Diablo mountain

              
かつて一度だけ訪ねたことがある、そしてきっと再び訪れることはないだろう、テキサスの山です。
ディアブロ山といえば、カリフォルニア・サンフランシスコの近くにあるものが有名ですが、
こちらは、テキサスの南部の、グーグル地図で検索しても出てこないような、マイナーな場所。
その名が示すような悪魔的な雰囲気はあまり感じませんでしたが、ちょっとドキドキする体験をしました。




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                       'Diablo mountain' area Hudspeth County Texas



このときはビッグベンド公園に行って亀甲牡丹の花を見るための旅で、エルパソからハイウェイ10号線を
南に下っている途中でした。ちょうどお昼どきだったので、どこかランチをするのにいい場所はないかと思って、
適当なEXITからダートに入ったのでした。当時のノートには、ヴァン・ホーン(Van horn)の10マイルほど
手前のEXIT129を降りて、S Garren Rd というダートロードに入ったと書いてあります。
この道は、ディアブロ山(Diablo mountain)につづく、ともあります。数マイル走り、平地を抜けて丘が
連なるあたり、山の斜面に輝くものを見つけて、車を停めました。
ディアブロ山、と呼ばれるのが重なり合う山々のどれなのかは、よくわかりませんが、このあたりは
その山塊ということなんでしょう。




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                       Echinocereus stramineus 'gold spine'



走っている車からも目を惹いたのは、エキノケレウス・荒武者(Echinocereus stramineus)でした。
黄金色の刺が強い陽射しにキラキラ輝いて本当に美しい。しかし、こうしたサボテンの美しさは、
栽培場ではなかなか再現しにくいものです。刺の鮮やかさと輝きは、国内の多湿な環境では
なかなか維持できない。荒武者は紫ピンクの艶やかな大輪の花を咲かせるのですが、
これも気まぐれで年によって咲いたり咲かなかったり。なので、栽培する人は多くありません。
もしどこかのハウスで、このサボテンの立派な標本株を見かけたら、持ち主は既に道を究めた
愛好家に違いないでしょう。
さて、この山のコロニーは、個体によって刺の強さや色合いに違いがあるものの、どれも金色の
美しい刺で、素晴らしい個性を持っているようでした。季節柄、果実がみのっていなかったので、
種を得られなかったのが残念。背景にうつっているアガベはレチュギラ(Agave lechuguilla)か。
これも育てる人、いませんね。




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                       Echinocactus horizonthalonius



もともと、ランチをするために入り込んだダートだったので、大きな期待をしていなかったのですが、
この山には実に美しい太平丸(Echinocactus horizonthalonius)のコロニーがありました。
アメリカ南西部~メキシコの広い範囲に分布する太平には、刺のタイプや肌色など実にさまざまな顔があり、
それがコレクションの対象にもなっています。
なかで、アメリカ合衆国産の太平丸は、一般に稜が高く、刺は荒れ気味で端整さに欠ける向きがあります。
人気がある、花王丸とか、尖紅丸、翆平丸、雷帝など、みなもっと南のメキシコ産の太平丸です。
アメリカに生える太平では、唯一、アリゾナに隔離分布するニコリー(ssp.nicholii)が有名ですが、
ほかは愛好家に広く知られる“名品”はありません。ですが、細かく見ていくと、実は魅力的なコロニーが
いくつかあるのです。
この「ディアブロ太平」もそのひとつでしょう。この山では4、5本しか見ることが出来ませんでしたが、
共通する個性は、球体は比較的小ぶりで扁平、全体に丸みがあります。刺は太いものは割り箸ほどもある
平刺で、ギムノの天平丸のように、曲線を描いて球体に沿っています。そして肌色は濁りのないブルー。
ひと目みて、恋に落ちました。よほどのぼせていたのか、写真が数枚しか残っていません。
見る事に集中して撮るのを忘れたんですかね。
アメリカの太平丸としては、ニューメキシコ州のガーフィールド(Garfield)という町の近くで、猛烈な刺の
コロニーに出会いましたが、こちらはもっと繊細な美しさで記憶に焼きついています。




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さて、太平にみとれ、ぼーっとランチをしていると、山の向こうからガタゴトと砂塵をあげて、古いピックアップが
近づいてきました。車は、われわれがランチをしている目のまえで停車して、なかから太い腕に白い剛毛を
密生させたおっさんが姿を現しました。心なしか、目つきが険しい。
彼が言うには、ここは俺のランチであって(お昼のランチではなくて牧場)、おまえの車が勝手に入ってきていい
正当な理由がない。食事が終わったら、すぐに出ていけ。テキサス南部という土地柄からして、おそらくこの
ピックアップにはショットガンかライフルか、積んであったに違いありません。食事時間の猶予をくれたのも、
当時3歳の息子がまったく悪意のない笑顔で彼を見上げてたからでしょう。
確かにテキサスあたりのダートは大半が私道だったりします。入口にゲートがなかった(または開いてた)ので、
そのまま入ってしまいましたが、ここは彼の家の庭みたいなものなんでしょう。というわけで、この素晴らしい
太平丸にこの山で会うことは、もうないのかな。






テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

ネヴァダ、遠い春。


新春とはいえ、寒さの本番はこれから。ですが、ひとあし早く春の沙漠の風景です。
元旦のエントリーで英冠の写真を載せたのですが、そのときの旅の写真からいくつか。




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                    The desert in bloom in end of April




1998年4月の下旬。この年の春、アメリカ・ネバダのモハヴェ沙漠は、ディズニーの有名な映画
「砂漠は生きている」さながらに、花に彩られていました。
春といっても、高い峰にはまだ雪が白く残り、昼に汗ばむほどに気温が上がっても、
夜には氷が張るほど冷え込みます。以下の写真は州南部のリンカン郡(Lincoln County)と
クラーク郡(Clark county)で撮影したもの。いずれも古い写真で、画質はよろしくないのですが、
まずはサボテンの花からです。




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                       Echinocereus engelmanii
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                       Cylindropuntia acanthocarpa
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                       Opuntia polyacantha 'erinacea'




エビサボテンのなかでも、もっとも刺の強い武勇丸(Echinocereus engelmanii)。
花もド派手で、紫メタリックの大輪は、数百メートル離れたところから目に飛び込んできました。
栽培しやすい属ですが、この種は成長も遅いうえになかなか咲き難い。
このような大群生の一斉開花は、栽培場ではまず見ることはできません。
オプンチア・エリナケア(Opuntia polyacantha 'erinacea')もそこここで群開していました。
写真の株はなかでも色の淡い不思議な花色だった株。この仲間は、大きさ、刺、花色とたいへん
バラエティに富んでいて、花どきに見て歩くのは実に楽しいものです。
キリンドロプンチア(Cylindropuntia acanthocarpa)は育てていると、痛いばかりで手におえないですが、
咲けば素敵です。




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                    Eschscholzia glyptosperma(ハナビシソウの仲間)
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                    Langloisia setosissima?(ハナシノブの仲間)
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                    Baileya multiradiata(デザートマリゴールド)




サボテン目当ての沙漠旅では、そのほかの植物はついつい見落としがちなもの。
けれども満開の時期ともなれば話は別です。乾燥地の植物の常で、花の美しい植物は多くて
見飽きることがありません。ときに、種を持ち帰ったこともあるのですが、サボテン以上に手ごわくて、
開花はおろか、発芽もしないことが殆どです。ほんとうはサボテンと一緒に植えて楽しみたいのですが・・・。
写真の名前キャプション、同定が正しくないかも知れません。ご指摘あれば直しますのでよろしくお願いします。




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                       Ferocactus cylindraceus 'lecontei'
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                       Echinomastus johonsonii




最後は鯱頭(Ferocactus cylindraceus 'lecontei')と英冠(Echinomastus johonsonii)。
前者は丈夫なサボテンの代表格ですが、難物の英冠と同じ場所に生えています。
鯱の花はトゲに埋もれて目立ちませんが、英冠の花はよく目立つし、どの株にも蜂が訪れていました。

花ざかりの春の旅は、休みがとりにくくてなかなか難しい。ゴールデンウィークは旅行代金が高すぎるし。
そんなわけで、十数年もむかしの遠ざかる記憶をたぐり、瞼の裡側で花盛りの沙漠を歩いています。

にしても、わが栽培場の春は、まだまだ先のこと。





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宝の山!フランクリン・マウンテン(後編)


アメリカ・テキサス州エルパソ郊外にある、サボテン宝の山、フランクリンマウンテン。
実は、このテーマを書こうと思ったきっかけは、拙ブログにもよくコメントを戴くroka79さんが
アメリカ南西部を旅するにあたり、自生地をいくつかご案内したのですが、その折りに過去の資料を
掘りだしてあれこれ眺めていて、懐かしくなったから。
私が最後に訪ねたのは数年前なので、roka79さんの最新レポート("かくたす&さきゅれんつ")で、
直近の山の様子と見比べて戴くと、一層興味深く感じてもらえるかも知れません。



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                    view from halfway up the Franklin mountain
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                    Fouquieria splendens in bloom



ハイウエイ375号線の広い駐車場は峠のてっぺんにありますが、そこからかなり下って裾野側でも
魅力的な植物がたくさん見られます。パーキングロットが狭いので長い時間は停めにくいですが。
なだらかなスロープでよく目立つのがオコティーヨ(Ocotillo=Fouquieria splendens)です。
昔は「尾紅寵」なんて和名で、輸入株をカタログでも見かけましたが、今も栽培している人いるのかな?
真っ赤な花はハチドリ(humming bird)仕様なんでしょうね。色鮮やかなれどやや小振りの花。



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                       Dasylirion wheeleri
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                       Agave lechuguilla



ダシリリオン・ウィーレリ(Dasylirion wheeleri)もそこかしこに生えています。
このあたりのサボテン山では定番ですが、サボ好きには案外スルーされがち。しかしダシリリオンは、
幹の立つユッカなどとともに、近ごろ立派な輸入株が入ってきていて、良い値段で取引きされているようです。
ちなみにアガベもあります。こちらはあまり人気がない?レチュギラ(Agave lechuguilla)。
実は白磁炉という立派な和名もあるし、コンパクトに作れば案外カッコいいかも知れない。
ただ、この山でサボテン探しする時には、間違って踏みつけたときの絶叫発生装置ですが。

そして緩斜面の主役はやっぱり、



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                       Echinocactus horizonthalonius



太平丸(Echinocactus horizonthalonius)です。    
ひところ、太平丸の刺の良い優型として「フランクリン太平」というクローンが結構出回りました。
なので最初この山を訪ねた時は、ものスンゴイ刺の太平がゴロゴロしているのかと期待しましたが・・・。
では、リアルなフランクリン太平はどんなものか、未選抜?画像を並べてみます。



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                       There is no accounting for tastes!



ガッカリしました?でも園芸的な優型・名品とは別の、野の草の魅力が自生地の株にはあります。
刺色に長さ、カーブの具合、肌の色や扁平具合・・・様々な顔の太平たちを見比べながら斜面を登ったり下りたり、
これは楽しいです。灼けつく岩の隙間ではガッシリ強いトゲ、反対に草陰ではモサモサしたトゲがよく似合う。
好みはあっても、これらに優劣つける気はしないし、印象深い個体が必ずしも"優型っぽいもの"でもない。
ハウスに並べたサボテンを見るときは、ついつい松、竹、梅と競りにかかる時の値段でソートしちゃたりして、
我が心根の退屈さにガッカリすることもありますが・・・。山では脳内に染みついた市場原理も停止するようです。
で、「フランクリン太平」ですが、実際のところ名品として出回ったのは、ここの特に刺の強い野生個体を
もとに栄養繁殖されたものなのではないかと(このあたり、事情にしい方がおられたら是非ご御教示を・・・)。
オリジナルがこの山かも知れないと思うのは、青みの強い肌と、赤褐色~黒の刺が球体から離れて
大きくカーブするところ。アリゾナ産のニコリーと並んでアメリカ産太平丸のひとつの典型ですね。
最後の写真は、日本のマニアより太平好きな誰かに囓られちゃった株。硬いし痛いし、他にもう少し
ましなモノがある気がするんだけど・・・。美味しいのかな?



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                       Glandulicactus uncinatus ssp.wrightii
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                       Mammillaria heyderi ssp.meiacantha?



あと、見つけられたらラッキーなのがラシャ錦(Glandulicactus uncinatus ssp.wrightii)。
濃茶色の花が面白いサボテンで、長いカギ刺はときに十数センチにも及びます。この刺が枯れ草に
うまく擬態しているのでなかなか見つけられない。実はけっこうな数が生えているんだと思います。
最近はスクレロカクタス(Sclerocactus)に編入されていますが、白虹山だの彩虹山だののような
難物サボテンではありません。
そして金平糖マミの典型ともいうべき後幸丸(Mammillaria heyderi ssp.meiacantha?)。
この御幸丸の仲間、地味ながら色々なタイプがあって産地を歩きながら顔違いを見比べると
なかなか面白いです。うちには三十数年前、父親がテキサス出張の土産に空港で買ってきた山木が
いまも健在です。ただし直径は変わっていません(成長分は下部に折り畳まれる)。花よりも、
赤い実が可愛らしいサボテンです。



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       Ferocactus wislizenii, They are too big to hide themselves from big chill, and frozen to death



私が最後にこの山に入ったのは、氷点下20度ともされる厳しい寒波のあとだったのですが、
衝撃だったのは山で最大のサボテン、フェロ・金赤龍(金赤龍=Ferocactus wislizenii)が、
ことごとく凍死していたことです。私の見た範囲で、生きている株がひとつもない。
太平丸はじめほかの中小型の種類は、見たところ被害皆無だったので、巨体ゆえの悲劇だったかと。
おそらくは生きのびたであろう小苗が、いまはいくらか成長して復活を遂げていることを願います。



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                       Opuntia phaeacantha in flower
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                  Three Hedgehog Brothers of Franklin mountain
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ところで、フランクリン・マウンテンだけでは物足りない、もっと沢山のサボテンが見たくなった方には、
ほど近くにアメリカで最も濃密にサボテンが繁茂するビッグベンド国立公園(Big Bend NP)があります。
エルパソから南西へ、メキシコ国境に沿ってハイウエイをたった5-6時間すっ飛ばせば、
さらなるサボテン王国に到着します。エルパソ発で3日もあればぐるっと回ってこられますよ。





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