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呪われたサボテン・・・マンドラゴラ・マンドラゴラ

自分で種から育てたサボテンが、はじめての花をつけてくれた時は、なんとも嬉しいものです。
栽培をはじめた中学生くらいのときも、いまも、その素朴な喜びはまったくかわらない。
進歩がないつうことかな?

とりわけ、種を蒔いてから10年あまりもかけて、やっと咲いてくれたなら。
なおかつ、それが幾重もの秘密めいた物語に彩られた、珍奇無類の植物なら・・・。


その名を、「ツルビニカルプス・マンドラゴラ・マンドラゴラ」という。

そう・・・あのハリーポッターにも出てくるし、古今の魔術呪術錬金術の世界ではお馴染みの、伝説の植物。
マンドラゴラ(マンドレイク)の名を戴いたサボテンです。
マンドラゴラは、地中に人体の形をした塊根を埋め、その成分?が様々な魔術呪術のタネにされてきた、
空想上の植物。とにかく無数の物語が語られているので、興味あったら検索してみて。

ちなみに、空想世界ではない実在のマンドラゴラ(Mandragora officinarum)は、ナス科の薬草で、ときに
"ど根性大根"みたいな、気合いの入った塊根になることはあるみたいですが、人型になるかどうかは??
葉っぱも花も鑑賞価値があるし、育てている人はけっこういるかも知れません。


で、前おきが長くなったけど、下の写真が、サボテン界の「マンドラゴラ」。


tur-mand2S.jpg


拍子抜けした? 地味すぎ?

いやいや、こっちのマンドラゴラにも、物語があるんです。 

和名は「美針玉」。別名を「コケシ玉」 学名は Turbinicarpus mandragora ssp.mandragora 。
メキシコはコアウィラ州(Coahuila)の原産。

上の写真の株で、直径3cmくらいですが、それでもタネから10年かかっている、というところに、マンドラゴラの
マンドラゴラたるゆえんあり。鉢のなかには、地上部と同じくらいおおきな塊根も、ちゃんとある。
ちなみに、おととしの植え替えの時点では人の形してなかったけど、花の咲いた今では、どうだか、わからんよ。

コケシ玉、という和名は、球体と地下の塊根の間が細くくびれて、コケシみたいだから。
あんまり怖いという印象はなかったんでしょうね、そんなかあいい和名つけた人は。
私は、美針玉、のほうが好き。・・・するどい針の群れは美しく尖り、その切っ先に滴るのは・・・うーん奥深い。
などという私はマンドレイクの妄想に冒されすぎているらしい。


tur-mand1S.jpg


この種は、産地での採取が行われていた30~40年前までは、輸入株がそれなりに出回っていて、栽培の難しい
高級品、珍品サボテンとして知られてました。当時の私はまだ子どもで手も足も出ず。
その後、海外からいろいろタネを取り寄せて蒔くようになってからも、なかなかこの種そのものを見つけることは
出来ず(近縁種はあるんだけども)、永く憧れの植物でした。

ところが、10年あまり前、輸入種子実生育成の大先輩、Yさんがこの稀少なタネを送って下さったのです。
うおおホンモノのマンドラゴラだ!と歓喜し、腐りやすいといわれるこの植物、大事に大事に、年に数度しか
灌水しない超保守的栽培で、ここまで来ました。それで、やっとの処女花というわけです。


ツルビニカルプスは、一般に栽培の難しい植物ではないのです。大きく育つものではないけど、ふつう実生から2年
くらいで開花する。でも、この種はちょっと違った。水が多いとすぐ腐る。実際、発芽したのは20本くらいあったと
思うけれど、落ちがとっても多かった。数年経てからは、こんどは地上部球体と塊根をつなぐ細い部分が枯れてしま
ったり・・・。で、なんとかここまでこぎ着けた3本つうわけです。
来年は、複数が開花してくれて、タネがとれますように・・・。

ちなみに、この美針玉 (T.mandragora ssp.mandragora) には、よく似た近縁種がいろいろあって、
国内ではしばしば、そういう“マンドラゴラもどき”が美針玉の名前で流通してます。
これらは、たしかに塊根をもつ生態など含めて、美針玉ととっても良く似ているけれど、圧倒的に栽培しやすい。

でも、マンドラゴラの中のマンドラゴラでは、ない。

たとえば・・・


tur-subterS.jpg


これはサブテラネウス(Turbinicarpus mandragora ssp.subterraneus)。
塊根と球体をつなぐ部分がより長く、ヒョロヒョロのたくって、ある意味こっちのほうが魔術っぽいです。
種小名は同じマンドラゴラだけど、亜種レベルで違う。マンドラゴラ・サブテラネウス。
ですが、栽培はずっと簡単で、生育も遅くない。

さらに・・・


booleanusS.jpg


こっちはより美針玉に似ている植物で、ブーレアヌス(Turbinicarpus mandragora ssp.booleanus)というもの。
花がなかったら区別できないくらいだけど、産地が違う。
花いろが派手な分、こっちのほうが鑑賞価値は高い?くらいだし、かわいらくしくて、とっても素敵な植物。
しかも、この苗は実生4年くらいのもので、2年目から咲いてます。美針玉と違って、途中の落ちもほとんどない。
でも、マンドラゴラの中のマンドラゴラではない。これでは、ハリーをもってしても、魔法は生み出せない。

実は、ツルビニ・マンドラゴラ種は、亜種レベルでみていくと、いまでは白狼玉(T.mandragora ssp.beguinii)や、
ザラゴザエ(Turbinicarpus mandragora ssp. zaragozae)なんてのものも含まれているわけで、これらなどは、
殆んどテロカクタスなみの頑丈植物。もちろん、だからといって魅力がないわけじゃないけど。

やっぱり・・・


tur-mand0S.jpg


マンドラゴラは、亜種名まで、マンドラゴラでなくては。

おなじツルビニのマンドラゴラ種は数あれど、美針玉=真正のマンドラゴラ(mandragora ssp.mandragora)だけが
難物なのは、なぜか?
産地の土壌が特殊であるため、微気象的にきわめて過酷な場所に生えているから、とか諸説あります。

しかし私には、やっぱりマンドレイクの呪いが二重にかけられているからだと・・・


ここはやっぱり、そう思いたい。



プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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