2018年1月1日

    
明けましておめでとうございます。

沙漠を旅していると、単調な平原の彼方に隆起している岩山を見つけるだけで心が躍ります。
多くの魅力的な植物は、斜面や岩肌を好むからです。

アリゾナ州を北上して、ユタ州境を越え、ハイウェイから261号線に入り、北上して進むと、
前方に巨大なメサ、テーブル上の台地が見えてきます。道は巨大なメサに真っ直ぐ向かい、
回避するようには見えません。岩山は大きくトンネルが掘れるような代物でもありません。

聳える岩肌の真下近くに来て、ようやく事態が呑み込めました。道は岩肌の壁面に沿って、
攀じるように垂直の崖を登っていくのです。めまいがしそうな高みに、豆粒のような車が
しがみついているのが見えます。こういうドライブは、日本ではなかなか味わえない。




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         Sclerocactus parviflorus in habitat near Cedar Mesa, SanJuan Co,Utah,USA



スクレロカクタス・パルビフロラス(Sclerocactus parviflorus 和名:彩虹山)は、
シーダー・メサ(Cedar Mesa)と呼ばれる台地の上に生えていました。断崖絶壁を
登ってみると、大地の段差をひとつ上にあがったようにまたひとつの平原になっていて、
そこに単独で咲いていました。数日後には、素晴らしい満開を迎えたでしょう。

彩虹山は、アメリカ中西部の乾燥地に分布するいわゆる難物サボテンのひとつで、
飴色のカギ刺と鮮やかな花が素敵なのですが、園芸家にとって最大の魅力は、
実はその育てにくさ、でしょう。ながいこと、種からの栽培にトライしていますが、
いまだに100点をつけられる標本球には育てられません。
でも、気難しい相手ほど、熱心になってしまうのはなぜでしょうか。




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珍しい、美しい植物を手に入れることはワクワクするし、温室や部屋にそれを飾れば、
いくら眺めても飽きることはありません。けれど、植物と暮らすいちばんの楽しみは、
例えば、彼らが休眠から覚醒し、急激に吸水して輝く新刺を伸ばし、鮮やかな花を
咲かせる、そんな野生のダイナミズムを目のあたりに出来ることだと思っています。

彼らの美は、ファッションやアートのように、人間活動が形を作ったものとは違って、
そもそも私たちの暮らしの外側にあったものです。彼らに心を寄せていくときに、私は、
自分が人であることがどうでもよくなるような、そんな自由を感じることがあります。


だから、いくども自生地を訪ねたくなるのかも知れません。
そして、栽培のヒントも、いつでもそこにあります。
いまから十年前くらいは、毎年1度か2度、沙漠を旅していました。
それも同じ沙漠を、春に、夏に、秋冬にと通い、ときにはそこで眠りました。
植物が感じる炎熱や極寒や、生涯同じ場所から動くことのない生き方を知りたくて。


でも、そこまで思いを寄せても、私を好きにはなってくれない。彩虹山はそういう植物です。
最初に出会ってから二十年以上も経つのに、いまだにこの山で出会った時のような姿を、
栽培下で再現することが出来ていません。これからもずっとそうだと思います。
だから、憧れ続けるのでしょう。これからもずっと。



今年もよろしくお願いいたします。


2018年1月1日
Shabomaniac!
https://www.instagram.com/shabomaniac_2016/






テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

Diablo mountain

              
かつて一度だけ訪ねたことがある、そしてきっと再び訪れることはないだろう、テキサスの山です。
ディアブロ山といえば、カリフォルニア・サンフランシスコの近くにあるものが有名ですが、
こちらは、テキサスの南部の、グーグル地図で検索しても出てこないような、マイナーな場所。
その名が示すような悪魔的な雰囲気はあまり感じませんでしたが、ちょっとドキドキする体験をしました。




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                       'Diablo mountain' area Hudspeth County Texas



このときはビッグベンド公園に行って亀甲牡丹の花を見るための旅で、エルパソからハイウェイ10号線を
南に下っている途中でした。ちょうどお昼どきだったので、どこかランチをするのにいい場所はないかと思って、
適当なEXITからダートに入ったのでした。当時のノートには、ヴァン・ホーン(Van horn)の10マイルほど
手前のEXIT129を降りて、S Garren Rd というダートロードに入ったと書いてあります。
この道は、ディアブロ山(Diablo mountain)につづく、ともあります。数マイル走り、平地を抜けて丘が
連なるあたり、山の斜面に輝くものを見つけて、車を停めました。
ディアブロ山、と呼ばれるのが重なり合う山々のどれなのかは、よくわかりませんが、このあたりは
その山塊ということなんでしょう。




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                       Echinocereus stramineus 'gold spine'



走っている車からも目を惹いたのは、エキノケレウス・荒武者(Echinocereus stramineus)でした。
黄金色の刺が強い陽射しにキラキラ輝いて本当に美しい。しかし、こうしたサボテンの美しさは、
栽培場ではなかなか再現しにくいものです。刺の鮮やかさと輝きは、国内の多湿な環境では
なかなか維持できない。荒武者は紫ピンクの艶やかな大輪の花を咲かせるのですが、
これも気まぐれで年によって咲いたり咲かなかったり。なので、栽培する人は多くありません。
もしどこかのハウスで、このサボテンの立派な標本株を見かけたら、持ち主は既に道を究めた
愛好家に違いないでしょう。
さて、この山のコロニーは、個体によって刺の強さや色合いに違いがあるものの、どれも金色の
美しい刺で、素晴らしい個性を持っているようでした。季節柄、果実がみのっていなかったので、
種を得られなかったのが残念。背景にうつっているアガベはレチュギラ(Agave lechuguilla)か。
これも育てる人、いませんね。




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                       Echinocactus horizonthalonius



もともと、ランチをするために入り込んだダートだったので、大きな期待をしていなかったのですが、
この山には実に美しい太平丸(Echinocactus horizonthalonius)のコロニーがありました。
アメリカ南西部~メキシコの広い範囲に分布する太平には、刺のタイプや肌色など実にさまざまな顔があり、
それがコレクションの対象にもなっています。
なかで、アメリカ合衆国産の太平丸は、一般に稜が高く、刺は荒れ気味で端整さに欠ける向きがあります。
人気がある、花王丸とか、尖紅丸、翆平丸、雷帝など、みなもっと南のメキシコ産の太平丸です。
アメリカに生える太平では、唯一、アリゾナに隔離分布するニコリー(ssp.nicholii)が有名ですが、
ほかは愛好家に広く知られる“名品”はありません。ですが、細かく見ていくと、実は魅力的なコロニーが
いくつかあるのです。
この「ディアブロ太平」もそのひとつでしょう。この山では4、5本しか見ることが出来ませんでしたが、
共通する個性は、球体は比較的小ぶりで扁平、全体に丸みがあります。刺は太いものは割り箸ほどもある
平刺で、ギムノの天平丸のように、曲線を描いて球体に沿っています。そして肌色は濁りのないブルー。
ひと目みて、恋に落ちました。よほどのぼせていたのか、写真が数枚しか残っていません。
見る事に集中して撮るのを忘れたんですかね。
アメリカの太平丸としては、ニューメキシコ州のガーフィールド(Garfield)という町の近くで、猛烈な刺の
コロニーに出会いましたが、こちらはもっと繊細な美しさで記憶に焼きついています。




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さて、太平にみとれ、ぼーっとランチをしていると、山の向こうからガタゴトと砂塵をあげて、古いピックアップが
近づいてきました。車は、われわれがランチをしている目のまえで停車して、なかから太い腕に白い剛毛を
密生させたおっさんが姿を現しました。心なしか、目つきが険しい。
彼が言うには、ここは俺のランチであって(お昼のランチではなくて牧場)、おまえの車が勝手に入ってきていい
正当な理由がない。食事が終わったら、すぐに出ていけ。テキサス南部という土地柄からして、おそらくこの
ピックアップにはショットガンかライフルか、積んであったに違いありません。食事時間の猶予をくれたのも、
当時3歳の息子がまったく悪意のない笑顔で彼を見上げてたからでしょう。
確かにテキサスあたりのダートは大半が私道だったりします。入口にゲートがなかった(または開いてた)ので、
そのまま入ってしまいましたが、ここは彼の家の庭みたいなものなんでしょう。というわけで、この素晴らしい
太平丸にこの山で会うことは、もうないのかな。






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ネヴァダ、遠い春。


新春とはいえ、寒さの本番はこれから。ですが、ひとあし早く春の沙漠の風景です。
元旦のエントリーで英冠の写真を載せたのですが、そのときの旅の写真からいくつか。




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                    The desert in bloom in end of April




1998年4月の下旬。この年の春、アメリカ・ネバダのモハヴェ沙漠は、ディズニーの有名な映画
「砂漠は生きている」さながらに、花に彩られていました。
春といっても、高い峰にはまだ雪が白く残り、昼に汗ばむほどに気温が上がっても、
夜には氷が張るほど冷え込みます。以下の写真は州南部のリンカン郡(Lincoln County)と
クラーク郡(Clark county)で撮影したもの。いずれも古い写真で、画質はよろしくないのですが、
まずはサボテンの花からです。




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                       Echinocereus engelmanii
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                       Cylindropuntia acanthocarpa
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                       Opuntia polyacantha 'erinacea'




エビサボテンのなかでも、もっとも刺の強い武勇丸(Echinocereus engelmanii)。
花もド派手で、紫メタリックの大輪は、数百メートル離れたところから目に飛び込んできました。
栽培しやすい属ですが、この種は成長も遅いうえになかなか咲き難い。
このような大群生の一斉開花は、栽培場ではまず見ることはできません。
オプンチア・エリナケア(Opuntia polyacantha 'erinacea')もそこここで群開していました。
写真の株はなかでも色の淡い不思議な花色だった株。この仲間は、大きさ、刺、花色とたいへん
バラエティに富んでいて、花どきに見て歩くのは実に楽しいものです。
キリンドロプンチア(Cylindropuntia acanthocarpa)は育てていると、痛いばかりで手におえないですが、
咲けば素敵です。




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                    Eschscholzia glyptosperma(ハナビシソウの仲間)
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                    Langloisia setosissima?(ハナシノブの仲間)
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                    Baileya multiradiata(デザートマリゴールド)




サボテン目当ての沙漠旅では、そのほかの植物はついつい見落としがちなもの。
けれども満開の時期ともなれば話は別です。乾燥地の植物の常で、花の美しい植物は多くて
見飽きることがありません。ときに、種を持ち帰ったこともあるのですが、サボテン以上に手ごわくて、
開花はおろか、発芽もしないことが殆どです。ほんとうはサボテンと一緒に植えて楽しみたいのですが・・・。
写真の名前キャプション、同定が正しくないかも知れません。ご指摘あれば直しますのでよろしくお願いします。




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                       Ferocactus cylindraceus 'lecontei'
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                       Echinomastus johonsonii




最後は鯱頭(Ferocactus cylindraceus 'lecontei')と英冠(Echinomastus johonsonii)。
前者は丈夫なサボテンの代表格ですが、難物の英冠と同じ場所に生えています。
鯱の花はトゲに埋もれて目立ちませんが、英冠の花はよく目立つし、どの株にも蜂が訪れていました。

花ざかりの春の旅は、休みがとりにくくてなかなか難しい。ゴールデンウィークは旅行代金が高すぎるし。
そんなわけで、十数年もむかしの遠ざかる記憶をたぐり、瞼の裡側で花盛りの沙漠を歩いています。

にしても、わが栽培場の春は、まだまだ先のこと。





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沙漠植物、栽培、探究。

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