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秋の開花前線。

ちょうど今頃、日本中のあちこちの温室などで、牡丹類サボテンこと、アリオカルプス属(Ariocarpus)の各種が
花盛りを迎えていると思います。牡丹類の華やかな花がひととおり咲き終わる頃には秋もすっかり深まります。

私が、毎年感心させられるのは、この仲間の種類ごとにほぼ同じ日に一斉開花する几帳面さ。
我が家では、開花日そのものは年によって若干前後しますが、まず亀甲牡丹(A.fissuratus)、
わずかに遅れて姫牡丹(A.kotschoubeyanus ssp. macdowellii)、アガベ牡丹(A.agavoides)、そして
黒牡丹(Ariocarpus kotschoubeyanus ssp.kotschoubeyanus)三角牡丹(A. trigonus)とつづき、
最後に岩牡丹、(Ariocarpus retusus)などレツーサ系…という順番です。もちろん、同じ種類でも
産地コロニー(フィールドナンバー)ごとの差異はあります。


1S_20101020233946.jpg
            亀甲牡丹(A.fissuratus
2S.jpg
            姫牡丹(A.kotschoubeyanus ssp. macdowellii)

上は10日ほど前に写したものですが、私のハウスでは亀甲牡丹と姫牡丹がはかったように一斉に咲いていました。
しかし、この時点では黒牡丹や竜角牡丹(Ariocarpus scapharostrus)はまだ蕾の状態です。
そして、岩・玉牡丹は大半のグループ(フィールドナンバー)でまだ蕾もあがっていない状態でした。

アリオカルプスの体内時計はかなり正確なようで、同じ種(正確には同産地の同種)は、まずブレなく一緒に咲きます。
もちろん開花期間そのものに幅はありますが、そこには明確なピークがあり、同じ環境で並べて育てていれば、
ほぼ同日に咲きます。もし、一緒に育てていてもまるでバラバラに咲く岩牡丹や亀甲牡丹があるとしたら、
それらはそもそも産地的に隔離されたコロニーに起源を持つものか、あるいはそれらの交雑種ではないかと思われます。
ちなみに、きょうご紹介するアリオカルプスはすべて実生苗ですが、私のような促成ならぬ抑制栽培でも、
10年も経てばこんな風にたくさんの花を咲かせてくれます。・・・明日のために、蒔くべし、蒔くべし!


4S.jpg
            黒牡丹(Ariocarpus kotschoubeyanus ssp.kotschoubeyanus)           
5S.jpg
            竜角牡丹(Ariocarpus scapharostrus

ネット上で、いろんな方のブログなど拝見していると、牡丹類各種の開花時期は、わが栽培場と必ずしも
一致しているわけではなさそうです。地域や栽培環境の違いで数日程度のズレがある。
とはいえ、九州から北海道まで2か月近くかけて北上するサクラのような「開花前線」はなく、
全国ほぼ同時期に咲くと言えそうです。彼らが開花タイミングを揃えるのは、効率よく子孫を残すためと思われますが、
では何をもって季節を知るのか?

・・・じつは、こんなややこしいことに思いを巡らすには理由があります。
きっかけは先日、小学生の息子が投げかけてきた質問でした。
彼は、父親がたくさん育てているサボテンは、小さい時から周囲にあたりまえに存在していたので珍しくないらしく、
さほど関心を寄せません。ですが、日本の里山に生えているような草木にはわりと興味があるようです。

「いま、ヒガンバナがあっちこっちで咲いてるでしょ。テレビでもやってるでしょ。
 でも、桜とちがって日本のどこでもだいたいおんなじ頃に咲くのは、なぜ?」

「うーん・・・。そうだ、ヒガンバナは短日性なんだ。日が短くなると咲く性質だから、北と南でそんなに
 違わないんだよ」

「だってヒガンバナは球根じゃん。地面の中にいるのに、日の短さをどうやってわかるの?」

「え?ううむ…」

たしかに・・・ヒガンバナの球根は、けっこう深く埋まっているから、光を感じることが出来るものなのか・・・。


higanbanaS.jpg
            Lycoris radiata(長男撮影)            

即答できなかった私は、その場はお茶を濁して、あとでインターネットであれこれ検索してみました。
しかし、意外にも、答えらしい情報は見つかりません。すると、息子がまたやって来て、こう言いました。

「ねえ、これは僕の仮説なんだけど、ヒガンバナは3倍体で無性繁殖だから、日本じゅうぜんぶ同じクローン
 なんでしょ、だから性質も同じで、同じ時に咲くんじゃない?」

うーむ、なかなか小難しいことを言う。でもこの説明じゃ答えにならんだろうに。

「それを言うなら、桜前線のソメイヨシノだってみんな同じクローンだぜ」

「あ、そっかぁ」

・・・と、なんとか親の沽券をまもったものの、じぶんの方も明確な答えがわかっている訳ではありません。
小学生の息子の、世界に対する素朴な疑問に答えられない、知的に虚弱な文系人間の我が身が呪わしい。
満開のアリオカルプスたちを前にしても、そんな思いがもやもやとよぎるばかりです。
厳冬期を乗り越えて蕾を膨らませるサクラの場合、花芽の休眠打破に一定の低温体験の蓄積(積算温度)が、
さらに花芽の成長には同じく冬の終わりから春先にかけての気温上昇の蓄積が必要・・・つまり絶対的な温度変化が
重要なファクターであることが知られており、そのため北と南では、開花時期に大きなタイムラグが生じる。
厳しい冬を堪え、その場所での春の訪れを正確にとらえて開花することの必要性から備わった能力なのだ・・・
とかなんとか、ここまでは理科の授業というか日本の風物詩の範囲なので、文系の私でもなんとかついていけます。


6S.jpg
            赤花岩牡丹(Ariocarpus retusus 'confusus' SB1426)7S.jpg
            三角牡丹(A. trigonus

ヒガンバナやサボテンの牡丹類の場合は、どうか。どちらもものの本には短日植物であるなどと書いてあります。
しかし開花時期は年によって違いますから、日照時間だけが開花時期を決定する要因とも思えません。
ここから先は私の推測ですが、サボテンの牡丹類にしてもヒガンバナにしても、短日を感知し花芽分化が
はじまって以降、サクラが体験するような身も凍る厳寒に遭うわけではありません。
九州でも東北でもメキシコでも、夏の暑さ(積算温度)が花芽成長に及ぼす影響は、冬の低温と春先の気温上昇が
サクラの花芽生長に及ぼす影響ほど決定的なものではない。彼らは厳密な絶対温度ではなく、気温や地温の相対的な
変化や乾湿条件、日照時間などを複合的に感受しながら、季節をつかんでいるのではないでしょうか・・・。


9S.jpg
            アガベ牡丹(A.agavoides

うーん。なんだか自分で語っておきながら、いまいちスッキリしないし、頭が混乱してきますねえ。
花たちが、能書きはいいから、肩の力を抜いてゆっくり楽しんでくれよ、と笑いかけてくるような気もします。
まぁサボテンもヒガンバナも、私より頭がよくって、精密かつ几帳面な生き物であることは間違いないでしょうな。
でも、息子が指摘した、夏至以前に落葉し地中深く埋まった鱗茎だけになるヒガンバナが、
どうやって短日を捉えるのかは、わからないままです。また訊かれたらどう答えるかな・・・
どなたか詳しい方がおられたら、ぜひ教えて下さい^^;。


0S_20101020234336.jpg



プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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