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花を楽しもう。

 
 サボテンや多肉植物、コーデックスなどの愛好家は、花への関心がわりと低いなと感じます。植物本体の幹や葉姿、刺といった部分に鑑賞の重点があり、花がなくても審美眼を満たしてくれるので当然と言えば当然なのですが、そうした植物だからこそ、花を咲かせたときの姿はプラスアルファでなお素晴らしい。なによりサボテンはじめ花そのものが素晴らしい種類が多々あるので、見逃すのはもったいないと思います。




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   Mammillaria schumannii



 夏の終わり、見事な満開の姿で目を奪うのは、メキシコ・バハカリフォルニア半島原産の蓬莱宮(Mammillaria schumannii)。半島の南部に広く分布するカギ刺のマミラリアですが、かつてはバルチェラ属(Bartschella)とされていたので、その名前で流通することもあります。花は直径5㎝ほどもあって本属では大輪ですが、なによりも一斉に群がって咲くことが最大の特徴。多くのマミが花を少しずつ長期間咲かせるのに対し、蓬莱宮ほほ一日に一斉に咲きます。これだけ大きい花が群開すると、植物本体が見えないほどで、実に見事。ゴージャスという言葉がぴったりです。




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 本種は花の写真ばかりを目にするので、見どころが花だけのサボテンのように思われがちですが、さにあらず。精密なカギ刺は雪のように白く、先端部だけがチョコレート色に染まり工芸品のような絶妙な美しさ。球体の肌色は抹茶ミルクのような明るいグリーンで、これも本属の多種にはない独特の色合いです。長く育てれば、芯止めなどせずとも、バランスよい群生株に育っていきます。つまり、植物本体だけでも十分育てる価値がある。さらに、年にわずか数日、渾身の力を振り絞って全身を花で飾る蓬莱宮は、そのために仕事を休んで対面してもいいほど感動的。初秋の数日間は文句なしに栽培場の女王です。




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   Pachycereus pringlei
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   Mammillaria schumannii in habitat (Baja california sur)



 栽培についてですが、蓬莱宮はいわゆるカギ刺マミラリアのなかでは丈夫な部類で、たっぷりの日光さえあれば、ほかに我儘な要求はしません。あえて言えば、根が太く水分が多いので、腐らせると球体まで上がりやすいので、真夏の過潅水は避けましょう。生長は比較的ゆっくり。この株は、1993年にバハカリフォルニアを旅したときに、よく目立つ赤いフルーツを持って帰り、なかの種子を蒔いたものです。自生地では武倫柱(Pachycereus pringlei)の根元や象の木(Pachycormus discolor)の木陰などにこじんまり暮らしています。このときは刺ものが目当てだったし、蓬莱宮を写した写真は数葉しか残っていません。もし花どきだったら、全然話が違ったと思いますが。




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 今年も、満開の姿を見せてくれた蓬莱宮。それはこの植物がとても良いコンディションで過ごしている証でもあります。花は咲きたいときに咲く、ということばがありますが、もし手元の植物が開花年齢に達しているのに咲かない場合は、いま健康に生きられない環境にあるか、開花のために何か条件が足りないと考えるほかありません。そうした意味でも、綺麗に咲いてくれる花は、栽培場の環境におおむね満足である、という植物からのメッセージなのです。
 ちなみに、通りがかりの黒猫(うちの子です)は、とくにこの花に反応しているわけではありません^^;。















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ジャンル : 趣味・実用

フライレアナと平尾さんのこと。


 錆びた鉄のような色合いの刺はとても特徴がない。でも、夏の終わりに咲く花は、この属としては大輪。桜色のとがった花弁と、魔女の手のように大きく目立つ赤い雌蕊が、なかなか目を惹きます。
 マミラリア・フライレアナ(Mammillaria fraileana)。秀明丸、風蓮丸という愛称も古くからありますが、作っている人は少ないのではないでしょうか。メキシコ・バハカリフォルニアの南部が原産地。同じバハ産のカギ刺マミとしては、風流丸(M. blossfeldiana)や、蓬莱宮(M.schumannii)が有名で、こちらのほうがよく見かけます。かくいう私も、この種を自分で播種したことがありません。毎年沢山の花をつけるこの株は、私がサボテン師匠と仰ぐ数少ない大先輩、平尾博さんから戴いたものです。




 
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   Mammillaria fraileana



 平尾さんと私の最初の出会いは、多くの人と同じで、彼の刊行した出版物でした。昭和の時代の専門誌「シャボテン」は平尾さんが主宰していたもので、バックナンバーを買いそろえて読み込みました。今でも、見返すと新たな発見があります。著書である「原色サボテン写真集」は、バイブルのような存在でした。掲載された標本の質、記述の正確さと深さ、そして網羅性。この本を超えるサボテン図鑑は、以降国内では出版されていないと思います。
 もうひとつは、彼の運営していたナーセリー、「シャボテン社」の園主として。当初は通販で、他にあまりない南米種や、輸入種子などを購入した記憶があります。園を最初に訪ねたのは中学生になったばかりの頃です。逗子市の海に近い崖地に立地する温室は、たくさんの輸入球や標本が、ぎっしりと並ぶパラダイスでした。お金もない私に、ゆっくり見ていっていいよと仰り、栽培についての質問にも丁寧に答えてくれました。当時買い求めた輸入の菊水が、いまでも私の栽培場にありますが、もう40年近く育てていることになります。




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 このフライレアナを戴いたのは、それよりもだいぶ後の時代です。青年期、若者らしいあれこれに忙しくて植物を離れていた私が、再び多肉の会などに顔を出すようになった二十代後半、そうした会に講師役として来ていた平尾さんに再会しました。シャボテン社は既に閉じていたと思いますが、ご自宅で趣味家としてサボテン類の栽培を楽しんでおられました。私が、かつて園を幾度も訪ねた子どもだとわかって貰うのには少し時間がかかりましたが、とても喜んでくれて、後日ご自宅に招いて戴きました。
 良く晴れた日。平尾邸の庭には、大きなアガベやダシリリオンが植わっていました。10坪ほどの長細いガラス温室を満たすのは趣味家・平尾さんの栽培品です。サボテンが中心でしたが、当時人気だった兜や綾波といった種類よりも、柱ものや花座南米種など、マイナーなものもたくさんありました。趣味家としての平尾さんを惹きつけていたのは、いわゆる売れ線の植物たちではないことが、とてもしっくりきました。なかで目を惹いたのがカギ刺マミラリアのコレクション。こちらもあまり市場で流通しない種を中心に多数の鉢が並んでいました。かつて「シャボテン」誌に連載されていた“マミラリア全種紹介”、というシリーズを思い出しました。植物を見せてもらいながら、自分がかつて「シャボテン」誌で読んだ“栽培困難種”に今も挑戦し続けていることなどを話すと、にこにこと聞いてくれました。帰りがけ、いくつかお土産に戴いたなかにあったのが、このフライレアナです。ほかにもマミラリアやメキシコ産のソテツ・ディオーンの種子なども戴いて、これもいまでは大きな株に育っています。




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 平尾さんの訃報に接したのは、2011年、震災の年だったと記憶しています。子どもだった自分に聞かせて戴いた話の続きや、今の時代や未来についても、もっと色々お訊ねしたいことがありました。大きいもの立派なものだけでなく、小さく地味なものや、気難しいものにも光をあてて、その魅力を伝えてくれた先輩でした。あの日、一見地味なこのカギ刺マミラリアを私に託してくれたのは、平尾さんから「君ならわかるよね」と言ってもらったようにも思えて、ちょっと照れくさい気持ちになります。夏の終わりの日、花ほころぶフライレアナを前に。









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新種サボテンの初開花(Mammillaria bertholdii)。


 大事に育ててきた新種のマミラリアが、初めて開花しました。
播種から4年足らずで、植物本体はまだ2cmほど、花も3cmといったところですが、小さなサボテンにとってはなかなか見事な大輪です。



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     Mammillaria bertholdii(GCG10006 San Jose de Lachuguiri, Oaxaca)




 マミラリア・ベルソルディ(Mammillaria bertholdii)は、メキシコ・オアハカ州で2013年に発見され、翌2014年に新種として記載されました。名前は発見者のAndreas Berthold氏にちなんだものです。自生地は標高1500m付近の、疎らに木が生えるような岩山で、ほとんど地中に埋もれるようにして生えています。花が咲いていなければなかなか見つけにくそうで、最近まで人に気づかれなかったのもわかる気がします。




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   flowering at 3years from seed, on its own root



 小型のサボテンで最大でも5cm程度、基本は単頭です。同じように軟質で刺の痛くないマミラリア、サボアエ(M.saboae)やテレサエ(M.theresae)に近い種と考えられていて、球体サイズにくらべて大輪の花は共通しています。この種の特徴としては、細長く突出した疣とワラジムシを思わせる刺がありますが、前者は同じマミラリアの新種のひとつ、ルエッティ(M.luethyi)とも似ています。また、後者の刺の配列は精巧殿(Turbinicarpus pseudopectinatus)や白子法師(M.pectinifera)を想起させます。また球体のてっぺんの部分は、アリオカルプスの黒牡丹(Ariocarpus kotschoubeyanus)のように平らで、自生地では頂面のみ露出しています。




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   Mammillaria saboae 'goldii'
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   Mammillaria luethyi
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    spines of Mammillaria bertholdii 
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   flower of Mammillaria bertholdii



 この種、発見から5年しか経っていないのに、それなりに普及していて、接ぎ木の苗は各所で見かけます。私は3年あまり前に、わずか5粒ですが、運よく種を手に入れることが出来て、実生しました。そのうち、発芽したのは3つ。太い根に支えられて地面に埋もれるペタンコな感じを再現したくて、接ぎ木はせずに播種から正木で作っています。初開花まで育ててみて、成長は遅いけれど、テレサエやルエッティなどよりも作りやすそうだなという印象です。外見だけ見ると、古くからある丈夫なマミラリア、明星(Mammillaria schiedeana)のちいさい版、みたいな雰囲気もあります。




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 ともあれ、種から育てた植物の初開花は、いつでも嬉しいものです。実はもう1本にも蕾があり、うまくいけば授粉も出来そうですが、この仲間はCryptocarpic fruit、つまり果実が植物本体に内包されたままで熟する植物として知られています。なので種子は本体が枯れるか、外科的に取り出すしか手に入れることが出来ません。そんな勇気はないので、殖やすのはまだだいぶ先になりそうです。きょうはそんなことをあれこれ考えながら、小さな植木鉢に顔を近づけて花見のひとときを楽しみました。







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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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