脱帽。

         
我が家の一点モノ、きょうは番外編?です。



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                    Melocactus bahiensis ssp.bahiensis about 20years from seed



メロカクタス・涼雲(Melocactus bahiensis ssp.bahiensis )の古株。ハウスの棚の真ん中に
所在なげに置かれているのは、このあたりがいちばん温度が保たれるからです。
メロのなかでは寒さに強い部類ですが、かれこれ20年ちかく育てている株なので、大事にされているという訳。

でも、ここだと絵にならないから、外に連れ出してみました。



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花座がここまでデカいと、なかなか貫禄があります。
メロは最近あまり人気がありませんが、一年中カラフルな花座を眺めることが出来るのは捨てがたい魅力。
この涼雲は、もともと30年以上前に、某Y園から購入した輸入株らしき苗がルーツです。
すでに物故したその株に稔った種を実生して育てたものです。メロゆえに自家受粉で、雑種ではないと思いますが、
そもそも元親には産地データはおろか学名もついておらず、ただ「涼雲」と記された札だけが立っていました。
念のため検索してみると、bahiensis はおおむねこの株と似たような顔をしていますね。

この株、花座が出始めたのはすでに十数年まえのことで、いわゆる“トルコ帽”状に大きく高く伸びてきた。
しかし、2-3年前からは途中にくびれが生じ、腰折れというか、段が出来てしまいました。
でも、それもまた古株の風情、などと思っていたわけです。ところが、ハウスから運び出してしげしげ眺めると、
ある異変に気がつきました。

花座の上部だけが、グラグラと揺れているではないか! 

ん?まてよ。



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衝撃の事実でした。
なんと、花座の上半分は、ただ乗っかっているだけ、だったのです。
で、ポッコリと上半分を外してみると、かつてと同じ、くびれのない花座の姿に戻りました。
現れた新しい花座には、ちゃんと上面があり、ここから花が咲き実もなるようです。
で、外した上半分はなんつうか、赤い座布団?饅頭?テニスボール?
裏面は巾着を裏返したみたいな様子で、こちらもかつて下半分と繋がっていた名残りとか、
切断面ふうの痕跡などはない。実に不思議です。



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地べたに転がせば、赤いテニスボールかなにかのようで、どう考えてサボテンの一部には見えません。
手に持った感じもテニスボール風ですが、もっと軽い。花座はそこから出雷開花、結実するわけで、
ただの綿毛の塊ではないはず・・・ですが、この上半分については、綿毛の塊にしか見えません。
一方で、これだけを鉢に置いてみたりなんかすると、赤刺が密生したマミラリアみたいにも思えてきます。
いつから分離独立したのか不明ですが、まったく色も褪せていないので、これはこれで綺麗です。
本当は、切断して中の構造が見てみたいとも思うのですが、なんだか勿体なくて、結局元どおりに
二段重ねにしてハウスに戻すことに・・・。



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こうしたことが、メロカクタスではしばしば起こるのか?調べてみても類例が見つかりませんでしたが、
花座が子吹きしたり、分頭したりするのは時折り目にします。しかし、こんなやり口もあったとは。
まさに脱帽の技でした。





我が家の一点モノ③菊水


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                 Strombocactus disciformis  imported more than 30 years ago


菊水(Strombocactus disciformis)です。もう30年あまり我が家で過ごしている、古い古い原産地球。
まだ少年だった私が、逗子の高台にあった平尾博さんの「シャボテン社」を訪ねたおりに求めたものです。
「シャボテン社」からは、それ以前にも通信販売で何度か植物を購入していましたが、実際に圃場を訪ねたのは
この時が初めてでした。急な階段をのぼり、蒸し暑い夏のガラス温室(当時はビニルハウスはまだ主流では
ありませんでした)に入りました。「ゆっくり見て行って下さい」と言われて、何だかかえって緊張したのを覚えています。
そこには鮮やかな刺、立派な球体の輸入シャボテンがずらり並んでいて、目に飛び込んでくる植物すべてが
キラキラ輝いて見えました。その中で、どうしてこれを選んだのか。ほかにどんな種類を求めたのか・・・。
ともかく、この日連れ帰った植物で今も手元に残っているのはこの菊水だけです。丈夫なんですね。



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硬く、乾いた風貌。頑丈でもの静かな植物です。
生成りのハンカチみたいな色の花が毎年たくさん咲きます。ゆっくりではありますが、初夏の頃には新刺をあげて
成長もします。来たときは学名どおり円盤のよう平べったく、実に端正な姿でした。将来、見事な大球になるかな、
それとも綴化するかな、と期待しましたが、30年を経てその大きさはほとんど変わりません。
かわりに高さが少し伸びました。正確に言うと、新しく育った分だけ、過去の成長部分が球体の下の方に
たくし込まれるような具合になって、僅かずつ高さが増して、きのこのような不思議な形になりました。



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                    Plant on the right is grown from seed IMG_8061S.jpg



隣にならべたもうひとつの菊水は、先のシャボテン社菊水から20年ほど遅れてやって来た実生の株です。
ちょうど花が咲いていたので撮ってみました。古い方の株も、ほぼ同じ花を咲かせます。両者のタイプは極く近い。
後から来た株は最初3cmくらいしかありませんでしたが、扁平なまま毎年直径を増やし今では追い抜いた様子です。
してみると、古いキノコ型菊水の径がまるで増えないのは、育て方というよりこの個体の個性なんでしょうね。
年月を重ねたぶんだけ、貫禄を増すサボテンばかりではないのですが、このキノコ菊水には、扁平でハンサムな
後輩を寄せ付けない風格がある気がするのは、私の思い込みでしょうか。



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                      3 years old seedling of S.disciformis


この菊水、インターネットで調べれば自生地の写真がたくさん出てきますが、メキシコ・イタルゴ州などの、
粘土の崖みたいな場所にへばりつくように生えています。硬質で乾いた外見とは裏腹に意外に水は好きです。
ただし、扁平さを維持するには強い光線と乾き気味の栽培が必要。
特筆すべきは粉末のように微細な種子で、それゆえ昔は実生が不可能みたいに言われており、私も長年にわたり
種が出来ても放置していました。ようやっと実生にチャレンジしたのが数年前のことです。
ピートモスと微粒赤玉(芝目土)の混合用土に播種し、水を切らさないように数年間辛抱します。
写真の実生苗はまだ4-5mm程度しかありませんが、実生3年目の今年ようやく植え替えサイズに達しました。



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こちらはその同じ実生苗をキリンウチワに接いでみたもの。上手な人は播種数ヶ月の1-2mmの苗を接ぐそうですが、
私の技量では3年経ってようやくです。でも、それから数ヶ月で開花しました。これはこれでかわいらしい。
菊水と良く似た環境に生える花籠(Aztekium ritteri)や南米の松露玉(Blossfeldia liliputana)なども
同様な微細種子ですが、いずれも自生地の崖面にうまいことくっつくのに適しているのでしょう。
細かい土に蒔き、しばらく辛抱、それから実生接ぎ、というやり方なら誰でも種からの栽培が楽しめそうです。



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                  S.disciformis ssp. esperanza × Turbinicarpus alonsoi


長らく一属一種だった菊水ですが、最近になって赤花菊水(S.disciformis ssp. esperanza)が記載されました。
これは大きくなりにくい性質があるようですが、姿は菊水そのもので、濃いピンク色の花を咲かせます。
同じ場所にツルビニカクタスのアロンソイ(Turbinicarpus alonsoi)が生えており、よく似た花です。
ちなみにこの2種は容易に交雑可能で、その種子からは見かけ上ほぼ赤花菊水に見える株が育ちます。
上の写真がその交配種で、さる名人からの頂き物。肌に微妙なシワが入るところ以外、目立った違いはありません。
ほかにも、最近の自生地探訪者が、刺の長いタイプや小型のタイプなど、産地ごとに色々な名前をつけて
流通させていますが、赤花菊水ほど顕著な違いがあるわけではなさそうです。
ともあれ、我が家の菊水は、ある意味かわりばえしない、いちばん古典的なタイプだと思います。



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30年前といえば、ずいぶんな昔。いったい自分は日々何を考え、どんな目つきで世間を見回して暮らしていたのか。
あの頃、一緒にいた人や眺めていた風景は、遠い彼方へと過ぎ去って朧ろな記憶の片らが残るばかりです。
変わらない姿のこの菊水には、たぶん全然違うペースで時が流れていたんでしょう。この先さらに30年が過ぎても、
やっぱり大きくもならず、立派にもならず、春がくれば地味な花をほっこり咲かせるだけなのかな。




テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

我が家の一点モノ②綾波

ことし最初のネタということで、何となくお正月っぽい植物・・・と頭の引き出しを探ったら、
なぜか綾波(Echinocactus texensis=Homalocephala texensis )が思い浮かびました。
渋い色あいの硬い刺や桃色底紅の大輪花、それに真っ赤な実などが、この国の春を迎えるにふさわしいような・・・。
いささか牽強付会ではありますが・・・^^;。



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                  Echinocactus texensis=Homalocephala texensis


綾波といえば、太平丸や緋冠竜などと並んで、和式の優品刺サボの代表格。栽培容易なこともあって、
育種も進んでいます。「王綾波」「剣峯」「武蔵」・・・などなど、顕著な刺姿を持つ株には豪壮な園芸名も。
もちろん、ご承知のとおり私の栽培場にはそのような血統書つきの優品銘品はありません。
上の写真をご覧戴いてもわかるとおり、今回ご紹介する“一点モノ”も、実に素朴な、ベーシックな姿の綾波です。
なのに、ことさらの愛着を抱く理由・・・実はこの綾波も、優品銘品とは別の意味で'血統書つき'なのです。



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                Hwy near the Pecos/Terrell border,TX.


今を遡ること十数年の昔。ところはアメリカ・テキサス州南西部、ペコス郡とテレル郡の境界付近。
めずらしく霧雨混じりのハイウエイをちんたら走っていると、どうしようもない眠気に襲われてしまいました。
仕方なく、手近なパーキングロットに車を入れ、少し身体をのばして外の冷気にあたることに。
とはいえ、あたりは漠々たる平原で、サボテンが好むような岩山もありません。
まあいいや、トイレでも済ませとこ・・・と、ブッシュまじりの土漠に足を踏み入れたとたん。



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                plant on the left side of above pictureW-Sanderson0002S.jpg
                Echinocactus texensis in habitat Pecos/Terrel border TX.


野生の綾波とは、初めての出会いでした。まるで予想していませんでしたが、たしかに其処は分布域です。
見れば、平原にポツンポツンと何株かが生えており、ホースクリップラー(Horse Crippler)の異名どおり、
ほぼ地面に埋まりながら、太く強い中刺を突き上げています。お馬さんもこいつを踏んづけたらただでは済むまい。
それにしても、こんな乾いた田圃みたいな泥の平原を好むとは実に変わったサボテンです。栽培し易い理由も、
そのあたりにあるのかも知れません。綾波は分布範囲も広く、タイプ差も色々ありますが、このコロニーは
どんな個性の集団なのでしょうか。



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これは、この場所で見た最も大きな個体。直径20cmくらいあったでしょうか。いちばん特徴が出ていた株です。
肌色はくすんだ深い緑色。端然とした硬そうな刺も濃褐色。刺幅が比較的広く迫力のある顔をしています。
全体に色味の乏しいサボテンですが、そのぶん、貫禄、風格はじゅうぶん。男っぽい感じ。
もしもこいつが喋るとしたら、タバコ焼けしたバリトンに違いなく、ちょっと怒らせたくないタイプです。
この写真をよく見ていただくと分かると思うのですが、頂部に花殻というか果実のカスみたいなものがあり、
そこに数粒の種子が残されていました。ほんとうに、片手に足りないくらいの数でしたが、実に幸運でした。



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                 Echinocactus texensis grown from seed, over10years


無事に育ったのは、たったの1本。発芽したのも、1本だけでした。
冒頭の花の咲いている写真は、同じ株を4、5年前に写したものです。さすが丈夫な綾波だけあって、
ここまでトラブルらしいトラブルもなく順調に径を増やし、刺もなかなか立派になってきました。
ペディオだスクレロだ、といった難物サボテンではこうはいかない。せっかく種を蒔いても、
なかなか開花サイズまで育ってくれません。この綾波は、あのとき見た株のサイズにこそ届いていませんが、
既に径15cmほど。立派な親株になりました。



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どんなもんでしょうか。割り箸トゲ、割れトゲ、狂いトゲ・・・と、園芸的に選り抜かれた改良種を見慣れた目には
凡庸に映るかも知れないけれど、人の手が加えられていない純種としてはなかなかだと思うんですが・・・。
元親になかった特徴としては、トゲのねじれがあります。大きくなるに従い、トゲがあばれ具合になってきました。
あのコロニーをもっと見まわれば、こうした刺の個体があったのか、それとも栽培環境によるものなのか、
わかりませんが、鑑賞上は悪くない個性です。とにかく、きかん気で頑丈そうなところが気に入っています。



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惜しむらくはこの株、兄弟がテキサスの荒野にしか存在しないために、種を採って純種の綾波と残そうにも、
相方がいません。まさに“一点モノ”、一代限りのサボテンなのです。


ところで、今年は拙ブログの更新、ベース隔週+αにするつもりです。去年中頃からビンボー暇なし状況がいっそう
加速してしまい、内容がこれ以上お粗末にならないよう、更新頻度を若干落とそうと思う次第・・・。
そんな訳ではありますが、今後ともなるべくたくさんの面白い情報、楽しい写真などなどご紹介していくつもりですので、
お見限りなくおつきあい下さいますよう、お願いいたします!



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