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大地の目 (オフタルモフィルム Ophthalmophyllum)


 コノフィツムのなかで、頂部に透き通ったガラスのような窓をもつ一群。自生地では半ば地中に埋もれ、透明な窓が大地に埋め込まれた目玉ようみえることから、かつてはオフタルモフィルム属と呼ばれていました。現在はコノフィツムのなかの一節(Section Ophthalmophyllum)となっています。水分をたっぷり含んだ瑞々しい葉は、色や透明感のバリエーションが豊富で、まさに宝石をコレクションするような楽しみがあります。花は白から桃色で、比較的大きく、1週間以上咲き続けます。多様なコノフィツムのなかでも派手な植物なので、人気が高まってきそうです。




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   Ophthalmophyllum lydiae 'haramoepense'  SH379 E Naip



 ハラモエペンセ(Conophytum lydiae 'haramoepense' SH379)の名で流通しているもので、S.ハマー氏のフィールドナンバーがついています。むかし、メサ・ガーデンから苗で導入したものだったと思います。ふっくらと扁平で、お餅のような質感の植物体から、ツートンの目を惹く美花を咲かせる良種です。このハラモエペンセという名は、コノフィツム属に同名異種があり、オフタがコノに統合された今となっては混同必至です。この植物の記載上の正式名はライディアエ(Conophytum lydiae)になるのかな、と思われます。この株は3頭立てになって十年くらい、頭数もサイズも変わらず、毎年の脱皮だけは続けています。メセンには、こういうことがよくありますね。




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   Conophytum dinteri ssp.friedrichiae M.1792.6  SE Kenhardt.



 フリードリッヒアエ(Conophytum friedrichiae)は風鈴玉の愛称もある、古くから親しまれてきた種ですが、オフタの王様といってもいいくらい存在感のある植物です。褐色系ではヴェルコースム(C.verrucosum)と双璧で、琥珀色からガーネットまで、その深い色合いは、光に透かして眺めると、宝石よりも美しい。このM.1792.6(メサガーデンの整理番号・Kenhardt産)は、とくに色合いが素晴らしいのですが、丈が伸びやすい傾向があり、真夏も薄暗いところには置かない方が良く、9月半ばから強い光線にあてて色をハッキリ出していきます。この渋い色合いの植物体から、真っ白な花が咲くところも最高です。ぜひ、逆光で眺めて下さい。午前中の陽射しと、夕暮れ時では、違った表情を見せてくれますよ。




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   Ophthalmophyllum aff pubescens SB806 Stofkloof



 瑞々しいグリーンボディのオフタルモ・プベンケンス(Conophytum aff.pubescens SB806 Stofkloof)。SB806の特徴はこのサイズ感です。1頭が1cmあるかないか。この仲間としては異例の小ささです。プベスケンスすべてが小さいわけではなくて、このフィールドナンバーの個体群が特に小さいようです。アフィニティがついているのも、そのせいかも知れません。小さいけれど、頂部には水滴をのせたように透明な窓があって、可愛いのなんの。プベスケンスの特徴は、学名が示すように球体にうぶ毛のような微かな突起があること。この個体も小さいのでわかりにくいですが、ボディ全体がビロード状にけば立っています。小さな植物が密に群生して、端正な花を揃って咲かせると、なにやら精密な工芸品のような魅力がありますね。



 コノフィツムは栽培が難しいという声をよくききますが、このオフタルモ系は比較的大型に育つ種が多いので(最後のプベスケンスも、コノ全体のなかでは通常サイズです)、夏越しの耐性も強く育てやすいグループです。しかし、光量が不足すると上に伸びて見苦しくなるので注意が必要です。成長期はざっくり9月~3月で、それ以外の季節は旧皮をかぶった形で休眠するものが多い。種によっては、リトープスのように新旧の葉が入れ替わるような脱皮をするものもあります。休眠期は50%程度の遮光と十分な通風(できれば最高温度30度程度に)が必要ですが、成長期は遮光なしの方が色もハッキリでて美しく育ちます。夏場の水やりはしなくても小型のコノフィツムのように枯れることはあまりない。また、成長期も水やりが多いと身割れしやすいので、2週に一度程度に留めています。実生からの育成では2~3年程度で開花株になります。草花感覚で種まきして、その後何十年も楽しめる植物です。









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ジャンル : 趣味・実用

メセン色づく


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    some are turning red in early spring
 


 早春のころ、多肉植物温室では、メセンたちの紅葉が始まります。まだ、外を歩くにはコートが必要な季節でも、晴れた日のガラス室のなかは、汗ばむくらい暖かくなって、すっかり春です。アフリカ南西部原産の多肉植物は、その多くが秋から春にかけての季節に動く。なかでもコノフィツム(Conophytum)属に代表されるメセン類(Aizoaceae)は、夏に休み、冬に動くという、明確な成長-休眠サイクルを示すものが大半です。秋口から元気に開花、成長してきたコノフィツムは、日に日に強くなる陽射しを敏感に感じ取って休眠の準備を始めます。




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     Conophytum burgeri and Conohtyum moughanii   



 その変化を顕著に示すのが、色彩。マウガニー、ラツム、ブルゲリなどの透明窓系のコノフィツムの中には、成長期の終盤に紅葉するものがあります。これらの種でも、成長期の初めに旧皮の下から出てきた新球は、ほぼすべて瑞々しいグリーン。マウガニーなどの一部は、秋のうちから肌を赤く染めるものもありますが、多くは年明け、陽射しが強くなってきてから色づきはじめます。




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     Conohtyum moughanii 'Witsand'
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     Conohtyum moughanii ssp..armeniacum 'Augrabies'



 もっとも赤色が強く出やすいのがマウガニーです。産地ごとに色づき方が異るので、そこもコレクションでは面白いところ。写真上の透明感ある赤は、古くから有名なWitsand産。これは、次第に赤くなっていくタイプ。Harras産のアルメニアクム型(C.maughanii ssp.armeniacum)は、脱皮して陽射しを浴びるとすぐに赤くなりますが、典型的なアルメニアクムは、Harrasよりもてっぺんがつぶれた形に育ち、写真のAugrabies産タイプのように、濁ったオレンジ色に染まるものが多い。ラツム型(C.maughanii ssp.latum)にも、真っ赤に染まるタイプがあります。かつては、赤くなるマウガニーが大雑把にルフェスケンス(rufescens)と呼ばれていましたが、実際にその名で流通している株は色合いもまちまちで、産地も定かでないことが多いです。




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     Conohtyum moughanii 'Eksteenfontein'



 変わっているのは、このEksteenfontein産で、種をまくと、赤い個体と緑の個体が半々くらいで出現します。中間の色は出ません。自生地にも、赤と緑が交じって生えているそうです。この産地の赤は、Harras産に匹敵する濃赤色で、脱皮直後から色づくので、とても美しいものです。さらに、春先のこの時期にはブドウのような赤紫色に熟して、およそ生きている、これから先も生き続ける植物とは思えない色彩を呈します。




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     Conophytum burgeri



 マウガニー以外で、強く色づくのはブルゲリ(Conophytum burgeri)です。産地がそもそも一か所しかなく、色づきの個体差もあまりありません。春先にはだいたい赤くなります。ただし、野生下同様に乾いた旧皮をそのままにしていると、うっすらと色づく程度で、これをツルツルに剥いてよく陽に当てると、かなり色濃く染まります。しかし、ブルゲリと同じボディの形でもハメリ(C.hammeri)は真っ赤になることはなく、だいたいグリーンのままです。一方で、同じく近縁のRラツム(C.rartum・・・C.maughanii ssp.latumとは別種)も、よく陽に当てると休眠間際には赤くなります。




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     Conohtyum moughanii 'Smorenskadu'
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 いったい彼ら、彼女らは、なぜ赤く色づくのか。明確な理由はわかっていません。メセン類やサボテン科など、ナデシコ目の多くの植物は、ベタレイン色素を合成します。これは野菜のビートの赤と同じ色素です。おそらく、ブルゲリやマウガニーの赤も、このベタレインによって染まったものと思われます。しかし、多くの植物に含まれるアントシアニン系の色素に比べて研究実績も少ないようで、ベタレイン色素が、コノフィツムにとって、どういった生理機能を有するのかは、定かではないようです。先に紹介した、Eksteenfontein産の個体群のように、緑と赤が半々で交じって生えている例をみると、環境適応における決定的要素ではないとも考えられます。一方で、生育期の終盤に色素が濃くなること、強い日光にあてることで合成が促進されることなどから、紫外線から細胞を保護する、とくに植物体内で形成される新葉を守るなど、一定の役割があることも想像できます。
 理屈はともかく、メセンたちが紅葉すると、栽培棚は秋の開花期と同じくらい、とても華やかになります。梅が咲き、桜がほころび、日本の野山に春に彩られるころ、コノフィツムたちは、その身を赤く染めながら、眠りにつくのです。また秋まで、ゆっくりお休み。








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コノフィツムがいてくれる。

  
 もし、コノフィツムを育てていなかったら。
 秋から春まで、サボテンやコーデックスの大半が、休眠したり、動きが鈍る季節は、植物生活もかなり退屈なものになるでしょう。でも、日本の野山が枯野一色になるころ、メセン栽培場では、まるで春のようにコノフィツムたちが動き始めます。




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     Conophytum pellucidum ssp.terricolor M.1443.29 Rietberg



 写真は9月に撮影した、ペルシダム(Conophytum pellucidum ssp.terricolor)です。
 蒸し暑い日本の夏を、乾いた旧皮を被って乗り越えると、水もやらないのに花を咲かせました。夏場に水をやっていれば、この時点で新球が吸水して膨らみ、皮を突き破って育っていますが、この株は水を切ったままだったので、ミイラみたいな状態のまま、開花しました。これはこれでビザールな眺めです。でも、3月半ばから半年間、一滴も水を与えていないのに、これだけ花を咲かせる力を蓄えていることに感心します。




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   Conophytum pellucidum ssp.terricolor SH1252 Krymekaar Junction



 上の写真は、一度だけ水をやったあと、開花したペルシダム(C.pellucidum ssp.terricolor SH1252)。独特な窓模様から「バッドウィング(蝙蝠の翼)」と呼ばれる有名なタイプです。旧皮こそ突き破ったものの、開花に力を使ったため、新球はじゅうぶん膨らんでいません。でも、その分、紅い宝石のような窓の透明感、色合いが深くて美しい。その後、しっかり水を吸い上げて膨らんだのが、下の写真です。ペルシダムは、夏場に日陰で休ませているときに水をやると徒長しやすい。日陰では断水し、水を吸って動き出したらしっかり強い光線にあてることで、丈低く形のよい群生株に仕上がります。




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     Conophytum cubicum N Eksteenfontein(TL)



 その名のとおりキュービックなコノフィツム、クビクム(Conophytum cubicum)。半分溶けて柔らかくなったキャラメルみたいな、微妙なひしゃげぐあいが魅力的です。四角いコノは他にもアンゲリカエとかクルシアツムとか、いくつかありますが、たぶんこれがいちばん丈夫で育てやすい。乾いた皮も薄くて自然に剥がれます。この種は、やはり成長期のはじめの秋口に、長い花筒を伸ばして純白の花を咲かせます(写真下)。みかけたらぜひ手に入れてもらいたいコノフィツムです。




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     Conophytum regale Ratelpoort(plant from TS)



 白い花が続いたので、こんどはピンク花のコノフィツム、レガレ(Conophytum regale)。古典的なタビ型フォルムなのに、まんなからへんに窓があります。というか透明な部分がある。ペルシダムやマウガニーのようにほとんど地中に埋まって育つわけではないので、窓がここにある決定的な意味はわかりませんが、とてもチャーミングです。たぶん、ここに窓があるとかわいいからそうなってるに違いない。茎の部分が弱いのか、頭数が増えると倒れてしまったりして、大きな標本に育てるのはなかなか難しい。




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     Conophytum minimum 'wittebergense' M1472.5 Klein Spreeufontein



 こちらは最近人気があるアラベスク模様のコノフィツム、ウィッテベルゲンシス。中国などでとても人気になっていて、最近は毒々しいくらい濃色の紋様の株も出てきています。紋様が濃色で派手だと驚くような値段になるみたい。この株は無選抜の平均的な顔で、うちにはこういうあっさり顔しかいません。花は几帳面な夜咲きで、夕方も朝も開いてない。このときもカメラを構えて待っていましたが、結局まっくらになるまで咲きませんでした。花粉つけをしなくても種が採れるのですが、蒔くと発芽しない。顔違いを殖やしたくなったら、夜更けに懐中電灯で授粉しないといけませんね。




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 そんなコノフィツムたちも、陽射しが強くなっていくにつれて、少しずつ眠たげな表情をうかべるようになります。球体の成長が止まり、肌も陽射しにやけて赤味が強くなってくる。それから徐々にハリがなくなって、しわっぽくなる。そうなれば、もう水をやっても膨らみません。また半年間の、お別れの時期が近づいてきています。もうすぐ春なのに。いや、もうすぐ春だから。

















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プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物を中心に、世界中の面白い植物を栽培中。主に種子からの育成に力を入れています。植物とのつきあいは、幼少時代から40年。
著書「珍奇植物 ビザールプランツと生きる(日本文芸社)」

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