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一点モノ⑪エリオシケ五百津玉



 南米チリ原産のカクタスとして、コピアポア黒王丸と双璧をなすのが、五百津玉(Eriosyce aurata 'ihotzkyanae')です。ガッシリとした大柄のボディを漆黒の太刺で武装した姿は風格たっぷりで、多くのマニアを魅了してきました。しかし、栽培が難しいため、有名な割に接ぎ木苗以外を見かけることは少ないもの。かつてはコピアポアや近縁の極光丸(極晃丸)グループの各種とともに、かなりの数の原産地球が入っていましたが、大半は活着することなく消え、いま残っている山木はほぼ皆無ではないでしょうか。
 写真の五百津玉は、メサガーデンの種子を蒔いて育てたもので、“M370.847 NW Ovalle Coastal region”(オヴァーエ南西の海岸地帯)というデータがついています。コピアポアなどの生えるエリアより、少し南になりますね。種子から20年ほどかけて、直径15cmくらいに到達しました。接ぎ木をしていない個体としてはかなり大きい部類だと思いますが、まだ開花はしていません。このサイズで生き残っているのは、うちでもこの株だけ、まさに一点モノなのです。




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  Eriosyce aurata 'ihotzkyanae' M370.847 NW Ovalle Coastal region



 五百津丸や極光丸の栽培のどこが難しいかというと、大きく育つにつれて、根の再生(発根)が極めて悪くなるところにあります。私もかつて何本かの山木を手にしましたが、根が育たず活着しませんでした。同じときに入れたコピアポアがいまも元気であることを考えてもかなりの気難しさです。山木がだめなら、ということで種子から育ててみました。新鮮な種子はよく発芽しますし、最初の5年ほど、500円玉サイズくらいまでは割と順調に育ちます。ただ、このあたりから根の再生が悪くなってきて、植え替えするたびに根が張らずに枯れる株が出てくるのです。対策としては、できるだけ植え替えをしない。土が固まるなどして植え替えるときも、根をなるべく傷つけないようにする。時機は新刺が出始めた頃に限る、といったところでしょうか。とても消極的な栽培です。
 五百津や極光の根は、いわゆる塊根にはなりませんが、古くなると3ミリくらいの太さになって硬く木質化します。木質化した部分は吸水せず、先端の毛根のある部分だけで吸水します。この部分が傷つくと、木質化した部分からは新根が出にくいため、やがて枯れてしまうことが多い。万一、ネジラミなどがついたら、ジ・エンドです。一方で、袖が浦やキリン団扇などに接ぎ木すると旺盛に育つので、台木を残してカットし(いわゆる台降ろし)、台木の根で育てるやり方が普及しています。この方法でも、見た目はあまり変わらないので、手軽に育てるなら台降ろしが良いでしょう。




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  grown from seed, 20year on its own root.
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 かつてエリオシケ属は、この五百津玉を含む極光丸(Eriosyce aurata 'ceratistes')系統の大型種のみのグループでした。極光グループには、刺の太さや数、色合いなどで色々なタイプが存在し、牙のような黒刺が魅力的な五百津玉は一番人気でした。他に美しくて人気があったのが、麦色の細刺を密生するサンディロン(Eriosyce aurata 'sandillon')、別属にされていたこともあるローデンティオフィラ(Eriosyce rodentiophila)などです。産地ごとに微妙に顔が違うので、いろいろな人が勝手に名前をつけたために、認められていない名前が両手に余るほどあるのですが、それらはいまはまとめられて、アウラータとローデンティオフィラの二つだけになっています。その結果、馴染み深い五百津玉の名も分類学的には消滅した形です。
 また、同じ時期に、チリ産カクタスの多くの属、たとえばネオポルテリア(Neoporteria)、ホリドカクタス(Horridocactus)、ネオチレニア(Neochilenia)、テロセファラ(Thelocephala)などが、エリオシケ属に併合されました。このため、エリオシケ属には、樽のように巨大に育つ極光丸系の種から、親指サイズの塊根種まで、実に多様な顔ぶれが揃うことになりました。しかし、エリオシケと言えば、いまもこの五百津や極光のことだと思っているマニアも多くいます。




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 さて、我が家の一点モノの五百津玉。ご覧のように植え替えを当面しないですむように、大きめの鉢に植えこんでいます。植え込みで、センターが出ていないのは、地中で曲がり、枝分かれした硬い根を傷めないため。成長期は早春~初夏。気が向くと初冬にも動くことがありますが、あとはほぼ寝ています。今年も3月中ごろから美しい新刺を伸ばしましたが、もう休眠入りしています。刺の出てこない時期は水をやりません。このまま、開花してくれる日を目標に、焦らず向き合っていくつもりです。









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ジャンル : 趣味・実用

一点モノ⑩光琳玉・ホリディスピナム (KK715)


 
 うちにある最大級のギムノ、光琳玉(Gymnocalycium cardenasianum 'horridispinum' KK715)です。球径が18㎝くらいで高さが25㎝ほどあります。光琳としてはかなり大きいと思われる。ペルーの業者、Karel Knize氏から98年に輸入したもので、もう二十年以上作っています。この間、いちども調子を崩すこともなく、姿が乱れることもなく育ってきました。サボテンは古くなると、なんとなく動きが鈍り、老いた風情が出てくるのですが、この株はまるで衰え知らず。毎年新しい刺を突き上げ、夏じゅう断続的に咲き続けています。株が大きいので目立ちませんが、刺はかなり太い。国内で選抜育種されたものと比べても太いです。ただ、球体に沿って優美なカーブを描く刺ではなく、ランダムに振りかざすよう感じで、ちょっとアルマツスに近い印象です。




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  Gymnocalycium cardenasianum 'horridispinum' KK715 old imported plant



 当時、KKと呼ばれていたKnize氏は、南米カクタスでは随一の採集人にしてシッパーといった存在で、業者向けの卸だけなく、個人相手の少量の取引でも、しっかりCITESを取得して送ってくれる人でした。私は当時、主にコピアポアを彼から買っていたのですが、このときは、“すごく刺の強い新しい種類の光琳をみつけたので買わないか?”と言われて、ためしに1本だけ入れてみたもの。インボイスには、『Gymnocalycium cardenasianum var.horridispinum KK715』とありました。しかし、ホリデスピナムという正式な記載はなく、当然裸名扱いです。産地はCarrizal,Bolivia とありましたが、リッターが1953年に記載した光琳玉の基準産地もCarrizalです。まあ、典型的な光琳玉のなかで、刺が強めの個体群、といったところですね。花もふつうの光琳の花です。




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 さて、20年も経てば、世の中は変わります。Karel Knize氏は既に亡くなり、今は娘さんが仕事を継いでいますが、小売りの取引はしないとのこと。世界的なカクタスブームで山木もかなり動いていますが、業者も売れるものだけを大量に取り扱う、というスタイルになっているようです。父Knize氏は、こちらがリクエストした植物を探しに行ってくれるようなところもあって、私がオロヤ、オロヤ、と騒いでいると、次の機会にはオロヤで最高なのはこれなんだ、と私が力説していた暮雲閣(Oroya borchersii)がリストに載っていたり。なんていうか、商売に趣味の要素が混じっているところが楽しかった。一方で、何を頼んでもやたら時間がかかり、送金してから1年以内に植物が届けば良いほうで、3年近く待ったこともあります。本人が山を歩く人なので、当然植物には詳しくて思い入れもあり、この光琳に限らず独自の名前を色々なサボテンにつけて出荷しました。それにラベルミスも多かった。いま世界で栽培されているコピアポアの名称が混乱しているのは、彼にもかなり原因があると思います。




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 そんな人なので植物談義も大好きで、お互い下手な英語でFAXやメールのやりとりをしました。仲良くなると頼んでもいないものを送ってきてくれることもあって、まだほとんど出回っていないヤビア(Yavia cryptcarpa)や、ピグマエオ・ビーブリー(Pygmaeocereus bieblii)が届いた時はほんとうにびっくり。お礼を伝えると、どーだ?嬉しいだろ、まだこれはまだ売りに出してないよ、と得意気な返信が返ってきました。彼にはコピアポアのソラリス(Copiapoa solaris)を送ってもらう約束もしていたのですが、なんど催促しても、“手ごろな良い株がない。cinereaならいくらでもあるが、solarisはvery rare、もう少し待て”、というばかり。その後、自分でソラリスの自生地に行ってみてわかりました。この種は個体数が激減していて、採取する気持ちにはなれなかったのかなと。




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 話が逸れてしまいましたが、現在うちにあるワイルドのギムノは、これともう1本、別ルートで買った光琳の2本だけ。もうひとつの方の産地もCarrizalとのことなので、まあ雑種にならない範囲の子孫は残せています。同じ頃に手に入れた天平は残っていないので、やはり光琳のほうが育てやすいのかと思います。しかしこの個体も既に限界サイズに近いと思います。この先、いつまで壮健な姿を保ってくえるのか。そうそう、いまどき、光琳ホリディスピナム、なんて名前を使う人はいませんが、私の栽培場では、Knize氏に敬意を表して、Gymnocalycium cardenasianum var.horridispinum n.n. KK715と札に書いてあります。









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一点モノ⑨パキポディウム・バロニー・バロニー

  
 我が家の一点モノ、今回はパキポディウム属で唯一の赤花種、バロニーです。この一週間、ちょうど満開を迎えて梅雨空に花をそえてくれました。バロニー種には、2つの亜種が記載されていて、ひとつは真ん丸な塊茎で人気があるウィンゾリー(Pachypodium baronii ssp.windsorii)、そしてもうひとつがこちらのバロニー(Pachypodium baronii ssp.baronii)で、ウィンゾリーとの対比で「バロニー・バロニー」とも呼ばれる植物です。現在、日本で流通しているものは「ウィンゾリー」とラベリングされたものがほとんどで、このバロニー・バロニーと呼ばれるタイプは稀少なようです。うちにも、ウィンゾリーは何本かありますが、バロニー・バロニーの成株はこれだけ。ぱっと見てわかる両者の違いは、ウィンゾリーの塊茎がボールのように丸く肥大するのに対し、バロニーはバット状というか、棍棒状というか、そういった感じに育つことです。




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   Pachypodium baronii ssp.baronii  in bloom 




 どちらのタイプも、マダガスカル北部の限られたエリアにのみ分布していますが、とくにウィンゾリーの自生地は長らく、その名の由来でもあるアンツィラナナ州(Antsiranana)の「ウインザー砦(Windsor Castle)」の岩山、ただ一か所しか知られていませんでした。現在、この個体群は採取によって絶滅したか、それに近い状態と報告されています。「ウィンゾリー」の自生地は、その後今世紀に入って2か所、新たに見つかりましたが、こちらも個体数は多くないとのこと。一方バロニー・バロニーの方は、もう少し自生範囲が広いようです。




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   Pachypodium baronii ssp.baronii grown over 25 years
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   Upper part grown outdoors, interval between the spines is narrow



 さて、この株ですが、実は四半世紀ほど育てている輸入球で、おそらくは山木です。うちに来たときは、太めのマジックペンくらいのサイズで、根際がねじ曲がり土がこびりついた、お世辞にも美しい姿の植物ではありませんでした。いま、根元から先端までの高さは1m弱。基部の太さは15cmくらいあります。2枚目の写真で、茎節の刺の間隔が上部の方が詰まっているのは、そこから露地栽培にしたからです。温室内では無遮光でも間延びすることが顕著にわかります。そのまま温室で育てていたらだらしない姿になって、枝が自立できなくなったかも知れません。
 ウインゾリーとの違いですが、ぱっと見ての違いは、このフォルムと、葉のサイズが1.5倍くらいあり、色も濃く皮革のようなツヤと質感があること。かつて、ウィンゾリーの山木も育てていましたが、比べるとまるで違う植物のようでした。塊茎のフォルムや葉の特徴以外で、両者の識別点として示されるのが花の違いです。バロニー・バロニーは花茎が長く、花弁のフリルが強く、花の中心部の「目」の部分が車輪型。ウィンゾリーは、花茎が短く(~8cm程度)、花弁のフリルが目立たず、「目」の部分は五星型。というものなのですが・・・。




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   flower of baronii ssp.baronii, 'eyes' are round like a wheel   
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   flower of baronii ssp.windsorii, 'eyes' are star shaped



 実際に両者を比べてみましょう。我が家のバロニー・バロニーの花は、ごらんのとおりフリルは強く出ています。色合いはウィンゾリーとかわりません。花の中心部の「目」は、車輪型でバロニー・バロニーの典型株と一致します。一方で花茎は極端に短く、わずか数センチしかありません。これは、典型的な株とは一致しない。ただ、数年前に咲いたときは倍くらいの長さだった記憶もあるので、花茎の長さは条件によって変わるものでもあるようです。比較したウィンゾリーは、かつて育てていた山木から殖やした株で、兄弟間で多少個体差はありますが、ウィンゾリーの特徴と呼ばれるものをほぼ兼ね備えています。花茎はアベレージでこちらの方が長いです。これをいったいどう考えるか。




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 バロニーの仲間はマダガスカル北部の一定の範囲に、様々な特徴を備えた個体群が散らばっているものと思われます。そのなかで、とりわけ顕著な、人の目につきやすい特徴(丸いコーデックス)を持つ「ウインザー砦」の個体群にのみ、ウィンゾリーという名前が与えられたのではないでしょうか。ウィンゾリーと、それ以外のバロニー、といった具合に。でも、それ以外の個体群にも、タイプ産地のものとは異なる特徴を持つものが、実は色々あるのだと思われます。花茎のやたら短いこのバロニー・バロニーは、記載のもととなった基準産地のバロニー・バロニーとは異なるコロニーから来たものかも知れません。
 最近、「ウィンゾリーの山採り株」とされるものを、しばしば見かけます。ネットなどで画像を見る限り、根際こそ膨らんでいますが、かつて入ったウィンゾリーとは違った顔立ちの個体が多い。バロニー・バロニーとの中間型という雰囲気のものも。これらが「ウィンザー砦」の“最後の生き残り”を掘りとったものなのか、後から見つかった2か所の「ウィンゾリー」産地で採取されたものなのか、あるいはウィンゾリー寄りの「バロニー・バロニー」なのか、わかりません。いずれにせよ、バロニーのタイプは、典型的なウィンゾリ以外にも、中間的なタイプも含めて色々あるんだと推察されます。




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 この種の栽培ですが、バロニー・バロニーとウィンゾリー、どちらもマダガスカル産パキポディウムのなかで特に寒さに弱いものです。冬期、摂氏10度程度の最低温度を維持していてもダメージがあるようで、春に目覚めてこない株が出ます。日本では自然の木々も秋には葉を篩うので、自然なサイクルに感じてしまいますが、マダガスカルでは寒さで落葉することはなく、乾燥で落葉する植物です。葉が落ちるほどの冷え込みは堪えるに違いありません。むかし、ドイツの某園に訊ねてみたら、最低温度20度を維持し、断水もしない方が良い、という答えでした。我が家ではなかなかそんな環境は用意できません・・・。
 そんなわけで、この冬もすっかり葉を落として越冬した、我が家のバロニー・バロニーですが、今年はやたら沢山の蕾をつけて、赤い花を次々と咲かせ続けています。久々の開花だったので、セルフで種がつくか、授粉も試みてみました。結実すれば、また次の楽しみがひろがります。








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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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