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いつまでも、あると思うなサボの種。


最近、ちょっと気になった話。

この十数年、毎年のように種蒔きを続けてきました。
サボテンの場合、植物本体の輸入が栽培株・野生株含めてとても難しくなっているので、新しい植物を手に入れる
ほぼ唯一の方法が、輸入種子の実生だからです。



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               '1year' seedlings of cacti


最近では、しきりに自生地を歩いているチェコの業者のリストに、目新しいものがないかと探すのですが、
今年はそれほど目を惹くものがない。チェコの種は大部分が産地採種らしく、誰かが沙漠旅に出かけない限り、
新しい種類が出回らない傾向があります。そういう意味では安定供給源とは言い難いのです。
結局、今年の種選びでは、今のうちに手に入れておかないとこのさき得難くなるものはなんだろう・・・と想像をめぐらし、
ナーセリーでの採種が難しいコピアポア属や、栽培の原点でもある北米難物種を中心に注文することになりました。

そう考えたのにはひとつ理由があって、私がサボテンの実生をはじめた20年ほど前には、質量ともに他を圧倒していた、
メサ・ガーデン(MesaGarden・・・アメリカのサボテン・多肉専門の種子業者)のリストに、ある変化を感じたからです。



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チェコなど欧州勢を中心に産地種子の供給元が拡がりつつある今でも、スクレロ・ペディオなどの北米難物種や、
さまざまなマイナー種まで含めたメセン類などでは、メサガーデンはなお他園の追随を許しません。
というか、難物サボの開花株を栽培維持しつつ同産地の複数クローンから種をとって供給する、などという芸当は、
今後もどこの業者にも出来ないんじゃないかと思います。メサの園主SB氏は私の難物サボテンの師匠でもあり、
一緒に沙漠でキャンプをした友人ですが、年齢的には私の父親の世代にあたります。彼はものすごく几帳面で、
栽培に関しても厳密な人です。たとえば、灌水や授粉作業は自分で行い、スタッフにはやらせないと話していました。
沙漠で彼が目当ての植物を見つけた時の嬉しそうな表情は、商売人ではなくマニアック親爺そのものでしたし、
だからこそ、ほとんど売れないものも含めて、あれだけの種類の種子を供給し続けることが出来たのでしょう。
しかし、いまやその作業が大きな負担になっているであろうことも想像に難くありません。

そして、今年私が衝撃を受けたのは・・・



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IMG_0196bS.jpg



気づきましたか?

まず、上のペディオカクタスのリスト。飛鳥(P.peeblesianus)と月華玉(P.simpsonii)の間から
ある種が消えました。何かわかりますか? ・・・そう、天狼(P.sileri)です。
そして下のスクレロのリスト。いくつかある白紅山(S.polyancistrus)の産地違いのなかから、
フィールドナンバー SB1773(San Bernardino,California)がなくなっています。
前者は、言わずと知れた難物サボテンの王(ですよね?)。以前はアリゾナ産、ユタ産と2、3の産地からの
種子がアップされていましたが、今年はまったく見あたりません。
白紅山のSB1773の方は、古くから供給されていた、紅白の長刺が乱舞する、カリフォルニア・モハーヴェ沙漠産の
もっとも豪壮な刺のコロニー。しかし栽培が最も難しく感じるタイプでもあります。
両者に共通するのは、難物サボテンの中でも、最も栽培困難だということ。かつて園を見学させ戴いた時にも、
親株はともに数本だけでした。



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               Pediocactus sileri in habitat


ここで私の脳裏をよぎったのは、一昨年SB氏から聞いた、水害で北米難物の標本が相当ダメになったという話。
つまり、種をとれる親株がもはや甫場になくなってしまったのではないか・・・と想像したのです。
先述のとおり、天狼や白紅山の標本から種を採って供給出来るナーセリーが、新たに登場する展望はありませんから、
最悪の想像では、天狼や、白紅山SB1773の種子の入手は今後まったく不可能になります。
他にも、白虹(Sclerocactus whipplei)や月想曲(Sclerrocactus mesae-verdae)、
多くの月華玉(Pediocactus simpsonii)など、多くの北米高山種も、他園からの入手が期待しにくい種子なので、
将来は同じ懸念が持ち上がるでしょう。



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               Sclerocactus polyancistrus "SB1773" from seed


ここ十数年、北米難物サボテンの園芸栽培はメサガーデンあってこそ成り立っていたと言えます。
でもこの先「難物なんだから枯れてあたりまえ、またメサから種を買ってやり直せばいいさ」が通用しなくなるかも知れません。
となると、今後これらの気難しいマイナーサボテンを栽培対象として維持していくには、決して多いとは言えない
モノ好きなアマチュアが、自ら種を得て代を継いてゆくほかない、ということになるわけです。
私や皆さんのところにある標本株もしくはその候補たる若苗は、世界遺産なみに大切~なものになっちゃうかも・・・。

たとえば天狼、私のところには3つの産地の天狼が数本ずつありますが、正木の苗はむろん、接ぎ木苗でも
気まぐれに数年に一度咲くくらいで、我が家では種を得られたことがない。
白紅山のSB1773は接ぎ木苗が毎年咲きますが、開花株は1クローンだけで、残るは実生の中小苗のみ。
つまりいずれも自家採種が叶う日はまだまだ遠いというのが現状です。
こうなると接ぎ木をうまく使ってでも種をちゃんと採って残すという考え方が必要かも知れませんね。



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               Sclerocactus 'busekii' SB1086 seedling


需要あるところに供給あり、という経済原則も、マニアック植物の極小な市場では通用しそうもありません。
むしろ経済の理屈は、僅かしか売れないマイナーな植物を、業者の棚から淘汰する方向に向かっているようです。
我が道楽は、プロ栽培家のなかの商売を超えた愛好家精神に支えられてきたんだなぁ、と痛感するこの頃です。






テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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