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沙漠の風景を連れてくる。


 私の栽培場にある植物の大半は自分で種子から育てたものです。サボテンや多肉植物を種子から育てるとき、目標とするのは自生地の荒野に生きる野生株の姿。そのビザールな姿を進化の必然として求めた過酷な環境を思い描き、自然界での姿に少しでも近づくように育てます。そこはどんな風景なのか。平原なのか、岩山なのか。地質はどうか。光や風は…。




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   Euphorbia gymnocalycioides
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   Pseudolithos migiurtinus
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   imagine plants in their natural habitat



 そんなふうに育てた植物をどんな風に植えつけるか。まず、鉢についてはなるべくシックなもの、それ自体が主張し過ぎないものが好みで、化粧砂も大事な要素です。コーデックスプラントでは富士砂でなんでも真っ黒にしてしまう人も多いですが、リアリティを出すならアースカラーの材料の方がいい。最近、友人の河野忠賢さんがsurface sandと名付けた化粧砂(なかなか優れものです)をリリースしたこともあって、植えつけのあしらい方が少し変わってきているようです。私は常時10種類くらいの色々な砂や砂利をストックして、植物によって使い分けています。粒の大小、色合い、園芸用、魚の飼育用、工事に使うものなど様々あります。今回はこれらをブレンドして、自生地風の植え込みをやってみます。




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   Welwitschia mirabilis growing in the sandy and stony plain.



 サボテンや多肉の自生地を実際に歩いてみると、その環境、土質は実に様々です。岩山の隙間のわずかな土に根を喰いこませている場合もあれば、乾いた田んぼのような粘土にめり込むように生えていたり、垂直な崖にへばりついていることもあります。なかで最もオーソドックスなのが、石や礫が散らばった砂地の丘陵地です。今回はそうした環境をイメージして植えこんでみました。奇想天外の自生地はナミビアの平原。ちょうどこんなふうに石くれが散らばった砂地の荒野です。小さな鉢のなかに押し込めて申し訳ないけれど、ちょっとだけ雰囲気を近づけてみました。




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   surface soil contains various types of sand   



 自生地風の化粧砂は、色々自分で作ってみると面白い。今回はサンプルとしてどんな土を使ったのか示してみました。左下がベースになる細かい砂で、観賞魚の底砂の細粒です。左上は麦飯砂利、右上は朝明砂(矢作砂の大粒でも良い)、右下の白っぽいのは熱帯魚の砂で石英片が混じっています。真ん中は渓流砂利。これを適当に混ぜて作ったのが2枚目の写真です。材料には何でも使えますが、軽石や鹿沼のような極端に軽いものは、潅水で浮き上がってきてしまうので避けた方が無難。 色に黄色味が欲しいときは桐生砂を少し混ぜても良いし、関西で入手しやすい真砂土なども自生地っぽい感じが出ます。




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   Copiapoa laui FK439



 植えこむとき、植物の根の部分までは赤玉主体の通常培養土を使います。メセンなどでは、砂だけで植えこむこともありますが、乾きすぎるので例外的なケース。自生地でも、下の根の張っている部分は細かな土で、表面の部分が砂礫、という場合が多い。なので、通常培養土で根が隠れたら、この特製化粧砂を1~2センチくらい敷いていきます。砂だけだと雰囲気が出ないので、適当に石くれを配置します。石は河原などで拾ってきても良いですが、沙漠植物の自生地でしばしばみられるクオーツ系の石は国内では稀少。これらは敷き砂利のサンプルなどに安価で使いやすいものが見つかります。この化粧砂は水はけがよいので、球体はやや埋め気味にした方が、自生地っぽい雰囲気に。植えこんで水をさーっとかけると、細かい砂が隙間をいい塩梅に埋めて、ぐっとリアリティが出てきます。




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   'Atacama desert' replicated in the small pot.



 手の平に乗るような小さな鉢のなかに沙漠の風景を再現したい。生活空間に植物を配置してインテリアとして楽しむのも良いけれど、もう一段階想像力のスイッチを入れて、鉢の向こう側の世界に自分自身が入っていくような時間を過ごすのも悪くないです。手の中に抱いたアタカマ砂漠は、まるで“どこでもドア”のように、無辺の荒野へといざないます。









テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

土から生まれるもの(新しい鉢の話)。

   
 植物だけじゃなくて、容れものにも、こだわる。
魅力的な鉢との出会いは、植物の魅力を二倍にも三倍にも引き立てます。今回は最近出会った鉢についての話です。




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 土の手触りがそのまま伝わるような、このふたつの焼き物は、西山光太さんという作家がはじめて手がけた植木鉢です。彼は、私の圃場がある地域に工房を構えていて、作品づくりのアプローチの一つとして地元の土での作陶に取り組んでいます。地域のあちこちで粘土を試掘して作品にするなかで、私の栽培場の周辺の土でもやってみようということになりました。沙漠の植物を育てる上では、ぬかるんで始末に悪い粘土質土壌ですが、彼によれば地域のなかで他にはない良質な土の可能性があるとのこと。
 その試作の際に、せっかくだからとお願いして焼いて貰ったのがこの植木鉢なのです。うちの土地の土を100%使って作られています。丸みを帯びた方は、古代の土器のように藁で焼いたもので、「覆い焼き」と呼ばれるもの。焼くとき地面に接していた部分の黒い焦げ模様が味わい深いです。とても軽く柔らかい仕上がりなので水が外側に染み出てきます。もうひとつの赤みを帯びた縦長の形の鉢は、より高温の灯油の窯で焼かれていて、こちらがいわゆる「あわ焼」の技法で作られたもの。水が浸潤しない硬さに仕上がっていますが、土の質感はそのまま残っています。この二つのような、底に穴が開いた植物のための鉢は初めて作ったとのことでした。




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         西山光太さんのいろいろな作品
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         この一番下の写真が地元の土で作陶した「あわ焼」




 ここ数年、さまざまな素材、自由な意匠をまとった多様な鉢たちが手に入るようになって、植物趣味の世界は大きくひろがりました。とはいえ千本単位の植物を圃場で育てていると、どうしてもプラ鉢が中心になってしまいます。でも、種から育てた植物が納得できる標本に仕上がったら、素敵な鉢を選びたいとは常々思っていて、それが、植物が育ったのと同じ場所の土から作られた鉢なら、すごく素敵なことだなと思ったのです。
 西山さんの多様な作品群のなかで、地元の土をつかったものは「あわ焼」と名付けられて、とりわけ素朴な味わいをもっています。今回戴いたものも、そのカテゴリーに入りますね。この地域の土は高温焼成に弱いのが難点だそうで、私のところの土は、そのなかでは高温に耐え、硬く焼ける性質があるようだとのことでした。そして、「あわ焼」以外の作品にも、鉢に仕立てて植物を植えたら映えそうなものがたくさんあります。写真の黒釉の器などは、主張の強いサボテンや塊根類にも合いそうな質感、風合いだと思いませんか。
 




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       土の試掘・・・こんな粘土質の場所で、サボテンの地植えもやっています。
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       弥生時代の土器のように、藁で覆って焼成する「覆い焼」。窯の原型。
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 鉢をいただいたのが秋だったので、この二つの鉢には秋冬型の多肉植物を植えてみました。軽く柔らかい古代鉢には、塊茎を形成するメセン、モニラリア・スクタータ(Monilaria scutata)を、湯呑み型の赤い鉢には、くるくるの葉をつけるオーニソガラム・コンコルディアナム(Ornithogalum concordianum)の球根を植えてみました。実にいい感じです。不思議なことに、ほんとうはアフリカの乾燥地の植物たちなのに、杉板の縁台に置くと日本の里山に元から生えていた植物のように見えてくる。東京に持ち帰ってリビングに置いたらまた違って見えてくるのでしょう。この鉢、植えつけてから既にひと月ほど経ちますが、しっかり活着して元気に育っています。
 秋から春にかけて動く冬型多肉植物は、サボテン類などと異なり根が高温になることを好まないので、明るい色目の、こうした軽く柔らかな鉢に元々向いているのです。化粧砂も黒いものは夏場に焼けやすいので向きません。実際、私は大事にしているコノフィツムなどは、プラ鉢を避けて素焼き鉢で育てています。根が蒸れないのが、軽い焼鉢の利点です。反面、乾きやすいので灌水は頻回になります。今回の鉢はどちらも通気性に優れたものですが、古代鉢のほうは特に乾きやすいので、ほぼ一日おきに水をやっています。いずれにせよ、こうした硬すぎないタイプの鉢は、メセンなどの冬型多肉とはとても相性が良さそうです。




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 一方で、こうなると色々期待が膨らんでしまうのもまた事実。もう少し大柄な夏型の植物、たとえばサボテンやコーデックスなどを植えるのに適した、焼きが硬く、色合いの深い鉢も欲しくなります。高さと径のバランスはどうするか、少し縁があった方が良いか・・・デザインも個性の強い夏型植物に負けない感じで・・・などなど。いま流通する大半の鉢は汎用品で、サボテン用鉢、塊根用鉢、メセン用鉢などというものは特にありません。でも、長く植物とつきあってきたなかで、どの植物にはどんな鉢が適してうまく育つのか、その植物が映えるのか、という感覚が、私にはおおむねつかめています。それをもとに、オリジナルで鉢を作ってもらえたら面白いなぁと。そんな話を先日、西山さんと始めたところです。話が進んだら、また報告したいと思います。



















テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

ハウスで山堀り。


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梅雨が明けたら、とたんに猛暑です。
ここ数年仕事が忙しくなり、遠くにある栽培場に通える回数が
少なくなっていて、ハウスのそこここに、力尽きた植物たち、
気息奄々でうずくまっているサボテンたちの姿が。
(※以下、枯れた植物の画像も出てきます)




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     I found some cacti were in critical condition without repotting.



自分の管理能力を超えて植物を増やし過ぎたツケですが、
栽培場の荒れた状態を放置するのもよろしくないので、
意を決して「ダメな鉢」を外に運び出しました。
それが実にこんなにたくさん!




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     Most of them are can't be saved, but few of them may be helped.



大半のサボテンは少なくとも2~3年にいちどは植え替えて
やりたいところですが、これらの鉢はおそらく5~10年近くも
そのままの状態でおかれていました。
多くは、鉢土がカチカチに固まって新根の成長が妨げられ、
水をやっても吸収・成長できない状態になっています。
渇ききった状態で直射日光に炙られミイラ化しているものも。




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     They look like a plants in their habitat.



これらの鉢は、一見するとすべて枯れてしまっているようにも
見えますが、よくみるとまだ助けられそうなものも混じっています。
上のギムノ・ラゴネシーの鉢などは、自生地みたいに見える。
ガッチリ硬くて扁平、肌色もくすんで、国内のビニールハウス育ちに
見えません。鉢から出してみると、なかなかの風格です。




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               Gymnocalycium ragonesei
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               Turbinicarpus jauernigii
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               Ariocarpus retusus
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               Acanthocalycium thionanthum
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                Mammillaria sempervivi



十円玉みたいに扁平なギムノ・ラゴネシー。
成長点が凹んでコマ型になったツルビニカルプス。
扁平で肌は白みがかって、枯れ感たっぷりのアリオカルプス。
地上部より根部が大きく、荒れた刺のアカントカリキウム。
ほとんどの疣が枯れて、お煎餅のようなマミラリア・・・。




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       Plants rescued and repotted            



かつて目にした、自生地の山から掘り起こされて送られてきた
荒木、原産地球と見まごう風貌です。
そこで、発根管理よろしく、新しい鉢と土に植え直しました。
ここから、ふっくら元の姿に戻るかどうか。
でも、今のワイルドな雰囲気も、ちょっとは残るといいんだけど。









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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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