エリオシケって奴は。


今回はネタに詰まると毎度やっている花写真まとめです。
種発注を控えたこのシーズン、少しは参考になるかな、などと思いつつ。
去年も並べた南米サボテン、エリオシケ属(Eriosyce)。
かつてはいくつもの属に分かれていたものを統合したので、実に多様な姿の植物群です。



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               E.chilensis ssp.albidiflora RMF 92 Pichidangui,Chile



まずはクリーム色を仄かな紅色が縁どる、水蜜桃のような色合いの大輪から。
チレンシス・アルビディフロラ(E.chilensis ssp.albidiflora RMF 92 Pichidangui,Chile)。
New Cactus lexicon では今のエリオシケ属を旧カテゴリーに準拠して亜属的に取り扱っていますが、
この種は旧ネオポルテリア属(Neoporteria)のグループに入れられています。
基本種のチレンシスも花色こそピンクでネオポル的ですが、花の形や大きさ、質感などがかなり違います。
このアルビディフロラの花はネオポルとは別物。エリオシケ属すべての中で最も上品かつ贅沢な花を
咲かせる植物です。



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               E.heinrichiana FK465 Quebrada Honda, Huasco,in coastal flats



ハインリッヒアーナ(E.heinrichiana FK465 Quebrada Honda, Huasco,in coastal flats)は、
かつての分類ではホリドカクタス(Horridocactus)に入っています。
この種は、球体の大きいもの小さいもの、刺の長いもの短いもの殆どないもの、など産地による
タイプ差が甚だしく、特徴も捉えにくいためか、どうも栽培家からは敬遠されるようです。
写真はカッターマン氏のナンバーがついたタイプで、くすんだ濃色の黄花がなんとも南米ぽい。
球体もそれに似つかわしい渋みで、人気のなさも含めて、天の邪鬼仙人としては愛さずにいられない。



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               E.aspillagae FK197 San Fernando,Hacienda Tanume,Colchagua



アスピラガエ(E.aspillagae FK197 San Fernando,Hacienda Tanume,Colchagua)も、
旧ホリドカクタス系なのですが、艶のある明緑色の肌は、どうもエリオシケ的ではない。
刺も弱々しくて、パラグアイあたりの草っぱらにうまっている弱刺ギムノを思わせます。
ですが、花色の微妙な濁り具合はまさしくエリオシケで、未熟な果物のような甘さを感じる。
そう思うと、退屈な感じの刺姿が、かえって狙いすました技巧のように見えてきたりするのが、
不思議なところです。



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                E.napina ssp.fankhauseri JA75 W of Domeyko,La Serena



続いてはかつての旧テロセファラ属(Thelocephala)から。
ナピナ・フランクハウセリ(E.napina ssp.fankhauseri JA75 W of Domeyko,La Serena)。
基本種の豹頭(ssp.napina)は、古くから日本にありますが、なぜか難物視されてきた面があり、
古い本には接ぎ木された植物が紹介されていることが多い。ごく小型で発達した塊根を持つことが
理由と思われますが、実際は育てやすい植物。種から数年で風格ある開花株に育ってくれます。
写真の個体はさらに小型なタイプのようで、球体は2cmほど。植物は成長期に吸水すると、
なんとか頭が土の上に出てきますが、休眠期は完全に埋没。球根植物のような生態です。



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               E.taltalensis ssp.pilispina FK514 South of Chanaral         



最後はピリスピナ(E.taltalensis ssp.pilispina FK514 South of Chanaral)。
タルタルエンシスは、かつてのホリドカクタスの代表種、多留多留玉です。産地タルタルが名の由来。
刺がとても美しいサボテンですが、普通は黒っぽい色。変異の幅が広く、色々な異学名がついています。
写真の植物は、象牙色の巻き刺が大変美しく、小さいうちから開花する点も魅力的なので紹介しました。
ピリスピナはNew Cactus lexiconではカルデラナ(E.calderana)として扱われていますが、このうち
白色の曲刺を持ち、各所でプルケラ(E.'pulchella')として紹介されてきたタイプに近いものと思われます。
大きくなるとこの象牙色の刺を巻きつけるように展開するようなので、これからも楽しみな植物です。





テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

“南米ブーム”再び・・・?

南米サボテンがちょっとした人気みたいです。
というのも、ちょうど今、ヤフーオークションに自分のところの繁殖苗などを出品していて、ありがたいことに、
欲しいと言ってくださる方が存外おられるのですが、なかでも南米サボテンの引き合いがとっても多いのです。
アンデス西側のコピアポア属(Copiapoa)やエリオシケ属(Eriosyce )などは、黒王丸など一部の有名種を除けば
マイナーな仲間ですが、渋い肌色や複雑な花色を持ち、同種内の個体差がとても大きいサボテンです。
そのぶん、集め甲斐もある。私はこれらが好きで随分前からせっせと種を輸入して蒔いていましたが、
その魅力を分けあえる方が増えているのは、とっても嬉しいことです。


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          Eriosyce taltalensis Esmeralda, Chile (M1039.4)

ずっと昔、1960年代から70年代にかけては、大量の南米産サボテンが続々と原産地から輸入され、
サボテン界は「南米ブーム」に沸いたんだそうです。
花の美しいロビビア属(Lobivia)や、数々のギムノカリキウム属(Gymnocalycium)、コピアポア属や、
ネオポル(Neoporteria)、ホリド(Horridocactus)、ヒルホ(Pyrrhocactus)…といった現在はエリオシケ属に
まとめられた一群の植物たち・・・。今から考えたら羨ましいほど数多の原産地球が到来した筈ですが、
そのほとんどは、自生環境を知らないままの栽培でダメになってしまったようで、極く一部を除いて
現在まで系統保存されているものはなさそうです。


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           Eriosyce curvispina 'odoriflora' FK4-77 Pichidangui,Chile

南米サボテンの人気が衰退した理由は、育てにくさもあるでしょうが、種類の区別が難しいという点にも
あったと思います。隣接する種の境界が曖昧なうえに個体差も大きく、外見だけでは種別が困難なものが
多いのです。例えば、兜(A.asterias)とランポー玉(A.myriostigma)を区別出来ない人はまずいないと思いますが、
エリオシケやパロジア(Parodia)、ロビビアといった仲間の各種を区別出来る人がどれだけいるでしょうか。
結局は、誰が見ても区別できるような単純な特徴がない種類は敬遠されるようで、北米産でも
マミラリア属(Mammillaria)等、やたら種類が多くてそれぞれが似通っているものはあまり人気がありませんね。

南米種が飽きられると、かわりに栽培しやすく、園芸的評価の基準が明快な(疣がデカイとか刺が太いとか)
兜やランポーといった有星類(Astrophytum)や牡丹類(Ariocarpus)などに人気は移っていきました。
中学生くらいの私が通信販売でサボテンを集め出した頃も、南米ものの輸入は既に少なかったです。
色々な原種サボテンを集めて微妙な違いを楽しむ山野草的な園芸から、少ない種類に的を絞り、芸を求めて
改良育種する園芸に移り変わっていった訳です。そこには環境保護の動きと、サボテン業者さんの事情も
あったでしょう。野生株をどんどん海外から輸入して高値で捌ける間は、業者さんもややこしい南米モノに
熱心でしたが、ワシントン条約などで規制がかかると、種から育ててまで売るというプロはそうはいません。
何しろ種類が膨大でマニアが求めるモノが多岐にわたるので、沢山の種類を育てないといけない。
ニーズが分散すると価格は上がらないので、苦労の割に儲けは少ない、というわけで。


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           Eriosyce napina ssp.lembckei FK165 Huasco,Freirina,Chile

私がオトナになって本格的栽培をはじめた頃は、愛好会のセリなどに出かけてもいつも同じような
サボテンにしか出会えず、北米難物や南米種など欲しい種類はなかなか見つからない。
ベテラン趣味家に、「○○玉なんてないですかね?」なんて訊ねると
「もうそんなモノ育ててる人はいないんじゃなかなー。それより、今日も良い兜出すよ!」と。
うーん、確かに兜も大好きだけど、他にもいろいろ欲しいものがあるんだけどな…子ども時代に読み耽った
サボテン図鑑に紹介されていた数多のサボテンたちは、いつの間にか得難い存在になっていました。

そんな私に活路を与えてくれたのが、種子の輸入です。日本では見あたらない北米難物種や、無数の
南米サボテン、もちろんメキシコ産の銘品たちの原種も、海外業者の種子リストには何千という種類の
サボテンがズラリと並んでいます。…すぐに、あれこれ種を取り寄せて蒔きまくるようになりました。


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          Eriosyce islayensis KK1161 Ilo 100-200m, Peru

さきに、南米モノの人気が落ちた理由に、種類の識別の難しさをあげました。
先人たちは、山堀りの野生株を前に、刺が曲がってるから××丸、真っ直ぐだから○○玉、などと論じあい、
やがて答えの出ない問答に倦み疲れたのかも知れません。答えが出なければ目の前のサボテンに名札を
書くことができませんから。

ところが、ここにひとつの便法があります。自生地情報、いわゆるフィールドナンバーで個体を識別する
方法です。目の前のサボテンが、どこの国のどこの山の、標高どのくらいの場所で採取されたものかが
確実に判れば、名前は判らずとも、オリジナルの証明になります。
例えば分類学のエライ先生が、○○丸と××玉は同じものである!と断定してしまっても、園芸家としては
鑑賞上の微妙な差異にこだわりたいわけですよね。このとき、フィールドナンバー(産地データ)があれば、
その違いを流通上も担保できるわけです。
逆に言うと、たとえば産地情報がなければ、太平丸も花王丸も尖紅丸も分類学上は同じ太平丸ですから、
やがて交雑されてそれぞれの産地の特徴を維持した苗がなくなってしまうおそれがあります。


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          Eriosyce senilis 'gerocephala' KK96 Vicuna, Chile
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          Eriosyce subgibbosa 'intermedia' FK410 Los Vilos-Illapel,Chile

ちょっと話がややこしくなりましたね^^;。話を南米サボテンに戻しましょう。
やたら種類が多く区別の難しい南米サボテンも、とりあえずフィールドナンバーで管理することによって、
それぞれのコロニーごとの顔の違いをコレクションして楽しめます。
出所さえハッキリしていれば、種名付けが学者さんや業者ごとにまちまちでも正体不明サボにはなりません。

たとえば、エリオシケ属(昔のネオポルテリア)には白翁玉、銀翁玉といったモサモサ刺が素敵な一群があります。
このモサモサには純白のふわふわ毛から、茶色や黒の剛毛、両者の入り交じったモノまで、
産地ごとに色々なタイプがあり、他にも混乱玉とか多彩玉とか名前がついていますが、当然のごとく混乱しています。
いろいろな産地違いを集める場合、和名(学術上の亜種群も)はあまり意味を成しません。なので私は、
産地情報で札立てして育てています。もちろん、産地情報に100%の精密さがあるとは言い切れませんが…。


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           Eriosyce tenebrica FK402 Elqui,Trapiche,Chile

上の写真の株は、私と同じような志向のある某仙友が、南米サボの権威カッターマン氏(Friedrich Kattermann)
と直にかけあって、種を導入して実生したもの。うちに2本あるので、私のところで種をとって繁殖しています。
おそらく親は野生株ですから、3世ということになるのかな。
この株と同じ顔をした植物が、チリの沙漠に身を埋めて、こんな毛むくじゃらの蕾を乾ききった地面から
にゅうっと着きだして、花を咲かせているはず。・・・そんな様子を想像して、ワクワクする訳です。
この手のサボテンには、兜のように白点が濃いのが良タイプ、といった鑑賞上の明確な価値基準がありません。
どのサボテンのどんなところを愛するかは、人それぞれ、その人の想像力次第です。正解はひとつじゃない。

今回、我が家で「多品種少量栽培」中のサボテンたちを、あれこれとオークションに出しました。
ちょっとずつ蒔いた種を、大半は接ぎ木もせず気長に育てたもので、商売だったら成り立たないでしょう。
渋く地味で小さく、将来にわたり品評会入賞の可能性は低そうな子たちですが、求めてくださる方が結構
おられるということは、原種サボテンの風貌を楽しむ方も少なくないんだなあ、と。


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            Eriosyce tenebrica FK402 Elqui,Trapiche,Chile

さてさて、今回はエリオシケの写真をいっぱい並べましたが、南米モノは爬虫類肌の彼らだけではありません。
アンデス東側には、ギムノという多様性の宝庫みたいなサボテンがありますし、駄モノ扱いされている
パロジア(Parodia=Notocactus)やエキノプシス(Echinopsis=Lobivia)もまた然り。
フライレア(Frailea)やレブチア(Rebutia)といった小さな植物たちにも、野の草の魅力たっぷりの種類が
たくさんあります。…そんなこんなで、蒔いてみたい育ててみたい種類は尽きることなく、栽培スペースと
管理能力の壁につきあたって苦悶する日々がこの先も続きそうです。
でも、多くの愛好家がせっせと種を蒔いて、サボテン科数千種のすべてが、この国のどこかの栽培場にある
…もしも、そんなことになれば実に楽しいですよね。

長くなりました。
週末以降、荷造りと発送を頑張らねば…。おことわりの欄に書かせて戴いたとおり、多少お時間を頂戴するかも
知れませんが、なにとぞご寛容のほどを…。






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沙漠植物、栽培、探究。

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