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エリオシケ その3。

    
 コピアポアのブームにともなって、最近ジワリと人気が集まりつつある南米チリ産カクタス。エリオシケです。このブログで取り上げるのは、第1弾第2弾につづいて3回目。エリオシケ属の大半は自生地がコピアポア属とほぼ重なり、チリの海岸沿いにひろがるアタカマ沙漠です。極端に雨が少ない地域に産するものも多く、過酷な環境を生き抜いてきたその姿は、コピアポアとも重なるところが多い。私にとっても、北米高地の難物種とならんで、最も愛着のあるカクタスです。きょうは、今シーズン撮影した写真から3種を紹介したいと思います。




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   Eriosyce taltalensis ssp.paucicostata FR521



 まずはこの属の古典とも言える黒冠丸(Eriosyce taltalensis ssp.paucicostata FR521 Paposo)。青みのある肌と、黒い刺。名前も含めて、コピアポアに通じる味わいの、この属としては大型種。このクローンの自生地は、コピアポア・逆鱗玉(Copiapoa haseltoniana)の原産地でもあるパポソ(Paposo)周辺です。自生地ではコピアポアは集団で生えていてとても目立ちますが、エリオシケは少数の個体が散らばって岩の隙間などでかろうじて生きているので、野生株を見つけるのはとても難しい。コピアポアよりも、ぐっと稀少な植物だと実感します。
 この個体は15年ほど栽培しているもので、古木感も出てきました。栽培は難しくなくて、水をどんどんやればわりと早く育ちます。しかし、エリオシケはコピ同様、瑞々しく元気な株よりも、逆境に堪えやつれた風合いの方が味わいがあります。この株は植え替え5年おき、水やり年5回で暮らしています。




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   Eriosyce aerocarpa = E.napina ssp.aerocarpa  FK63




 続いては、極小型種のアエロカルパ(Eriosyce aerocarpa = E.napina ssp.aerocarpa FK63 Canto de Agua)です。有名種ナピナ(豹頭)の亜種とされることもあり、姿はよく似ていますが、本種の方がより稠密に刺が密生します。錆びた金属のような肌に暗色の刺と実に渋い姿。そこから本体より大きな金属光沢の花が咲くさまは、なかなかのスペクタクルです。地中には地上部よりも大きな塊根があり、これをカットしない方が元気に育ち開花しやすい。根を地上に出すのは好ましくなく(出すとしても極く一部にした方が良い)、深鉢植えが不可欠です。植え付けると、大きな鉢に対して、見えている部分は極く小さい。でも、地中に植物体の大半があるこの種の生態をイメージすれば、アンバランスな鉢姿も楽しめると思います。
 また、このタイプのエリオシケについては、かつての属名テロセファラ(Thelocephala)でいまも流通することがあります。さらにこの種については、分類・名付けに諸説あり、タイプによっては、オディエリの亜種レイチェイ(E.odieri ssp.reichei)だ、という人や、レイチェイ亜種デュリプルパ(E.reichei ssp.duripulpa)だ、などと言う人もいたりします。この個体も、球体が細く疣のピッチと刺が細やかなのでデュリプルパとも呼べそう。
 はやい話、この属の各個体群には色々な人が様々な名前をつけていて、混乱があるということです。よって、種名でなく原産地と採取者に紐付けられたフィールドナンバー(この場合はFK63)を押さえておくことが大切です。ちなみにこのFK63の産地はコピの黒士冠の自生地でもあるジャノス・デ・チャレ国立公園(Llanos de Challe)あたりですね。




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   Eriosyce napina subs. challensis
 


最後はこの属でもっとも魅力的な種のひとつ、チャレンシス(Eriosyce napina subs. challensis)。2005年に記載された、まだ新種の範疇に入るカクタスです。やはりナピナの亜種とされていますが、基本種とは一見して違う顔をしています。密生するアレオレには白い羊毛を貯え、植物体はほぼ真っ白。北米産でエリオシケとは類縁性の乏しい小型種、エピテランサ(Epithelantha)の月世界や小人の帽子と見まちがえるほどです。花はフルーティなイエローで、純白の球体にとても映えて美しい。地中にはやはり大きな塊根が発達します。原産地は上記のアエロカルパと同じ、チャレ公園ですが、より海岸に近い他にほとんど何も生えていないような荒涼とした場所とされています。本種は極めて特徴的な外見なので、呼称の混同などは見られません。
 はじめてこの種の貴重な種子を入手したときは、特異な姿から、さぞや栽培難度も高かろう、とドキドキ播種したのですが、ほかのエリオシケに比べて特段気難しいところはなさそうです。少ない種子数でしたが、無事に開花株を育てることが出来ました。この先は自分のところでも種がとれそうです。ただ、成長はゆっくり。また栽培下では球体がふっくらと盛り上がりやすく、野生株のような、半ば地面に潜り込んだような姿にはなりにくいですね。まだ、種子は割高ですが、みかけたら是非入手して育ててみて貰いたいエリオシケです。










テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

コピアポアの箱庭


コピアポアは、いまやサボテン界でいちばんの人気グループ。
多くの人が、チリ・アタカマの荒涼とした沙漠で生き抜いてきた
野生株の風格ある姿に惹きつけられているようです。
私も長年、山木のコピアポアの荒々しい肌や刺に魅入られ、
自ら輸入して、育ててきました。でも、野生株を育てることには、
いつも罪悪感があり、最近は種からの育成をメインに切り替えて、
欲しい気持ちを満たすようにしています。




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          various Copiapoa species grown from seeds, about7yrs



これは、うちにあるコピアポアの「箱庭」です。
種から育てた何種類かのコピアポアが植えこんであります。
これで7-8年経っています。実生の小苗のときに植え替えて、
そのまま5年くらい放ったらかし。この粗放栽培が、コピアポアの
“らしさ”を引き出すコツのように思えます。




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               Copiapoa columna-alba form Pan de Azúcar
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               Copiapoa cinerea  Mt. Perales form



上は孤竜丸(Copiapoa columna-alba form Pan de Azúcar)。
やっと500円玉くらいのサイズですが、肌の白さは山木に負けない。
同じときに蒔いて、まめに植え替えた同級生は、もっとずっと大きく
育っていますが青々しています。比べるとこの株の方が白く扁平で、
山木の姿に明らかに近い。たくさん水をやれば、適応して早く大きく
なるけれど、自生地での彼らのライフスタイルとはまるで異なるので、
姿も違うものになる、ということなのでしょう。
下は黒王丸(Copiapoa cinerea Mt. Perales form)。
いわゆるマウンテンフォームと呼ばれるタイプで、刺が荒々しく強い。
さらに大きくなるとどんな顔になるのかとても楽しみな株です。




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               Copiapoa humilis ssp. longispina AW91 S of Caldera
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               Copiapoa haseltoniana 'gigantea'  PV2018 Taltal



開花中のフミリス・ロンギスピナ(Copiapoa humilis ssp. longispina)。
基本種より肉質が硬く、硬いタイプのコピの血が入っている印象。
これは鉢の中に大きな塊根を形成している筈です。このタイプの
コピにも、独特の魅力がありますが、輸入球はあまり見かけません。
そして、金刺の美しいギガンテア(Copiapoa haseltoniana 'gigantea' )、
肌は鶯色です。山木も、肌色は真っ白ではなく青みがかっていますが、
孤竜丸と一緒の環境で育てても同じように白くはならないようです。




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市場に流通するサボテンの大半は、いまや専業栽培家が繁殖育成した
ものになっています。しかし、成長遅鈍なコピアポアに関しては、今も
輸入球が幅をきかせています。原産地国が緩くて、大量の山木の採取が
看過されていることもありますが、種から育てるととても時間がかかり、
プロの算盤勘定にはあわなそう。でも、アマチュアの栽培家にとっては、
そこも魅力です。10年かけてそれらしい雰囲気が出て、15~20年で
鉢上げして一本立ち。さらに10年、20年・・・50年もかければ山木に
勝るとも劣らない姿に仕上がるはずです。




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               Copiapoa cinerea  ZJ143 Antofagasta, 15years from seed



そんなに長くは待てないって?いやいや、生きていれば、時間なんて
いつのまにか過ぎるもんです。なにより、頑丈な性質のコピアポアは、
簡単に腐ったり枯れたりしません。
五十年、百年と、しっかり栽培者の人生に同伴してくれるはずです。
その間、ますます美しく、風格溢れる姿に育ってゆく・・・。

最高だと思いませんか。






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エリオシケって奴は。


今回はネタに詰まると毎度やっている花写真まとめです。
種発注を控えたこのシーズン、少しは参考になるかな、などと思いつつ。
去年も並べた南米サボテン、エリオシケ属(Eriosyce)。
かつてはいくつもの属に分かれていたものを統合したので、実に多様な姿の植物群です。



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               E.chilensis ssp.albidiflora RMF 92 Pichidangui,Chile



まずはクリーム色を仄かな紅色が縁どる、水蜜桃のような色合いの大輪から。
チレンシス・アルビディフロラ(E.chilensis ssp.albidiflora RMF 92 Pichidangui,Chile)。
New Cactus lexicon では今のエリオシケ属を旧カテゴリーに準拠して亜属的に取り扱っていますが、
この種は旧ネオポルテリア属(Neoporteria)のグループに入れられています。
基本種のチレンシスも花色こそピンクでネオポル的ですが、花の形や大きさ、質感などがかなり違います。
このアルビディフロラの花はネオポルとは別物。エリオシケ属すべての中で最も上品かつ贅沢な花を
咲かせる植物です。



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               E.heinrichiana FK465 Quebrada Honda, Huasco,in coastal flats



ハインリッヒアーナ(E.heinrichiana FK465 Quebrada Honda, Huasco,in coastal flats)は、
かつての分類ではホリドカクタス(Horridocactus)に入っています。
この種は、球体の大きいもの小さいもの、刺の長いもの短いもの殆どないもの、など産地による
タイプ差が甚だしく、特徴も捉えにくいためか、どうも栽培家からは敬遠されるようです。
写真はカッターマン氏のナンバーがついたタイプで、くすんだ濃色の黄花がなんとも南米ぽい。
球体もそれに似つかわしい渋みで、人気のなさも含めて、天の邪鬼仙人としては愛さずにいられない。



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               E.aspillagae FK197 San Fernando,Hacienda Tanume,Colchagua



アスピラガエ(E.aspillagae FK197 San Fernando,Hacienda Tanume,Colchagua)も、
旧ホリドカクタス系なのですが、艶のある明緑色の肌は、どうもエリオシケ的ではない。
刺も弱々しくて、パラグアイあたりの草っぱらにうまっている弱刺ギムノを思わせます。
ですが、花色の微妙な濁り具合はまさしくエリオシケで、未熟な果物のような甘さを感じる。
そう思うと、退屈な感じの刺姿が、かえって狙いすました技巧のように見えてきたりするのが、
不思議なところです。



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                E.napina ssp.fankhauseri JA75 W of Domeyko,La Serena



続いてはかつての旧テロセファラ属(Thelocephala)から。
ナピナ・フランクハウセリ(E.napina ssp.fankhauseri JA75 W of Domeyko,La Serena)。
基本種の豹頭(ssp.napina)は、古くから日本にありますが、なぜか難物視されてきた面があり、
古い本には接ぎ木された植物が紹介されていることが多い。ごく小型で発達した塊根を持つことが
理由と思われますが、実際は育てやすい植物。種から数年で風格ある開花株に育ってくれます。
写真の個体はさらに小型なタイプのようで、球体は2cmほど。植物は成長期に吸水すると、
なんとか頭が土の上に出てきますが、休眠期は完全に埋没。球根植物のような生態です。



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               E.taltalensis ssp.pilispina FK514 South of Chanaral         



最後はピリスピナ(E.taltalensis ssp.pilispina FK514 South of Chanaral)。
タルタルエンシスは、かつてのホリドカクタスの代表種、多留多留玉です。産地タルタルが名の由来。
刺がとても美しいサボテンですが、普通は黒っぽい色。変異の幅が広く、色々な異学名がついています。
写真の植物は、象牙色の巻き刺が大変美しく、小さいうちから開花する点も魅力的なので紹介しました。
ピリスピナはNew Cactus lexiconではカルデラナ(E.calderana)として扱われていますが、このうち
白色の曲刺を持ち、各所でプルケラ(E.'pulchella')として紹介されてきたタイプに近いものと思われます。
大きくなるとこの象牙色の刺を巻きつけるように展開するようなので、これからも楽しみな植物です。





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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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