春を告げるサボテン(ツルビニカルプス)

           
年があけて日が長くなりはじめ、ツルビニカルプスの花が咲くようになると、春が近づいてきたことを実感します。
ツルビニは、小さいのに風格があるし、花も美しい。場所もとらず、刺も痛くない。
性質も温和で親密な気持ちで向き合える植物です。




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                  Turbinicarpus valdezianus  P267 Saltillo,Coahuila




バラ丸(Turbinicarpus valdezianus)は、そもそも小さいツルビニのなかでも最も小さい種で、
球径は1~2cmくらいで、高さも数センチ。小指ほどのボディが鮮やかなピンクの冠で飾られる花時は最高です。
接ぎ木したりして大群生をつくる人もいますが、私の場合はあえて人間のスケール感に引き寄せることはせず、
本来のサイズ感で楽しんでいます。小さいサボテンにはよくあるパターンで、地中には、地上部分と同じかそれ以上の
塊根が発達します。けれど柔らかい根なので残念ながら地上に出すのには向いていません。また、太く長い根を
大事にする必要があるので、小さく浅い鉢では納まりが悪い。よって、鉢と植物(地上部)のバランスをとるためにも、
何本か寄せ植えすることになります。もしかしたら、石なんかを配しても面白いかも。




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                    Turbinicarpus hoferi  Aramberri, Nuevo León




菊水?と思った人もいるかも知れません。じっさいこの種が見つかった当初は、菊水の亜種ではないかとする人もいたくらい。
ホフェリ(Turbinicarpus hoferi)は、菊水ほどではありませんが、生育も遅く渋いあじわいのツルビニです。
もう少し大きくなると、同じツルビニの姣麗丸(Turbinicarpus lophophoroides)と似た雰囲気になってきます。
種も菊水(Strombocactus disciformis)とは異なり、実際には違う種であることは明らかですが、ストロンボカクタスじたい、
ツルビニと属間交雑が成り立つ近しい関係にあるので、他人のそら似とはちょっと違うかも知れません。
このホフェリ、導入された当時はとても人気がありましたが、最近はあまり見なくなりました。発見当初に自生地が荒らされ、
稀少になっているそうなので、栽培個体も種の保全をはかっていきたいところです。




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              Turbinicarpus schmiedickeanus ssp.andersonii Guadalcazar SLP




三つめは、これも比較的あたらしい種、アンダーソニー(Turbinicarpus schmiedickeanus ssp.andersonii)。
といっても、すでに導入から二十年以上経っているかな。いまでもメジャーなアロンソイとほぼ同時期に発見されて、
一時はこちらの方が稀少種として人気があったかも。導入当初は、みつけたイタリアのサボテン屋さんの名前から
パナロットイ(T.schmiedickeanus ssp panarottoi)と呼ばれていました。私は当時、イタリアのサボテン雑誌に
寄稿した返礼にその人由来の種をもらいました。なので、いまもうちの株にはパナロットイの名札が立っています。
基本種の昇竜丸に比べて、扁平な球体、端整な刺、ストライプの入る花。悪くないのですが、群生しにくいせいか、
徐々にマイナー種なっていったようです。

小さくても風格あるツルビニカルプス。都会の園芸にはぴったりだと思いますが、長くつきあっていて感じるのは、
寿命が比較的短いのではないか、ということ。種から2、3年で開花しますが、5年目くらいから大きさが変わらなく
なり、15年くらいするとなんとなく勢いがなくなってくる(老化?)。こうした傾向は、小型のサボテン全般にあります。
ツルビニは、花もよく咲き実生も容易なので、世代交代をはかるのがよいと思います。








テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

三つの牡丹の物語。

     
毎年、いまの時期になるとアリオカルプスの花の写真を並べるのですが、今年は特に思い入れのある三つの株について、
その物語を、花を眺めながらつらつら書いてみます。




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               Ariocarpus kotschoubeyanus ssp.albiflorus old "mother plant"



まずは白花姫牡丹(Ariocarpus kotschoubeyanus ssp.albiflorus)。
かつて沢山輸入されていたので、国内にも子孫が数多く残っていると思いきや、いまや稀少になりつつある模様。
純白というより、ベージュがかった極々薄いピンク色で、色の混じりもなく、ほかのアリオカルプスにはない花色です。




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兄貴分で大型の黒牡丹(Ariocarpus kotschoubeyanus ssp.kotschoubeyanus)は濃い紫ピンクの花を咲かせますが、
ふつうの姫牡丹(Ariocarpus kotschoubeyanus ssp.macdowelli)はそれより薄いピンク花が多く、コロニーによっては
白とピンクが入り混じるタイプもあります。
白花姫牡丹の自生地はメキシコ・タマウリパス州のツーラ(Tula Tamaulipas)近郊で、干上がった田んぼのような泥地に
埋まるように生えています。

この株ですが、今から二十年以上まえに購入した輸入株で、姫牡丹としては限界といえる径10cmに達しています。
そのせいか、花に隠れて見えませんが成長点が馬蹄形に変形して不思議な姿に。同じときに買ったもう1本とともに、
私のところの種親として、たくさん子孫を残しています。去年アップした株もそうです。
じゅうぶん務めは果たしたとはいえ、まだまだ長生きして欲しいと思っています。




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          Ariocarpus fissuratus near Black Gap WMA Bresster co. TX over 10 yrs from seed



つづいては、とても大事にしている亀甲牡丹(Ariocarpus fissuratus)。
実生して十年あまり、数年前から開花するようになった、径10cmにも満たない若苗ですが、ご覧のように
丸みのある大きめの疣をゆったりと重ねていくハンサムな牡丹です。この株、わずか十数粒の種を蒔いて、
大事に大事に育ててきたものなんです。




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テキサスには多くのサボテンを見ることが出来るので有名なビッグベンド公園(Big Bend NP)がありますが、その東側に
ブラックギャップ狩猟区(BlackGap WMA)があります。私は公園を訪れたあと、東に抜けるためブラックギャップ付近の
ダート道を走行していました。と、はねた石が車の底にあたりガツンと大きな音がしました。あちゃー、やっちまったかと思い、
停車して車を調べると、幸い大丈夫そう。あたりは平原でサボテンはありそうもないのですが、ふと見ると、路肩の車が
走るようなところに牡丹が埋まっています。テキサスでは数多くの亀甲牡丹を見てきましたが、あたりに密集していた株は
どれも疣が丸く、大きく、特異な個体群でした。
園芸的に選抜育種した大疣亀甲はたくさんありますが、これは人の手が加わっていない野生の大疣亀甲牡丹です。
種から十数年をかけて育成したものが、記憶に焼きつけた親株の姿にようやく近づいてきて、感無量の花見ですが、
あの風格を再現するまでにはさらに十年ほど待つ必要がありそうです。




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              Ariocarpus retusus 'Zokakubotan' LH453 Las Tablas SLP



最後は「象角牡丹(Ariocarpus retusus 'Zokakubotan'LH453)」。これがたぶん、そう呼ぶべき植物だと思っています。
岩牡丹の一型で、角張った直線的な疣には微妙な縁どりがあり、特徴的なのは尖端に目立つ刺座(アレオーレ)があること。
有名な象牙牡丹にも刺座がありますが、もっとふっくらした姿で、混同することはありません。花は純白です。




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かつて、バブル期のちょっと前くらい、日本には大量のアリオカルプス野生株が輸入されてきました。様々な地域から、
個性的な顔の個体群が導入され、それぞれに「象牙牡丹」「青磁牡丹」などと愛称が与えられました。
それらの株はいったい何処から来たのか?色々な産地から導入された種を蒔いてみて、たぶん象角牡丹で「当たり」だと
思っているのが写真の株です。フィールドナンバー LH453 はサンルイスポトシ州(SLP)のLas Tablas というエリアの産。
この地名で岩牡丹を検索すると、出てくる画像の牡丹は、だいたいこの顔です。
「象角牡丹」は、当時名づけられた様々な牡丹のなかでも比較的地味な存在でしたから、いまなお種として維持している
趣味家は多くないでしょう。種から十年以上育てて、次第にこの顔が立ちあがってきたときには、旧友に再会したような
感慨がありましたよ。・・・といって、当時は買えなかったんだけど^^;。




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ここに載せきれない写真など、アップしています。










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ガラスの刺(Escobaria)。



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ぱっと見ただけでは、つかみどころがなく地味で目立たない植物に映るかも知れません。
けれど、こうして目を近づけてみれば、目を射るような真っ白な刺の美しさを感じてもらえると思います。
微視的な美しさを愛で、わずかな差異を見出すことを楽しむ。
エスコバリア(Escobaria)は、そんなサボテンです。




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                Escobaria albicolumnaria KY02-27 W Lajitas TX



エスコバリア・アルビコルムナリア(Escobaria albicolumnaria KY02-27 W Lajitas TX)。
この属にはそういう種類が多いのですが、アルビコルムナリアには、どうやら和名がない。
なので、昔の図鑑などにも名前が挙がっていません。栽培している人もほとんどなさそうです。
テキサスの限られたエリアにしか生えていないので、過去に導入されたことがないのかも知れません。
しかし、刺いろの濁りのない白さ、触れたら手が切れそうな、ガラスのような輝きは、属中随一です。
自生地では、石灰岩の隙間のようなところに生えていて、大きいものは高さ30cm以上ありました。
種からの栽培は容易で、5-6年でこのサイズまで育ちます。ただ、長ずると丈が伸びていくので、
このくらいのサイズが見ごろでしょうか。




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               Escobaria duncanii KY02352 Brewster co.TX



アメリカ産の白系エスコバリアには、上のアルビコルムナリアや、刺が荒々しく下部の脱落痕が松かさ状になる
松毬玉(Escobaria tuberculosa)の系統がありますが、これらと一線を画すのが、
ダンカニー(Escobaria duncanii KY02352 Brewster co.TX)の仲間です。
上の二系統の花色がピンクなのに対し、ダンカニーの系統は緑~ベージュがかった複雑な色あいで、柱頭は緑。
あまり痛くない細くて柔らかな刺が密生します。雪華殿という和名がついているチャッフィ(E.chaffeyi)も近縁種です。
自生地では、上の松毬玉やアルビコルムナリアが数多く生えていて見つけやすいのに対し、とても数が少ない。
写真の株の親株は、たくさんのアルビコルムナリアがわんさと生えている岩山に、数本だけ生えていました。
それも遠目では区別がつかない。人間には一見同じように見える二種のサボテンですが、中間的個体はなく、
両者の生活環は交わることがないようです。




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            Escobaria .vivipara ssp.desertii KY9803 Washington co.UT




最後は、この属では例外的な有名種、沙漠丸(E.vivipara ssp.desertii KY9803 Washington co.UT)。
ヴィヴィパラ・グループ(北極丸)はカナダからメキシコまで、極めて広い範囲に自生していますが、
それだけにタイプ差がいろいろあります。なかでアルバーソニー(E.vivipara ssp.albersonii)と、
この沙漠丸はちょっと別格。どちらも、暑熱の著しい乾ききった岩山に生えているため、球体が見えないくらい
刺が密生して迫力があります。北極丸の仲間はみなピンク花ですが、沙漠丸のみが緑がかった黄花を
咲かせます。写真の株の兄弟苗(同じ果実からの実生)では、もっとピンクに近い色の個体も出ました。
栽培は難しく、過灌水では根腐りしやすい。どうしても締め気味の栽培になるため、なかなか大きくならない。
この苗でも10年近く経っています。成長期はこんなふうに膨らみますが、夏場はみっしり刺がつまった状態となり、
真っ白に輝く。こうしてみると、アルビコルムナリアとも似ていますね。




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エスコバリアの良さを知ってもらいたくて、初夏のまっすぐな陽射しのもとで写真を撮りました。
輝くガラスのような刺、その美しさの一端でも感じていただければ幸いです。






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