凍害総括。

先の冬がいかに厳しかったかは、ここでも幾度か書きましたが、
なんとか乗り切ったと思った春先以降もバタバタと倒れる植物が相次ぎました。
どんな植物が寒さにくじけ、どんな植物が耐えきったのか、今いちど、とりまとめてみました。
犠牲は大きかったですが、温帯で熱帯・亜熱帯植物を越冬させるためのヒントが幾つか見つかったように思います。



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                 2月の中旬頃に記録された無加温ハウスの最低温度・氷点下6度



まず、私の栽培場は、
①東京の加温ガラス室(最低7度キープ)。
②東京の無加温ガラス室(難物サボ室)
③関東南部の無加温ビニールハウス(立地は中山間地・ビニール内張りあり)
の3つの環境があります。①②は小部屋程度の大きさのアルミ温室、③はよくあるビニールハウスです。

①は、主に熱帯アフリカ産の塊根塊茎多肉の類と、ブロメリア、一部のサボテン。灯油暖房機あり。
②には、ペディオカクタス・スクレロカクタスなどの北米サボテン。棚下にメセンのコノフィツム。
③には、その他のすべてのサボテン、多肉植物の実生苗から大株まで、が収まっています。

それぞれの今冬の最低気温は、①が摂氏7度で、③が場所により氷点下4度から氷点下6度。
②は測っていませんが、東京都内で北側に家屋を背負っているため、③よりは穏やかな寒さだったと思われます。

そして寒さの影響では、①加温ガラス室と、③無加温ハウスではかなりの植物が枯れ、
②難物サボ室ではまったく被害がありませんでした。②は、収容されている面々が極めて寒さに強いものばかり、
ということが理由なので詳細は省きます。
①については、温度記録上はこの冬も最低7度をキープしているのですが、例年になく植物が傷みました。
③のハウスは、過去5年使っているのですが、これまでほとんど植物を落としたことがなかったのに、
先の冬はそれまで大過なく越冬してきた多くの植物がダメになりました。

ここでそれぞれの栽培場でダメになった植物の一覧('12年5月現在)をあげてみましょう。
×は完全に枯死(凍死・壊死)したもの、△は手ひどいダメージを受けたもの。
以下、ズラリと墓碑銘です。


①東京の加温ガラス室



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                 温室容積的には十分な筈の灯油暖房機だが、密閉性が低いため最低温度7度を保つのがやっと
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                 見事に凍死したプセウドリトス・クビフォルミス(Pseudolithos cubiformis
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                 木の葉サボで最も寒さに弱い?ペイレスキア・ブレオ(Pereskia bleo



×~△ プセウドリトス・クビフォルメ(Pseudolithos cubiformis)、
×~△ パキポディウム・バロニー・ウインゾリ(Pachypodium baronii ssp.windsorii
×~△ ユーフォルビア・グロブリカウリス(Euphorbia globulicaulis
×~△ ユーフォルビア・クアルチコーラ(Euphorbia quartziticola
△    ユーフォルビア・ギムノカリキオイデス(Euphorbia gymnocalycioides
×    アデニウム・ソマレンセ(Adenium somalense
△    奇想天外(Welwitschia mirabilis
×    ペイレスキア・ブレオ(Pereskia bleo
ほか数種。

以上の多肉植物は、複数あるすべてが死んだわけではありません。プセウドリトスやパキポの実生育成苗は、
隣り合った株でも生死がわかれました。バロニー実生は10本あった半分が枯死。越冬したものはいま葉を出していますが、
生死をわける境界ギリギリを生き延びたと言えます。ユーホ・ギムノカリキオイデスは枯れませんでしたが表皮が褐変。
アデニウム・ソマレンセは、20年近く育てている巨大な輸入株でいつまでも葉が出ないのでおかしいな?と思って
幹を押してみたらブヨブヨでした。残念です。オベスムは大丈夫だったんですが・・・。
奇想天外は枯れた株はなかったものの、葉先の枯れ込み変色など甚だしく、これでは今年も開花は望めそうにありません。
サボテンで例外的にこの加温室においてあったブレオは、挿し木株が数本あったのですが全滅。
ほかの木の葉サボテンはみな越冬していますから、この種は決定的に寒さに弱いと言えます。

この栽培室には暖房設備があり、サーモで最低温度10度に設定しています。
しかし、古くてすきま風が入るので、実際には毎年、最低温度7度程度まで下がる。
ことしも、最低最高温度計の記録では温度低下は7度に留まっていますが、多くの植物がダメになりました。なぜか?
ひとつには、同じ温室内でも微気象的な環境差があったと推察されること。今年は外気温の低下が甚だしかったため、
温度計設置位置(温室中心部分)と周辺部での温度差が大きくなり、窓際などの植物は、より低温に晒された。
もうひとつは、積算温度的な考え方です。最低温度は例年並だったとしても、昼間の日照時間が少なかったことなどから、
栽培室内の平均的な気温推移が例年より下回ったために、植物により大きな低温ダメージを与えたと思うのです。

今回、大きく被害を受けたのは、ソマリアなど熱帯アフリカ原産の、おそらくは7度どころか20度を下回ることもない場所に
自生する植物。毎年、むりやり断水落葉のうえ休眠させている訳ですが、数ヶ月もの間、ずーっと寒いだけ、
という環境は厳しかったのでしょう。



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                 無加温ハウスは、関東の山あいにあるため、朝の冷え込みは厳しい



③関東南部の無加温ビニールハウス

一方、山の中のビニールハウスはこれまでも最低温度で氷点下4度くらいになることは度々ありましたが、
(すきま風だらけで日照が少ない)東京のガラス室に比べて、昼間温度が上昇しやすい、というメリットがあります。
実際、2月でも晴れれば最高温度35度以上まで暖まります(ガラス室は外気温+15~20度)。
このため、瞬間的な最低温度は東京に比べて低いながらも、多くの植物が越冬出来ていたと考えられます。
サボテンでは出蕾期に高温を求めるものも多いため、ガラス室では咲かない種類が盛んに開花しますし、熱帯産の
パキポディウムが最低温7度に保たれているガラス室よりも早く芽吹きます(パキポの多くが、短時間ならば
氷点下4-5度まで耐えるということ)。

しかし、今年はここでも最低温度が例年より2-3度低かった上に、積算温度もさらに低かったと考えられ、このために
以下のような被害が出ました。



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       塊茎まで完全に壊死したディオーン・スピノロスム(Dioon spinulosum)とエンケファラルトス・トリスプノスム(Encephalartos trispinosus
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          春になっても出葉しないのでヘンだな、と思っていたら・・・パキポディウム・カクチペス(Pachypodium cactipes



×    ディオーン・スピノロスム(Dioon spinulosum
○~× エンケファラルトス・トリスピノサス(Encephalartos trispinosus
△~× サイカス・シアメンシス(Cycas siamensis
×    ザミア・フロリダナ(zamia floridana
ほか数種。
○~× パキポディウム・グラキリス(Pachypodium rosulatum ssp.gracilis
×    パキポディウム・カクチペス(Pachypodium cactipes

まず今までは落葉するくらいで枯れたことのなかったソテツ類に大きな被害。
ディオーンでは、spinulosumは葉が溶け幹も腐ると壊滅でしたが、D.eduleは葉も青々したまま。かなり耐寒性の
違いがあります。オニソテツ類では、ハウスの端っこ(すきま風地点)のtrispinosusが1株だけやられました。
このほか、hildebrandtii や lebomboensis といった、やや熱帯植物的なオニソテツは例年になく全ての葉が
溶けてしまって心配しましたが、どうやら生きていたようで葉を出し始めました。 サイカスやザミアの小型種も、
例年葉は落とすものの春には再出葉していたのが、今年は音沙汰なしの株、多々です。
いずれも置き場所が外側に近いものはダウンしたので、微気象的な違いが大きく作用することを学びました。
パキポも、置き場所のわずかな違いが生死を分けたようで、1割強の株が春になっても目覚めませんでした。



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        ブラジル産のこの属は皆寒さに弱い。これは5株が全滅したアロハドア・アウレイスピナ(Arrojadoa aureispina AH293)
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        同じくブラジル産。2本のうち1本がダウン。ピロソケレウス・フルビアラナツス(Pilosocereus fulvilanatus



×    アロハドア・アウレイスピナ(Arrojadoa aureispina AH293)
○~× ピロソケレウス・フルビアラナツス(Pilosocereus fulvilanatus
×    三角柱A(イエローピタヤ Selenicereus megalanthus
△    三角柱B(レッドピタヤ Hylocereus costaricensis
○~△ キリンウチワ(Pereskiopsis sp.) 
ほか数種。

サボテンでは、ブラジル産の柱類、アロハドアやピロソケレウスがダメになりました。見事に茶色くなって可愛そう。
柱ものは細くて表面積が多い分だけ、凍えやすいのかも知れません。同エリアの原産でもユーベルマニアはびくともせず、
ディスコは多少ダメになりました。メロも、マタンザヌスなど変色してシワシワになりましたが、大半復活しています。
興味深かったのは、三角柱の耐寒性の違い。私は実生接ぎ用に、ドラゴンフルーツを買って(食べて)、
その種を蒔いているのですが、赤いドラゴンフルーツ(レッドピタヤ)は辛くも越冬したのに対して、
黄色いイエローピタヤの方は、すべて溶けてしまいました。
このほかキリンウチワなども、ハウス内の場所が寒いところの株はダメになりました。

×    アロエ・イマトロエンシス(A.imalotensis) ×
×    アロエ・アンモフィラ(A.ammophila)   ×
×    アロエ・ドゥファレンシス(A.dhufarensis)×
△    アロエ・ディコトマ(A.dicotoma)    △
△    アロエ・ブランドラアアイエンシス(A.brandraaiensis) △
△    アロエ・マルロティ(A.marlothii) △
△~× ガステリア各種(Gasteria sp
×    アロエ・医者いらず(Aloe arborescens)※屋外地植え
×    ディッキア・SP(Dyckia sp.)
ほか多数。

ユリ科多肉ではハオルチア>ガステリア>アロエの順に被害が出ました。ハオは概ね大丈夫ですが、ガステリアは
みな葉先が溶け、なかには回復不能なものも。アロエは種類によって耐寒性様々ですが、上記の×の種類は全滅、
△の種類は、大ダメージも何%かは生存、復帰しつつあります。これ以外の種も大半はなんらかのダメージを受けました。
番外ですが、私の栽培場敷地内で、以前の持ち主の時代から数十年露地で生きてきたと見られる
医者いらず(Aloe arborescens)があります。これは毎冬葉先は痛むのですが、枯れることはありませんでした。
しかし今年はすべての幹が溶けて萎れ、おそらく復活は難しそうです。数十年ぶりの厳しい寒さであったことの証左でしょう。



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             冬成育型なので水遣りを続けたのが悪かったか・・・亀甲竜(Dioscorea elephantipes



△~× 亀甲竜(Dioscorea elephantipes
×    サルコカウロン・ペニクリナム(Sarcocaulon peniculinum
×    サルコカウロン・(Sarcocaulon crassicaule
×    ケラリア・ピグマエア(Ceraria pygmaea
△    メセン・ミトロフィルム(Mitrophyllum grande
△~× リト・紅大内玉ピンク個体(Lithops optica cv.Rubra 'pale pink'

冬型多肉も例外ではありません。稀少なサルコカウロンやケラリアなどのイモ・ホネ多肉もいちばん寒い時期に
葉を落とし、以来復活せず、今になって幹先から枯れてきました。これらは冬成長型で、水もやっていたのですが、
それも良くなかったのかも知れません。長年大事に育てててきた貴重な株なので、もっともショックでした。
同じく冬生育型の亀甲竜は1月に葉が寒さでダメになりました。なんとか最出葉させようと厳冬期に灌水したのがたたり、
春になって検分するとイモが腐ってしまった株ばかり。
同じく冬型のメセン類などでも、限定的ながら枯れた株があります。寒さに極めて強いリトープスでは、紅大内の
実生から出た、薄いピンクの美しい個体だけがダメになりました。このほか、エケベリアやアドロミスクスなどの
ベンケイソウ科多肉(あまりないのですが)も葉っぱが全部溶けた株多数ですが、復元力が強いようで、
蘇りつつあります。



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                 もしや・・・と案じていたが、元気に出葉。塊茎が大きかったことが幸いしたか?
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                 パキポは案外寒さに強い。氷点下6度まで冷えるハウスで大半は越冬した          



こうしてふりかえると、サボテンも多肉植物も、瞬間最大風速的な一時の低温以上に、じくじく長時間冷え込みが
続くことのほうが厳しいのだということがわかります。夜冷え込んでも昼暖まればかなり違うのです。
そうであるがゆえに、冬は晴れ間は大切なんだと痛感した次第です。

お見苦しい写真多々、お許し下さい。


テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

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Author:shabomaniac!
沙漠植物、栽培、探究。

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