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毛深い球根。

 
 正確には、毛深い葉をもつ球根、というべきでしょうね。クロッシネ・グッタータ(Crossyne guttata)。
地面に張りつくようにひろげた葉の縁には、ビッシリと金茶色の剛毛が密生しています。めちゃめちゃ密生したマスカラみたいな感じ。数あるケープバルブのなかでも、珍奇度はかなり高い。




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   Crossyne guttata with the hairy leaf margins 



 クロッシネは、南アフリカ原産の冬型球根で、地面に複数の葉を展開する感じは、ブルンスビギア属(Brunsvigia)を思わせます。しかし、かつはブーファン属に分類されていました。ただ、ブーファンのように地上に球根が露頭することはなく、完全に埋まっています。育てるときも出さない方がいい。特徴の剛毛は、ごく幼苗のときはほとんど目立たず、また大株になっても疎らになる傾向があり、このくらいの若い苗がいちばん顕著です。




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 こちらは別ルートで入手した異なる産地のグッタータです。まだ若いこともあって葉がやや長く伸びています。葉縁のケバケバの様子も少し違ってこちらの方が黒い。葉色の青味も強いので、異なる印象があります。どっちが面白いか、趣味が分かれそう。そしてもうひとつの見どころはこの花です。




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   purple-maroon flower resembling a firework


 
 ひとつひとつの花は小さいのですが、他にあまりないマルーンの色あいが美しく、全方向に花枝を伸ばすので、夜空に打ちあがった花火のようでとても美しい。ブルンスやハエマンサスにはない、独特の魅力があります。開花には体力を使うのか、私のところでは数年に一度しか咲いてくれません。去年の秋には綺麗に咲いてくれたので写真が撮れましたが、相方が沈黙していたので種子は得られませんでした。




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 栽培ではとくに難しいところは感じませんが、ケープバルブの常で、成長はとても遅い。開花した株は、小指の先くらいの球根を15年くらいまえに輸入して育てていますが、開花し始めるまでに10年近くかかりました。さらに、種子から育てている株もありますが、こちらは3、4年経過しているのに、まだ球根は1㎝くらいにしかなっていません。

 クロッシネ属にはもう1種、フラバ(Crossyne flava)もあって、葉はよく似た感じで、花が黄色いもの。葉縁の毛もやや色が薄い印象。どちらも日本のマーケットではあまり見かけませんが、手元に置いて眺めると、好きになること請け合いです。










テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

吸血昆虫を惹きつける花たち。

   
 ゲイッソリザ・ラディアンズ(=ゲイソリザ Geissorhiza radians)は、数あるケープバルブのなかで、花のインパクトでは一二を争う有名な植物です。ワインカップの名で親しまれ、広く栽培されています。自生地は南アフリカのケープタウンにほど近いダーリング(Darling)近郊ですが、開発などでその数は少なくなっており、絶滅が危惧される植物のひとつ。栽培では冬生育型で、落葉、休眠する前のちょうど春のこの時期に開花します。自生地は冬場、ぬかるむほど水分が多い場所なので、成長期は水を切らさないように管理します。凍らさなければ寒さにも強く育てやすい植物です。




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   Geissorhiza radians



 濃い紫色の花弁は、中心部がクッキリ縁どられたワインレッドになっていて、眼を射るようです。いったいどうしてこんなに激しい色彩のコントラストになったのか。ゲイッソリザには、このラディアンズのほかにも、Geissorhiza eurystigma 、
Geissorhiza mathewsii というよく似た花の植物がありますが、色彩はよく似ていてます。こうした花の真ん中が目立つ花は、ポリネーターを奥へ、中心部へとに誘うため、と説明されることが多いのですが、このラディアンズの送粉者はいったい誰なのか。




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 ゲイッソリザの花はハナバチに授粉されるものが多く、なかにはmonkey beetlesと言われる甲虫を送粉者として持つ種もあります。ところが、このラディアンズの主な送粉者は、horse flies 、Tabanid fly と呼ばれるアブ(馬蠅)の一種で、Philoliche属の昆虫です。一般にアブ類は青~紫、スミレ色の花に誘引される傾向がありますが、ゲイッソリザ・ラディアンズは、青紫の花弁の、中心部が熟したように赤い。この強烈な色彩のコントラストで、horse flies を誘引するのです。
 実はこのアブが曲者で、長い口吻で花蜜を吸うだけでなく雌は動物から吸血します。実際、ゲイッソリザ・ラディアンズの花時に自生地の蒸し暑い草原を訪ねると、ブユの大群につきまとわれたうえ、このアブにも刺されることがあるそうです。そのことから、花弁の中央が切り裂かれたように赤いこの花は、動物の身体に刻まれた生傷に見せかけてアブを誘引するのだ、という見解を述べる人もいます。真偽は確かめられませんでしたが、ちょっと面白い見方ではあります。そしてもう一つ、ゲイッソリザには本種とよく似た花を咲かせる種が2つありますが、加えて他属に見間違えるほどそっくりな花があります。




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   Babiana rubrocyanea



 それがこれ、バビアナ・ルブロキアネア(Babiana rubrocyanea)です。実にそっくりだと思いませんか。写真の株は、二十年くらい前に南アから不明種球根として送られてきたもので、私は当初、花をみてゲイッソリザ・ラディアンズだと思っていました。バビアナもアヤメ科の球根植物で、観賞植物として園芸的に改良されたものも多くあり、ゲイッソリザよりも普及しているかも知れません。このルブロキアネアは原種ですが、生育期はたっぷり水をやれば、無加温のハウス(関東)でも楽に越冬し、よく咲いてくれます。




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 このバビアナ・ルブロキアネアは、ゲイッソリザ・ラディアンズと近接した地域に自生していて、重なり合うように生えているところもあります。でも、二つの花がそっくりだと思うのは人間だけではないようです。先に登場したPhiloliche属のアブは、ゲイッソリザ・ラディアンズだけでなく、このバビアナの花も同じように訪れるのです。
 逆にいえば、このよく似たゲイッソリザやバビアナの花は、特定のアブの送粉様式に適した形に収斂進化を遂げたものとも考えることが出来るので、これらの花たちのあり方を“Pollination Guild”などとも呼んでいます。いずれも、青紫の花弁の中心部が、赤く染め抜かれた、他にあまりない花です。少しショッキングな“生傷擬態説”の真偽はともかく、このサイケデリックな花が、特定のアブを強く惹きつけることは間違いありません。

 ともあれ、私の栽培場には恐ろしい吸血アブはやってこないので、ポカポカとのどかな花見を楽しんでいます。




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シルバーヒルのラケナリア。


 ラケナリアは、花のきれいな育てやすいケープバルブとして、親しまれていますが、いわゆるビザールプランツの範疇に入るものはそう多くないと思います。ほとんどの品種は丈夫で土もあまり選ばず、関東ならば無加温のハウスでも楽に越冬してよく咲きます。私のところにあるものは、かつて南アフリカのシルバーヒルシード(Silverhill seeds)のリストからランダムに注文、播種したもので、たいして調べてもいなかったので、咲いてみてはじめてこんな花だったか、という感じ。そんなに派手なものではないですが、花の少ない厳冬期に開花してくれるので、なんだかほっこりします。先週、ハウスで咲いていた2種を紹介します。




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   Lachenalia carnosa



 カルノーサ(Lachenalia carnosa)は、ナマクァランド原産のコンパクトな種。自生地では丘陵地で岩の隙間などを好んで生えているようです。写真の株はまだ若い株で、日陰で水多めに育ててしまったせいか葉が立ち上がっていますが、本来は地を這うように葉をひろげる姿になるようです。壺型で先端が青紫に染まる花を鈴なりにつける姿が印象的ですが、これも本来はもう少し短く密生した感じになるはず。開花サイズに達したので、来年からは無遮光の場所で厳しめに育てて、ナマクァランドの植物らしい姿に仕立てたいと思います。




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   Lachenalia flava



 つづいてはフラヴァ(Lachenalia flava)。その名のとおり小学生の雨傘みたいな黄色の花が鮮やかです。さまざまな花色があるアロイデス(Lachenalia aloides)の亜種とされることもあり、たしかに葉姿は似ています。広い範囲に分布し、花色、姿の変異の多い仲間です。アロイデス系は適応性が高いのか、丈夫なラケナリアのなかでもとくに性質が強く、植えっぱなしでも毎年よく咲きます。写真の株はまだ若い実生苗ですが。




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 こうしたラケナリアはじめ、南ア多肉やケープ球根の多くの種を、シルバーヒルシードから輸入して育ててきました。しかし、園を運営してきたサンダース夫妻(Rod and Rachel Saunders)が、2018年の採種旅行中にテロリストの襲撃で亡くなってしまったのです。夫妻とは、メールなどでのやり取りだけでしたが、育て方の指南もしてもらい、リクエストで種子を集めてもらったこともあります。園はいまも後継者によって存続しているとのことですが、検疫制度の変更などもあり、ここ数年は種子を購入していません。
 冬の日を彩る南アフリカの野草。この素朴な花たちにはそんなストーリーがあります。









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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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