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神津島の野生ラン


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 夏の週末旅で訪れた伊豆七島・神津島でみた植物です。
今回は主に葉模様の美しい地生ラン、国産のジュエルオーキッドたちを探しました。日本の野山でも、やっぱり植物探訪は楽しい。特定の植物を探し求めながら山歩きをすると、時間がいくらあっても足りません。




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 神津島の緯度は、三重県の伊勢志摩あたりより少し南くらい。本州の植生と大きくは変わりません。小さな島ですが、標高572mの天上山が偉容を誇ります。1000年ほど前の大噴火で生成された溶岩ドームと、火砕丘からなる火山で、海からも見える剥き出しの岩肌が強烈な印象を与えます。風化しやすい地質と、海からの強風。こうした特異な条件から、山頂付近は森林限界を超えた高山のような、沙漠を思わせる疎らな植生になっています。花の百名山にも選ばれているこの山に登りました。




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   Goodyera velutina



 登りはじめ、裾野から5合目くらいは、スダジイやタブノキが生えていて、関東南部の照葉樹林帯と同じような雰囲気です。多雨なのでシダ類も多い。本来は藪のなかにガシガシ分け入っていきたいところですが、家族同伴なので登山道沿いの林床に目を配ります。地生ランのなかで最も目につくのがシュスラン(Goodyera velutina)です。ビロードのような美しい葉は、中央の白い線が目立ち、国産ジュエルオーキッドと呼ぶに相応しい。このシュスランは、とにかく小さい苗から、茎が匍匐する大きなものまで、凄く沢山あります。私のサボテン栽培場がある関東南部付近の山にも分布していますが、これだけ広範囲にこの密度で生えていることはありません。蕾を上げている個体も多く、もうちょっと後なら花が見られたなぁ、と。




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   Goodyera foliosa var. laevis
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   Zeuxine agyokuana ?



 数は多くないですが、シュスランと草姿は似ているけれど、葉の白い線がない植物も見つかります。言われなければ、ランの仲間だとは気づかない人も多いかも知れない。これらの同定はなかなか難しく、私も写真を詳しい人に見て貰いました。上の2つはよく似ていますが、1枚目はアケボノシュスラン(Goodyera foliosa var. laevis)、2枚目はオオシマシュスラン(Goodyera hachijoensisi var. hachijoensisi forma izuohsimensis)かと思ったのですが、カゲロウラン(Zeuxine agyokuana)かも知れないとのこと。花がないと断定しにくいです。前者は白線入りのシュスランと同属ですが、後者がカゲロウランなら属も異なる植物。検索してもらえばわかりますが、カゲロウランはおもちゃの飛行機のような面白い花が咲くので、開花していれば確実に同定できたと思うのですが。これらは、いずれも照葉樹林帯の林床で堆積した落ち葉になかば埋もれるように生えてます。どちらも、シュスランに比べればごく数は少ない印象でした。




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   Goodyera hachijoensis Yatabe var. hachijoensis



 こちらは、模様がハッキリしているのでわかりやすい、ハチジョウシュスラン(Goodyera hachijoensis Yatabe var. hachijoensis)。葉の全体に網目模様がかかるカゴメラン(Goodyera hachijoensis var. matsumurana)も分布しているはずですが、今回は見つかりませんでした。これらは、シュスランよりも亜熱帯性のようで、以前、奄美大島を訪ねた際には沢山見ることが出来ました。関東南部にも分布しますが、稀れで、私はまだ見たことがありません。このあたりは、ジュエルオーキッド感もあって、植物の鑑賞眼がある人なら、山歩き中にも目を留めると思います。




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   Tainia laxiflora
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   Liparis nervosa



 葉姿の印象は異なりますが、やはり美しい紋様が刻まれた葉を展開していたのは、ヒトメケンラン(Tainia laxiflora)です。樹林帯から、剥き出しの岩肌に移り変わる手前あたりで固まって生えていました。ランらしい美しい黄花を咲かせる植物ですが、早春咲きなので、花を期待するのは無理というもの。でも、この個体は葉模様が強めで魅力的でした。花があれば・・・という意味では、地味ですが、コクラン(Liparis nervosa)も見かけました。こうしたランも、本州の山で探すと、案外見つからないのですが、これらすべて、登山道(遊歩道)沿いで見つけたものです。




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 7合目あたりからは、大きな木がない、高山ぽい(実際は標高500mほど)植生になってきます。大きな木々は急速に姿を消し、ハイネズ(Juniperus conferta)やクロマツ(Pinus thunbergii)が丈低く這い回り、流紋岩が露出しています。海岸沿いの飛び地のように、ハマギク(Chrysanthemum nipponicum)なども目立ちます。こうなってくると、ランなんてないのかなと思いますが、このあたりから沢山見られる種があるのです。




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  Goodyera schlechtendaliana under Juniperus conferta
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   Goodyera schlechtendaliana



 それが、ミヤマウズラ(Goodyera schlechtendaliana)です。本州でも見られる葉模様のとても美しいランですが、ここではなぜか、過酷な荒れ地エリアに数多く生えています。面白いのは、このミヤマウズラが見つけた安住の地。本州では、薄暗い林床で見かけますが、ここではカンカン照りの場所に生えるハイネズの蔭に隠れているのです。なので、ふつうに歩いていてもまず気づかない。ハイネズをぺろっとめくると、こんなふうにだいたい生えているんです。本州で見るものよりも葉色がやや淡く、抹茶クリームのようでとても美しい。




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   Adenophora tashiroi (Adenophora triphylla var. triphylla) pale flower from  
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   Adenophora tashiroi (Adenophora triphylla var. triphylla) dwarf form
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 天上山は、花の百名山にもあげられていますが、それはこの疑似高山的な環境のお花畑のこと。有名なオオシマツツジ(Rhododendron obtusum var. macrogemma)はシーズンではありませんでしたが、強風にひよひよと揺れるシマシャジン(Adenophora triphylla var. triphylla)がたくさん咲いていました。花色の薄いものが多いですが、岩場にはロゼットの丈がぐっと詰まった濃色花の個体もあって楽しませてくれました。今回の私の目当ては林床のランでしたから、余録としては十分です。サボテン探しの沙漠旅が最高なのはもちろんですが、身近な国内でも、植物探訪の醍醐味は十分味わえると実感した一日でした。











テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

前から見に行きたかった赤い草。

今回は番外編、ちょっと特異な多肉植物??がテーマです。
鱗片を重ねた茎節には葉はなく、全体に肉厚な感じで、多肉化したスギナといった面持ち。
自生地はとても荒涼とした場所で、競合する植物はあまり多くありません。
この植物が生存のためにたたかう相手は、他種よりも環境です。
さて、いったい何処に生えている何という種類だかお分かりでしょうか。


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2枚目の写真は、この植物が生えている場所です。
私がいつも旅している渇ききった沙漠ではなくて、ここはつねに水が溜まった湿地帯。
なので、乾燥した気候に耐えるいわゆる多肉植物ではありません。耐えるのは塩です。
この植物をご存じの方は、なに勿体つけてんだよと笑われそうですね。
これ、実は日本産の植物です。北海道は東部オホーツク海沿岸の塩性湿地に生えるアカザ科の一年草、
アッケシソウ(厚岸草 Salicornia europaea)です。
ことしは沙漠旅はあきらめて、子連れの夏休み旅行で北海道に出かけたのですが、
その折りに少し足を伸ばして会いに行ったのです。


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                 Salicornia europaea Lake Saroma Hokkaido Japan


上の写真を撮った場所、サロマ湖西岸にある自生地は、舗装路から外れてダートを数分走ったところ。
ちいさな吊り橋がかかっていて、湿原の外縁に近づくことができます。夏休み中でしたが観光客の姿はなし。
アッケシソウは別名サンゴソウとも呼ばれ、9月を迎えると真っ赤に色づくのが有名です。
その時期はかなり混雑するそうですが、この時期にわざわざ見に来るのは物好きなんでしょう。
おおかたの人にとっては、赤い絨毯を敷き詰めたような風景なのでしょうが、顔を近づけてよく見ると、
極小の弁慶柱(柱サボテン)みたいな姿や、その特異な生態がもとても興味深い。
生えているのはいわゆる海水そのものに浸される干潟ではなくて、多少海水の行き来のある湿地というべき場所。
塩分濃度は3%程度以下であることが、生存の条件と言われていますが、植物体をほんのちょっと囓ってみると、
わりとしょっぱい。塩を体内に蓄積しているようでした。


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               Rosa rugosa growing with Salicornia europaea  Kimuneappu (east of Lake Saroma)


こちらの写真は同じサロマ湖の東側にあるキムネアップ岬の自生地です。
同じく海と直接つながっているわけではなく、海沿いの湿地といった感じのところ。
アッケシソウだけでなくハマナスでも有名なところで、そこここに鮮やかなピンクの花が咲いています。
沙漠旅に毒されている私は、荒野に咲くオプンチアを思い起こしてしまいました。
主役のアッケシッソウはここの方が色づきが早いようで、先端部から赤く染まった姿はなかなか美しい。


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アッケシソウは、オホーツク海沿岸のほか、じつは瀬戸内海沿岸にも生えています。
そちらの群落は、塩を運ぶ船によって運ばれたものとする説、朝鮮半島由来という説などあり、興味深いところ。
また、北海道の自生地では、サロマ湖の東隣にある能取湖が規模も大きく有名で、観光地として人工的な管理も
行われています。しかし、海水流入を防ぐ堤防を建設したあとで群生地が減少したことなども報じられていました。
生育に適した塩分濃度が変わったため、との分析もあり、なかなかデリケートな植物のようです。
もっとも、栽培下では塩分なしでもちゃんと育つという報告もあり、このあたり、多肉界の塩生植物である
ムイリア・ホルテンセ(Muiria hortense)にも通じるところがありますね。
アッケシソウ、いつか種が手に入ったらそだててみたいものです。



テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。
著書「珍奇植物 ビザールプランツと生きる(日本文芸社)」

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