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アリゾナの夜の女王(大和魂)、開花。

            
今年はあまり花にめぐまれないシーズンです。
スクレロカクタスは例年の半分くらいしか咲きませんでしたし、
去年、雌株開花で小躍りした奇想天外(Welwitschia mirabilis)もまったく音なし。
アロエ・ハエマンティフォリア(Aloe haemanthifolia)は去年と別の株が咲きましたが、
去年咲いた株は咲かず、種は採れずじまい。

そんななか、心揺さぶられたのが、このサボテンの開花!




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          Peniocereus greggii ssp.transmontanus SB266 Agua Prieta,Sonora,Mex.




ペニオケレウス・大和魂。
(Peniocereus greggii ssp.transmontanus SB266 Agua Prieta,Sonora,Mex.)
産地では、アリゾナの夜の女王、とも呼ばれます。私にはこっちの方がしっくりくる。
セレニケレウス属(Selenicereus)の夜の女王は、中南米熱帯の比較的湿潤な環境に生えていますが、
こちらはソノラ沙漠、チワワ沙漠の荒涼とした平原が故郷です。パロヴェルデ(Parkinsonia)の
根元などに生えていることが多い。地上部はひょろひょろとした枝を伸ばすだけですが、
地下に巨大な塊根を生じる。幾度か自生地とされる場所を訪ねましたが、灌木やブッシュに紛れているらしく
発見出来ずじまい。もちろん、花も見たことはありません。

この春、実生から長年育ててきた株に蕾があがってきました。
最初は新しいシュートかと思いましたが、このくらいのサイズになれば見まちがうことはないですね。




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大和魂は、間違いなく難物サボテンのひとつと言えるでしょう。
輸入種子はしばしばリストに載るので、蒔かれたことがある方もおられると思います。
少年時代に読んだ龍胆寺翁の本に、人の頭くらいもある大和魂のモノクロ写真が載っており、
当時はこれが塊根とは思わずに、刺のない球体?と思ったものでした。
栽培するうえではこの塊根が曲者です。根が太るサボテンは、過湿による根腐れに注意が必要ですが、
大和魂の塊根はとりわけ腐りやすいのです。ちょっと油断すると地中の芋がとろけてしまうので、
なかなか大きく育たない。今回開花した株は、実生から十年ほど経った株で地下の芋は大人の拳くらい。
地上部は高さ1mくらいの株立ちです。

さて、出蕾から3週間ほど。蕾はゆっくりと育ち、開花の夜を迎えました。




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仕事を終えてクタクタの身体で、家にたどり着いた深夜の2時過ぎ。
真っ暗のガラス温室のなかに、ぼんやりと白い影のようなものが映っていました。
あわてて階段をかけのぼり引き戸を開けると、ふわっと果物の熟したような香りを感じたような。

純白の花は、直径15cm足らず。夜咲きの大輪種のなかでは、おとなしい部類です。
香りはとても仄かなもので、ディスコカクタスなどのように強烈な芳香ではありません。
しかし、長年待った私にとっては、格別の花でした。
いつか咲かせてみたい、と願いつつ十数年が過ぎ、株もそれなりのサイズに育っていました。
そこまでの間に、十数本あった大和魂も、ひとつまたひとつと駄目になり、2株を残すのみに。
もしかして、栽培下では咲かせられないのではないかと、半ば諦めかけていたのです。
うっとりと、時間が経つのも忘れて眺めていたら、いつのまにか空が白んでいました。




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難物サボテン、大和魂を長年栽培して、多少なりとも会得した栽培のコツのようなもの。
開花した株は9号鉢植えで、枝は高さ1mくらい。基部は大変固くなっていますが、折れないように気を使う。
塊根はボールのように形が良いので、鉢から出して眺めたくなりますが、直射日光に晒すと焼けます。
なので、鉢内に埋めて育てるのが安心です。先に述べたように、塊根はとても腐りやすいので、
水は年に5-6回しか与えません。兜や牡丹類などと異なり、鉢内が長時間高温になる時期に水をやると、
「芋が茹って」すぐに腐ってしまうので、夏場の過灌水は危険です。これで何株駄目にしたことか。
もちろん休眠期の冬も水を切りますし、なかなか乾かない秋も気をつける。なので、水やり年5-6回に。
芋が腐ってから慌てて枝ざしをしても、なかなか発根しない。挿し木がうまくいかないので、種からやり直し。
また、塊根の肥大成長時に、鉢内で押されることも苦手のようで、鉢土に石などが混じっていると、
押された部分から腐ることがよくあります。なので、ややゆとりのあるサイズの素焼き鉢に、柔らかめで、
かつ排水のよい土で植えてやります。以上は鑑賞できない塊根をしっかり育てる正木栽培の場合で、
接ぎ木をうまく利用すればもう少し容易に開花させられるかも知れません。




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花は当然のごとく一夜限り。翌日の昼間にはすっかり萎れてしまいました。
いまは、闇に浮かんだ白い羽のような姿が、幻のように記憶に焼きついています。





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ジャンル : 趣味・実用

秋深し。

すっかり寒くなりました。
うちから離れた栽培場で最低温度計をチェックしたら、
すでに摂氏2度まで下がってました。
去年大きな被害を出したような大寒波が、この冬はやってきませんように。



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                 Ariocarpus retusus 'confusus' SB1426 Marmelajo,Nuevo Leon,Mex.


写真は赤花岩牡丹(Ariocarpus retusus 'confusus' SB1426 Marmelajo,Nuevo Leon,Mex.)。
赤花三角、という名前で流通することもありますが、岩の系統です。
同じ場所に白花型も混生しているそうで、我が家の同ロットの実生苗からも少しだけ白花が出ました。
牡丹類の花も、そろそろお終いで、サボテンたちは全面休眠の秋に入ります。



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私はといえば、12月半ばまでは仕事がぱっつんぱっつんで、あと2日くらい休めればいい方かな、という状況。
しばらくは植物の顔もゆっくり見られそうありません。
このブログにも花写真のアップくらいしか出来ないかも・・・で、今回もさっそく粗末な内容(とほほ)。
しばらくこんな感じになりそうですが、なにとぞお見限りなきようお願いいたしますm(_ _)m。





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凡家来、

という和名のサボテンがあります。誰が名づけたのか、知りません。
凡、家来、ですよ。凡人、凡夫、凡庸、凡退・・・とりたてて目立つところのなく平凡な、しかも主ではなく家来。
なんでこんな名前になってしまったかと言えば、おそらくはその学名、
Echinocereus fasciculatus ssp.bonkerae から来ていると思われる。
ボンケラエ→凡家来、ってことなんでしょうねぇ、たぶん。学名あて字の和名は珍しくないですが、
これほど安直かつ愛情に乏しい名づけは珍しい。その名の由来、Bonkerさんも、びっくりでしょう。
子ども時代、何かのサボ本に紹介されているのを見て何とも変な名前の植物だなぁと思い、以来気になっていました。

そして、これがそのお姿。



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え?どれかわからないって?
画面左下に写り込んでる、小さくてこんもりしたサボテンです。この場合は、オプンチアの家来に見えますね。
どうせ家来になるなら、金鯱とか、立派な弁慶柱あたりに仕えたかったでしょうが、仕方ない。



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こっちは、もさもさのユッカに付き随う凡家来。それでも、主に比べるとじつに控えめですな。
過去のアルバムを探しても、意外にアップで撮っている写真が少なくって、何かほかの植物の脇に
ちんまり映っているのばっかりなんです。いやー凡家来には実に申し訳ないかぎり。
でも、よく探したら、ちゃんと大きく映ってる写真もありました。さっそく見てみましょう。



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                 Echinocereus 'bonkerae' in habitat (near Globe,AZ)


どうです、たしかに平々凡々たる家来でしょう。蝦サボ以上でも以下でもないボディに、中刺の目立たない控えめな姿。
でも、沙漠旅幾星霜のメサガーデンの園主は「エキノセレウスの中でもとくに素晴らしい植物だ!」と一押しでした。
どこに魅力があるのか。なんというか、藤沢周平の小説に出てくるような、地味でうだつがあがらないけれど、
密かに剣の達人だったりする侍みたいなペーソスがあります。気配を消してじっと沙漠に蹲るその姿を見つめていると、
黙る力、みたいなものを感じる。・・・かなり強引な売り込みだけど、育ててみたらきっとわかりますよ。

典型的な蝦サボゆえ、丈夫で成長も早く小苗のうちから子吹きし群生します。種から開花株の育成も容易で、
栽培しやすさも花の派手さも麗晃丸といい勝負。麗晃丸はけっこう人気がありそうだけど、凡家来を育てている人が
日本に何人いるんだろう?・・・え?私だけ?



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                 The scenery in southern Arizona


その自生地はこんなアリゾナの峡谷地帯。疎らに木々が茂る標高1000mくらい。冬寒く夏暑い感じの場所。
谷の崖面には鯱頭イーストウッディ(Ferocactus cylindraceus ssp.eastwoodiae)が取り縋っており、
凡家来は緩やかな斜面に生えています。周辺地域には同じ様な顔の蝦サボがいろいろ生えていてややこしい。
最近の分類ではファスキクラツス(E.fasciculatus)の亜種という扱いが定番となっているようですが、
衛美玉(E.fendleri)や武勇丸(E.engelmannii)の亜種とされていることもあり、New Cactus Lexiconでは、
ボンケラエ(E.bonkerae)として、暫定独立種扱いとなっています。同じ属の御旗(E.dasyacanthus)と似て、
中刺がない個体が多いため、それが特徴のように言われますが、同じコロニーにこんな株もあります。



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          Echinocereus 'bonkerae' with central spine, same location as above one (near Globe,AZ)


ほとんどfasciculatusに近い顔ですが、隣り合って生えている。そういう意味では両者は個体差の範囲、という気が
しないでもない。刺がつん、と突きだしていて、それなりに勇ましい。そういう意味では、凡家来、らしくない。
やっぱり中刺の出ない、静かで物言わぬ顔つきのほうがしっくりきます。

この、地味で取り柄のない、どんなに良作の株を品評会に出しても誰の記憶にも残りそうにないサボテンが、
一瞬の輝きを放つのが、開花の時です。



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                 Echinocereus 'bonkerae' with flower in habitat (near Globe,AZ)cacsuc080324017S.jpg

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                 Echinocereus 'bonkerae' SB521 Gila Co,AZ (cultivated)                


すべての蝦サボテン、いや全サボテンのなかでも最もゴージャスと言っていい、素晴らしい花。
花径10cmほどもある大輪で、濃い紫ピンクの花弁には、なんとも言えない金属光沢があり、視覚を撃ちます。
上の一葉は、冒頭紹介した自生地でようやくに花に出会えたときの写真。下2葉はメサ由来の栽培株。
両者の花いろは微妙に違うので、メサのSB521は、私の訪ねた自生地とは違う場所のものと思われます。
悔しいがメサの株のほうが綺麗だ。園主はこっちのコロニーを指して「とくに素晴らしい」と述べたに違いない。
花の中心に向けてケミカルなグリーンに移り変わっていくグラデ感、柱頭とのコントラストも鮮やか過ぎる・・・。

ともかく、写真では伝えきれないくらい派手さで、これが人の手による改良を経ていない野生植物の花か、と。
そうか、刺姿がジミジミだったのは、この美しい花を際立たせるためだったのか、と得心します。
ほら、こうして並みいる美花蝦サボ軍団と比べてみても、ひときわ目もあやな美しい花です。



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凡家来。初夏の陽射しを浴びて、きょうばかりはと主に面目を施す、の図ですね。





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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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