窓のある植物 Genus Fenestraria

    
多肉植物のなかには、「レンズ植物」「窓植物」といわれる一群があります。
葉の一部などが透明なレンズ、ないし窓状になっていて、ここを通って植物体の
内部に到達した光で光合成を行う植物を、そう呼んでいます。
こうした形態の植物は、オブツーサや玉扇・万象などのハオルチア属、
リトープスをはじめとするメセン科に多く見られ、いずれも透明感あふれる美しさで
人気があります。




resize3819.jpg




フェネストラリアは、Fenestraria rhopalophylla 1種だけからなる特徴的な属で、
レンズ植物の典型的な例です。ほぼ無茎で、根部からロゼット状に棍棒状の葉を
展開しますが、この棍棒の先端部が透明な窓(レンズ)に、なっています。
属の名前も"窓のある"、という意味ですが、植物全体の姿はイソギンチャクのようです。
欧米では、“baby toes”(赤ちゃんのつま先)と呼ばれますが、これは上側でそろった
葉先をそう見立てての愛称でしょう。




resize3815.jpg

resize3812.jpg
          Fenestraria rhopalophylla ssp.rhopalophylla H4715 Chamais Gate,Namibia




自生地は南アフリカ・ナマクァランドからナミビアにかけての海岸沙漠で、冬に雨が
降る地域。よってフェネストラリアの生育期は秋から春で、典型的な冬型多肉植物です。
日本での栽培では、だいたい真冬の寒い時期に開花します。分布地域によって、
植物のサイズや花色などに変異があり、白花が基本種(Fenestraria rhopalophylla)で、
「群玉」という和名がついています。




resize3837.jpg

resize3822.jpg
       Fenestraria rhopalophylla ssp.aurantiaca M1507.5 Beauvallon,Northern Cape,SouthAfrica




一方、黄色花の亜種もあり(Fenestraria rhopalophylla ssp.aurantiaca)、
こちらは「五十鈴玉」と呼ばれています。実際には、中間的なコロニーもあるようで、
同じ種の地域変異の範囲と考えるのが適切かも知れません。
また園芸種でオレンジイエローの大輪花を咲かせるファイアーワース(cv.Fireworth)も
とても魅力的な植物です。
同じメセン科には、よく似た姿、生態のフリチア属(genus Frithia)があります。
小さめのフェネストラリアという姿ですが、夏型(夏に水をやる)なので、
管理はまるで異なります。

でも、いったいなぜ葉っぱの先っぽだけが透明な窓になっていて、そこから光を取り込む
必要があるんだ?と思う人も多いと思います。実は多くのレンズ植物、窓植物は、
自生地では栽培下とはまったく異なった状態で生育しているのです。




resize3803.jpg

resize3807.jpg




上の写真は、自生地でのフェネストラリアの姿です。
と言いたいところですが、実際は栽培環境を自生地の状態に近づけてみたものです。
植物体のほとんどは砂の中に埋まっていて、「窓」の部分だけが地表に覗いています。
じつは、多くの「窓植物」は、暑熱や乾燥の過酷な環境から植物本体を守るために、
地中にからだをうずめ、地表にちらりとみえる窓の部分から光をとりこんで暮らしているのです。
リトープスや、窓のあるコノフィツム、ハオルチアなども、自生地では土中にあらかた埋まった
状態で生きています。なので、根元から見えているような鉢植えでの状態は、
ちょっと恥ずかしく思っているかも知れません。イソギンチャク状に育ったフェネストラリアの
姿はたいへん面白いですが、じつは鉢植えならではの不自然な状態ということになります。




resize3826.jpg

resize3832.jpg
                 Fenestraria rhopalophylla ssp.aurantiaca cv.'Fireworth'




実際、リトープスでもハオルチアでも、一定以上の深さの鉢にうえて、長く育てていると、
いつのまにか球体は地中に埋没していきます。しかし、フェネストラリアは、植え替え時に
埋めても、いつのまにか立ち上がってきてしまう傾向があります。徒長しやすい、ということ
かも知れません。そもそも雨量のとても少ない地域に生えているので、栽培するうえで
念頭におくべきことは「水少なめ」。とくに夏の休眠時期の水やりはとても危険で、腐敗に
繋がります。成長期も水やりは2週に1度程度でよく、多いと身割れが生じやすい。
夏の断水期を乗り切る上では、直射日光にさらすより、おそらく埋めたやった方が有利
だと思います。野菜のように根際から露出させるのは避けた方が無難です。

余談ですが、リトープスやハオルチア、また塊根植物などでも、日本で栽培する場合は
埋めると腐りやすい、という説明をよく見かけます。しかし、私の経験ではそうしたことは
滅多にありません。お芋は埋めたほうが元気に形よく育つし(鑑賞はできませんが・・・)、
リト、コノも変な時期に水やりなどしなければ腐ることはないと思います。




resize3830.jpg




フェネストラリア、透明な窓も美しく花も豪華なのに思いのほか普及していないようです。
休眠期は水を切り、成長期にはよく陽に当てる。気立ての良い植物なので、栽培場に、
ナミビア海岸沙漠のジオラマを是非作ってみてください。








テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

もっと、コノフィツム!

     
最近、日本ではコノフィツムを育てる人が少なくなったんじゃないか、と思うことがあります。
かつては、多肉のど真ん中で、いまのエケベリア、ハオルチアに勝るとも劣らない人気でした。
しかし、インスタグラムなど眺めていても、「#多肉」で圧倒的に数多く出てくるのはエケベリア。
ハオルチアやコーデックスに比べても、コノフィツムはじめ、メセン類をポストする人は少ない様子。
といっても、韓国・中国からのポスト数はかなりあるので、日本では人気を失っているのかな、と。




resize3501.jpg
               Conophytum pellucidum ssp.pellucidum SB1059 East of Soebatsfontein
resize3539.jpg
               Conophytum irmae B&H2318 West of Anenousberg
resize3492.jpg
               Conophytum ectypum ssp. ectypum LAV29584 5km South of Umdaus



その理由を推察すると、ひとつは栽培が簡単ではないということ。秋~春が成長期で、この期間に
じゅうぶんな日照を確保する必要があり、風通しも求めることから、置き場所をかなり選びます。
また、ガーデニング、インテリア的な視点からは、どの植物も小さすぎて、生活空間に飾るのには
あまり適していないこと。環境が悪いとすぐに徒長したり腐るので、展示販売型の業者さんは
敬遠する傾向もあるでしょう。さらに昨今の関東関西の平野部では、夏の暑さがひときわ厳しくなり、
そもそも夏越しが難しくなっています。




resize3519.jpg
               Conophytum burgeri SH409 Aggeneys
resize3548.jpg
               Conophytum maughanii PV201 East of Eksteenfontein
resize3473.jpg
               Conophytum maughanii M1430.411 East of Pofadder



しかし、コノフィツムについて、昭和の時代から日本の栽培家は、世界に先駆けて新種を導入し、
繁殖させる知識と技術を持っていました。有名なブルゲリも、いち早く栽培法を確立して饅頭ほどの
巨大サイズに育てる名人が続々現れました。信州で数多作出された渦巻咲きなどの美花改良種は、
世界にも類を見ません。コノフィツムは、白点の美しい兜や玉扇・万象と並んで、多肉園芸における
「日本のものづくり」の象徴的な存在だったのです。それがいまや、日本で育てられる人がいなくなり、
韓国中国のコレクターのもとにどんどん流出しているのは、なんとなく寂しい気がします。




resize3481.jpg

resize3482.jpg
               Conophytum obcordellum 'ursprungianum' TS603 Lokenburg
resize3485.jpg

resize3488.jpg
               Conophytum cubicum NE of ksteenfontein(TL)               



コノフィツムの楽しみ方は、多くの種類や産地ごとの顔違いなどを集めて、コレクションしていくと
いうのがメインになると思います。ただ、ハオルチアのようにタイプの良否で選んでいくというより、
それぞれの趣味家が自分の好みを追求する傾向が強い。しかし、生産業者も時間とコストをかけて
多品種を育てて揃えるのは大変なので、基本はアマチュアの栽培家が自分で種から育てる園芸でした。
著名なハマー氏は、アマチュア出身の研究者兼栽培業者で、彼のような人たちが自生地を訪ね歩き
新種を次々導入しました。英国のアマチュア団体、MSG(メセンスタディグループ)も年に一度、
そうした種子の配布をしていて、これを目当てに会報を購読するのもセオリーでしたね。
米国の種専門業者、メサ・ガーデンが多種多量の種子をラインアップしていて、私にとってはこれが
最大のソースでした。いずれにしても、お金をかけるより、知恵を絞って時間と手間をかけないと
楽しめない園芸なので、ほんとに植物マニアっぽい人たちの世界でもあったと思います。




resize3532.jpg




ところが、そうした牧歌的なコノフィツムの世界も、じつは大きく様変わりしてきているようです。
先に日本では昨今不人気かも、と書きましたが、先日の某オークションをのぞいてみたところ、
ちょっとビックリするような価格(しかも入札されている)で、かつての市場価格の数十倍くらい。
これはどうやら国外、おもに中国・韓国の趣味家のニーズを反映したもののようで、去年あたりは
粒紋系の一部くらいが異様な高値をつけていたのが、ことしはさらに幅が広がっています。
メサガーデンも今年から園主がかわり、コノフィツムの種子はかつての5倍くらいに高騰しました。




resize3475.jpg

resize3476.jpg
               Conophytum obcordellum 'ursprungianum stayneri' RR992 North of Ceres



そんな状況ゆえ、コノフィツムは入手難となり、気軽に育てるのはかなり難しくなってしまいました。
サボテン、多肉、ソテツに塊根、熱帯植物・・・長くいろいろな植物とつきあってきましたが、コノフィツムは
鑑賞の面でも、栽培技術の面でも、栽培者に知的な想像力を求める、とても奥行きのある仲間です。
小さくて栽培面積もとらないし、種から増やせるので万金を投じて完成品を集める植物ではありません。
人気が集中する種類は種子も入手難なので、多様な個性のなかから、自分だけのお気に入りを探して
育ててみるのがよいやり方かなと。私も、いま手元にある植物を大事に継代していきたいと思っています。












テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

霊験あらたかな石。

      
秋から春に色鮮やかな花で楽しませてくれるメセンの仲間。
今回はコノフィツムやリトープス以外からいくつかご覧いただければと思います。
いずれも花だけでなく、植物そのものも興味深い姿や生態のものばかりです。




resize2606.jpg

resize2614.jpg

resize2664.jpg
                 Titanopsis hugo-schlechteri M.1872.1 60 km NE Kliprand




チタノプシスの天女扇(Titanopsis hugo-schlechteri)は、擬態植物として有名です。ほぼ地平面に這うように
展開する厚肉の葉は、自生地の砂や石くれと同じ色調、パターンで、身を隠します。古くから作られているので、
ややもすると駄もの扱いする人もいますが、夏の過湿に弱いので、外葉を枯らさないように大きな株に仕立てるには
相応のテクニックが必要。夏型扱いする人もいますが、私は秋~春に育てています。寒さには大変強く、厳寒期に
つぎつぎと開花します。根は太くなるけれど、塊根として鑑賞するのは難しいかな。




resize2630.jpg

resize2633.jpg

resize2652.jpg
                 Mitrophyllum clivorum M.1779.39 Komaggas




ミトロフィルム、というメセン自体があまり知られていませんが、姿や生態がとても面白い植物です。
このクリボルム(Mitrophyllum clivorum)は、なかでは小型の部類。大型種は高さ50cmくらいまで育ちます。
成長期は写真のように赤茶色の幹(茎)の部分から、ゴムのように柔らかい葉を展開します。
春の終わりに柔らかい葉は枯れ、その年伸びた分の茎が残る。モニラリア(Monilaria)に近いグループなので
成長パターンもちょっと似ていますね。コーデックス的な味わいのあるメセンです。ユニークなのは、休眠期に
茎のてっぺんに翌年展開するための葉っぱがセットされる点で、これはかなりの奇態です。
なかなか言葉では説明しにくいので、興味あれば画像検索してみてください。
栽培は難しくありませんが葉の落ちた休眠期は完全断水。秋~春はたっぷり灌水。寒さは少し苦手。




resize2620.jpg

resize2623.jpg

resize2625.jpg
                 Didymaotus lapidiformis SB627  Ceres Karoo,South Cape




最後はムイリアと並ぶ難物、珍奇種と言うべきディディマオタス(Didymaotus lapidiformis)。
この属にはこれ一種しかなく、「霊石」というちょっと不気味な名前がついています。霊験あらたかな植物かどうかは
わかりませんが、世にも奇妙な植物であることは間違いない。対に展開した葉の間から、次の葉が覗いた状態、
このシンメトリーな姿が基本形です。そして、このメインの葉の両脇には、同じようなデザインの小さい“葉”が、
それぞれ生じます。さらにここから花茎を伸ばして、両手に捧げもつように金属光沢あるピンクの大輪をひらく。
写真の株は片側からしか咲いていませんが、両側から同時に開花すると、一層奇妙な感じになります。
花は株の中心ではなく、この両脇からしか咲かず、花のつけ根は実は葉ではないので分頭したりはしない。
国内栽培では緑色ですが、自生地の強光線のもとでは、錆びたような赤に色づき、大地と一体化します。
夏の灌水では腐りやすく、成長期も水は少なめに育てますが、言われてきたほど難物ではありません。
小さな鉢植えなのに、なんというか重たい存在感があって、実にカッコいい植物です。













テーマ : サボテン・多肉植物・観葉植物
ジャンル : 趣味・実用

プロフィール

shabomaniac!

Author:shabomaniac!
沙漠植物、栽培、探究。

最新記事
全記事表示を読む

全ての記事を表示する

カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
リンク
カレンダー
06 | 2018/07 | 08
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
Excite自動翻訳
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
QRコード
QRコード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる