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太平丸の顔。

太平丸。ここ十年あまりは、押しも押されもせぬサボテン界最強のスター。
かつていまのような大メジャー種ではなくて、どちらかというと脇役の部類だったので、
私の天の邪鬼根性とも一致して、いろいろ集めたり、育てたりしてきました。
成長が遅いために、かつては山木一辺倒で、実生から育種をするなどは考えられなかったものですが、
いまでは名人たちがそれぞれ、自慢の親木からすぐれたトゲの太平丸を作出してます。


99waterman1S.jpg
     E.horizonthalonius "nicholii" Waterman Mt.AZ


太平丸の産地はアメリカ南西部からメキシコ中部まで広大な範囲に拡がっており、その分タイプ差もいろいろ。
刺のタイプなどから、小平丸、翠平丸、尖紅丸、花王丸、最近では雷帝、ニコリー、フランクリン・・・
さまざまな愛称が各タイプにつけられていますが、学術的には太平丸(Echinocactus horizonthalonius)
一種類です。地域ごとの変異、顔違いはボーダーレスに繋がっていて、あえて線引きするにはムリがあり、
分類としては適切だと思います。


99waterman4S.jpg
     E.horizonthalonius "nicholii" Waterman Mt.AZ


上写真2枚の野生太平丸はともに分類学上のニコリー(E.horizonthalonius "nicholii" Waterman Mt.AZ)で、
アリゾナ南西部で撮影したもの。でも、国内で接ぎ木などで繁殖されている「長豪刺のニコリー(園芸種)」
とは違う顔です。この“本物の”ニコリーのコロニーには、確かに直刺を突出した栽培種を彷彿とさせる個体が
多いのですが、園芸的には冴えない貧弱な顔の株も多数混生しています。この地域の太平丸“ニコリー”最大の
ポイントは、刺でも肌色でもなく、他の多くの太平丸がチワワ沙漠産なのに対し、アリゾナ~メキシコ北西部の
ソノラ沙漠に隔離分布している、ということです。


02franklin28S.jpg
     E.horizonthalonius "Franklin" Franklin Mt. El Paso,TX


そしてこちらは、野生の「フランクリン太平」。ニコリー同様、日本では園芸的に結構名前が通っている
太平丸です。しかし野生種の方は、肌の青みこそ強いものの実にジミというか平凡な太平丸で、
写真の株がこの産地の平均点。
日本で言うところの、太刺がうねる名品「フランクリン太平」は、おそらくたまたま見つかった特異な個体に
つけられた愛称で、テキサス州の本家フランクリン・マウンテン(Franklin Mt.)では、
そんな個体はまず見あたりません。

いま、国内でいろいろな名前で呼び分けられているものも、輸入球のもともとの産地が定かではないうえに、
多くは外見だけで区別され交配されてきたので、分類上の亜種(ssp.)や変種(var.)とは言い難く、
あくまで見かけ上の顔タイプの園芸的愛称と考えるのがリーズナブルです。

といって、顔違いやタイプ違いを集める楽しみを否定するつもりはまったくなくて、かくいう私も色んな産地の
タネを実生して育てています。フォルム、肌色、刺、花・・・たしかにバラエティ豊富で、太平丸一種類でも
コレクションが出来るくらい、奥が深いです。


IMG_9605S.jpg
    E.horizonthalonius M170.6 Huizache,SLP
IMG_3849S.jpg
     E.horizonthalonius M170.59 El Pilar Coah


写真上は、メサガーデンの整理番号M170.6 種子からの育成で、日本でいう小平丸というタイプに近い顔立ちの
もの。産地はメキシコ・サンルイスポトシ州ウイサッチェ(Huizache)です。
写真下は、同じく整理番号 M170.59 メキシコ・コアウィラ州エル・ピラー産(El Pilar)で、刺の黒みが強い。
むかし「黒刺太平丸」なんて名前で輸入株が流通していたタイプに似ています。
同じ太平丸でも、たしかに両者の雰囲気はずいぶん違う。園芸家としては、それぞれに名前を
つけたくなりますよね。ちなみにどちらも実生から10年ほど育てたもの。


TDSC06650S.jpg
     「花王丸」の古い輸入球(E.horizonthalonius "KAOMARU" habitat unknown)


最近までは、産地のハッキリした太平丸の種子は得難かったのですが、この頃はチェコのプラントハンターたちが
メキシコの原野を歩き回った結果、新しい産地も含めて色々なタイプの太平丸種子が流通するようになり、
実生育成の楽しみも格段に拡がりました。
実際、蒔いてみると、栴檀は双葉より芳し・・・ではないですが、実生1、2年の時分から顔違いが
出てきて実に楽しみなものです。


次回はそんな各産地の太平丸小苗を写真で紹介するつもりです^^。


プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。
著書「珍奇植物 ビザールプランツと生きる(日本文芸社)」

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