サルコカウロン・ムルチフィズム(モンソニア・ムルチフィダ)。


サルコカウロン・ムルチフィズム(Sarcocaulon multifidum)。
月界という、風流な和名があります。最近は、Monsonia multifida という学名が
国際標準になりつつありますが、日本では旧い名前のほうが通りが良いようです。
樹脂を多く含みよく燃えるので、現地ではブッシュマンの蝋燭などとも呼ばれます。

このムルチフィズム、冬型コーデックスの中では、昨今随一の人気種でしょう。
朽ち果てた骨のような幹から、産毛をまとい海藻を思わせる繊細な葉を生じます。
枝打ちする樹形は個体ごとに異なるので、同じ種であってもまるで違う表情を見せます。
花は大輪で数多く咲き、薄紙のような花弁は、光を透してきらめく美しさです。
その姿は、ほかのどの植物にも似ておらず、草木をあまり知らない人でも目を留めるほど。
珍しいだけでなく、人の感性のどこかに響いてくる、そんな独特の魅力があるからでしょう。




resize3559.jpg

resize3558.jpg

resize3555.jpg
                 Sarcocaulon multifidum = Monsonia multifida




ここ数年、多数の野生株が導入されていて、その姿に魅せられた多くの人が手にとり、
さまざまな環境のもとで栽培していると思われます。秋から春のあいだに成長する冬型種で
あることを念頭に栽培すれば、それほど難しくないという印象を受けるかも知れません。
枯れ木のような外見ですが、悪名高いオペル・パキプス等に比べれば発根しやすい方で、
採取移送時に激しいストレスにさらされた株でなければ、まずまず活着してくれる。

しかし、長く栽培していると、この植物の気難しさをだんだん感じることになると思います。
積極的に成長させようと水をやり過ぎると、新しく伸びてきた枝が徒長し細くなってしまう。
といって、極端に水を少なめにして管理すると、数年をかけて徐々に衰弱していく。
この種の近縁種で、いまや宝物級の扱いになっているペニクリナム(S. peniculinum)など、
かつてはかなりの量が輸入されたはずなのに、いま、ほとんど残っていないことが、
野生個体を長期栽培することの難しさを如実に示しています。




resize3575.jpg

IMG_2911.jpg
                  Feather like new leaves early in Autumn




ムルチフィズムの自生地は、南アフリカとナミビアの境界を流れる、オレンジ川河口付近に
ひろがる海岸沙漠です。ほとんど雨の降らない砂礫の平原で、直射日光を遮るものはなく、
たえず空気が動いています。海流の影響を受けるため気温変動は比較的穏やかで、
海霧が侵入してくる地域もある。このあたり、チリ・アタカマ沙漠のサボテン、コピアポア属の
自生環境にも通じます。

さて、この植物を栽培するうえで、理想の環境とはどういうものか。
まず、冬型種ゆえに寒さには比較的強いですが、と言って極寒を好むわけではありません。
氷点下近くまで下がるのは好ましくないし、冬でも昼間の最高温度は20度以上にしたい。
太陽光線には終日あてて、出来ればガラス越しでない方が良い。一日中風にもあてたい。
夏場も、連日の猛暑日熱帯夜は避けて、涼しくて風通しの良い場所で休ませる。
これを日本で実現するのはかなり難しいですが。私の経験では、サルコカウロンが枯れるのは、
だいたい夏の休眠期の間です。夜も気温の下がらない、蒸し暑い日本の夏を越えられず、
秋になっても目覚めることなく、本当の枯れ木になってしまうのです。




resize3579.jpg

resize3583.jpg

resize3586.jpg




もちろん、同じエリアに生えるコノフィツム等の多肉植物が、日本の環境に適応して育って
いることからも、栽培が不可能なわけではないでしょう。とくに、実生から育成した苗は根が
しっかり発達することもあり比較的丈夫なようです。山木を入手した場合は、自生地の環境を
想像しながら、できる限りそこに近づけることが大事だと思います。とはいえ、100%は実現
出来ませんから、多少徒長することがあっても、成長期に株を充実させて夏を越える体力を
養うことが必要です。かつて、輸入時の姿を維持しようと、ストイックに管理しすぎたために、
次第に衰えついに枯らしてしまった経験から、今は毎シーズン枝が1cmくらいは伸びるような
育て方を心がけています。できるだけ徒長しないように、終日直射日光にあて、風通しよく、
かつ夜は寒がらせないようにも気をつかっていますが、それでも、上の写真の株のように、
国内で育った枝は少し細くなっています。ですが、ちゃんと動いている株であれば、怖れずに
夏の休眠期を迎えられるでしょう。




resize3568.jpg




現在、数多くの野生株が日本に入ってきていますが、最初の1シーズンは良いとして、
3年先5年先にどのくらい維持されているか。いま元気に動いているように見える植物も、
実はストレスをためているかも知れません。なるべく彼らの故郷に近い環境を用意してやり、
折々の表情をよく見てやって下さい。
我が家にも十年以上育てているペニクリナムや、ムルチフィズムの山木があります。
しかし、これらが自生地で育まれた年月は、その数倍には及ぶでしょう。
思わず手をあわせたくなるような貴重な植物です。長く元気に過ごさせてやりたいと思います。







テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

光堂の発芽と秋から動く塊茎植物。

   
ここ一週間くらいでめっきり涼しくなって、季節はすっかり秋。
夏型コーデックスの葉っぱがちらほら黄色くなって、そろそろ取り込み、越冬の準備をしないといけない。
一方で、秋冬型のコーデックスは芽吹いてきて、これから一か月くらいがいちばん元気に育つ時期です。
開花もはじまりまりました。




resize3456.jpg

resize3457.jpg

resize3459.jpg
                    Sarcocaulon patersonii




サルコカウロン・パターソニー(Sarcocaulon patersonii)は、日本でもみられるフウロソウの仲間で、
産地ではブッシュマンキャンドルと呼ばれています。樹脂に富んでいて確かによく燃えそうです。
ナミビアから南アフリカにかけての広い範囲に分布していて、タイプもいろいろ、花色もさまざま。
この株は古い輸入株ですが、正確な産地情報が付与されていないのが残念ではあります。
むかし、幹が黄色くてムチムチしたタイプのゴールドフォームというのが輸入されてきた時期があり、
これは別種の趣がありました。一見丈夫に見えますが、あまり寒がらせたり、暑がらせたりすると、
知らないうちに枯れ枝になっていることがあります。また、陽が弱いと枝が細くなり姿が乱れます。




resize3433.jpg

resize3432.jpg

resize3431.jpg
                      Tylecodon pearsonii




チレコドン・ペアルソニー(Tylecodon pearsonii)。白象という和名もあるらしい。
小型のつぼ型コーデックスは、エケベリアなどと同じベンケイソウ科なので、比較的育てやすいです。
むかしはルテオスカマタ(T.luteosquamata)という名前で輸入されることが多く、この株もその名前で
入ってきたもの。いまはシノニムとして、前者に統一されています。
同じ属の万物想(T.reticulatus)は、枯れた花枝を振りかざし冬型コーデックスの王様的な存在ですが、
ペアルソニーはその小型版。葉の脱落痕が刻印された枝が面白いのですが、ガラス越しの光では
細く長く伸びやすいので、霜が降りる夜以外は屋外の直射日光にあてて育てるのが理想的。
寒さには比較的強いです。




resize3464.jpg

resize3452.jpg

resize3463.jpg
                   Othonna retrorsa grown from seed 7-8 years




こちらは、キク科のオトンナ・レトローサ(Othonna retrorsa)。コーデックスといっても、
もしゃもしゃの葉っぱ(とその枯れたもの)に覆われていて、本体は見えません。枯草の塊りから
葉っぱが出て、花が咲きます。南アフリカの雑草といった風情で、秋の風に花がふわりとそよぎます。
この株は輸入株ではなく、私がタネから育てたもので7、8年経って、ちょうどいまげんこつサイズ。
小さいのは3年前の写真なので、意外に成長が早いのがわかります。基本、草で出来た団子なので、
山木も国産も区別がつきません。なので、できれば種から育ててやりたいもの。




resize3435.jpg
                 Pachypodium namaquanum, peak of growing period in early Autumn
resize3471.jpg
                 It took 8months to harvest seeds from budding




さて、パキポディウムのなかでは、この光堂(Pachypodium namaquanum)が唯一の純粋な秋冬型です。
マダガスカル産のデカリー等も秋に開花しますが、そもそも冬がない地域なので、冬型とは言い難い。
光堂の生育サイクルは、キフォステンマのセイッチアナなどとも似ていますが、春落葉して、夏~翌春
までが生育期です。いまの時期は最成長期で、青々と葉を茂らせて、キラキラと輝く新刺を伸ばします。
11月になったら温室に取り込み(関東)、暖かく過ごさせると、蕾が出てきて春に開花します。




resize3437.jpg

resize3439.jpg
                 Seedlings of Pachypodium namaquanum, just germinated
resize3436.jpg




去年、苦労して授粉、結実させた種子を先月末に実生したものがいまこのサイズ。フレッシュな種子でしたが、
30粒蒔いて12粒発芽。11本が成長軌道に乗り、ようやく、最初の刺がツンと出てきました。実にかわいい。
元親も種から育てた株なので、開花、結実、実生、そして発芽と、種から種へぐるっと一周したことになります。
このまま暖かく過ごさせて、冬も水を切らずに成長させてあげよう。
























テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

種まきの記 2017

     
種まきしようぜ、で毎度おなじみの当ブログ、ことしの実生報告がまだでした。
季節は夏の真ん中、春に蒔いた植物たちはいまどうなっているか。
近頃のブームにのってみて、サボテンよりも多肉・塊根系の種子を多めに蒔きましたが、
順調に育って楽しませてくれるものがある一方、不慣れな種など管理不行き届きで
ダメにしてしまったものも。




resize3262.jpg
今年播種したパキポディウムは、ブレビカウレ、エブレネウム、グラキリウス、バロニー・ウインゾリ、マカイエンセ
(Pachypodium brevicaule, eburneum, gracilius, baronii windsorii, makayense)どれがどれかわかる?
このほか、左側の葉の大きいものはケファロペンダンドラ・エキルホサ(left;Cephalopentandra ecirrhosa
いちばん手前の立木状のものがプテロディスカス・アウランチャクス(left front:Pterodiscus aurantiacus

resize3259.jpg
                 バロニー・ウインゾリ Pachypodium baronii ssp.windsorii 3months
resize3267.jpg
                 ブレビカウレ Pachypodium brevicaule 3months



そんななか、毎年蒔いて勝手もわかっているパキポディウムは、自家採種で発芽もよく、
管理も慣れているので順調に育っています。5月蒔きなのでちょうど3か月でこんなサイズ感。
すでに腰水からは引き上げて、40%遮光下での通常管理。1年間は温室内で穏やかに
過ごしてもらいます。本当はこのタイミングで植え替えると良いのでしょうが、手がまわらないので
野菜みたいな密植状態のまま、1年間過ごしてもらいます。




resize3260.jpg
                 ユーフォルビア・シンメトリカ Euphorbia symmetrica 3months
resize3265.jpg
                 フーディア・ゴルドニー  Hoodia gordoni   3months



ユーフォルビアは、バリダやシンメトリカなど自家採取の種子が中心。
発芽もよく、元気に育ちます。ガガイモ科のフーディアは大輪のゴルドニーを蒔きました。
ユーフォもガガイモも色々蒔きたいけれど、一般的な種子業者ではなかなか見つからない。
そもそも、サボテンと違って多肉は全般に種子の入手が難しく、みつけても値段が高い。
そこが実生がひろがらない理由にもなっている気がします。




resize3274.jpg
写真左手前から時計回りに Ibervillea tenuisecta, Chorisia speciosa, Bursera hindsiana, Commiphora kua 'Gof Choba'
resize3275.jpg
               唯一発芽したコミフォラ Commiphora kua 'Gof Choba'
resize3257.jpg

resize3249.jpg
                 オペルクリカリア・パキプス Operculicarya pachypus 3months from seed



灌木系のコーデックスは、イドリアやブルセラなどは順調に発芽しましたが、その後の
管理が悪く、全滅させてしまった種が多数。暑がらせたり、水切れさせたのが敗因です。
勤め人ゆえ、忙しいときは1週間温室が覗けないこともあり、このあたりなかなか辛い。
また、コミフォラやキフォステンマなどの買った種子は芽が出ないものが多かった。
オペルクリカリア・パキプスは自家採種で、去年採った種子と、今年採取した種子と
あわせて30粒くらい蒔いて、発芽は今のところ5本です。発芽しさえすれば丈夫なので、
半世紀後くらいには立派なコーデックスが楽しめるかと思います。

さて、種まきは結果が出るのに時間がかかる、という話ばかりすると、やってみようと
いう人がいなくなるといけないので、たった1年でもこうなります、というのが以下の写真。




resize3255.jpg
               ユーフォルビア・ゴルゴニス Euphorbia gorgonis 1 year from seed
resize3261.jpg
              プセウドリトス・エイレンシス Pseudolithos eylensis 1year from seed
resize3253.jpg
               パキポディウム・グラキリウス Pachypodium gracilius 1year from seed



ユーフォ・ゴルゴニスはすでにタコものらしい姿に育って、開花もはじめました。
ユーフォルビアはサボテンと似てますが、成長はずっと早いものが多い。
ガガイモ・プセウドリトスはまだ1cmくらいですが、肌の感じなど、いい感じになってきた。
そしてグラキリスの小さな森。パキポは、すでに屋外管理になっていますが、夏の終わりから
株の下方が太りはじめて、お馴染みのボトルシェイプへと移行していきます。

気が短い人のために言うと、1年経てば、種類にもよるけれど、小さいながら本来の風格が
備わってきて、ナミビアかマダガスカルか、小さな沙漠の風景が眼前に広がります。
ひと粒の種から生まれ広がった小宇宙にひたる・・・園芸家冥利につきる瞬間です。













テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物、栽培、探究。

最新記事
全記事表示を読む

全ての記事を表示する

カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
リンク
カレンダー
01 | 2018/02 | 03
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 - - -
Excite自動翻訳
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる