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土から生まれるもの(新しい鉢の話)。

   
 植物だけじゃなくて、容れものにも、こだわる。
魅力的な鉢との出会いは、植物の魅力を二倍にも三倍にも引き立てます。今回は最近出会った鉢についての話です。




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 土の手触りがそのまま伝わるような、このふたつの焼き物は、西山光太さんという作家がはじめて手がけた植木鉢です。彼は、私の圃場がある地域に工房を構えていて、作品づくりのアプローチの一つとして地元の土での作陶に取り組んでいます。地域のあちこちで粘土を試掘して作品にするなかで、私の栽培場の周辺の土でもやってみようということになりました。沙漠の植物を育てる上では、ぬかるんで始末に悪い粘土質土壌ですが、彼によれば地域のなかで他にはない良質な土の可能性があるとのこと。
 その試作の際に、せっかくだからとお願いして焼いて貰ったのがこの植木鉢なのです。うちの土地の土を100%使って作られています。丸みを帯びた方は、古代の土器のように藁で焼いたもので、「覆い焼き」と呼ばれるもの。焼くとき地面に接していた部分の黒い焦げ模様が味わい深いです。とても軽く柔らかい仕上がりなので水が外側に染み出てきます。もうひとつの赤みを帯びた縦長の形の鉢は、より高温の灯油の窯で焼かれていて、こちらがいわゆる「あわ焼」の技法で作られたもの。水が浸潤しない硬さに仕上がっていますが、土の質感はそのまま残っています。この二つのような、底に穴が開いた植物のための鉢は初めて作ったとのことでした。




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         西山光太さんのいろいろな作品
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         この一番下の写真が地元の土で作陶した「あわ焼」




 ここ数年、さまざまな素材、自由な意匠をまとった多様な鉢たちが手に入るようになって、植物趣味の世界は大きくひろがりました。とはいえ千本単位の植物を圃場で育てていると、どうしてもプラ鉢が中心になってしまいます。でも、種から育てた植物が納得できる標本に仕上がったら、素敵な鉢を選びたいとは常々思っていて、それが、植物が育ったのと同じ場所の土から作られた鉢なら、すごく素敵なことだなと思ったのです。
 西山さんの多様な作品群のなかで、地元の土をつかったものは「あわ焼」と名付けられて、とりわけ素朴な味わいをもっています。今回戴いたものも、そのカテゴリーに入りますね。この地域の土は高温焼成に弱いのが難点だそうで、私のところの土は、そのなかでは高温に耐え、硬く焼ける性質があるようだとのことでした。そして、「あわ焼」以外の作品にも、鉢に仕立てて植物を植えたら映えそうなものがたくさんあります。写真の黒釉の器などは、主張の強いサボテンや塊根類にも合いそうな質感、風合いだと思いませんか。
 




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       土の試掘・・・こんな粘土質の場所で、サボテンの地植えもやっています。
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       弥生時代の土器のように、藁で覆って焼成する「覆い焼」。窯の原型。
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 鉢をいただいたのが秋だったので、この二つの鉢には秋冬型の多肉植物を植えてみました。軽く柔らかい古代鉢には、塊茎を形成するメセン、モニラリア・スクタータ(Monilaria scutata)を、湯呑み型の赤い鉢には、くるくるの葉をつけるオーニソガラム・コンコルディアナム(Ornithogalum concordianum)の球根を植えてみました。実にいい感じです。不思議なことに、ほんとうはアフリカの乾燥地の植物たちなのに、杉板の縁台に置くと日本の里山に元から生えていた植物のように見えてくる。東京に持ち帰ってリビングに置いたらまた違って見えてくるのでしょう。この鉢、植えつけてから既にひと月ほど経ちますが、しっかり活着して元気に育っています。
 秋から春にかけて動く冬型多肉植物は、サボテン類などと異なり根が高温になることを好まないので、明るい色目の、こうした軽く柔らかな鉢に元々向いているのです。化粧砂も黒いものは夏場に焼けやすいので向きません。実際、私は大事にしているコノフィツムなどは、プラ鉢を避けて素焼き鉢で育てています。根が蒸れないのが、軽い焼鉢の利点です。反面、乾きやすいので灌水は頻回になります。今回の鉢はどちらも通気性に優れたものですが、古代鉢のほうは特に乾きやすいので、ほぼ一日おきに水をやっています。いずれにせよ、こうした硬すぎないタイプの鉢は、メセンなどの冬型多肉とはとても相性が良さそうです。




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 一方で、こうなると色々期待が膨らんでしまうのもまた事実。もう少し大柄な夏型の植物、たとえばサボテンやコーデックスなどを植えるのに適した、焼きが硬く、色合いの深い鉢も欲しくなります。高さと径のバランスはどうするか、少し縁があった方が良いか・・・デザインも個性の強い夏型植物に負けない感じで・・・などなど。いま流通する大半の鉢は汎用品で、サボテン用鉢、塊根用鉢、メセン用鉢などというものは特にありません。でも、長く植物とつきあってきたなかで、どの植物にはどんな鉢が適してうまく育つのか、その植物が映えるのか、という感覚が、私にはおおむねつかめています。それをもとに、オリジナルで鉢を作ってもらえたら面白いなぁと。そんな話を先日、西山さんと始めたところです。話が進んだら、また報告したいと思います。



















テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

ハウスで山堀り。


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梅雨が明けたら、とたんに猛暑です。
ここ数年仕事が忙しくなり、遠くにある栽培場に通える回数が
少なくなっていて、ハウスのそこここに、力尽きた植物たち、
気息奄々でうずくまっているサボテンたちの姿が。
(※以下、枯れた植物の画像も出てきます)




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     I found some cacti were in critical condition without repotting.



自分の管理能力を超えて植物を増やし過ぎたツケですが、
栽培場の荒れた状態を放置するのもよろしくないので、
意を決して「ダメな鉢」を外に運び出しました。
それが実にこんなにたくさん!




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     Most of them are can't be saved, but few of them may be helped.



大半のサボテンは少なくとも2~3年にいちどは植え替えて
やりたいところですが、これらの鉢はおそらく5~10年近くも
そのままの状態でおかれていました。
多くは、鉢土がカチカチに固まって新根の成長が妨げられ、
水をやっても吸収・成長できない状態になっています。
渇ききった状態で直射日光に炙られミイラ化しているものも。




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     They look like a plants in their habitat.



これらの鉢は、一見するとすべて枯れてしまっているようにも
見えますが、よくみるとまだ助けられそうなものも混じっています。
上のギムノ・ラゴネシーの鉢などは、自生地みたいに見える。
ガッチリ硬くて扁平、肌色もくすんで、国内のビニールハウス育ちに
見えません。鉢から出してみると、なかなかの風格です。




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               Gymnocalycium ragonesei
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               Turbinicarpus jauernigii
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               Ariocarpus retusus
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               Acanthocalycium thionanthum
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                Mammillaria sempervivi



十円玉みたいに扁平なギムノ・ラゴネシー。
成長点が凹んでコマ型になったツルビニカルプス。
扁平で肌は白みがかって、枯れ感たっぷりのアリオカルプス。
地上部より根部が大きく、荒れた刺のアカントカリキウム。
ほとんどの疣が枯れて、お煎餅のようなマミラリア・・・。




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       Plants rescued and repotted            



かつて目にした、自生地の山から掘り起こされて送られてきた
荒木、原産地球と見まごう風貌です。
そこで、発根管理よろしく、新しい鉢と土に植え直しました。
ここから、ふっくら元の姿に戻るかどうか。
でも、今のワイルドな雰囲気も、ちょっとは残るといいんだけど。









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ジャンル : 趣味・実用

抜き苗主義。

         
最近、輸入の多肉植物が数多く入ってきています。
私は実生ばかりやっている人間ですが、子どもの頃から三十年以上も植物とつきあっていますから、
その間には種親として、また実生育成が難しいものなど、様々な原産地からの植物を手にしてきました。
そうした経験から、輸入植物を手にするときのひとつの原則にしているのが「抜き苗主義」。
抜き苗・・・鉢に植わっていない、裸の状態で転がしてある植物を購入するという考え方のことです。




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                 輸入の抜き苗  Euphorbia globosa (bare root)
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                 植えこんで2か月、活着したとみられる。 




サボテンにしても、塊根などの多肉にしても、野生状態から、また現地のナーセリーから抜きあげられて
送られてくる植物には、大なり小なりダメージがあります。そもそも、日本には植物を土つきの状態では
輸入できませんから、いわゆるベアルート、と呼ばれる状態で日本に到着します。乾燥地の植物の場合は、
細根が生きている状態でやってくることはほとんどない。ひしゃげたり、乾き萎びてしまったものも、
多くあります。そんな状態であっても、腐敗したり枯死していなければ、たくましく蘇るのが沙漠植物です。
荒々しい山木を発根、活着させるプロセスは、実生育成に匹敵する園芸の醍醐味だと思います。




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             エキゾチカ(ドイツのナーセリー)から到着した荷をほどく。10年くらい前。
                  Imported plants from Germany(EXOTICA), about 10yrs ago





なかでも海外のナーセリーから採取まもない植物を輸入して、その梱包を解くのは最高に胸おどる瞬間です。
多くの業者は良心的で、ぱっと見て悪い植物ばかりということは多くはない。でも、時期が悪かったり、
そもそも疑問符がつくコンディションの植物を送ってくる業者もないことはない。そういうリスクも含めての
山木の輸入です。で、悪い株というのは、だいたいの場合根部に問題があります。なので、私は到着した苗は、
種類にもよりますが、根部を触り柔らかい部分がないか、干からびていないか、時には根部を少しカットして、
状態を確認します。元気そうに葉っぱが茂っていても、根部はすでに腐り始めている、ということは珍しく
ありません。




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           輸入直後のぺラルゴ・トリステ(Pelargonium triste ) 一見、問題なく見えるが・・・
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              切ってみると中は完全に腐敗していた。  This plant is totally rotten inside




写真のぺラルゴニウム・トリステは、到着して手に取ったとき、直観的におかしいと感じたので、根先をカット
したら赤くボロボロになっている。さらに切断すると、芯まで腐敗しカビも生じていました。株の上の方からは
新葉も顔をのぞかせていたので、慣れていない人なら元気な株だと思ったかもしれません。ともかく、到着後
すぐだったので、輸出元に写真を送ってその分の代金は返金してもらいました。でも、いそいそと植えこんで、
2、3か月経った後に異変に気づいても、あなたの栽培の結果でしょう、ということになったと思います。




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         「抜き苗」で根をチェック。真ん中のユーフォは少し怪しい・・・。 Check the root before potting
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           ユーフォはやはり駄目になり、キフォステンマ・ユッタエは発根してパンパンに。
             Cyphostemma juttae just rooted and pumped up  




かつては日本でもサボテンや多肉植物は抜き苗で取引きするのがあたりまえで、通販などで買うと、新聞紙に
包まれた植物がゴロゴロ送られてきたものです。売り手の方も、根の状態をしっかり確認したうえで売らないと
信用にかかわるし、買い手も自分の好みの鉢に、自分の用土で植えつけたいと考える人が多かったからでしょう。
私も、時おりオークションなどに出品する際は「当方は抜き苗で送ります」と記し、そのようにしています。
しかし、近年は多くの業者さんが、植物を鉢に植えた状態で販売するようになりました。その方が発根管理の
難しさを回避できるし、時期を選ばず買えて、そのまま飾れる、などのメリットが優先されているのでしょう。
一方で根の状態が見えませんから、万一根腐れがあったら、ネジラミがついていたら、という心配は残ります。




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        ユーフォルビア・孔雀丸の「抜き苗」  Euphorbia flanagani (bare root)
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        健康な苗は、植えつけてほどなく活着する  Healthy plants easily take roots           




私はあまり国内で鉢植えの植物は買いませんが、買う場合は実際に眼で見て、状態に納得してから購入します。
輸入直後のものを鉢に植わったまま購入することはありません。通販などの場合は、「抜き苗にして送って
ください」とお願いします。それでも鉢に植わったまま届くことがあり、その場合も、すぐに鉢から抜いて根を
確かめます。実際にそれで腐敗を発見して返品したことも何度かあります。抜きあげると出始めた根が切れて
しまうので、1年間はそのままで、と言う人もいますが、発根を始めているような活力ある苗なら、多少傷めても
回復する場合が多い。しかし、根腐れしているものは、地上部は元気そうに見てても、数か月後には腐って
しまうので、取りかえしがつかないのです。




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       "転がし芋”を活着させて長く育てているコーデックス(Raphionacme procumbens




そもそも山木は、活着までの間に一定の割合で落ちが出るものです。原産地の業者から直に入れる場合などは、
半分くらいダメになることも珍しくありません。国内の良心的な業者さんから購入すれば、日本到着後に根腐れなど
問題のある株は排除したうえで店頭に並べてくれるので、多少割高でもリスクが少ないというメリットがあるのです。
であればこそ、数シーズンを経てしっかり発根活着したものか、抜き苗で上から下まで健康チェックできる苗を
買うのがベターです。いちばんリスクが高いのは輸入直後の苗がそのまま鉢に植えられたもの。転がしの苗よりも
見た目が良いので、こういう売り方もあるのでしょうが、見えない土のなかで何が起こっているかわからない苗は
ちょっと怖いです。半年たってからおかしいな、と気づいてももう返品は出来ません。やはり「抜き苗」の、
“根も葉もない”状態で、上から下まで目で見て健康を確認できる植物を手に入れるのが一番ではないでしょうか。
山から掘ったばかりのイモを、自分の土に植え、自分の栽培環境でじっくり発根させ、本来の野生の姿に復元
していくのは、最高に楽しい作業です。









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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。
著書「珍奇植物 ビザールプランツと生きる(日本文芸社)」

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