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赤い花のパキプスとその血脈。

   

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   Operculicarya pachypus (mother and son)




 世がパキパキ時代などと呼ばれるよりだいぶ昔、私のところ来た何本かのパキプス。いまも残る3本のうち1本は雌木で、毎年赤い実をつけます。残る2本が雄木。そして、上の写真、右側の木は山採りではなく私が播種育成したもの。左がその母木です。去年、このブログでも紹介しました。
 そして今年、この子どもの方の木が初めて開花しました。実生のオペルが咲いただけで十分嬉しいのですが、それに加えてちょっと驚いたことがあったのです。




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   Flower of the right side plant, odd red flower for the species.




 あれ?と思った方、結構いると思います。これはデカリーの花なんじゃないか?そう、パキプスの花は黄緑色、デカリーの花はえび茶、と色々な本にも書いてありますね。私も赤花のパキプスは見たことがない。ともかくこの花は、かなりデカリー寄りの色に見えます。一方で、植物本体の感じは、丈低い樹形とボコボコした幹肌、ジグザグの枝ぶりと、典型的なパキプスのよう。ここでは、仮に「赤花パキプス」、と呼んでおきましょう。ちなみにこれは雄花ですね。




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   right side plant is a typical O.decaryi, red flowered Oper.




 「赤花パキプス」を、同じくらいの樹齢の典型的なデカリーと並べてみたのが上の写真。比べるとかなり違いがあります。デカリーの方は幹もすんなりして棒状で、枝もわりとまっすぐ。葉の色艶もかなり異なります。いま、デカリーとして流通しているのは、だいだいこんな株ですよね。デカリーはこういう木だと思っているから、問題の「赤花パキプス」も、これまではパキプスそのものだと思っていました。




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    Flowers of mother plant, typical yellow flower for O.pachypus




 上の写真は赤花パキの母株の花です。パキプスらしい典型的な黄花。雌花なので、子房がありますね。一方で父木も、母木より前に入手した山木で、名前も見た目もパキプスでした。花色も黄緑だったように思います。色が異なれば記憶に残りますよね。ただ既に手放してしまったので、確かめられない。もし記憶が正しければ、パキプスに一定程度花色違いが出現するのか。そうでなければ、赤花のコロニーやデカリーとの中間的なコロニーがあるのか、という考えに行き着きます。いずれにせよ、父木の方は只者ではないパキプスだったのではないかと。




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   uncle on the paternal side of 'red flowerred pachypus',it may be an intermediate form between pachypus and decaryi.




 赤花パキの父木はもうありませんが、実はその兄弟が押し入れのなかに眠っていました。同じ時に同じ便で入手したもので、発根しないで枯れた木を、あまりに惜しくてとっておいたのです。それが上の写真。カラカラに干からびて痩せていることを割り引いても、典型的なパキプスより少しスリムに見えます。一方で、幹のボコボコ感は、いま入ってくるパキプスの平均よりも激しいくらい。枝もかなりジグザグしています。パキプスで入荷した株ですが、いま入ってくるパキたちとはちょっと違って、デカリー寄りの個性も感じませんか。
 我が家の実生「赤花パキプス」には、この株と同じ血が流れている可能性があります。




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 そこで思い至ったのが、当時までのオペルをめぐる環境です。実は、昭和の頃に入ったオペルクリカリアは、ほぼ一様にデカリーと呼ばれていました。それもそのはずで、パキプスという名前がEggli氏によって正式に記載されたのは1995年のこと。しかし、それ以前に今で言うパキプス型の植物が見つかっていなかったかというと、そうではない。パキプスの基準標本自体は1995年よりずっと前に採取されたものだし、昭和のカタログにもパキプスそのものの写真がデカリーの名前で載っていました。デカリーの名はPerrier氏によって1944年には記載されているのです。つまり、パキプスはかつてデカリーに含まれ、その一型だったと言うことになります。そして両者の間には中間的なタイプがあることも想像されます。




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 推論をさらに進めると、やはり、我が家の「赤花パキプス」の父親は、最近あまり見かけないデカリー寄りのパキプスだったのではないかと思えてきます。あるいはパキプス寄りのデカリーと言ってもよいかも知れません(もちろん、単にパキプスの実生から出た花色違いかも知れませんが)。近年大量に入っているパキプスのなかに、赤花の個体があるのかないのか、わかりません。うちで枯れ木になっている株のような、中間的な顔つきの個体もあまり見かけない気がします。もっとも、自生地にはスリムなパキプスも沢山あって、太いのを選んで輸入してるんだ、という話も聞いたことがありますが。
 実は、わが家でも、父木母木の組み合わせが、これと同じ株は他にありません。最近、パキプスを沢山蒔いていますが、父も母も太胴で典型的な黄花のパキプスなので、大きくなってもこれと同じ赤い花を咲かせて驚かせてくれることはなさそうです。たった1本だけ、赤花の血をひいた実生のパキプス。そう思うと愛着もひとしおです。今年はプラ鉢から、ちょっと良い鉢に植え替えて、じっくり眺めてやろうと思います。






















テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

秋の芽吹き。

  
この季節に、萌芽を楽しめるのは、秋冬型植物が沢山ある多肉園芸ならでは。
メセンも、球根も、オトンナやチレコドンも、その多くが秋に萌え、冬から春まで栽培場を彩ってくれます。ことしの関東は雨降りが続く一方で、気温があまり下がらなかったからか、動きだしは例年より遅い。つい先日まで枯れ野にしかみえなかった棚で、ぼちぼち芽吹きがはじまっています。




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   Tylecodon wallichii



チレコドン・ワリチー(Tylecodon wallichii 奇峰錦)。
この属を代表する魅力的な種で、まっすぐ上に伸びる主幹には、葉の脱落した痕が突起状に残り奇観を呈します。輸入個体を見ることが多いですが、この株は実生苗で、種からまだ3年(4年目)。肌色のブルーも美しく、山木と遜色ありません。寒さにも強く、秋から春まで、日光によくあてて、適度に灌水すれば、10年待たずに良標本が得られそうです。




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   Tylecodon leucothrix



チレコ・レウコスリクス(Tylecodon leucothrix)。
こちらはややマイナーな小型種で、丈低く灌木状に育ちます。特色は微毛に覆われた葉。とくに、萌芽したばかりのときはとても美しくて、この植物を手元で眺められる幸福を感じます。これも種子から育てた株で、最初3年くらいは地下が塊茎状に肥大し、そのあと茎が立ち上がってくるようです。強い日射で管理して、なるべく低く育てたいですね。




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   Pelargonium caroli-henrici



カロリヘンリキ(Pelargonium caroli-henrici)。
最近ペラルゴの人気種になっていますね。去年の枯葉の中から、フキノトウみたいに新葉が出てきました。比較的新しい種ですが、ひところ種子がかなり出回ったし、実生でよく育つので、普及はすぐに進むでしょう。もちろん、普及に値する魅力ある植物です。整った形のロゼットは、白毛に包まれたようで、大変美しい。前年迄の枯れた葉が重なり残っている風情も悪くない。地下に円筒状の塊茎(塊根)が生じます。これで実生5年生くらい。春に咲く花もとても可愛らしく綺麗です。




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   Pelargonium appendiculatum



アペンディクラツム(Pelargonium appendiculatum)。
微毛に包まれた葉が美しいペラルゴニウム。前述のカロリヘンリキと似ていますが、さらに大型にわさわさと葉を展開します。このくらいのサイズ(実生5年)のうちは塊根は地中ですが、大きくなると分岐して地上にも露出するようになります。そうなると、コーデックスとしても大変魅力的な姿になるので、そこまでしっかり育ててやりたいと思っています。










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夏型多肉、充実の秋 /9.16 BB出品のお知らせ


 夏型の多肉植物は、生育期のラストスパート。開花のエネルギー消耗から回復し、酷暑を乗り越えて新たな葉を茂らせて、緑を濃くしています。多くは、この時期に一年で最も充実している様子です。私のところでは、大半の夏型多肉植物を、9月いっぱいまで屋外で雨曝し陽晒しの環境で育てています。この育て方のメリットについては何度か書きましたが、やはり太くガッシリした、野生株のような姿に育つという点に尽きます。温室育ち、ハウス育ちとは確実に違う姿になります。




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   夏を越え、通年で最も充実した時期を迎えたパキポディウム



 近年、マダガスカル等から大量に植物が輸入されるなかで、長い年月をかけて育った野生株がとても安い値段で売られていることに驚きます。値段の安いものは大事にしてもらえないので、輸入されても枯れていく植物も多いでしょう。原産地国の人たちにとっては、山に生える雑木に過ぎず、もしかしたら畑の野菜よりも価値の低いものに感じられるのかも知れません。実際に種子から育てると、時間も手間もかかって輸入するよりコストがかかるし、なにより今の盛り上がりに供給が間に合わない。それゆえ業者さんは輸入に精を出しても繁殖に力を入れる人は多くない。しかし、これだけ多くの植物が流通する今は、育成派の人にとってもチャンスと言えます。




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 この写真には山木が1本だけ写っています。あとはすべて実生育成株
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 これらはすべて種から育てた植物
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 実生3~4年苗



 たとえでいえば人気のパキポディウム。私のところにも長年栽培している輸入個体がありますが、その数は片手くらいです。十年ちょっと前までは、山木の入手はとても難しかったので、目的は種親の確保でした。だから、なるべく特徴のある、その種の魅力を発揮している株を選びました。既に枯れてしまったものもありますが、それらを種親に自分で育成した株が、いまは栽培場を埋めています。ある程度の大きさに育った株は、どれが山木でどれが内地球か、なかなか判らないでしょう。山木の姿は、自生地で種が落ちた場所が決定しますが、自分で育てる時にはその環境も変えていくことが出来ます。実生苗、若苗は、適応力も高いので、それぞれの顔を見ながら、理想の姿に育て上げていく楽しみがありますね。




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 ユーフォルビアやガガイモも実生から育てやすい
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 奇想天外は種子からしか育てられない



 もちろん、それには時間がかかる。でも、私たちアマチュアは、一刻も早く親木にして手放したいわけではないので、育てるプロセスそのものを楽しむことが出来ます。というかそれが一番面白い。手に乗るような若苗が、少しずつ立派な株に育っていくプロセスそのものが興奮の連続です。子どもを育てるのと同じで、幼い苗や若い苗には、その時代にしかない可愛らしさや魅力があって、ずっとこのままでいてくれよ、と思うことさえあります。とはいえ、こういう植物との向き合い方には、コストもかかります。これも子育てと同じです。完成した標本株を棚1つ分育てるには、その数倍の圃場、バックヤードが必要になります。完成株を買って来れば、素敵な鉢に植えつけて飾ればおしまいですが、それを自分で育てるとなると、場所も時間も数倍かかる。不経済な生産活動そのものです。でも、それだけの魅力があって、やめられないでいます。


 ところで、9月16日(月祝)に東京都 五反田TOCビルで開かれる国際多肉植物協会(I.S.I.J.)のビッグバザール(BB)に、私と、河野忠賢さん(@tadayoshi_kono)で、共同出品することになりました。繁殖した植物を中心に、私が面白いと思うものを、流行りのものも、流行っていないものも、持っていこうと思います。数は多くありません。お時間あればぜひお立ち寄りください。




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●CACTUS AND SUCCULENT BIG BAZAAR IN TOKYO
9月16日(祝)午前9時00分(予定)〜16時 東京都 五反田TOCビル
http://www.ne.jp/asahi/isij/japan












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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。
著書「珍奇植物 ビザールプランツと生きる(日本文芸社)」

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