空にいちばん近い場所。

刺こそ命。刺こそ美の神髄・・・
そう、実はわたし、正直に告白するとそのような素朴かつ原始的な強刺サボテン主義者なのです。
はじめて手にしたサボテン本の口絵で、燃えるような赤刺の鯱頭の写真に出会ったその日から・・・。
サボテンにはあらかた刺があるんで、兜とかウバ玉を除けば、みんな刺サボテンには違いないですが、
なかでもカラフルで立派な刺をふりかざす一群のフェロカクタス(Ferocactus)の刺の美しさは、
他を圧するものがあります。太平丸、綾波、緋冠竜などの刺も渋くて素敵だけど、極彩色のフェロを
前にすると、ハリウッドと太秦映画村くらいの違いがあります(キッパリ・・・でも、どっちも好きさ)。


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               Ferocactus cylindraceus ssp.lecontei Beaver Dam, Utah

しかし、それほどまでに崇敬する彼ら刺サボテンを、本来の神々しい姿のまま、
いや、まがりなりにも美しいと思える程度に育てられるようになるまで、実に25年間かかりました。
それはほんとうに、長い長い、曲がりくねった道でした。

野生株のような、長く強烈な刺をどうやって生じせしめるか。その鮮烈なる色彩を褪せることなく
維持することはどうすれば可能か。そして刺座にからみつく黒い煤カビを退治する術はあるのか・・・。
曰く、関東の海沿いなんかじゃ不可能。多くの名人が到達した結論でした。刺は信州人に任せとけと。
ですが、サボテンを生涯の連れと決めたからには、王者の風格あるフェロカクタスをなんとか手元で
美しく育て上げたい。とても諦めのわるい私だったのです。

実際、関東関西の海岸沿い地域などでも、美しく刺サボを育てている栽培家は存在します。
いったい何が決定的に違うのか。こたえは実にシンプルで、だいたいのケースが屋上栽培なのです。
終日の日照、コンクリートの照り返しによる甚だしい高温、放射冷却による夜間温度の低下、
さらには土湿から隔絶された乾燥がちな環境。これらがフェロを信州ばりに育てるキィファクターでしょう。


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しかし残念なことに、我が家は木造家で屋上がない。そこで知り合いの大工さんにムリを言って、
数年前にこしらえたのがこの天蓋フレームです。材木で柱梁を組んで、その上に簡単な造りのフレームを
載せただけのもの。高さは2階ベランダ相当です。・・・これが、効果てきめんでした。

栽培管理の参考にさせてもらったのが、大阪の某難物サボ名人のやり方。私の旧HPの画像BBSにも何度か
投稿して戴きましたが、氏はビル屋上で、ブロック囲いの上に透明波板を置くだけ、という極くシンプルな
栽培設備で、素晴らしい作柄のサボテンを育てています。色鮮やかなフェロはもちろん、エキノマスタスや
コリファンタ、テロカクタス・・・と、どのサボテンも超扁平で刺は密生。野生株に全く遜色ない姿です。
植物は蓋の透明波板の直下におかれ、昼は非常な高温。側面は二方開放なので、夜は熱がこもらず急速に
温度が低下します。さらに、屋上なので空中湿度も低い・・・とサボテン自生地もかくやの環境。兜や牡丹類を
ふっくら作るような蒸し蒸しのビニールハウスとはまるで逆ですが。
そこで、私の天蓋フレームも無遮光で、背はサボテンの高さギリギリにし、通風も極力はかれる形にしました。
私の出来る限りで、空にいちばん近い場所に、じりじりと太陽が焦がす天蓋に、彼らを置きたかったのです。
その成果が、以下の株たち。


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               Ferocactus chrysacanthus yellow&red spine form

まずはバハ半島の西岸、セドロス島原産のフェロ、金冠竜(Ferocactus chrysacanthus )。
上の株は3本とも、長野の栽培家が、自生地で採集した種から育てたという苗を戴いて、10年あまり
育てたもの。ここ5年はこの天蓋フレームにいます。長野時代以上の刺が出て、色も球体下部まで
褪せていません。刺座のススもついていない。信州ではあたりまえだと思いますが私はこんなの初めて!
金冠竜は長年の憧れの植物で、少年時代にシャボテン社で実生苗を購入以来、何本も手に入れ育てて
きました。しかしいずれも丈高く育ち、刺色は褪せ、黒カビに汚れ、およそ残念な姿になっています。
だから、赤刺黄刺の金冠竜を、いまこんな状態で維持出来ていることが奇跡に思えるのです。
つづいては・・・


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               Ferocactus gracilis SB1280

同じくバハ産の刈穂玉(Ferocactus gracilis SB1280 El Rosario,BajaCalifornia)。2枚の写真は別株です。
メサの種を実生して12年くらい。このフレームで5年過ごしました。水をかけてない状態の色です。
この仲間は丈高く育つ傾向がありますが、上写真の株は径が高さよりあるくらいで、形もまずまず。
種から育ててこのレベルまで到達できるなら、フェロも育てる気になります。

ところが、美しい刺を実現するための、強光線・超高温の環境は、一方でとてもリスキーです。


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               Echinofossulocactus coptonogonus SB13
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                Echinocactus horizonthalonius 'burnt'               

この天蓋フレーム、無遮光なので夏場はビニール面直下は摂氏50度近くまで暑くなります。それが強刺を
発生させ、黒煤カビを撲滅するカギなんですが、当然のごとく、焼け死ぬサボテンも続出します。
写真の竜剣丸(Echinofossulocactus coptonogonus SB13 Salinas,SLP,Mex.)みたいに、
復活してくれればまだ救われますが、そのまま天に召されるサボも多数・・・。
もっとも被害が出やすいのは太平丸(Echinocactus horizonthalonius )で、このフレームに放り込んだ
20鉢くらいのうち、無傷のものは数本しかない。貴重な株もたくさん焼きました(涙)。
でも、良い刺は出るんです。だからギリギリの線を模索しようとした結果なんだよね・・・。
フェロ以外の刺もの栽培環境としては、まだまだ研究途上です。

とまあ、未来にむけてさらに希望膨らむ天蓋刺サボフレームなんですが、最近、大変なことが発覚しました。
ある晴れた日曜日、綺麗な刺を愛でようと、階段を上がっていくと・・・


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ボキッ!

ぐへ。木製階段が根本からへし折れました。なかは完全に腐ってます・・・。
ここがこんなに腐っているってことは、ほかの部分もさぞや・・・。重たい荷重がかかる部分に、
もしもこんなことがおきていたら・・・。
刺サボの故郷、バハカリフォルニアの抜けるような空に、俄に黒雲がわさわさと立ちこめてきました。

(つづく)


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沙漠植物、栽培、探究。

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