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シルバーヒルのラケナリア。


 ラケナリアは、花のきれいな育てやすいケープバルブとして、親しまれていますが、いわゆるビザールプランツの範疇に入るものはそう多くないと思います。ほとんどの品種は丈夫で土もあまり選ばず、関東ならば無加温のハウスでも楽に越冬してよく咲きます。私のところにあるものは、かつて南アフリカのシルバーヒルシード(Silverhill seeds)のリストからランダムに注文、播種したもので、たいして調べてもいなかったので、咲いてみてはじめてこんな花だったか、という感じ。そんなに派手なものではないですが、花の少ない厳冬期に開花してくれるので、なんだかほっこりします。先週、ハウスで咲いていた2種を紹介します。




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   Lachenalia carnosa



 カルノーサ(Lachenalia carnosa)は、ナマクァランド原産のコンパクトな種。自生地では丘陵地で岩の隙間などを好んで生えているようです。写真の株はまだ若い株で、日陰で水多めに育ててしまったせいか葉が立ち上がっていますが、本来は地を這うように葉をひろげる姿になるようです。壺型で先端が青紫に染まる花を鈴なりにつける姿が印象的ですが、これも本来はもう少し短く密生した感じになるはず。開花サイズに達したので、来年からは無遮光の場所で厳しめに育てて、ナマクァランドの植物らしい姿に仕立てたいと思います。




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   Lachenalia flava



 つづいてはフラヴァ(Lachenalia flava)。その名のとおり小学生の雨傘みたいな黄色の花が鮮やかです。さまざまな花色があるアロイデス(Lachenalia aloides)の亜種とされることもあり、たしかに葉姿は似ています。広い範囲に分布し、花色、姿の変異の多い仲間です。アロイデス系は適応性が高いのか、丈夫なラケナリアのなかでもとくに性質が強く、植えっぱなしでも毎年よく咲きます。写真の株はまだ若い実生苗ですが。




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 こうしたラケナリアはじめ、南ア多肉やケープ球根の多くの種を、シルバーヒルシードから輸入して育ててきました。しかし、園を運営してきたサンダース夫妻(Rod and Rachel Saunders)が、2018年の採種旅行中にテロリストの襲撃で亡くなってしまったのです。夫妻とは、メールなどでのやり取りだけでしたが、育て方の指南もしてもらい、リクエストで種子を集めてもらったこともあります。園はいまも後継者によって存続しているとのことですが、検疫制度の変更などもあり、ここ数年は種子を購入していません。
 冬の日を彩る南アフリカの野草。この素朴な花たちにはそんなストーリーがあります。









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マッソニア/ダウベニア(ケープバルブ)


 マッソニアが出回るようになってから二十年くらい経つでしょうか。丈夫で育てやすく、花もよく咲きます。よく種子をつけて殖えるので普及もすすみ、いまではケープバルブの入門種ともいえる存在になりました。インパクトある草体、葉模様のバラエティ、独特の花。そしてまだ普及の進んでいない種もあります。今回はその魅力の一端をお伝えできればと思います。




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   Massonia depressa 'red striped' Kamieskroon



 まずはマッソニア・デプレッサ(Massonia depressa Kamieskroon)で蒔いた株。のっぺり、つるつるした肉質の葉を地面に張りつくように対生しています。このクローンは、赤紫色の葉模様がハッキリ入る型で、それもまた魅力。ただしその年によって葉模様は濃淡が異なるので、環境による影響も多くあるものと思われます。出葉の時期に十分日光にあて、水もたっぷりやり、葉幅を広く模様がハッキリ出るように育てるのがポイントです。




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   Massonia pustulata JAA1498 Koppies,Swellendam



 つづいてはプスツラータ(Massonia pustulata JAA1498 Koppies,Swellendam)。暗緑色の葉には小さな突起が密生して独特の質感です。おそらく日本で最初に普及したマッソニアですが、当初はこれにロンギペスという名前がついていたと思います。マッソニアの分類、同定はなかなか難しくいので、国内はむろん、南アの業者でもラベル名は仮のものと思ったほうがいいくらいです。なので入手時の産地情報などは大事にしておくと、あとで名前が変わった際などにも参照できます。そしてこの仲間の植物の大きな特色は、ちょっとクラっとするくらいの強烈な芳香を放つ花です。概ねどの種も一株咲いているだけで、ハウス全体がツンとする甘い香りを放ちます。


 さて、マッソニア属は、古くはユリ科に置かれていましたが、APGIIではヒアシンス科となり、さらにAPGⅢの考え方ではキジカクシ科のなかのツルボ亜科に置かれています。ここには、ケープバルブではおなじみのアルブカ(Albuca)やドリミア(Drimia)、ラケナリア(Lachenalia)やレデボウリア(Ledebouria)など、おなじみの属が含まれています。そのなかで、かつてマッソニア属にあっていまは同じグループ内のダウベニア属に移されたのがの次に紹介する二種です。




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   Daubenya marginata



 マルギナータ(Daubenya marginata)は、この属で最も有名なアウレア(Daubenya aurea)と同じ北西ケープのRoggeveld周辺に分布していますが、より小ぶりで、密生する黄色い花糸に特徴があります。マッソニアの普及種に比べると小ぶりで性質がやや弱く、小さい球根は夏越しに耐えられないこともあります。秋に出葉してからは、水を切らず日によくあてて育てると、小さなサイズでもよく開花します。落葉後は断水して、鉢内の温度が高くならない環境で夏越しさせます。3枚目の写真はフルに開花したところ。





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   Daubenya zeyheri



 ゼイヘリ(Daubenya zeyheri)は、上記のマルギナータとよく似ていますが、よりファンタスティックな花を咲かせます。オレンジレッドの花糸(filament)とレモン色の葯(Anther)が目に鮮やかですが、加えて花の中心部、蜜のたまる部分は青紫色で、そうそうない極彩色の花です。隠れて見えにくいですが、2枚目の写真で少しブルーが覗いています。美花揃いのケープバルブのなかでも一二を争う珍花、美花です。栽培は、マルギナータに準じます。


 今回紹介した株はいずれも種子から育成したものです。播種から2~5年ほどで開花サイズに育つので、そんなに気が遠くなる作業ではありません。草花感覚でも楽しめる珍奇植物かなと思います。


























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ブーファン・ハエマンソイデス(Boophone haemanthoides)と、その亜種。

  
 今週ご紹介するのは、ケープバルブ。なんで今の時期に秋冬球根なんだ?と思うかも知れませんが、ちょうど花が咲いて、疑問に思って、調べたら、新たな発見があったからです。で、それがこちら、ブーファン・ハエマンソイデス(Boophone haemanthoides)。例の本、「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」にも載せて貰った、わりと大きな標本株。端正なボトル型の球根から、秋から春にかけて出るパウダーブルーの葉は、ウェーブがかかったようでとても美しい。この写真は冬に撮影したもので、いまの季節は葉を落として休眠中ですが、花が咲くのは夏で、ちょうど今なのです。




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   Boophone haemanthoides in bloom




 それがこの花。すこしくすんだ白い花です。お茶の香りに、ふんわり甘さを加えたような、素敵なフレグランス。私の妻はジャスミンを超えてると絶賛してました。花姿はコンパクトにまとまって、ハエマンサスのような佇まいです。ブーファンといえば、もう一種ディスティカ(Boophane disticha-ブーファン・ディスティチャとも)がとても有名ですが、こちらは赤~ピンク花で、アフリカ南部の広い範囲に分布していて夏型と冬型の双方があります。葉も波打たないものが多い。太閤秀吉という愛称もありますが、歴史上の人物の頭部が思い出され、少し可笑しくなります。
 さて、このハエマンソイデス(Boophone haemanthoides)の方は、南西アフリカ~ナミビアに分布が限られ、すべて冬成長型です。花色はベージュ~白で、パウダーブルーの葉は概ね波打つ。ディスティカより珍重され園芸的には高級品として扱われます。ところがディスティカにも、葉が波打ったり青みがかる型があったりするので花を見ないと実は区別が難しい。で、この個体はやや地味な白い花が咲いたことで、ハエマンソイデスであることが明確に証明されたわけです。




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   It may be 'ssp.ernesti-ruschii'
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   flower having small bracts and shorter tepals, distinctive features for ssp.ernesti-ruschii




 ところが、ここでひとつ疑問が生じました。
 ハエマンソイデスには、実は2つのタイプがあります。ひとつは通常のハエマンソイデス(Boophone haemanthoides ssp.haemanthoides)で、もうひとつが、エルネスティ・ルスキーと呼ばれる亜種(Boophone haemanthoides ssp.ernesti-ruschii)です。このエルネスティは、当初はディスティカの変種として記載され、後にハエマンソイデスの下に移されました。そもそもはナミビアのWittputz近郊で標本が採集され、長らくその一か所にしか生えていない稀少植物とされてきたのです。栽培下ではウルトラ珍品で、たまにその名前で輸入される植物は、高価なハエマンソイデスよりもさらに数倍のお値段で、容易に手が出せるモノではありません。で、このWittputz産のエルネスティが基本種のハエマンソイデスとどう違うかと言うと、花の苞がとても短い。そしてブルーの葉はやや短くほとんど波打たない。さらに、栽培も難しいとされています。
 ここでもういちど、我が家の株です。この個体はそもそも、ハエマンソイデスの名前で輸入された株で、おそらくは山木です。ところが、今回咲いた花を見ると、苞はごく短く小さく、花は露出していて、これはエルネスティの特徴に合致します。念のため基本種のハエマンソイデスの画像をネットで検索してみると、苞は花を包むように大きなものが殆どで、花被片も長く、うちで咲いている花とは異なる。一方で、我が家の個体は葉が甚だしく波打つので、タイプ産地のエルネスティとも明らかに違います。いったい、おまえはどっちなんだ??と新たな疑問が頭をもたげてきました。
 



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   bluish leaves are strongly wavy




 そこで、おなじみSANBI(南アフリカ国立生物多様性研究所)のHPをひらいて、両種についての記述を確認してみます。曰く、エルネスティは、苞が小さく、花被片が短い。また、葉のウェーブにはコロニーによる違いがある(エルネスティには波打たない型もある)と記載されています。また、ハエマンソイデスは海岸よりに分布し、エルネスティはより内陸に分布するという説明もあり、添えられた写真の“自生地のエルネスティ”は、葉が著しく波打っています。おそらくタイプ産地のものとは異なるでしょう。
 あわせて、最近刊行されたこの類についての大著「The Amaryllidaceae of Southern Africa (Graham Duncan/Barbara Jeppe/Leigh Voigt)」も参照してみました(余談ですが、この本は実に素晴らしい内容で、そのうち書評も書きたいと思ってます)。やはり、上記SANBIとほぼ同じ見解が示されていて、ハエマンソイデスとエルネスティの相違を花、とくに苞の大きさに見出しています。そして、エルネスティの自生地はナミビアの一か所ではなく、ナミビア~南アフリカ北西部に複数示されています。




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   smaller one grown from seed, 20 years.




 ここまで調べて、どうもうちにあるこの個体は、エルネスティ・ルスキー(Boophone haemanthoides var.ernesti-ruschii)と見るべき植物ではないか、という認識に立ちつつあります。ただし、基準産地Wittputzの、短直葉の特異なタイプではなく、SANBIのサイトにアップされているような異なる産地のものです。そもそも、エルネスティを亜種として認めず、ハエマンソイデスにまとめてしまう考え方もあるので、それほどこだわるところではないかも知れません。様々あるハエマンソイデスのタイプ差の範囲、とも言うのが妥当なところなんでしょう。だけど、なんだか、ちょっとだけ・・・嬉しいような気がして、この株への愛着が深まってしまうのは、稀少種をありがたがる園芸人の習い性なんでしょうか。そして、短直葉のタイプ産地のものも、いつか育ててみたいと思えてきたり・・・。




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 そうそう、エルネスティは難物、と言われますが、このタイプに限っては難しいとは感じません。9月半ば頃、涼しさを感じる頃に灌水をはじめると、すぐに青々とした葉が姿を現します。以降は、霜の当たらない陽あたりの良い場所で管理し、春まで、2週に一度くらい水をやり続けます。晩春、葉が黄色くなってきたら、水を切り、涼しい半日陰で夏越し休眠させます。うちには、他に実生のハエマンソイデスや、夏型、冬型、双方のディスティカなど数本のブーファンがありますが、どの株も枯れたり調子を崩したことはありません。たいへん丈夫な長命の植物で、ずっとそばにいてくれる相棒です。








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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。
著書「珍奇植物 ビザールプランツと生きる(日本文芸社)」

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