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続、実生案内・・・。

前々回エントリー「種まきガイド」には結構な反響があって、素朴に嬉しく思いました。
長いことこの道楽をやってますが、日本のサボ・多肉園芸界には、どうも煮詰まり気味というか、閉塞感があります。
センスの新しい若い人が増えて間口は拡がっても、その先の展開がない・・・行き着くところ競売&品評会園芸・・・
お金とヒマがある人の自慢合戦を軸に成り立っている世界、のように思えるのです。もちろん、道楽ごとなんだし、
それはそれで結構なのですが、もうひとつの軸として多少アカデミックな展開が生まれないかなぁ、とも思う訳で^^;。
たとえば、チェコやオーストリアなどでは、愛好家の間に特定の属の研究グループがいろいろ出来て、自生地を
歩きまわったり、新しいサボテン研究の本を出版したりしています。また、サボテン全種を網羅した決定版書籍
「ニュー・カクタス・レキシコン」にも、世界のアマチュア愛好家が写真や資料を提供しています(日本からはゼロ)。
言葉の壁、距離の壁があり、思ってもなかなか実行できないのも事実ですが、少しずつアマチュア・アカデミズムの
フィールドが拓ければ楽しいなと・・・で、そういう想像力にとって、てっとり早く翼になるのが種まきだと思うのです。
自生地データのついた種を蒔けば、その場所の地名なんかを地図で調べたり、ググって画像を見つけたり。
ひとつの属を種類ごと産地ごとにあれこれ蒔いて育ててみれば、その仲間の環境適応の仕方や、種の拡がりの
イメージも浮かんできます。そうなれば、自生地山野でのフィールドワークはもうすぐそこ、ですよね^^。


IMG_7031S.jpg
          実生1-3年生のポット群。これがそのまま大きくなったら(なるんだけど)どこに置こう・・・?

とまあ前置きはそのくらいにして、前々回は、種のとりよせ方や業者さんをいくつか紹介したのですが、
今回はどんな種を蒔いたら楽しいか、というお話。
そんなもの、もちろん各自好きな種を蒔けばいいに決まっているんで、まあ大きなお世話なんだけど、
リストに載ってる種数が多すぎて訳わからん、なんていう声もありますし、あれこれ実生してきた経験から、
ちょっとだけ。以下、どんな観点から種蒔きをするか、という極く極く私的、かつ独善的な方法論です。


●「生えぬなら・・・難発芽系サボテンに挑む」
その名のとおり、蒔いても芽が出にくい種子です。サボテン界でいうと、北米南米の大半のオプンチア類、
ペディオカクタス、スクレロカクタスなどの北米難物種。人気の太平丸もこの部類に入るでしょう。
北米難物については何度も書いているのでここでは割愛しますが、最近は北米・南米のオプンチア類、
それにアウストロカクタス(Austrocactus)などが面白いと思っています。
これらは北米難物以上にめったと芽が出ない。鮮度が高い方がよいとか、ストックしてからがいいとか、
種皮に傷をつけたり酸に浸すといい、とか諸説ありますが、いまだ定石はなし。
発芽すれば貴重品で、実は姿も花も魅力的なものばかりです。最近、同好の士少なからず?で楽しい世界に。

●「王道!銘品サボ原点回帰」
兜や牡丹、太平丸など、いわゆる銘品系サボテンの自生地データつきの種子をあれこれ蒔く楽しみ方。
そもそも銘品サボは顔違いを楽しむものですが、産地違いをいろいろ蒔けば、野生植物オリジナルの顔違いを
コレクションできます。といっても野生型の白点疎らかつ疣の小さい兜がイイ、という人はそういないでしょうから、
おすすめはアリオカルプス(Ariocarpus・・・牡丹類)。玉、花、三角牡丹。亀甲牡丹、黒に姫、竜角・・・と
それぞれに産地違いがあって、拡がりは相当なもの。姿も花色も産地バラエティはさまざまで、大疣だけが
エライ訳じゃないと気づかされます。少なくともこれまでの「和式分類法」が相対化されることは避け難い趨勢。
なによりこの仲間は栽培が難しくない。一般に、成育の遅いものの方が実生育成では美しい姿に育てやすいと
思うのですが、それがまさにあてはまり、じっくりゆっくり時間をかけてやれば、野生株に見劣りしない素晴らしい
姿に育ってくれるところが嬉しい。実に育て甲斐があります。
太平丸や、ギムノの天平丸なども、産地によって刺の生え方がドラマチックに違うので、蒐めればハマりますよ。


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          白紅山(Sclerocactus polyancistrus SB1588 Nye Co,NV)・・・実生5年IMG_7487S.jpg
          黒牡丹(Ariocarpus kotschoubeyanus)・・・実生約10年

●「多品種混沌!マニア系多品種少量実生」
これは、多分に分類フェチ的な傾向のある、私みたいな人間に向いてる蒔き方です。具体的には、マミラリア、
ツルビニカルプス、ギムノカリキウム、パロジア(ノトカクタス)、エキノプシス(ロビビア)・・・といった、
比較的大家族で、しかも種の区別が難しく分類も諸説あるような類を、リストの上から下まで(あるはA-Gまでとか)
ごそーっと蒔いてみる。網羅して、種類ごと、産地ごとの微少な差異をコレクションする楽しみ方です。
ひととおり蒔き育てたら、ジツブツをしかと検分のうえ自分なりに再分類。ちょいとだけ研究者かぶれしてみる^^。
最近これらは、一部を除いて入手困難なので、国内では育った苗=稀少品となりますね。

●「極私的マイナー種偏愛術」
上の蒔き方に近い部分がありますが、とりわけ他に育てている人があまりいなそうな種類ばかりを、あえて
選んで蒔いてみるやり方。マイナーの極みといえば、オプンチアや柱サボテン類、さらに着生森林サボテンや
木の葉サボテン類等々・・・。これらはタネを見つけるのがひと苦労ですが、欲しい人にはとっても欲しいもの。
多肉で言うと葉ものメセンや、非ハオルチアのユリ科多肉などがこれに該当するか。
だいたいこういう植物は情報が少ないので、どんな姿になるのかも定かでないまま蒔くことさえあります。
見たことないものを蒔いてみる、というのは実生の楽しみのベーシックな要素で、栽培方法を模索しながら
育てるのは実に興味深いものです。


IMG_9416S.jpg
          ギムノ・ウルグアイエンセ(Gymnocalycium urguayense MM231,Artigas)IMG_3478S.jpg
          ギムノ・天平丸(Gymnocalycium spegazzinii FK 648 Quebrada del Toro,Salta)

●「省スペースでマイクロ実生」
場所がない・・・それなら大きくならないものを育てよう、という発想。代表種フライレア(Frailea)などは
ヨーロッパではとっても愛されてるらしく、随分いろんな種類(顔)のタネが入手可能です。
花の綺麗なレブチアなども同様で小さな差異にこだわった産地タイプが色々リストアップされています。
有名なところでは、菊水(Strombocactus disciformis)、花籠(Aztekium ritteri )、
ブロスフェルディアの松露玉(Blossfeldia liliputana)なども、発芽後なかなか大きくならないから
場所をとりません。ペディオの飛鳥やトウメヤ月の童子、ツルビニなどもこのカテゴリーに入れられそうですね。
これらマイクロサボの大半は、大きくなっても2寸5分鉢どまり。フライレアなど、遠目には実に地味ですが、
顔を近づけてじーっと凝視めていると、それまで見えていなかった小さな世界が見えてきて、その深さに驚く。

●「珍種&新種を先モノ買い」
最新記載のビックリ新種などは、苗は売りに出たとしてもとんでもなく高いし、そういう稀少な山木の入手は
多少ためらわれるけど、・・・タネから育てるなら許されるかなと。もちろん最新種珍種だけに、タネでもそれなりに
高価ですが、それでも万とすることはないでしょう。
今年で言えば、アガベのアルボピロサ(Agave albopilosa)がケーレスのリストに載っていましたし、
渋ーいところでは、Brachycereus nesioticus なんていうガラパゴス産の極珍黄金柱サボもありましたよ。
毎年のリストから新種珍種を探し出すのが、年中行事になっているところがありますね。


IMG_9657S.jpg
          レブチア属(Rebutia)の実生。 5cm×5cmに3-40粒蒔ける。オトナになっても2-3cm

●「生きる宝石箱をつくってみる」
多肉では、これは晩夏~秋蒔きが大半ですが、リトープス、コノフィツムなどの玉型メセンをあれこれと蒔いてみる。
数年待てば、ため息がでるほどカラフルな、生きた宝石箱が手に入ります。秋の斜光線にこれら色とりどりの宝石たちを
透かし眺めるのは実に幸せなひとときです。トゲトゲのキライな我が娘も「きっれ~」とウットリ。
リトを色々蒔いて寄せ植えするのはよくやりますが、マウガニー等ガラス窓系コノや、白磁のようなディンテランタスを
群植するのも、実に美しいながめです。コノフィツムなどはしばしばカキ仔で繁殖されていますが、やっぱり実生からの
苗はガッシリ姿が乱れずに美しいもの。サボテンと違って数年で完成するので、気が短いむきにも良し。

●「卓上ボトルツリーを夢見てみる」
塊茎類も実生すると、挿し木より姿良く育つものが多い。ただし種が入手し難く、成育も遅いものです。
なかでパキポディウムなどは、タネがたくさん出回ってますし、5~10年ほど育てると、ちょっとした工夫で
野生株のように丸々と育ってくれます。ユーフォルビアも育っていく姿の変遷がかわいらしい。
気に入った種類を見つけて、色んなコーデックス(塊茎多肉)を実生でじっくり、卓上ボトルツリーに作り込みたいものです。
このほか、奇想天外(Welwitschia mirabilis)も最近はタネが入手しやすくなったので、お勧めの種類。
この見るからに珍奇な植物が自分の蒔いた種から育ったんだなぁ、という感慨が涌きますよ。


IMG_8262S.jpg
          びいどろ玉を箱詰めしたみたいな、コノフィツム属(ConophytumOphthalmophyll節の実生苗の群植。cacsuc050932S.jpg
          奇想天外(Welwitschia mirabilis)の実生3~5年苗。 うちでは常時腰水栽培。

●「世紀を超えて・・・野望を育てる」
実生から立派な標本に至るまで軽く数十年。ヘタをすると100年の単位でかかりそうなものに挑む、気宇壮大な実生です。
コピアポアの黒王丸類、エキノカクタスの大竜冠など、肉質硬く成長遅いのに、大型に育つものがこれに入ります。
弁慶柱を蒔いたら、ハウスの屋根に届くまで何年かかるでしょうか。
一方で、極く小さくて硬いサボテン・・・花籠や菊水などの小型成長遅鈍種も大株育成には四半世紀かかりそう。
いずれも接ぎ木なんかせずに正木でじっくり、歴史をつくるつもりで付き合うべし。
多肉では、ユッカやグラスツリーなどを立派な枝振りに育てたり、バオバブの幹を自分より太らせよう、
なんて考えたら、それ相応の時を待たねばなるまいし、オニソテツ類なども(種によっては)人の頭くらいの幹まで
育てるのには一生を費やすことになるでしょう。
・・・こうした遠大な実生計画は、残念なことに私くらいの歳になるといささか意気阻喪気味になってきます。
種まきは世紀を越えて夢見る作業だから、20代以下の若い人にはぜーひぜひ百年スケールで志してもらいたいす。


ああ、それにしても過ぎ去った日々の遠く遙かなることよ。・・・と、若かりし頃実生したサボを前に嘆息。
なに、アムリタをすすり変若水を呑んで長生きすればいいのだ。 おーし、まだまだ蒔くぞ!



プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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