄目になる天平丸に、いったい何が起きているのか。




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                       cutting section of sick plants




写真のふた株は、いずれも同じ症状で、進行の度合が違うように見えます。いずれも植え替えて1年くらいで
健康な状態が徐々にこのようになってしまったもの。左の株は、そもそも根が完全に駄目になっていて、
球体全部がすでに枯死しており、どこからどうなったのか、よくわかりません。
右の株をカットしてみると、根は健康そうに見えますが、成長点付近は醜いカサブタ状の病変が内部まで進行
していて、回復は難しそうです。これはやはりいわゆる南米病なのか。




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                    Both growing point and root are lesioned




病変の出た別の株をカットしてみました。こちらは成長点の病変だけでなく、根部にも異変があります。
ブヨブヨ根腐れしている訳ではないのですが、色が悪くなり、周辺部にはカサブタ化もみられ、成長部の病変と
類似する点もあります。この成長点、根部双方からの病変が、最終的には株全体の枯死につながっていくようです。
腐っている訳ではないので、なんらかの生育障害の結果、植物体そのものが生きる力をなくしていく過程のように
思えます。




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一般的には、天平丸は生育速度は遅いが、栽培はとくに難しくない、という見方をされているようです。
拙文ごらんいただいているなかでも同感される方が多いかも知れません。一方で、ギムノのなかでは特異な
栽培困難種であり、アルカリ性の土を極めて嫌う、といった見解も示されています。
高pHの用土では微量要素の欠乏障害が起きやすいですし、南米サボ(とくにアンデス東側原産)全般に、
自生地同様の弱酸性の用土を好むというのは通説でもあります。
私は栽培用土の主な素材に赤玉土を使っています。この用土はpHこそ高くありませんが、リン酸の吸着性が
強いので、リン酸欠乏障害なのか、とも考えられるのですが、液肥を十分与えても改善されないことも多く、
解決策が見えません。天平丸をうまく育てられる方の栽培環境と、私のところでは何が決定的に違うのか。
ひとかけらのレシピでも、ご助言を頂ければ幸いです。






テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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