実践ガイド 輸入種子を蒔こう!

今時分から年末年始にかけて、仕事を終え帰宅後の深夜、私はある事務作業に忙殺されます。
海外の種子業者に来春蒔きの種を発注するという、一年のうちでも最も重要な任務?があるからです。
毎晩目を真っ赤にして、横文字の種リストとの睨めっこ。新着のオンラインリストから、まず最初に
欲しいものをリストアップすると、自然と200種とか300種とかのとんでもない数量になります。
あとはこれを少しずつ、歯を食いしばって?削り込んでいく作業。でも三分の一くらいまでダイエット
出来れば上出来です。種は芽を吹き大きく育つんだよ、未来の置き場所は?・・・なんてことは考えない。
我が家は狭いが地球は広い。きっと何とかなる。たぶん何とかなるはずさ。お願いだから誰か何とかして。

てな具合にここ10年余りが過ぎ、いま私の栽培場にある植物のうち、国内の業者や同好会のセリなどで
手に入れた植物は10%あるかないか。あとの10~15%くらいは海外から輸入した苗で、残り8割近くが
自分で実生育成したものです。


※以下、本文と写真キャプションは別々にお読み下さい^^;。
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●月華玉&竜女冠
今年2月のエントリーで種まきの様子を紹介しましたが、こちらはその半年後の姿です。
上は所謂難物サボのひとつ、ペディオカクタス月華玉(Pediocacactus simpsonii Sacramento Pass,NV,USA)。
下は大竜冠に近い稀少エキノカクタス・竜女冠(E.polycephalus ssp.xeranthemoides.Cocconino Co.AZ,USA)。
どちらも産地採種の種子の実生です。これを育てることがいちばんの喜び。



なんで実生にそこまでハマるのか。
種から育てた植物には、自分で育て上げたがゆえの愛着の深まりがあることは言うまでもありませんが、
それより大きいのは、その植物の生活環を全体像として理解出来るという充足感です。
ゴマ粒みたいな種から育てて、開花結実まで漕ぎ着けたときには、なんというか、百年の知己を得たような、
親しみが感じられます。土埃煙る沙漠の山野から届いた種が、10cm足らずの鉢のなかで原色の花をはじめて
咲かせたときの感激は、言葉に尽くせないものがありますよ。


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●白花姫牡丹&光琳玉
我が家にもある、非マニアックかつ親しみ深いサボテンの実生苗で、どちらも自家採種の種子を蒔いたもの。
なので種の数も多いし発芽率も高くて鉢がギッシリになっています。
上、Tula産・白花姫牡丹(親:古い輸入球)。下、特選光琳玉(親:Carrizals産KK輸入株)。
春に蒔いて半年後の姿。このタイミングで植え替えてやればもっと早く大きくなるんですが…。



もうひとつ、私が種まきをはじめた最大の理由は、欲しいものが苗の形では手に入らないということでした。
いま、日本の業者さんの苗リストに載っているのは、彼らの商売ベースで採算があう極く極く一部の種類に
限られています。つまり極端な量産が可能な花屋さん向け廉価種か、マニア向けの高価な園芸品種以外は
まず市場に出ず、数千種もあるサボテン・多肉植物の大半は、苗のかたちでは入手困難なのです。

一方で、海外の種専門ナーセリーには、それぞれ得意分野もあり、全体としてはすべてに近い品種がカバー
されています。種ですから、当然値段は苗よりもずっと安い。相当高いものでも10粒数百円、ふつうは、
20-30粒の種が100円足らずです。夢を買うには手頃過ぎる値段だし、当然、宝くじより発芽率は高い!


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●難発芽サボ2題
マイナーかつマニアック…どちらもお好きな方にはたまらない?サボテンです。写真上は南米パタゴニア産の
アウストロカクタス・ヒベルヌス(Austrocactus hibernus KVV1026 Las Lenas,Argentina)。自生地をググるとスキー場が出てきます。
写真下は、塊根の出来るその名も稀なオプンチア「グルソニア・マレナエ(Grusonia=Marenopuntia marenae)。
どちらも苗の国内入手はたぶん絶望的なもので輸入種子実生ならでは。発芽率の悪いものだけに、芽が出てきたときの喜びはひとしおです。



そうした海外の種業者のなかには兜のような園芸種を手厚く扱うところもありますが、だいたいは
野生サボテン(原種)の種が扱われています。人為的な選抜や改良を経るまえの、素のサボテンですね。
それらには大概、自生地データが添えられていて、どの国のどの地方、どの山の標高何メートルくらいの
処で採取された個体が親なのか・・・まで記されている場合も多々あります。
日本人は昔から「純系」好きですが、改良種作出の際の元親の産地などは顧みなかったため、大半の
園芸改良種は由来不明の雑交種になってしまいました。しかし、昨今の海外種子は、産地で直採種された
ものも多く、人気の太平丸や天平丸なども様々な産地のそれぞれ個性的なコロニーからの種子が、ちゃんと
区別されてリストアップされています。だからやろうと思えば太平丸だけで100タイプ(産地)蒔く、
なんてことも可能です。そのなかから、雷帝よりかっちょいいタイプが出てくるかも^^。

ということで、じゃあ私も蒔いてみようか、という気持ちになった方のために具体論を簡単にガイダンスしましょう。
郵便やファックスでやりとりした昔と違って、今はインターネットを通じて種子の輸入はとっても簡単になりました。
オンライン通販か、メールでのやりとりで注文は手間なしです。語学力も植物の名前が読めれば充分。

だいたいの業者はクレジットカードか、ペイパルが使えるので、支払いの手続きやコストもたいしたことはありません。
ただ、輸出向け書類をちゃんと用意できる業者は限られているので、だいたいはペーパーなしで送ってきます。
なので通関時の没収リスクは僅かにあり。そこはまあ、自己責任ということになるでしょう。
また、日本の業者さんみたいに、メールには直ぐ返事が来るとか、入金したらすぐ届くとか、期待しない方が良いでしょう。
そこは商慣行の違いで、いま注文して届くのは春、ということも珍しくありません。
因みに私はこれまで10を超える業者と取引しましたが、完全にバックレられたというケースはありませんでした。
苗の注文で、送金後2年半待たされた・・・ということがありましたが^^;。


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●スクレロ&ペディオ
いわゆる難物サボテンの実生苗です。いずれも今年の春~夏蒔きで、発芽から半年足らずの姿。これから丈が詰まり本来の姿に近づいていきます。
国内で時折売っている接ぎ木苗は、ウイルスが入っていたり劣化して開花しなかったりしがちなので、接ぎ木栽培するのであっても、種から育てるのが一番です。
上はスクレロの美稀少種ブセキィ(Sclecocactus whipplei 'busekii' SB1086 Coconino Co.AZ,USA)
下は種から育てると実に可愛くて楽しい斑鳩(Pediocactus peeblesianus SB571 Navajo Co.AZ,USA)。



以下、私が複数回取引したことのある代表的な業者をいくつかご紹介します。それぞれの評価は、
あくまで私の経験だけの話なので「注文したけど○○だった」というクレームはご容赦くださいね^^;。

●メサガーデン

言わずとしれた最も有名なアメリカの種子ナーセリー。園主StevenBrack氏のイニシャル「SB」ナンバーを
冠した数多くのサボテンのほか、多肉、ことにメセン類は極めて充実しています。扱い種数は大変多い。
北米産の難物サボテンも、ここが一番強いでしょう。ネット上では対応が悪いという声も聞きますが、
めちゃめちゃ几帳面かつ真面目な人です。信頼性はとても高いと思います。

●カクテーン・ピルツ

こちらも扱い種数の多いドイツの業者です。南米サボが手厚いですが、とりわけ強いのがギムノカリキウムで、
園主自ら採種した「純系ギムノ」の種がズラリと揃っています。ほかコピアポア、フライレアやロビビアなども
充実しています。ドイツ人ゆえか?対応も迅速で手堅い印象。

●ケーレス・カクテーン

やはりドイツの老舗ナーセリー。種のほか、ブロメリア(チランジアなど)の苗もたくさん揃っています。
産地データのついていない種が多いのが難点ですが、新種への対応は素早く、毎年他の業者にはない珍種
稀種がいくつか出るので見逃せません。多肉も色々揃っています。

●サクシード

比較的新興のスウェーデンの園。ネットリストには画像もあり、注文しやすく対応も早い。品揃えにはやや
偏りがあり南米サボ重視。とくにレブチア、ロビビア、パロジアと、日本ではあまり人気がないマニアックなものが
私には嬉しい。ほかにエリオシケやコピアポアもかなり充実しています。

●シルバーヒル・シード

南アフリカの種ナーセリーで、アロエやメセン、ユーフォルビアなどの多肉植物や、南ア球根類など品揃えは
極めて充実しています。アロエ・ポリフィラやムイリア・ホルテンセなど、得難い品種もときおり登場します。
多肉植物以外にも、南アの花木やランなども多数扱っていてリストは宝箱の感あり。

●カクタスホビー・ブルノ

最近気を吐くチェコ業者のひとつ。チェコからは沢山の採種家が自生地の山野を歩いて種を集めており、
実に沢山の産地種子が記載されています。「新種(実際は新タイプ程度のもの多し)」も多数。商慣行は独特で、
秋に注文送金して届くのは春。その間音沙汰なし。チェコには沢山の新興業者があり、送金したきり届かないと
いうケースも聞いたことがありますが、ここは過去2回頼んで事故はありませんでした。

ほかにも種ナーセリーはいくつもありますが、私の経験で「実績あり」と思える業者のご紹介に留めました。
皆さんのなかで「この園はいいよ」という情報がありましたら、是非お教え下さい。情報公開でみんなで実生を
楽しめたらと思います。


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●英冠&桜丸
実生から3~4年経つと、成長の早い種類は処女花をつけ、遅い種類でも本来の特徴が姿に表れてきます。種を蒔いて良かったなぁ、と思う瞬間。
写真は"遅い"種類で、上はエキノマスタス英冠(Echinomastus johnsonii KY9802 LittleField,Az,USA)、
下は同じくマスタスの旧来の桜丸(Echinomastus dasyacanthus "intertextus" VZD826,Janos,Chih,MEX)。
大きくなっても刺がラフにならず籠状に球体を包むタイプ、のはずですが、この先どうなるか・・・^^。



いつもはマイナーサボの話など好き勝手に書き散らしてますが、今回は多少お役立ち度の高い記事に
なっておれば・・・などと思います^^;。
これから暫くは、サボテン栽培の農閑期。秋の夜長は、ニッポン沙漠化計画の野望に胸をふくらませ、
膨大な海外の種子リストを眺めながら壮大な実生育成10カ年計画?を練り上げましょ^^。



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沙漠植物、栽培、探究。

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