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斑鳩への道。

このブログをはじめて、ちょうど1年くらい経ちます。
嬉しいことに、読んで多少なりとも共感して下さる方がいるので、なんとか続けて来られましたが、
そもそもは、世界の沙漠を好き勝手に飛び回ることが出来ない鬱屈した気分?が少しは晴れたらいいね、
なんて具合で書き始めたんで、最初の稿のテーマはニューメキシコの大草原に
「月の童子(Toumeya papyracantha)」を探す話でした。

怠け者の手なぐさみがここまで続いたので、今回もふたたび、大草原に隠れてる小さな妖精を訪ねたときの記憶を
辿ってみます。何年も前に食べた飛びきりウマいものの記憶をサカナに、何度も酒を呑むみたいな感じですが。


IMG_04483S.jpg
               unknown small hill of northern Arizona

このブログのトップ、表紙に貼り付けてある△の山の画像です。
どこなんだ?と思った方もおられるかも知れません。ここが、そのときの目的地でした。
ペディオカクタスの斑鳩(Pediocactus peeblesianus ssp. fickeisenii)が自生すると言われる場所。
斑鳩は、ともかく小さい上にだいたい地中に埋まっているので、これまで「ここにある」という所を訪ねても、
出会えたためしが殆どない。そんな植物がホントに地上に実在しているのか、疑わしくなるくらい、見つからない。
ちなみに、下の写真は私が種から育てている斑鳩で、蒔いて7、8年経ちますが、大きさ1cmちょっとしかない。
こんなモノを大草原で探そうっていうんだから、落としたコンタクトを場所指定なしで探すくらいの酔狂です。

では、物好きの旅のはじまりはじまり。


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               seed grown plants of Pediocactus peeblesianus ssp.fickeisenii JB2

アリゾナ州の真ん中を南北に貫く89号線というハイウェイがあります。
州都フェニックスから北上するインターステーツハイウェイ17号線からFlagstaffでバトンを受け継ぎ、
グランドキャニオンノースリムへと続くアリゾナの背骨のような道で、サボテンの見どころも沢山あります。
道行きの景観は雄大で美しく、高低差があるため、走っていると景色の移り変わりがダイナミックです。

この89号線沿いに、斑鳩の自生地があると言うのです。


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                  highway89 near Flagstaff,Arizona

このとき、私のところにあった手がかりは次のようなものでした
この89号線の北のほうにある町、「TubaCityからさらにhwy89を北上した処に、ネイティブアメリカンの小さな村があり、
そこから西へ、ダート道を何マイルか行くと、三角形の目立つ山がある。その周辺で石の多い場所を探せ」
・・・というものでした。以前、一緒にキャンプしたヨーロッパの愛好家からの情報。
実際は、その集落の名前までは教えて貰ったのですが、これを探すのも一苦労。というか、地図にも載っていないし
それっぽい集落はいくつも点在しているので、アテ勘で「これだろ」と決めるほかなかったんですが・・・。


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                    a small village along the hwy89

これが、ハイウエイ89から分岐しているダートロードです。で、奥に見えるのが問題の集落らしきもの。
そこで、このダート道をまずは西に行ってみようと思ったわけですが、この手の道は無数にあり、その先が
どうなっているかは皆目不明。まあ、ダメなら引き返せばいいや、と気楽な感じでスタートしました。


IMG_0459S.jpg

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小さな集落を通り過ぎると、ダート道は大草原の果てまで続いているようでした。
方向的には、この先にグランドキャニオンがある筈。道の状態も悪くないので、ちんたら走っていきます。
空は青くて広いし、視界をさえぎるものもないし、とっても気分がいい。ときどき、遠くにウシさんが見えたりして、
ここが放牧地帯で、そのための道なんだなとわかります。

クルマをとめて窓をあけると、風の音だけがする。
自分の近くじゃなくて、遠くのほうを吹き過ぎていく風の音まで聞こえる。


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               may be Cylindropuntia whipplei

小一時間走っても、風景はかわりません。三角の山なんてどこにもない。途中分かれ道がいくつもあり、
道なりに、走り易そうな道を選んできたので、違う方向に来ているのかも知れないけど、考えないようにする。
めぼしい植物はありませんが、景色がいいのでそのうち植物探しをしていることを忘れてかけてしまいます。
風景を撮ろうとクルマを停めたら、足下にこんな植物がありました。なんだろうね、これ。
Cylindropuntia whipplei かな。黄色い実が可愛いけど、ウシさんは痛くてかなわんだろうなぁ。

それでもってこんどはお馬さんに会う。


IMG_0468S.jpg


あんた、何しにこんなとこ来とんの?ニンゲンが喜ぶものは、このあたりにはねーよ。

と、言われたのかどうか知らないけど、ガタゴト、ずっーっと走ってゆく。あいかわらず風の音がする。
ここまで、一台のクルマも見かけないし、もちろん誰にも会っていない。ニンゲンの数が多すぎるこの地上にも、
見渡す限り誰もいない場所は結構あるもんです。でもどうして、こんなに開放感があるんだろう。

さらに走っていくと、向こうの方に多少、丘陵地っぽい地形が見えてきます。とりあえずあそこまで行っとくか。


IMG_0473S.jpg


やがて視界にいくつも丘が現れ、地形がそれらしくなってきて、そのへんから写真を撮るのを忘れていたようです。
ついに、三角形の山?というか丘に行き当たりました。


IMG_044481S.jpg


なるほど三角形といえば三角形だわね。
たしかに、山の中腹や尾根筋あたりには、石がゴロゴロした場所もけっこうあります。
周辺にも似たような山や丘があり、そちらも有望な感じです。よーし。


IMG_0476535417S.jpg


当たるも八卦、当たらぬも八卦ですが、とりあえず石がゴロゴロしている、あまり急ではない斜面を歩き回る。
河原で見かけるような小石を敷きつめた感じで、石と石の隙間を赤土が埋めています。草はチョボチョボ。
いかにも斑鳩が生えていそうな場所だけど・・・。

しかし、ない。やっぱりというか、見つかりません。だんだん目がチカチカしてくるし、1時間以上も地面に
這いつくばるように歩いていると、腰も痛くなってくる。
「やっぱり違う場所なんじゃ・・・」という思いにもかられてきます。

それでもいっか、こんな地の果てみたいな場所まで来たんだし・・・と、あきらめとともに、なぜか心地よい脱力感。
でも、1時間半も探したんだし、引き上げる前にもうちょっとだけ・・・。


あ・・・。


IMG_0485S.jpg


出来過ぎの展開だけど、まさに諦めて帰ろうとしたその瞬間、何かが目に飛び込んできました。
ずーっと同じような「石石草石石」みたいなパターンを刻んできた瞼の裏側に、異物というか、違うパターンが
突然飛び込んできた感じです。その瞬間は何だか判らない。でも、「ん?今なんか見たな」という感覚。
・・・わかりますか?画面真ん中のやや右よりに、その姿があります。
白くて長いコルク質の刺。直径1.5cmくらい。立派な開花サイズ!


IMG_0488S.jpg

IMG_0495S.jpg
               Pediocactus peeblesianus ssp. fickeisenii in habitat, Coconino Co. AZ

近づいてよく見てみると、地面とすれすれの高さで、刺だけが外に出ている感じ。ちょっとだけ覗いている球体は、
水を吸っている様子ですから、数カ月以内のそんなに遠くない過去にお湿りがあったんでしょう。
もし、カンカラに乾いてたら、完全に埋没していて見つけられなかったと思います。じつに運が良かった。

でも、このあと欲が出て、さらに30分以上探してみたけど、1個体も見つからなかった。これだけでした。
このコロニー(といっても見たのは1個体だけだけど)が、さらに繁栄することを祈り、こんどは花どきに会えると
いいね、などと名残を惜しみつつ、別れてきました。

丘の上から見渡す景色もまた、格別。なんで自分がこんな処にいるのか不思議で、からだじゅうの力が
さらに抜けてゆく。トーキョーの生活が、妙に非現実的なものに思えて、帰るのが面倒くさくなりました。


IMG_0479S.jpg


以上で、小さな旅の報告おわり。

半日あまりをかけて、ホコリみたいなちっこい植物に1本出会えただけなんて、おそろしく効率が悪い道行きに
見えますが、いろいろ旅行したなかでも、とても記憶に残ってます。
なんというか、途中でみた果てしない草っぱらのだーれもいない感じとか、遠くからきこえる風の音とか、下を見て
歩いているときの石を踏むジャリジャリした感覚とか、そういうぜんぶと一体になって、斑鳩の記憶があります。
またいつか、訪ねてみたいと思う。会える会えないは別として。




テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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