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沙漠のバラ (Adenium obesum)

  
 アデニウム・オベスム(Adenium obesum)は、熱帯アフリカの乾燥地に分布するキョウチクトウ科の灌木で、美しい花を咲かせることから「沙漠のバラ(Desert rose)」の愛称があります。塊茎植物として人気のパキポディウム属(Pachypodium)とも近縁ですが、花だけとってみれば、アデニウムの方が華やかです。でも、ちょっと多肉に詳しくなった人から見ると、オベスムはタイあたりで園芸的な改良がすすんだ熱帯花木、あるいは人為的に盆栽づくりされた入門者向けコーデックスに思えるかも知れません。




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   Adenium obesum at nursery in thailand



 むしろアデニウムといえば、ソマレンセ(A.obesum ssp.somalense)やソトコラナム(=A.obesum)などが高級コーデックスとして人気がありますが、実はこれらもオベスムの亜種や、シノニム(同じもの)と考えられています。そもそも、オベスムの分布範囲はきわめて広大で、マリやセネガルといった中部アフリカから、東へスーダン、ソマリア、エチオピア、ケニア…。中東方面ではソトコラ島を含むイエメン、オマーン、サウジアラビア…。と、まあ熱帯アフリカのほぼ全域をカバーしています。そのなかで、顕著な特徴を持ついくつかに愛称や亜種名が与えられているわけです。
 形態的にもさまざまで、根部ばかりが肥大し地上部は細い枝だけの型から、高さ数メートルのバオバブ型のボトルツリー(ソトコラナム)に育つものまでじつに様々です。しかし、多肉園芸界では、「オベスム」というといわゆるタイなどで作られた園芸花物としてのオベスムに限られてしまう傾向があるのです。じつにもったいない。今日ご紹介するのは、それとは異なるワイルドなタイプです。




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   Adenium obesum in full blooming. wild form from Kenya




 先日、満開になった我が家のオベスム。溜息が漏れるほどの素晴らしい花だと思いませんか。白と濃ピンクの中輪、少しフリルがはいった花が鈴なりに咲いています。これが、人の手の加わっていない、野生そのものの植物の開花なのです。ほとんど葉が出ていない状態で花だけがビッシリと咲くので、ソメイヨシノの開花にも通じる神秘的な印象もあります。室内にかざって、一週間ばかり、家族で花見を楽しみました。
 この株の由来を言うと、数年前にケニアの知人にアデニアを送ってもらった際に、一緒に送られてきた株です。ナイロビから、アデニアのエリアに行く途中に沢山生えているんだそうです。掘られたばかりのようで、赤土だらけ、スコップ傷もついていました。いま鉢の上に出ている徳利状に膨らんだ部分はほとんどが地中塊根で、地表部は細枝がブッシュのように茂るタイプのようです。




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 最初の数年は、塊根表皮が土の色でオレンジがかってみえて、それはそれで美しかったのですが、うちでは夏場雨ざらし栽培をしていることもあって、土の色は次第に流れ落ちていまの肌色に。いま、ちょうど花が終わって葉が萌えてきたところですが、ソマレンセなどの葉よりも幅広で、ワックスを塗ったような艶があり、葉脈が美しく浮かび上がります。花だけでなく葉も美しい。フォルムの面白さではパキポには譲りますが、トータルな魅力では決して劣らないと思います。先にも書いたように、タイのオベスムと名前では区別がつかず、ブランド化していないこともあって、このワイルド・オベスム、市場では案外見かけません。業者さんも積極的に輸入していないようなので、大事に育てたいと思います。栽培ですが、暑い時期にはとても元気で、梅雨の間も雨ざらしです。一方で、とにかく寒さに弱いので、冬も最低温度10度くらいをなんとか保って(もちろん、水は切る)維持しています。本来は乾燥で葉を篩う植物なので、冬の寒さで落葉するのはかなりこたえるはずですが、毎春素晴らしい花で楽しませてくれています。





















テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

キフォステンマ・ラザ

 
 今年はコロナで物流が止まったこともあり、ほとんど植物を買いませんでした。なかで、一本だけ買った山木がこれです。あまりに気に入っているので、落葉するまえにこの植物について書いておこうと思います。




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   Cyphostemma laza



  ラザ(Cyphostemma laza)はマダガスカル原産のブドウ科のツル植物。早い話が熱帯のヤブガラシですが、ズドンと立ち上がる塊茎と、そこから枝垂れるツルのバランスがなんとも言えない。ほかのどのコーデックスにもないフォルムなのです。記載によれば、本種のタイプ植物はマダガスカル南西部のトゥリアラ産。幹は円錐状に高く伸び、径は50cm以上、高さはツルも含めて最大10mに達するそうです。やや肉厚の葉は艶があり、微毛があります。ツルと葉は乾期、日本では冬期に枯れます。




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 かつて、進化研の吉田彰氏のマダガスカル紀行に、鬼滅の鬼もびっくり、モンスターのような本種の仲間の写真が載っていて、それに打ちのめされて以来、理想のフォルムの標本を探していました。今年、たまたまネット上でみかけて、やっと出会えた、との思いで手に入れました。といっても、あまり他に欲しい人もいないようで、お値段も手ごろでした。なんでこんなかっこいい植物がスルーされるのだろう?と少し不思議な気もしました。いまの多肉界は入門期の人が多いせいか、知ってる植物やよく見かける植物については、皆さんなかなかの鑑定眼をお持ちです。一方で、未知の植物については以外にアンテナが反応しない人が多いのかな、と思いました。




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近年、グラキリウスやパキプスと一緒に、様々なマダガスカル多肉が入ってきます。本種もたまに、おまけで入荷するような感じですが、ラザとして入ってくるものでは、幹の下部が丸みを帯びる壺型タイプを多く見かけます。これは若苗の特徴と言われますが、その後こうした円錐状に変わるのかは不明です。丸い塊茎もグラキリウスみたいで可愛いのですが、やはり本種の魅力を最大限に発揮するのは、この個体のようにずどんと塊茎が立ち上がるタイプではないかと。以下に、自生地での本種の画像のリンクを貼ってみますので、ちょっと覗いてみてください。それほど巨大な個体ではないですが、ツル植物のお化け、といった迫力は伝わると思います。



https://pbs.twimg.com/media/DakzoiuWkAAhJZE?format=jpg&name=4096x4096

https://mapio.net/images-p/43101501.jpg



 キフォステンマといえば、アフリカ大陸には、セイッチアナ(Cyphostemma seitzianum)やベティフォルメ(C.betiforme)など、壺型コーデックスの逸品の数々が知られています。マダガスカル産のキフォスでは、エレファントプス(C.elephantopus)と、このラザ(C.laza)が代表種ですが、どちらも独特のビザール感がありますね。今回取り上げたラザ同様、エレファントプスもまた、素晴らしい塊根塊茎植物です。


 

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 さて、この個体はなんといっても幹のフォルムが最高です。フラスコ状の幹は、カサカサと剥ける赤茶色の薄皮の隙間から、グリーンの地肌がのぞいています。幹の高さは40㎝くらいあって、そこから枝垂れ落ちるようなツルと小ぶりの葉はなんとも涼し気で、観賞植物として文句なし。まだ栽培して数か月なので、あまり断定的なことは言えませんが、おそらくかなり丈夫だと思います。多くのマダガスカル多肉が落葉し始めるなか、まだ葉色もかわっていないので、寒さにも一定程度耐えられそう。凍らせなければ大丈夫でしょう。入手したときには小さ目の鉢に植わっていたのですが、鉢中の土がすべて根に置き換わっているような状況で、根も強靭そのものです。まさにタフな雑草、ヤブカラシの大親分。末長く、楽しませてもらえそうです。













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猛暑総括…夏型コーデックスの受難。

  
 今年の夏も、また異様な季節でした。
 明けない梅雨の降りやまぬ雨に倦み疲れたあとには、切れ目なく灼熱の陽差しが降り注ぎました。この暑さが半端なかった。梅雨が明けてからは東京でも連日の猛暑日。浜松では8月17日に41.4度と、2018年猛暑のときに熊谷で出た国内最高気温に並びました。東京でも、8月の猛暑日は11日間と統計開始以来最多。もっとも暑い8月だったということになります。

 そして9月を迎えても、炎暑はなお続いています。
いま、南海上の台風は、日本列島に近づきながらもなお肥え太り、凄まじい勢力に発達しつつありますが、これもまた、海水温の異常な高さによるもの。台風にはなんとか、西へ西へと逸れてもらいたいところです。

 


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 露天で日を浴び、青々と葉を茂らすパキポディウムをはじめとするコーデックスたち。みな元気にみえますが、よくよく見ると枯れてしまった株があるのです。私の栽培場でも、これまで夏越しになんの問題もなかった植物たちがバタバタと倒れました。8月10日から20日にかけての、連日35度を超えていた頃です。夏に屋外置きの植物が暑さでやられることは、これまであまりなかったので、記録に残しておきたいと思います。ここで紹介する写真は都内自宅の栽培場ですが、少し離れた場所の広い栽培場の方でも、ほぼ同じ状況です。




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 真冬のように葉を落としているのは、白花恵比寿笑いなどとも呼ばれる、レウコキサンツム(Pachypodium leucoxanthum)です。生き延びた株は青々と葉を残していますが、葉が一枚もない左側の株はもう助からないでしょう。球体の内部まで煮えてしまっています。株系5cm以上のレウコが20本以上あったのですが、数本を残して全部枯れてしまいました。扁平な形状で、真上からの直射をもろに受けやすいこともあるでしょうが、この種はとくに暑さが苦手なようです。類縁性のあるエブルネウム(P.rosulatum var. eburneum)やブレビカウレ(P.brevicaule)も小さな苗には枯れたものもありますが中苗以上は生き延びています。レウコの群を抜いた耐暑性の乏しさは、これがブレビやエブルとは違う植物である証左かも知れません。 
 このほか、パキポで被害が多く出たのはバロニー・ウィンゾリー(P.baronii var.windsorii)です。マダガスカルでもいちばん暑いエリアの岩場に生えているので、暑さには強いと思っていましたが、1割くらい、落ちました。幹の中まで煮えてしまうとダメみたいです。自生地はいつも風が吹いているんでしょうね。




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 いちばん心配していた冬成長型の(といっても、夏から動き出す)光堂(P.namaquanum)は、思ったよりタフで、新葉が多少焼けたくらいで、露天放置でも落ちる株は出ませんでした。グラキリウス(P.rosulatum var. gracilius)やデンシフロラム(P.densiflorum)も頑丈で、実生2年目の若苗でも落ちはありません。ビスピやサンデルシーなど、寒さに強いタイプのパキポも、無傷でした。
 露天組だけでなく、温室内でも焼け死んでしまった植物は少なくありません。




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 まさに焼け焦げた、といった死にざまをみせているのは、ユーフォルビアのオベサ(Euphorbia obesa)やバリダ(E.meloformis ssp.valida)です。この群星冠(E.stellispina)もダメでしょう。これらはいわゆる「日焼け」のように直射を受けた表皮が焼けたわけではなく、異常な高温環境のなかで植物全体が煮えてしまった、という印象があります。朝なんともなかったものが、夜には色が抜けて、数日で干物になってしまいました。こんなこともこれまでなかったことです。




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 サボテン温室の方でも、多少被害が出ました。世界で最も暑い場所に生えているはずの大竜冠(=大龍冠 Echinocactus polycephalus)がかなり焼けました。写真の株はもっとも重症のもので、助かるかギリギリの感じ。無遮光ガラス温室なので仕方ないかも知れません。北米難物のペディオカクタス・デスパイニー(Pediocactus despainii)も瀕死で鉢土に潜っています。でもこれはたぶん大丈夫。難物温室は扇風機を回しっぱなしにしていたからか、被害はあまり出ませんでした。




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 もちろん、枯れてしまったのは少数で、大半の植物は青々とした葉を陽光に輝かせて残り少ない夏を謳歌しています。オペル・パキプスなどは、ちょっとした涼しさを感じたのか、先週あたりから再び新葉を伸ばしてきました。
 しかし、陽ざらし雨ざらし、人手をかけずにタフな植物を育てることを夏のモットーにしてきたので、衝撃は大きかったです。露天の株はこれ以上通風をはかることもできません。私のように平日は朝から夜更けまで仕事に追われ、栽培場の様子を確かめられない栽培者は、もう少し守りの栽培をしなければいけない気象条件になってきたのでしょう。今後はいよいよの酷暑期には、寒冷紗をかぶせるとか、そういう対応が必要だと肝に銘じた夏でした。










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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。著書:
「珍奇植物 ビザールプランツと生きる」
(日本文芸社)
「多肉植物サボテン語辞典」
(主婦の友社)

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